こめ、トウモロコシ、じゃがいもでも食物アレルギーは起きる

食品に食物アレルギーを起こす可能性がある原材料が含まれている場合、パッケージに表示するようになりました。

特定原材料7品目とそれに準ずるもの21品目です。

ではそれ以外の原材料はアレルギーを起こさないのでしょうか。小麦アレルギーが怖いので、小麦粉を米粉やコーンスターチ、片栗粉で置き換えようという人もいるかもしれません。

しかし、お米、トウモロコシ、じゃがいもが原因となる食物アレルギーもまれにあるのです。

コメアレルギーの症状とは 日本人だけ?

お米を食べたり、お米を炊いたときの湯気を吸ったりすると、30分以内に、くしゃみ、鼻水、かゆみ、喘息、腹痛、湿疹、接触性蕁麻疹、皮膚炎、血管浮腫を起こす即時型アレルギーです。症状が重い場合は、呼吸困難およびアナフィラキシーも発生します。

アレルゲン

コメに含まれるたんぱく質がアレルゲンです。現時点で、少なくとも次の4つが特定されています。

・脂質転移タンパク質
・プロフィリン
・β-グリオキサラーゼI
・α-アミラーゼ/トリプシン阻害剤

お米に含まれるたんぱく質で、湯気でアレルギー反応を起こすことから、水溶性で耐熱性の高いたんぱく質が関わっているのではないかといわれています。またお米の遺伝子操作により、これらのたんぱく質の量を減らした低アレルゲン米を作る研究も進められています1)

交差反応性

小麦、トウモロコシ、ヒエとの間の交差アレルギー性が実証されています。

有病率

コメアレルギーは、他の食物アレルギーと比べると有病率は少ないといわれていますが、コメに対する特異的lgE抗体を持つ人の割合が、アトピー性皮膚炎の被験者で10%というデータ1)や、乳児アトピー性皮膚炎児のうち5.8%であったというデータ(1997年)もあり2)、近年増加しているようです。

米を食べない欧米では、ほとんど発生していませんが、今後。欧米でのコメ消費の増加に伴い、有病率が高まる可能性があるといわれています。

トウモロコシアレルギーの症状とは じんましんが多い

トウモロコシアレルギーでは、何種類かの症状が現れます。まずトウモロコシを食べた後30分以内に、口の中がイガイガしたり腫れたりする、唇がヒリヒリして腫れるといった症状が現れます。また喉がイガイガしたり、ヒリヒリする、あるいは何かが詰まったような感じがすることもあります。これは典型的な口腔アレルギー症候群(OAS)の症状です。

続いて皮膚に突然ぶつぶつができることがあります。これはじんましんです。またまぶたが赤く腫れることもあります。トウモロコシアレルギーで一番多い症状が、じんましんといわれています。

さらにアレルギー反応のために気道粘膜がむくんで気道が狭くなり、咳き込みや喘息症状が現れることがあります。トウモロコシでアレルギー反応を起こす人の20〜30%が、咳や喘息の症状を発症します。この症状とあわせて、体全体の皮膚が赤くなることもあります。

さらにトウモロコシによる食物依存性運動誘発アナフィラキシーも報告されています。これは小麦が原因で起こることがわかっていますが、トウモロコシでも起きます。

アレルゲン

以下のたんぱく質がトウモロコシアレルギーのアレルゲンではないかといわれています3)

・脂質輸送タンパク質

熱に強いたんぱく質で、このたんぱく質がアレルゲンとなる場合は、ぜん息やからだ全体の発赤、アナフィラキシーショックなどが起きると考えられます。

・チオレドキシン
・グルテニン
・プロフィリン(パナレルゲンプロフィリン)

熱に弱いため、生の粉塵やトウモロコシ粉を吸入しない限り、問題になりません。

プロフィリンはイネ科やキク科の植物による花粉症でアレルゲンとなるたんぱく質です。イネ科やキク科の植物による花粉症にかかっている人が、トウモロコシに対してアレルギー反応を示す可能性があります

交差反応性

脂質転移タンパク質を含む以下の食品との間で、交差反応性があることがわかっています。

  • もも、リンゴ、アプリコット(バラ科)
  • クルミ(クルミ科)
  • ヘーゼルナッツ(カバノキ科)
  • ピーナッツ、サヤインゲン(マメ科)
  • トウモロコシ、米(イネ科)
  • ヒマワリの種(キク科)

じゃがいもアレルギーの症状とは 手がかゆい?

生のじゃがいもとの接触によって起きるアレルギーで、食べた後30分以内に、唇、舌、口の中や喉にかゆみやしびれ、むくみが現れるという、典型的な口腔アレルギー症候群(OAS)の症状を示します。また調理の際に素手で触ることで、皮膚がかゆくなる、ヒリヒリするといった皮膚症状を示すほか、洗い汁を吸い込むことで、鼻腔粘膜がヒリヒリしたり、ぜん息を起こすこともあります。さらにひどい場合は、アナフィラキシーショックを起こすこともあります。

アレルゲン

以下のたんぱく質がじゃがいもアレルギーのアレルゲンではないかといわれています3)

・貯蔵タンパク質
・カテプシンD阻害剤
・システインプロテアーゼ阻害剤
・アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤
・プロフィリン

一般的には生のじゃがいもで発症しますが、乳幼児では加熱調理したじゃがいもで起きることもあります。なお馬鈴薯でんぷんには、アレルギー誘発性はありません。

交差反応性

○プロフィリンが原因となる交差反応性

  • りんご、ナシ(バラ科)
  • セロリ、ニンジン(セリ科)
  • シラカンバ、ヘーゼルナッツ(カバノキ科)

○ラテックスと交差反応性がある。

○カモガヤ、オオアワガエリなどイネ科植物の花粉症の人が、じゃがいもでもアレルギー反応を示すことが多く、その場合は口腔アレルギー症候群(OAS)の症状を示します。

さつまいもアレルギーの症状とは 下痢になる?

さつまいもを食べてから30分以内に、顔の腫れ、舌のしびれ、皮膚の発疹、かゆみ、腹痛、吐き気などの症状が起きます。重度の場合はぜん息になる場合もあります。

アレルゲン

さつまいものアレルゲンはまだわかっていません3)

そばアレルギーの症状とは 大人も子どもも治りにくい

そばに含まれるたんぱく質が原因で起こるアレルギーです。卵、乳、小麦に比べると症例数は多くありませんが、アナフィラキシーショックを起こすなど重症化しやすいため、そばは特定原材料に指定されています。

そばアレルギーこどもから大人まで、広い年齢層で見られます。またいったんアレルギーになると、治りにくく(=耐性を獲得できない)、生涯にわたって除去が必要であることも特徴です。
そばを食べることはもちろん、空気中に飛散したそば粉、そばの茹で汁、そばを茹でた湯気でもアレルギーが起きます。そばアレルギーの人の中には、そば屋の前を通るとき、息を止めるという人もするくらいです4)

症状としては、くしゃみ、喘息、嘔吐、下痢、じんましんなどがあり、アナフィラキシーショックを起こすこともあります。そばはめん以外にも、次のような食品、雑貨に使われている場合があります。ただそばを食べなかったとしても、栄養面で問題になることは全くありません。

冷麺、五穀米、雑穀米、ガレット、クレープ、まんじゅう、かりんとう、そば茶、そば焼酎、コショウの増量剤、そば殻の枕

アレルゲン

そばアレルギーの原因となるたんぱく質が、すでにいくつか特定されています。

・アルブミン
・グロブリン様レグミン
・ビシリン様タンパク質
・トリプシン阻害剤

そばを茹でた湯気でもアレルギーが起きることから、アレルゲンのたんぱく質には水溶性で耐熱性のものがあると考えられています。

またそばは非常に強力なアレルゲンであり、食物アレルギーと吸入アレルギーの両方を引き起こします

交差反応性

そばと天然ゴムラテックスの交差反応性が報告されています。

まとめ

  1. こめ、トウモロコシ、じゃがいも、さつまいもが原因の食物アレルギーは少ない。コメアレルギーは今後増加する可能性があるといわれている。
  2. こめ、トウモロコシのアレルゲンは熱に強いが、じゃがいものアレルゲンは熱に弱いため、加熱して食べれば問題ない。また片栗粉(じゃがいもでん粉)にはアレルゲンは含まれない。
  3. とうもろこしやじゃがいもは、他の食品や花粉症の原因となる植物との交差反応性があるといわれている。花粉症の人が、とうもろこしやじゃがいもの食物アレルギーになる可能性がある。
  4. さつまいもは食物アレルギーを起こすが、アレルゲンはまだわかっていない。
  5. そばが原因の食物アレルギーは多くはないが、症状が重いため、特定原材料に指定されている。

参考文献
1) Ogo Y. et.al., Generation of transgenic rice with reduced content of major and novel high molecular weight allergens, Rice 7,19 (2014)
2) 厚生労働省公開資料(2009)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf
3) London Allergy and Immunology Center ウェブサイト

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4) 全国麺類生活衛生同業組合連合会、食物アレルギーの基礎知識 ―麺類飲食業者のために―(2015)