古代米は4種類、栄養は玄米と同じ、美容効果もダイエット効果もない

古代米には赤米、黒米(黒紫米)、緑米、香り米の4種類があり、お米の外側のぬか層に色素や香り成分が含まれています。

栄養成分はふつうの玄米とほとんど同じで、美容効果もダイエット効果もありません。

色や香りを楽しむためのお米です。赤米は弥生時代に栽培されていたお米に近い品種ですが、人の手が加わっていないわけではなく、品種改良もされています

玄米として利用されることが多いため、農薬の残留には注意が必要です。

古代米とは メリットはあるの?味はどうなの?

古代米は、私たちの祖先が栽培していた、古代のイネの品種が持っていた特徴を残したイネのことで、いまも日本の一部地域で栽培されています。

もみの皮の部分(ぬか層といいます)に色素を含んでおり、赤い色素(タンニン)があるのが「赤米」、黒紫色の色素(アントシアニン)があるのが「黒米(黒紫米)」、緑の色素(クロロフィル)があるのが「緑米」です。またポップコーンのような香りがする「香り米」というのもあり、日本国内で古代米といわれているのは、この4種類です

古代米はもみの皮の部分に色や香りが付いており、お米そのものに色や香りがあるわけではありません。そのため古代米は玄米あるいは五分つき玄米(ぬか層を半分だけ除去したもの)として食べられます。

古代米という用語は、販売上の宣伝文句として使用される用語で、品種として定義されているわけではありません。古代米は「品種改良されていない古代のお米」などといわれていますが、各地の農業試験場で育成された品種も多いため、古代のイネから品種改良されていないというのは間違いです

古代米にはたんぱく質やビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれているとよくいわれます。「豊富」という用語がきわめてインチキくさいのですが、いま私たちが食べているお米の「玄米」と比べて、有意に多いというわけではありません。この点については「栄養成分」のところで詳しく説明します。

では古代米の特徴とはいったい何でしょうか。

それは、現在食べているお米にない「色素」と「香り成分」を持っていることです。例えば、ふつうのお米に少し混ぜて炊くと、色が付いて見える、香りが付くといった程度です。

ほかにもいろいろと「有効成分」が含まれていると書いてあるようですが、古代米を少量食べたところで薬理学的効果はもちろんのこと、美容効果、ダイエット効果はありません。この点についても、後で詳しく説明します。

古代米の種類と違い

日本で売られている古代米は赤米、黒米、緑米、香り米の4つで、もみの皮の部分(ぬか層)に色や香りが付いているものです。

赤米

ぬか層にカテコールタンニンという赤色の色素を含んでいます。タンニンは赤ワインの赤色もとになっている物質です。玄米の状態またはぬかを残して精米すると、ぬかの部分から溶け出した色素によって、お米が赤色になります。

赤米は、ジャポニカ種にもインディカ種にもあり、またもち性とうるち性の両方があります。

野生稲の大部分が赤米であることから、赤米は米のルーツと考えられており、邪馬台国や大和朝廷への献上されたのも、赤米だったといわれています。

赤米には現在私たちが食べているお米より、たんぱく質やビタミン、ミネラルを多く含むと書いてある記事もありますが、後で説明するように、事実ではありません。

また赤米はいま私たちが食べているお米よりアミロースが多いという記述もありますが、赤米にもち性(アミロースを含まない)のものがあるので、これも間違いです。赤米は、天然の赤い色を付ける以外には、期待できる効果はないと考えたほうがよさそうです。

黒米(紫黒米)

ぬか層にアントシアニンという黒紫色の色素を含んでいます。アントシアニンはポリフェノールの一種でぶどうやブルーベリーにも含まれています。玄米の状態またはぬかを残して精米すると、ぬかの部分から溶け出した色素によって、お米が紫色になります。

紫黒米は、ジャポニカ種にもインディカ種にもあり、またもち性とうるち性の両方があります。

アントシアニンには抗酸化作用や眼精疲労を緩和する作用があるので、紫黒米が老化の防止や血液をサラサラにするなどと書いているサイトもありますが、紫黒米にアントシアニンがたくさん含まれているわけではないので、これらの作用を期待して紫黒米を摂るのはあまり意味がないと思います。

緑米

緑米の玄米の皮の部分には、クロロフィル(葉緑素)が含まれるため、薄い緑色をしています。クロロフィルは、緑黄色野菜に含まれる成分です。緑米は黒米、赤米に比べて生産量が少ないため、「幻のコメ」などといわれることもありますが、生産量が少ないのは単に需要がないからです。

日本で出回っている緑米は、ほとんどもち種です。

緑米に含まれるクロロフィルの作用を引き合いに出して、緑米の効果を強調しているサイト(だいたいが緑米を販売しているサイト)がありますが、緑米に含まれるクロロフィルの量はわずかです。

クロロフイルを摂りたいのであれば、緑黄色野菜を摂ればよいですし、たくさん摂りたいのであれば、青汁やクロレラのサプリメントには、クロロフィルがたくさん含まれています。このほかに、ミネラルが多いとか、血液をサラサラにするとか、いろいろ書いてありますが、その効果を目的に緑米を食べるのは、ナンセンスです。

香り米

名前の通りポップコーンやナッツのような香ばしい香りがします。その主成分は2-アセチル-1-ピロリン(アセチルピロリン)という物質であることがわかっています。香気成分は色素と同様、米粒の外側に存在するため、精米の歩合が高くなると、香りが少なくなります。

香り米は紀元前よりインド、パキスタンなどで栽培されており、高級米として知られる「ジャスミン米」も香り米の一つです。つまり香り米は、日本で栽培されるジャポニカ種だけでなく、インディカ種にも見られます。

香り米はふつうの品種と比べて収量が少ないことや、香りが「ねずみの尿臭」といわれたことなどから日本では栽培されなくなりましたが、古代米ブームにのって、生産が拡大し始めています。

香り米はふつうのお米にの3〜7%程度加えて調理することで、全体がよい香りになるそうです。また古米に香り米をブレンドすると、古米特有の匂いを感じなくすることができます。

古代米の品種

種子を販売している株式会社のうけんのホームページに、同社が販売している古代米の種子の一覧がありましたので、紹介させていただきます。これ以外にもたくさんの品種があることがわかっていますが、ここでは割愛します。

品種名
(うるち/もち)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
籾色
長短
玄米色 脱粒性 備考
【赤米】
神丹穂
(うるち)
98 23.1 赤褐 薄褐 やや難 出穂時芒が赤く、葉の緑とのコントラストが美しい。ドライフラワーに向く。
ベニロマン
(うるち)
70 19.7 黄白 赤褐 観賞用の他、赤飯、玄米粥などの着色飯米や赤酒などのに利用可。
夕やけもち
(もち)
65 20.3 淡紫 赤褐 東北地方で栽培可能。短強稈倒伏に強い。葉いもち、穂いもち病共にやや弱いので注意。
紅染めもち
(もち)
84 19.3 黄白 赤褐 やや難 紫色の芒を有し、倒伏に強く栽培しやすい。赤糯としての着色が良く、抗酸化物質を含む。
【紫黒米】
おくのむらさき
(うるち)
77 21.8 黄白 紫黒 早生の紫黒米のウルチ種で健康食としての利用、着色飯米、玄米粥他、洒造用にも適する。
朝紫
(もち)
84

 

17.4

 

黄白

 

 

紫黒

 

 

早生の紫黒米モチ種で健康食としての着色飯米、玄米粥釀、酒造用としても利用可。
さよむらさき
(もち)
77 22.7 やや短 紫黒 やや難 晩生の紫黒米もち種。「朝紫」より発色がやや優れている。玄米の粒厚がやや薄いため、品質に影響を及ぼさない範囲でふるい目を調整する
【緑米】
みどり糯
(もち)
93 23.3 黒褐 緑白 緑のもち米で、少し早刈りすると緑の玄米となる。餅としても美味。
【香り米】
ヒエリ
(うるち)
100 23.0 黄白 高知県で在来種から選抜され育成された品種。冷水に強い性質を持つ。また、芒や柱頭が赤いのが特徴。

古代米の栄養成分と美容効果、ダイエット効果

古代米にはタンパク質やビタミン、ミネラルが豊富に含まれていて、美容効果やダイエット効果がある。

ネット上にはこんな情報があふれています。また古代米は「昔からある」「人間の手が加わっていない」「色が付いている」ことから、なんとなく体によいイメージが定着しているようです。

本当にそうなのでしょうか。

まず古代米の色や香りを特徴づけているのは、ぬかの部分です。ふだんわたしたちが食べているお米は、精米してぬかを取り除いたお米です。古代米も精米してぬかを取り除くとでんぷんが主成分のお米となり、色も香りもほとんどなくなります。

古代米を「古代米として」食べるためには、ぬかの部分を残しておく必要があります。

ですから、古代米の栄養成分について説明するなら、ぬかを取り除いた精白米と比較するのではなく、ぬかが残った「玄米」と比較すべきです。

赤米、黒米、緑米と玄米の栄養成分の分析値を比較しました、いずれも100gあたりの重量で示しています。

赤米1)
紅衣玄米
黒米2) 黒米1)
おくのむらさき玄米
緑米玄米3) 玄米4)
エネルギー kcal 341 344 346 339 346
たんぱく質 g 6.2 7.4 6.3 6.4 6.8
脂質 g 2.6 3.2 2.7 3.1 2.7
炭水化物 g 73.1 73.2 74.1 72.7 74.3
糖質 g 69.5 69.9 71.3
食物繊維 g 3.7 2.8 3.0
食塩相当量 g 0 0
カルシウム mg 9.0 18.0 11.0 9.2 9.0
マグネシウム mg 135 99.9 110
mg 1.4 0.9 1.3 2.1
ビタミンB1 mg 0.45 0.46 0.44 0.38 0.41
ビタミンB2 mg 0.04 0.08 0.07 0.04

1) 富山県食品研究所、とやまの特産物機能性成分データ集(2005)
https://taffrc.pref.toyama.jp/nsgc/shokuhin/webfile/t1_c4bc7527329f5e52ef6f46abf1c0e38e.pdf
2) 株式会社はくばくホームページ
https://www.hakubaku.co.jp/products/grains/234/
3) 工房あか穂の実りホームページ
http://www.akaho-minori.com/about.html
4) 日本食品標準成分表(2020年版)(八訂)

上の表を見るとわかるように、たんぱく質、食物繊維、ミネラル、ビタミンとも、玄米と大きな差はありません

2列目の黒米には玄米の倍のカルシウムが含まれているのは事実ですが、カルシウムを多く含む食品はほかにいくらでもあります。特定の栄養成分を摂ることを目的に古代米を食べることは、意味がありません。そうなると、古代米の美容効果やダイエット効果についても、かなり怪しくなります。

あるサイトに、古代米の美容効果やダイエット効果があると書かれていましたので、その内容を検証してみましょう。

黒米に含まれるアントシアニンには抗酸化作用があり、活性酸素を除去する作用があるため、体の老化を防ぐ。またヒアルロン酸やコラーゲンなどを壊す酵素の働きを抑制させる効果もあるため、美肌効果があります。さらに血管を保護する働きがあるので動脈硬化予防にもなります。

この文章は大きく間違っていません。黒米にアントシアニンが含まれるのは事実です。たたアントシアニンを摂りたいのであれば、黒米を食べるより、もっと効率のよい方法がいくらでもあります。もっとも手っ取り早いのが、ブルーベリーのサプリメントです。黒米を買ってお米に混ぜて食べるより、はるかに安い値段で、多くのアントシアニンを摂ることができます。

なお、アントシアニンについては、その薬理作用が解明されていないため、日本ではアントシアニンを薬効成分とした医薬品は認可されていません。つまり国としては、上に書いたような効果があることを、否定も肯定もしていないということです。

赤米に含まれるタンニンは、血圧を下げる、抗アレルギー、抗炎症、メラニン色素の抑制などの効果がある。また、脂肪の燃焼を促進させる効果があり、ダイエットの強い味方です。

タンニンの効果として、このようなことは一般的にいわれていません。タンニンがダイエットになるというのも初耳です。タンニンは、赤ワインや番茶に多く含まれます。タンニンのこのようなウソ効果を期待して、赤米を購入するなど、全く無意味です。

緑米に含まれるクロロフィルは、コレステロールを下げる働きがあります。他にも、精神安定や整腸作用があるので、心身ともに健康になれるお米といえます。

このような話も聞いたことがありません、というより、完全にウソです。そもそも緑米に含まれるクロロフィルなど、微量です。もしクロロフィルを摂りたいのなら、青汁やクロレラの錠剤の方がたくさん含まれます。

これらは古代米を販売しているサイトに書かれている「美容効果」と「ダイエット効果」です。ほとんどウソだといってよいでしよう。美容効果やダイエット効果を期待して古代米を食べるのは、止めるべきです

古代米の作り方 野生種に近く栽培が難しい

現在のイネは、栽培しやすく、お米がたくさん採れるように繰り返し品種改良されてきましたが、古代米は需要が少ないため品種改良があまりされておらず、栽培しにくく、収量が少ないといわれています。具体的な特徴は次の通りです。

草丈が長いため倒れやすく、間隔を空ける必要がある

現在のイネに比べて草丈が長いため倒れやすいという性質があります。お米をたくさん収穫するために肥料をたくさん与えると、草丈が伸びてしまい、収穫しにくくるため、肥料をたくさん与えることができません。草丈が長いため、間隔を空けて植えなければならず、単位面積当たりの収穫量が少なくなります。

モミがひとりでにこぼれ落ちる性質がある

現在のイネは収穫した後に「脱穀」することで、モミを回収していますが、古代米はモミがひとりでにこぼれ落ちる性質(脱粒性)があります。なおこの性質は収量に直結するため、品種改良により改善されています。

農薬を使いづらい

玄米の状態で利用されるため、低農薬で栽培する必要があります。農薬はお米の外側の部分に残留する確率が高いからです。古代米に、無農薬、減農薬、有機栽培をうたっている商品が多いのはこのためです、一方で「普通栽培」と書いているものもあります。玄米として利用するにも関わらず、精米するお米と同じだけの農薬を使っているというのは、どうなんでしょうか。

一方で、古代米は野生種に近いため、荒れ地で無肥料、無農薬で栽培することができ、干ばつ、冷害などにも強いという特徴もあります。

古代米の炊き方

古代米は玄米の状態のものを、ふつうのお米に10%(香り米の場合は3~7%)加えて、一緒に炊いて食べることが多いようです。赤米と黒米は、ぬかの部分から色素が出て、お米全体が着色します。緑米の場合は色素が出ることはないので、薄緑色の粒が混ざったごはんになります。香り米はお米全体に香ばしい香りが移ります。

古代米を使ったいろいろなレシピがあり、古代米を使った料理やお菓子を販売しているところも増えきました。古代米を自分で購入して食べる前に、一度、販売されている料理やお菓子を食べてみることをお勧めします。ごはんに入れて炊く場合、例えば100g入りのものを買っても、ごはん7号分になります。購入したらできるだけ早く使い切ったほうがよいので、まずは試食してみるのがよいと思います。

まとめ

  1. 古代米は、古代のイネの品種が持っていた特徴を残したイネのことで、日本で栽培されているのは、赤い色素であるタンニンを持つ赤米、黒紫色の色素であるアントシアニンを持つ黒米(黒紫米)、緑の色素、クロロフィルを持つ緑米、ポップコーンのような香りがする香気成分がある香り米の4種類です。
  2. 色素や香気成分はぬかの部分にあるため、古代米はぬかの部分を残した玄米または五分つき玄米(ぬか層を半分だけ除去したもの)として使われます。そのため農薬の残留には注意が必要です。
  3. 古代米の栄養成分はふつうの玄米と変わりません。たんぱく質、食物繊維、ビタミン、ミネラルが多いというのは、精白米との比較です。また美容効果もダイエット効果があるという記事もありますが、ほとんど根拠がありません。色や香りを楽しむという目的以外で食べるメリットはありません。