雑穀はからだにいいって本当? 栄養成分量、食べ方、コスパを徹底比較

雑穀にどのようなイメージをお持ちですか。

食物繊維が多く、ビタミンやミネラルが豊富で、ごはんに混ぜて炊くとからだにいい

確かにそうかもしれませんが、よく調べてみると、値段の高い雑穀を食べるメリットはほとんどありません。白米よりも○倍という表現は間違いではないのですが、玄米とほとんど同じという場合もあるのです。文部科学省が公表している「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」のデータに基づいて、検証したいと思います。

あわの値段、食べ方、栄養成分量、食べ方、食べるメリットは

「あわ」は江戸時代まで庶民の食料として「ひえ」とともに広く栽培されていましたが、現在、日本国内では生産量が激減しています。
食用としては、お米に混ぜて炊飯するか、粟おこしの原料として使われる程度で、ほとんどが家畜やニワトリのエサにとして使われています。

お米に、うるち米ともち米があるように、あわにもうるち種とあわ種があります。ふつうに「あわ」と表示しているものはうるちあわで、もち種は「もちあわ」と書いてあります。

あわの値段をウェブ情報から調べてみました。

うるちあわ 国産 (不明)
中国産 870円/kg
もちあわ 国産 2,900円/kg
中国産 920円/kg

魚沼産こしひかりの値段が1,000円/kgであることを考えると、異常な高さといわざるを得ません。家畜やニワトリのエサに使われているとは思えない値段です。

「あわ」だけを炊飯して食べることもできますが、美味しくないので、通常、お米に1~2割加えて一緒に炊いて食べます。

あわ100%、精白米:あわ=80:20、精白米100%のエネルギー、食物繊維、ミネラルを比較しました。分量はごはん1膳(重さ150g)あたりで比較しています。ごはん1膳は精白米65gに相当します。

エネルギー(kcal) 食物繊維(g) マグネシウム(mg) 鉄(mg) カリウム(mg)
あわ 225 2.1 71.5 3.1 195
精白米:あわ(80:20) 223 0.7 26.3 1.0 85.3
精白米 222 0.33 15.0 0.5 57.9
玄米(参考) 225 2.0 71.5 1.4 150

白米をすべてあわに置き換えると、食物繊維は6.3倍、マグネシウムは4.8倍、鉄は6.2倍、カリウムは3.4倍多く含んでいますが、エネルギーは変わりません。

一般的な食べ方である2割程度加える場合は、食物繊維が2.1倍、マグネシウムが1.8倍、鉄が2倍、カリウムが1.5倍にしかなりません。ちなみにあわ100%のときと玄米100%のときで、各成分値に大きな違いはありません。魚沼産コシヒカリと同じ代金を払って、中国内モンゴル自治区産のもちあわを買う意味がどこにあるのか、わたしにはわかりません。

ある健康食品メーカーのウェブサイトに掲載さけていた「あわ」の紹介文です。

あわは、非常に栄養価が高く、精白米と比較すると食物繊維は約7倍、マグネシウムは約5倍、鉄は約6倍、カリウムは約3倍もの量が含まれているため、精白米にひえやきびなどと混ぜて炊くと栄養価が上がるうえ、低カロリーであることからダイエット食品としても親しまれています。

読んだ人に誤解を与えかねない文章です。

まず栄養価が高いというのは、何を根拠に、何に比べて高いと言っているのでしょうか。

精白米との比較については先ほど説明した通りなので、ウソではありませんが、きびやひえで白米を全量置き換えるのではなく、精白米にきびやひえを混ぜて炊いたところで、それほど栄養価は変わりません。しかもカロリー量はほとんど同じなので、あわがダイエット食品というのは明らかに誤りです。

あわが現在の値段であれば、あえて食べるメリットはありません。日本であわの栽培が廃れたのは、白米に比べて美味しくないからです。その美味しくない穀物を、中国から輸入して、魚沼産コシヒカリと同じ値段で買うメリットはありません。食料自給率の点からも、まったくばかげた行為です。あわを販売する業者は、それこそ「濡れ手に粟」でしょうが…。

きびの値段、食べ方、栄養成分量、食べ方、食べるメリットは

「きび」は実をそのまま炊いて粥にしたり、お米と一緒に炊飯したり、粉にして餅や団子にされますが、ほとんど見かけません。雑穀ブームで五穀の一つとして注目されていますが、どんなメリットがあるのでしょうか。

きびの値段をネットで調べてみました、きびにも「うるち種」と「もち種」がありますが、販売されているのはすべて「もちきび」でした。

もちきび 国産 2,300円/kg
ベトナム産 1,461円/kg
中国産 953円/kg

こちらも異常な高さです。

きびを主食にする場合は、白米に1~2割の割合で混ぜて炊いて食べます。

きび100%、精白米:きび=80:20、精白米100%のエネルギー、食物繊維、ミネラルを比較しました。分量はごはん1膳(重さ150g)あたりで比較しています。ごはん1膳は精白米65gに相当します。

エネルギー(kcal) 食物繊維(g) カルシウム(mg) マグネシウム(mg) 鉄(mg) 亜鉛(mg) カリウム(mg)
きび 229 1.0 5.9 54.6 1.4 1.7 130
精白米:きび(80:20) 224 0.5 3.8 22.9 0.7 1.1 72.3
精白米 222 0.33 3.3 15.0 0.5 0.9 57.9
玄米(参考) 225 2.0 5.9 71.5 1.4 1.2 150

白米に比べ、食物繊維、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など多くが含まれているといわれており、確かにその通りなのですが、白米に2割混ぜて食べたときは、それほど多くの量が含まれているわけではありません。玄米と比べると、食物繊維、マグネシウムは玄米の方か多く、カルシウムと鉄は同じという結果でした。

もちきびの紹介をしているネット上の記事に、次のような文章を見つけました。

穀物の中で一番低カロリーと言われ、良質なミネラル・たんぱく質を含み、特に鉄分・亜鉛・マグネシウムが多く含まれます。

どこが低カロリーなのでしょうか。

また、たんぱく質が精白米の2倍含まれていますが、良質なたんぱく質とは何のことでしょうか。

ふつう、良質なたんぱく質というのはアミノ酸スコアが高いことを指しますが、きびのたんぱく質のアミノ酸スコアが高いというデータは、見つかりませんでした鉄、亜鉛、マグネシウムが多いといっても、玄米と同じ程度かそれ以下であることは、すでに説明した通りです。ネット上の情報はウソや間違いがたくさんありますね。

最後に高い値段のきびを買って食べるメリットがあるかどうかですが、わたしは全くないと思います。上の表を見ていただければわかるように、玄米で十分ではないかと思います。

ひえの値段、食べ方、栄養成分量、食べ方、食べるメリットは

「ひえ」はイネの栽培に適さない地域で、粒のまま炊飯する、お粥にする、お餅にするなど、さまざまな方法で主食として食べられてきましたが、昭和に入ってお米が増産されると、栽培されなくなりました。現在の用途は、もっぱら小鳥のエサなど飼料用です。

ただ、ネットショップでは、お米に混ぜて炊くためのひえを購入できます。

あわ、きびは外国産が多いのですが、ひえはほとんど国産で、もともとひえを栽培していた北海道や東北地方で生産されているようです。

値段はさまざまで、1kgあたり2,000円~4,000円です。これも異常な高さといわざるを得ません。繰り返しになりますが、魚沼産コシヒカリの値段は、1kgあたり1,000円です。小鳥のエサがなぜこんな高値で取引されているのか、意味がわかりません。

エネルギー(kcal) 食物繊維(g) カルシウム(mg) マグネシウム(mg) 鉄(mg) 亜鉛(mg) カリウム(mg)
ひえ 235 2.8 4.6 37.7 1.0 1.4 156
精白米:ひえ(80:20) 225 0.8 3.5 19.5 0.6 1.0 77.5
精白米 222 0.33 3.3 15.0 0.5 0.9 57.9
玄米 225 2.0 5.9 71.5 1.4 1.2 150
あわ 225 2.1 9.1 71.5 3.1 1.6 195
きび 229 1.0 5.9 54.6 1.4 1.8 130

ある健康食品メーカーのサイトで、ひえについて次のように紹介しています。

ほかの雑穀や穀類と比較すると亜鉛と食物繊維の量が多いことが特徴的です。鉄やカリウムも多いため、ミネラルの補給に最適です。栄養価は高いですが、粘り気がなく、ぱらぱらとした食感ですが、食べ続けるとぼそぼそしています。近年は食物アレルギー対策の雑穀として人気があり、栄養価も高く、ミネラルや食物繊維が豊富な点に関心が集まっています。

この文章もウソだらけです。

  • 他の雑穀と比較して亜鉛が多い → × あわ、きびの方が多い
  • 他の雑穀と比較して食物繊維が多い → ○
  • 鉄やカリウムも多い → × あわの方が多い
  • 食物アレルギー対策の雑穀として人気 → × お米はほとんどアレルギーがない

ひえが優れた穀物であるといいたいのでしょうが、ウソはいけませんね。

もう、結論はお分かりだと思いますが、コシヒカリの倍の値段のひえを買って、お米に入れて食べるなんて、ナンセンスです。もしミネラルを摂りたいのであれば、他の食品から摂ればよいですし、摂取量を管理したいのであれば、サプリメントの方がおすすめです。

ソルガムの値段、食べ方、栄養成分量、食べ方、食べるメリットは

ソルガムにはいろいろな別名があります。モロコシ、タカキビ(高黍)、コーリャン(高粱)、すべて同じ穀物です。

日本では山間地でお米に混ぜて主食にしていましたが、お米が増産されるようになると、廃れてしまいました。飼料用として一部で栽培されているほか、長野県では主食用に栽培されています。

世界的に見ると、ソルガムは小麦、イネ、トウモロコシ、大麦に次いで世界で5番目に多く栽培される穀物です。最も生産量の多いアメリカではほぼ全量が飼料用または製糖用に使われています。一方、アフリカ諸国、インドなどでは、主食用に栽培されています。

ソルガムを販売している会社が、ソルガムをお米と一緒に炊いて食べる方法を紹介していました。それによると、お米1合(180ml)に対しソルガム大さじ1(15ml)加えるそうです。お米とソルガムの比重が同じだとすると、お米150gにソルガムを12.5g加えるということになります。この比率で炊飯したときの栄養成分量を、ごはん1膳あたりで比較してみましょう。

エネルギー(kcal) 食物繊維(g) カルシウム(mg) マグネシウム(mg) 鉄(mg) 亜鉛(mg) カリウム(mg)
ソルガム 226 2.9 9.1 71.5 1.6 0.8 267
精白米:ソルガム(12:1) 223 0.52 3.7 19.3 0.6 0.9 73.9
精白米 222 0.33 3.3 15.0 0.5 0.9 57.9

確かに白米よりは、食物繊維やミネラルの量が多いですが、例えば、上記の割合でソルガムを混ぜたご飯をお茶碗1杯たべたのと、ふつうのご飯を少し多めに食べたのとで、含まれる鉄分の量は同じです。鉄分を多く摂るために、ソルガムをご飯に混ぜるというのは、あまり意味がないように思います。

ところでソルガムはいくらで売られているのでしょうか。ネットで「ホワイトソルガム」の値段を調べてみました。

国産(長野県産) 2,000円/kg
外国産 850~1,200円/kg

新米の銘柄米が5kgで1,700~2,000円程度ですから、この値段は異常です。もう一度言いますが、アメリカでは家畜のえさとして使われているものです。

次のようなネットの記事を見つけました。

ソルガムきびは白米の4倍も食物繊維を含み、またカルシウム・鉄分なども豊富に含んでいます。栄養価は玄米に匹敵するほどで、食物繊維の働きにより腸内環境も整えられたり、食べすぎを防いでダイエット効果が期待できたりもします。

また、ソルガムきびはグルテンフリーの穀物です。そのため小麦アレルギーの方でも安心して食べることができます。とにかく栄養満点なので、ソルガムきびでクッキーを作って園児に食べさせている保育園もあるそうです。

内容は間違っていません。すべて正しいです。

ただどれだけ摂取したら、何と比べてどう違うのか、一切書かれていません。先ほど説明したように、お米に少量加えたところで、たいした効果はないというのが、筆者の見解です。

またグルテンフリーにするのであれば、米、トウモロコシ、ジャガイモなど、代替食材はいくらでもあります。ソルガムが安いのであればまだしも、同じ国産でお米の5倍もするソルガムを、わざわざ選ぶ理由はどこにもありません。

アマランサスの値段、食べ方、栄養成分量、食べ方、食べるメリットは

アマランサスはヒユ科の植物で、中南米ではその種子を主食にしてきました。近年、健康食品として注目され、種子を煮たものを料理にトッピングするなどして、日本でも使われるようになりました。

アマランサスの種子は独特のえぐみと苦みがありますが、水洗いした後、水に30分ほどつけてから、電子レンジで5分ほど加熱すると、食べられる状態になります。サラダに混ぜたり、料理にトッピングしたり、いろいろな方法で食べることができます。

アマランスは雑穀中でも栄養価が飛びぬけて高いといわれています。実際そうなのか、確認してみましょう。下の表の数値は、文部科学省が公表している日本食品標準成分表2020年版(八訂)に掲載されている数値で、可食部100gあたりの重量です。

アマランサス 精白米 玄米 あわ きび ひえ
ビタミン ビタミンE1)   mg 4.5 0.1 1.4 2.8 0.8 1.3
ビタミンB1   mg 0.03 0.08 0.41 0.56 0.34 0.25
ビタミンB2   mg 0.14 0.02 0.04 0.07 0.09 0.02
ナイアシン    mg 1.0 1.2 6.3 2.9 3.7 0.4
ビタミンB6   mg 0.58 0.12 0.45 0.18 0.2 0.17
ビタミンB12  µg 0 0 0 0 0 0
葉酸     µg 130 12 27 29 13 14
パントテン酸  mg 1.69 0.66 1.37 1.83 0.9 1.5
ビオチン      µg 16 1.4 6.0 14 7.9 3.6
ミネラル カリウム   mg 600 89 230 300 200 240
カルシウム    mg 160 5 9 14 9 7
マグネシウム  mg 270 23 110 110 84 58
鉄      mg 9.4 0.8 2.1 4.8 2.1 1.6
亜鉛     mg 5.8 1.4 1.8 2.5 2.7 2.2
必須

アミノ酸

イソロイシン mg 550 250 280 480 470 460
トレオニン  mg 520 230 270 470 380 340
トリプトファンmg 170 85 100 210 150 110
バリン    mg 640 360 420 600 570 550
ヒスチジン  mg 360 170 190 270 260 210
フェニルアラニンmg 510 330 360 630 640 670
メチオニン  mg 210 150 160 380 360 240
リジン    mg 700 220 270 220 160 130
ロイシン   mg 820 500 560 1500 1400 820
栄養成分 エネルギー  kcal 343 342 346 346 353 361
たんぱく質  g 12.7 6.1 6.8 11.2 11.3 9.4
脂質     g 6.0 0.9 2.7 4.4 3.3 3.3
炭水化物   g 64.9 77.6 74.3 69.7 70.9 73.2
食物繊維 g 7.4 0.5 3.0 3.3 1.6 4.3

1) α, β, γ, δ-トコフェロールの合計

白米、玄米、あわ、きび、ひえと比べると、ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸が多く含まれていますが、ビタミンB1やナイアシンにように、精白米より含まれている量が少ないものもあります。

アマランスについて紹介された記事に、○○が白米の△△倍、という表現をよく見かけます。アマランサスを主食にするのであれば別ですが、料理に少し混ぜる程度であれば、そのような比較は無意味ですは、そもそもその成分がほとんど含まれていない白米と比較することが、ナンセンスです。

例えば、アマランサスをお米と一緒に炊飯する場合、お米1合に対してアマランサスを大さじ1~3杯加えるそうですが、精白米とアマランサスの比重が同じだとすると、お米65gに、アマランサスを16.2g(大さじ3杯=45ml)加えることになります。こうして作ったアマランサスご飯の成分で、もとの白米より3倍以上になったのは、ビタミンE(9.8倍)、カルシウム(7.2倍)、食物繊維(3.8倍)、鉄、マグネシウム、ビオチン(いずれも3.1倍)、葉酸(3倍)のみです。

ちなみに妊婦さんは、葉酸、鉄、ビタミンDが不足しがちで、葉酸は1日480µg、鉄は1日16mgの摂取が推奨されています。アマランスご飯1膳には、葉酸が23µg、鉄が1.6mg含まれますが、必要量には程遠い量です。

アマランサスはネット通販で売られています。

国内産 18,800円/kg
外国産 1,300~2,600円/kg

流通量が少ないこともあり、非常に高価です。

アマランサスが他の穀物に比べて栄養価が高いことは事実ですが、料理に少し混ぜる程度では、大した効果は期待できません。例えばビタミンEを摂るのであれはナッツ類、葉酸を摂るのならアボカドやサプリメントの方が、費用対効果の点で優れています。

まとめ

  1. 雑穀がからだによいという根拠はありません。雑穀を売りたい人による印象操作にすぎません。
  2. 雑穀に含まれる特定の栄養成分が精白米より多いというのは事実ですが、すべての成分が精白米より多いわけではないので、雑穀の栄養価が高いというのは、明らかに行き過ぎた表現です。
  3. 雑穀は精白米と一緒に炊いて食べることが多いですが、混ぜる量が少ないため、お米のごはんと栄養価はほとんど変わらず、雑穀を食べるメリットはありません。
  4. 雑穀はもともとお米の生産ができない地域、お米が手に入らない人々が食料にしてきたもので、お米の生産量が増えるとともに、生産されなくなりました。飼料用に細々と栽培されてきたものが、雑穀ブームでにわかに注目され、白米を上回る値段で取引されています。この価格は異常といわざるを得ません。
  5. 雑穀に含まれる栄養成分を摂る目的で、値段の高い雑穀を食べることは、費用対効果の点で全く無意味です。