小麦ふすまの栄養成分はなに、糖質オフでダイエットになる?

小麦ふすまは小麦から小麦粉を作るときに出るぬかで、小麦ブランともいわれます。小麦粉や全粒粉に比べると栄養成分が豊富で、とくに食物繊維とミネラルが多く含まれます

しかし特定の栄養成分を摂る目的や、健康効果、ダイエット効果を期待して小麦ふすまを摂ることはやめるべきです。

小麦ふすまを摂ることで生じるデメリットもあるので、利用する際には慎重に判断すべきです。

小麦ふすまとは小麦のぬか、小麦ブランともいう

ふすまと聞いてあなたは何を思い浮かべますか。和室と和室を仕切っている引き戸である「襖(ふすま)」ですよね。

では「小麦ふすま」とは何でしょうか。

お米でいう「ぬか」のことで、漢字で書くと「麬(ふすま)」となります。この漢字をよく見てください。麦へんに皮と書きます。つまり麦の皮のことなのです。建具のふすまとは、何の関係もありません。

お米の場合は「ぬか」または「米ぬか」といいますが、小麦の場合は「麦ぬか」とは言わず「小麦ふすま」といいます。

小麦は表皮、胚芽、胚乳の3つの部分からできており、重さの比率は、表皮が15%、胚芽が2%、胚乳が83%です。小麦粉はでんぷんを多く含む胚乳の部分を粉にしたもので、表皮と胚芽の部分が小麦ふすまになります。玄米のうち10%くらいが米ぬかになりますが、小麦の場合は25~30%が小麦ふすまになります。

あとで説明しますが、小麦ふすまは栄養成分が豊富で、小麦ふすまで小麦粉を置き換えるようなレシピもあります。そんなによいものであるのに、なぜ取り除くのでしょうか。

それは小麦粉に小麦ふすまが混じっていると、食味が低下するからです。表皮や胚芽の部分も含めて、すべて粉にした小麦粉が全粒粉ですが、小麦粉に比べて口当たりが悪く、食感がパサパサし、美味しくないといわれます。美味しい小麦粉を作るために、表皮と胚芽を取り除いており、取り除いた部分が小麦ふすまなのです。

最近、「小麦ブラン」という名前も聞きます。小麦ブランと小麦ふすまは同じものです。外皮のことを英語でBranといいます。小麦ブランというだけで、何かよいもののように聞こえます。

これ以降は「小麦ブラン」と呼んで、話を進めましょう。ちなみに米ぬかは英語でRice Branです。

小麦ブランの栄養成分

小麦ブランにはさまざまな栄養成分が豊富に含まれています。

小麦プラン、小麦粉、全粒粉、それぞれ100gに含まれる栄養成分を比較してみましょう。

日本では小麦ブラン(小麦ふすま)は主に飼料として使われており、食用にすることはほとんどありませんでした。そのため日本食品標準成分表に小麦ふすまは載っていません。そこで小麦ブランの数値は、米国農務省(USDA)のFoodData Centralに2021年6月24日時点で掲載されていた数値を転記しました。

また小麦粉と全粒粉については、日本食品標準成分表(2020年版)(八訂)に掲載されているものです。なお全粒粉は主に製パンに使われる強力粉の数値しか載っていなかったので、小麦粉も強力粉1級の数値を使っています。

なお強力粉は硬質小麦といわれる種類の小麦から作られる粉で、パン生地の発酵や麺のコシのもとになるたんぱく質であるグルテンを多く含んでいます。小麦ブランの栄養成分を紹介しているサイトは少ないので、細かくなりますが、掲載します。

 

小麦ブランのカロリー(エネルギー)は小麦粉や全粒粉の2/3程度しかありません

一方でたんぱく質は小麦粉の1.3倍、全粒粉の1.2倍、脂質は小麦粉の2.8倍、全粒粉の1.5倍含まれています。小麦ブランに特に多く含まれる成分は、食物繊維とミネラルで、食物繊維は小麦粉の16倍、全粒粉の3.8倍、ミネラルは小麦粉の14倍、全粒粉の3.6倍含まれています。

中でも、マンガン、マグネシウム、リン、カリウム、鉄、亜鉛を多く含んでおり、これらの成分を積極的に摂りたい人にとっては、便利な食品かもしれません。一方ビタミンについてはあまり含まれておらず、唯一ビタミンEが小麦粉の5倍、全粒粉の1.5倍含まれているだけです。

小麦ブランはからだによいのか

小麦ブランは小麦粉や全粒粉に比べてカロリーが低く、たんぱく質、脂質、食物繊維、ミネラルを多く含むことを説明しました。また小麦粉の○○倍、全粒粉の△△倍の成分が含まれるとも書きました。この部分だけ聞くと、小麦ブランはからだによい食品で、どんどん摂ったほうがよいと、誰もが思うでしょう。

でもちょっと待ってください。小麦ブランを食べたら、誰でも何らかの健康効果が得られ、からだによいというわけではありません。

からだの調子は人によって異なります。痩せている人、太っている人、便秘がちな人、血圧が高めの人、血中コレステロール値が高い人と、さまざまです。またふだん食べているものや、食べものの好き嫌いも違います。特定の栄養成分が不足しがちな人もあれば、そうでもない人もいます。ですから小麦ブランはすべての人にとって、からだによい食品とまではいえません。

小麦ブランがからだによいといわれるのは、カロリーの低さと栄養成分の多さです。繰り返しになりますが、整理しておきます。

  • カロリーは小麦粉や全粒粉の2/3程度
  • たんぱく質は小麦粉の1.3倍、全粒粉の1.2倍
  • 脂質は小麦粉の2.8倍、全粒粉の1.5倍
  • 食物繊維は小麦粉の16倍、全粒粉の3.8倍
  • ミネラルは小麦粉の14倍、全粒粉の3.6倍

まずカロリーは低いですが、小麦粉を全量小麦ブランで置き換えることは難しいです。小麦ブランを取ることで、カロリー摂取量を減らすというのは、あまり現実的ではありません。カロリー摂取量を減らすのであれば、食べる量を減らしてください。

つぎに小麦のたんぱく質は消化・吸収が悪いため、小麦ブランでたんぱく質を多く摂ろうとするのも、お勧めできません。脂質は小麦粉、全粒粉より多く含まれるのは事実ですが、もともと含まれている脂質の量が少ないので、脂質を摂りたいのなら、他の食品の方がよいでしょう。

このように小麦ブランのカロリー、たんぱく質、脂質については、積極的に摂る理由にはならないように思います。

一方、食物繊維とミネラルについては、小麦粉や全粒粉に比べて格段に多く含まれています。これは食物繊維とミネラルが穀物の外皮に多く分布するためです。なので食物繊維とマンガン、マグネシウム、リン、カリウム、鉄、亜鉛を多く摂るために、小麦ブランを食生活に取り入れるという選択肢はあるかもしれません。

小麦ブランの健康効果とダイエット効果

小麦ブランに血糖値を下げる、便秘を解消する、ダイエット効果がある、などという情報をよく見かけますが、果たしてそうでしょうか。

血糖値を下げるという根拠になっているのは、食物繊維の量の多さです。糖質と一緒に食物繊維を摂ると糖質の吸収が穏やかになり、食後血糖値の急激な上昇が抑えられます

しかし小麦ブランをどの程度食べるか、何と一緒に食べるかによって、食後血糖値の数値は全く異なります。小麦ブランを食べれば、必ず血糖値が下がるわけではありません。

便秘を解消するといっている理由も、同じく食物繊維です。食物繊維は便の体積を増やすため、便秘を解消する効果はありますが、無条件で便秘が治るわけではありません。便の量を増やすことで、逆に便秘をひどくする可能性もあります。

また小麦ブランに含まれる食物繊維のほとんどは不溶性食物繊維です。便通を改善するには、便の水分量を増やす水溶性食物繊維も必要です。便秘を解消するという目的で、小麦ブランを摂るというのはやめたほうがよいと思います。

小麦ブランのカロリーは小麦粉や全粒粉の2/3というのは事実ですが、小麦粉を小麦ブランで置き換えることで、ダイエットができるわけではありません。

また血糖値を下げる、便秘を解消するという効果が期待できることから、ダイエット効果があるといっているようですが、すでに説明したように血糖値を下げる、便秘を解消するという効果自体、かなり疑問です。

ダイエットの基本は、カロリーの摂取制限と適度な運動です。小麦ブランを摂るのではなく、いま食べているものを何割か減らしてください。炭水化物を摂り過ぎている人が多いので、炭水化物を減らすのがよいと思います。

小麦ブランも炭水化物です。小麦ブラン何かを置き換えたり、小麦ブランを余分に摂ってダイエット効果を期待するなど、全くのナンセンスです。

小麦ブランにもデメリットは多い

小麦ブランは人間が食用にせず、家畜のえさにしていたものです。健康ブームで注目を浴び、小麦粉を上回る高値で取引されていますが、小麦ブランを摂ることによるデメリットがあることをご存じでしょうか。

デメリットについても考慮したうえで、摂るか摂らないか、慎重に判断すべきと思います。小麦ブランを摂ることによるデメリットは以下の通りです。

美味しくない

小麦粉を作る際に小麦ブランを取り除いている最大の理由は、美味しくないことです。

小麦を丸ごと粉にした全粒粉は、小麦粉に比べると口当たりが悪く、食感がパサパサしておいしくありません。小麦粉を作る際に取り除いたのが小麦ブランなので、美味しいわけがありません。重量の半分近くが食物繊維ということは、おがくずが半分混じった粉のようなものです。

小麦ブランを使ったパンやシリアルが発売されており、それなりに需要があるようです。ただ小麦ブランだけを使っているわけではなく、他の原材料によって食味が調整されています。

例えば「オールブラン・ブランフレーク」というシリアル製品の原材料は、使用している量が多い順に、精米、全粒小麦、砂糖、小麦ブランとなっています。「オール」ブランではありませんよね。名前と製品内容が一致していないように思います。この製品には、ぶどう糖果糖液糖や糖蜜といった、糖尿病やダイエットをしている人が絶対に避けるべき成分も含まれています。

不溶性食物繊維が多い

小麦ブラン100gには食物繊維が42.8g含まれています。つまり半分近くが食物繊維で、消化されません。

小麦ブランを推奨する人がよく引用するのが、厚生労働省が作った「日本人の食事摂取基準(2020年版)」です。現在の日本人が目標とすべき食物繊維の摂取量は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっていますが、実際に摂取しているのは14g程度と足りていません。小麦ブランを摂れば、これが手軽に補えるという理屈です。

ただ小麦ブランに含まれる食物繊維の多くは、不溶性食物繊維です。食物繊維には水溶性と不溶性があり、これをバランスよく摂る必要があります。食物繊維は穀物以外に、野菜、果物、きのこ類など、さまざまな植物性の食品に含まれており、これらの食品には不溶性と水溶性がバランスよく含まれています。1種類の食品から食物繊維を摂るのではなく、さまざまな食品から摂る方がよいと考えます。

たんぱく質の一種であるグルテンの量が多い

小麦ブランには、小麦粉の1.3倍、全粒粉の1.2倍のたんぱく質が含まれていることを説明しましたが、小麦のたんぱく質の85%がグルテンという特殊なたんぱく質です。

小麦粉に水を加えてこねると粘り気が出ますが、これはグルテンが形成されたためです。グルテンはパン生地の発酵やめん類のコシを作るために欠かせないものですが、一方で消化・吸収されにくく、腸内の細胞に粘着して長く留まり、場合によってはアレルギー反応の原因となることがわかっています

グルテンが直接、間接の原因となっている病気が数多く知られており、欧米ではグルテンを含む食品を摂らないグルテンフリーという食生活が広がっています。グルテンによる影響は個人差が大きいので、全員が避ける必要はありませんが、小麦粉よりもグルテンが多い小麦ブランをわざわざ摂る必要があるのでしょうか。

残留農薬やカビ毒の心配がある

小麦を栽培する際には農薬が使われます。そしてその農薬が蓄積しやすいのが小麦ブランの部分です。また輸入小麦の場合は、ポストハーベスト農薬といって、保管中や輸送中の劣化を防ぐ目的で、収穫後にも農薬が使われています。

また小麦は保管中にカビが発生することがあり、カビが生産する毒素による食中毒もときどき起きています。カビは表皮に生えます

小麦ブランや小麦を丸ごと製粉する全粒粉を使うのであれは、国産小麦で、かつ無農薬栽培あるいは減農薬栽培したものがよいと思いますが、そうなると非常に価格が高くなります。無農薬栽培した輸入小麦は、ほとんど存在しません。

まとめ

  1. 小麦ふすまは小麦から小麦粉を作るときに出るぬかで、小麦ブランともいいます。小麦の25~30%が小麦ふすまになります。
  2. 小麦ふすまは飼料として使われており、食用にされることはありませんでしたが、食物繊維やミネラルを多く含んでいるため、注目されるようになりました。
  3. 特定の栄養成分を摂ることを目的に小麦ふすまを摂ることはお勧めできません。またダイエット効果も期待しないほうがよいでしょう。
  4. 小麦ふすまを摂ることにはデメリットもあります。メリットとデメリットをよく考えて、摂るかどうか決めることが重要です。