小麦粉の薄力粉、強力粉の違いと特徴、用途やブランド品種を解説

薄力粉は水を加えてこねたとき、粘り気が少ない小麦粉、強力粉は粘り気が強い小麦粉で、その違いは粉に含まれるグルテンというたんぱく質の量です。

強力粉はパンやめんを作るのに向いていますが、薄力粉でパンを作ると膨らみません。薄力粉はケーキ、クッキーや天ぷらを作るときに使われます。国産小麦粉の中には、はるゆたか、春よ恋といったブランド小麦もあります。

ここでは小麦粉のすべてを詳しく解説していきます。

小麦粉の規格と分類 実は法律で決まった規格はない!

小麦粉は薄力粉や強力粉という名前で売られていますが、それぞれどのような定義になっているのでしょうか。実は小麦粉には法律で決められた規格は存在しません。取引をする人や消費者が便利なように、実用上、

  1. 小麦粉の性質(小麦粉に含まれるグルテンの量に基づく)
  2. 不純物の量(でんぷん、たんぱく質以外の成分の量)
  3. 粉粒の大きさ

で分けられています。

小麦粉に含まれるグルテンが少ない順に、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉と呼ばれています。グルテンは、粉に水を加えてこねることで作られるたんぱく質で、粘り気があります。この粘り気が強力なのが、強力粉です。ちなみに「きょうりょくこ」ではなく「きょうりきこ」と呼びます。グルテンは水を加えてこねることで、小麦粉に含まれるグリアジンとグルテニンという2種類のたんぱく質が絡み合ってできます。いったん作られると、もとのグリアジンとグルテニンに戻せません。

一方、小麦粉に含まれる不純物の量が少ないものから、特等粉、1等粉、2等粉、3等粉、末粉に分けられています。小麦は表皮、胚乳、胚芽の3つの部分からできています。小麦を外側から削って粉を作ると、最初にできた粉には、表皮や胚芽の成分が含まれるため、でんぷん以外の成分が多く含まれます。引き続いて削っていくうちにやがて胚乳の部分だけになり、でんぷん以外の成分がわずかしか含まれない粉が得られます。このように不純物が少ない順に、特等粉、1等粉、2等粉、3等粉、末粉と呼んでいます

この分類は主に業者間取引の際に使われるもので、市販の小麦粉にこのような表示はありません。ちなみにスーパーなどで小売りされている小麦粉は1等粉が中心です。これとは別に、表皮、胚芽も含めて丸ごと粉にしたものを、全粒粉といいます。表皮には食物繊維が、胚芽にはビタミンやミネラルが豊富に含まれるため、昨今の健康ブームで、全粒粉が注目されています。

特等粉 1等粉 2等粉 3等粉 末粉
食物繊維 少ない ⇦ ⇦ ⇦                   ⇨ ⇨ ⇨ 多い
ミネラル 少ない ⇦ ⇦ ⇦                   ⇨ ⇨ ⇨ 多い
白色  ⇦ ⇦ ⇦                   ⇨ ⇨ ⇨ 着色
品質 良   ⇦ ⇦ ⇦                   ⇨ ⇨ ⇨ 悪
価格 高い  ⇦ ⇦ ⇦                   ⇨ ⇨ ⇨ 安い

では、なぜこんな分類をしているのでしょうか。小麦粉はさまざまな食品の原材料や、料理の材料として使われます。その用途によって、どの粉が適切かわかるように、分類してあるのです。

今まで説明した小麦粉の実用的な分類ごとに、小麦粉の用途を整理すると、次のようになります。

表 小麦粉の実用的と主な用途

薄力粉 中力粉 準強力粉 強力粉
グルテン濃度(重量%) 7.0~8.5 9.0~10.5 9.0~11.5 12.0~13.5
粒の粗さ 細かい ⇦ ⇦ ⇦                ⇨ ⇨ ⇨ 粗い
不純物が少ない
⇧⇩
不純物が多い
特等粉 ケーキ、カステラ、てんぷら フランスパン パン
1等粉 ケーキ、クッキー そうめん、ひやむぎ パン、フランスパン、パスタ パン、ピザ、中華めん
2等粉 ビスケット、その他菓子 うどん、餃子の皮、クラッカー パン、フランスパン、バスタ パン、ピザ、中華めん
3等粉 駄菓子 かりんとう
末 粉 工業用(食品用途を含む)
全粒粉 クッキー パン パン

文部科学省が作成している日本食品標準成分表2020年版(八訂)には、7種類の小麦粉の栄養成分量が掲載されていますので、あわせて紹介します。

たんぱく質の量を見ると、薄力粉<中力粉<強力粉となっていることがわかります。また脂質と灰分の量は、1等粉<2等粉となっています。全粒粉は脂質や灰分が多く、炭水化物が少ないという特徴があります。さらに表のいちばん右の列の利用可能炭水化物計を見ると、炭水化物の量より9.4g少なくなっています。これが食物繊維に相当する部分なのです。このように全粒粉は、脂質や灰分が多いだけでなく、食物繊維が多く含まれるという特徴があります。

表 小麦粉の栄養成分量2)  100gあたりの重量

エネルギー (kcal) 水分 (g) たんぱく質 (g) 脂質 (g) 炭水化物 (g) 灰分 (g) 食塩相当量 (g) でんぷん (g) 利用可能炭水化物計 (g)
薄力粉/1等 349 14.0 8.3 1.5 75.8 0.4 0.0 72.7 74.1
薄力粉/2等 345 14.0 9.3 1.9 74.3 0.5 0.0 70.2 72.9
中力粉/1等 337 14.0 9.0 1.6 75.1 0.4 0.0 69.1 73.2
中力粉/2等 346 14.0 9.7 1.8 74.0 0.5 0.0 66.1 73.0
強力粉/1等 337 14.5 11.8 1.5 71.7 0.4 0.0 66.5 70.1
強力粉/2等 343 14.5 12.6 1.7 70.6 0.5 0.0 63.2 69.5
強力粉/全粒粉 320 14.5 12.8 2.9 68.2 1.6 0.0 55.3 58.6

もうひとつの指標である、粉の大きさについても触れておきましょう。さきほど説明した、薄力粉、中力粉、準中力粉、強力粉は、粒の大きさが違います。薄力粉が最も細かく、強力粉が最も粗くなっています。

また、強力粉よりもさらに粒度が粗いものを「セモリナ」といいます。スバゲッティにデュラムセモリナ使用と書いているのを見たことがあると思いますが、これはデュラム小麦(Triticum durum)という種類の小麦の胚乳の部分を粗びきしたものです。デュラム小麦は、普通小麦とは異なる種類の小麦で、胚乳の部分が黄色かがっています。スパゲティやマカロニがやや黄色かがっているのは、このためです。デュラムコムギはたんぱく質を多く含みますが、粘り気が少ないという性質があります。そのためめんにすると強いコシを生じますが、生地が膨らまないので、パン作りには向いていません

薄力粉は軟質小麦から、強力粉は硬質小麦から作られる

小麦粉は含まれるグルテンの量によって、分類されることはわかりましたが、ではどのようにして、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉を作り分けているのでしょうか。実は異なる品種の小麦から製粉しています。

小麦の品種はたくさんありますが、大きく分けると、軟質小麦、中間質小麦、硬質小麦の3つになります。硬質とは硬いということですが、これは小麦に含まれるたんぱく質の量が多いため、硬くなっているのです。逆に軟質小麦は、たんぱく質の量が少ないのです。

日本で消費される小麦の88%は輸入小麦です。輸入先はアメリカ、カナダ、オーストラリアの3か国で、下記のような品種が輸入されています5)。軟質小麦は薄力粉に、中間質小麦は中力粉に、硬質小麦は強力粉と準強力粉に加工されます。外国産小麦から作られた薄力粉は、すべてアメリカ産、中力粉はオーストラリア産ということになります。

ところで、なぜこのように特定の品種だけが輸入されているのでしょうか。それは小麦の輸入を政府が一元的に行い、輸入価格にマークアップという費用を上乗せして、製粉会社に売り渡しているからです。2021年3月時点で、小麦1トン当たり51,930円(税込み)となっています。これは海外で流通している小麦の価格より、かなり割高となっています。

では、製粉会社は海外から直接小麦を買い付けることはできないのでしょうか。できますが、政府は小麦に252%の関税をかけています。1トン4万円の小麦を輸入すると、10万円の関税がかかり、輸入したときには1トン当たり14万円というとんでもない価格になってしまいます。ですから、輸入できても、誰も輸入しません。政府が上乗せしたマークアップが何に使われているかは、この記事のテーマではないので、詳しい説明はしませんが、農林水産省の特別会計に入り、いろいろなことに使われているようです。政府は政府が持つ無関税枠を使って、小麦を輸入しています。

さまざまな国産小麦が生産されている

お米は「コシヒカリ」や「あきたこまち」という品種名で売られているのに、小麦粉は「薄力粉」「強力粉」といったパッとしない名前で売られていると、最初に書きました。最近、国産の小麦粉が少しずつですが、出回るようになってきました。小麦粉はほとんどが、製パン用、製めん用、製菓用となるため、業者間で取引されます。国産小麦粉使用と書いてある食品の中には、小麦粉の品種をわざわざ書いているものも出始めました。国産小麦の生産量は、年間80万トンです。自給率は12%と低いですが、小麦の作付け面積は少しずつ増加しているようです。

主な品種と用途をご紹介します5)

まとめ

小麦粉は、小麦粉の性質、不純物の量、粉粒の大きさに基づいて、実用的に分類されており、小麦粉に含まれるグルテンの量が少なく、粉粒の細かい順に、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉と名付けられています。薄力粉はケーキ、クッキー、お菓子、てんぷらに、中力粉はうどんやそうめんに、準強力粉は中華めん、餃子の皮、フランスパンに、強力粉はパンやピザを作るのに、それぞれ適しています。

小麦粉は小麦を外側から削って製粉するため、外側の部分の比率が高いと、不純物が多くなります。不純物の少ない順に、特級粉、1級粉、2級粉、末粉に分けられており、通常店頭で販売されいるのは1級粉です。末粉は工業用に利用されます。

小麦の88%はアメリカ、カナダ、オーストラリアからの輸入で、薄力粉用には軟質小麦のWestern White、中力粉用には中間質小麦のAustralian Standard White、準強力粉・強力粉用には硬質小麦のHard Red Winter、Dark Northern Spring、No.1 Canada Westernが使われています。国産の小麦も生産されており、めん・菓子用のきたほなみ、製パン用のゆめちから、春よ恋などが生産されています。


データ
1) 農林水産省、令和元年度 食料・農業・農村白書(令和2年6月16日公表)
2) 文部科学省、日本食品標準成分表2020年版(八訂)
3) https://glutenfree.empacede.co.jp/flour/
4) 農林水産省、麦の参考資料
https://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/attach/pdf/index-71.pdf
5) 農林水産省、輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)、令和2年3月
https://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/attach/pdf/index-83.pdf