玄米から白米を作ったときに出る米ぬかは、たんぱく質、脂質、食物繊維が豊富ですが、食用としては利用されてきませんでした。
ところが近年米ぬかに含まれる成分が健康増進や美容、ダイエットに効果があるといわれ、注目されています。
米ぬかに含まれる成分に優れた作用があるのは事実ですが、米ぬかを食べることでその作用が得られるとは限りません。
米ぬかとは玄米を精米したときに出るカスで食用の使い道はなかった
収穫したお米を脱穀したものが玄米です。
これを精米したのが、ふだんわたしたちが食べている「白米」ですが、玄米から白米を作ったときに出るのが「米ぬか(米糠)」です。
米ぬかは「こめ油」の原料や糠漬けの「ぬか床」として使われる以外は、ほとんどが家畜のえさや肥料になっています。
こめ油は米ぬかに含まれる脂質を搾ったもので、それ以外の部分は捨てられています。糠漬けのぬか床も、野菜を漬けるために使われるもので、ぬか床を食べるわけではありません。
このように、米ぬかそのものは、食用として使われることはほとんどありません。
お米にはでんぷん(炭水化物)のほかに、たんぱく質、脂質やミネラル、ビタミンが含まれていますが、白米として食べている部分はほとんどがでんぷんで、それ以外の成分は米ぬかとして捨てられています。
近年、この捨てられていた米ぬかにさまざまな栄養成分が含まれていることに注目が集まり、米ぬかをもっと活用しようという動きが出てきました。
玄米10kgを精米すると、白米が9kgと米ぬかが1kgできます。
玄米を購入して、家庭用の精米機やコイン精米機で精米する人は、米ぬかはタダで手に入りますが、白米をスーパーなどで購入する人が米ぬかを手に入れるためには、どこかで買わなければなりません。
米ぬかはどこで売っているのでしょうか。
食品スーパーで売っているのを見かけたことはありません。今では数が少なくなりましたが、街のお米屋さんでは、米ぬかを販売しているところがあります。10kgで1,000円程度と、白米の1/3~1/4ほどの値段で売られています。
精米したお米(白米)は、精米後、できるだけ早く食べたほうがよいといわれており、常温保存の場合は1か月以内に食べきったほうがよいそうです。
白米はほとんどがでんぷんなので、劣化しにくいのですが、たんぱく質や脂質を多く含む米ぬかは、空気に触れるとすぐに劣化します。常温保存の場合は2~3日ほどしか持ちません。冷蔵庫でも1~2か月が限度です。
米ぬかの保存性の悪さは、利用するにあたって、かなりのネックです。
米ぬかに含まれる栄養成分はなに
米ぬかが注目されているのは、体によいといわれるさまざまな成分が含まれているからです。
その量を玄米、白米と比べてみましょう。日本食品標準成分表(2020年版)(八訂)に掲載されている分析値は次の通りです。いずれも可食部100gあたりの重量です。
玄米 | 白米 | 米ぬか | |||
---|---|---|---|---|---|
エネルギー | kcal | 346 | 342 | 374 | |
水分 | g | 14.9 | 14.9 | 10.3 | |
たんぱく質 | g | 6.8 | 6.1 | 13.4 | |
脂質 | g | 2.7 | 0.9 | 19.6 | |
炭水化物 | g | 74.3 | 77.6 | 48.8 | |
食物繊維 | 水溶性食物繊維 | g | 0.7 | 0 | 2.2 |
不溶性食物繊維 | g | 2.3 | 0.5 | 18.3 | |
計 | g | 3.0 | 0.5 | 20.5 | |
ビタミン | ビタミンE 1) | mg | 1.4 | 0.1 | 11.8 |
ビタミンB1 | mg | 0.41 | 0.08 | 3.12 | |
ビタミンB2 | mg | 0.04 | 0.02 | 0.21 | |
ナイアシン | mg | 6.3 | 1.2 | 35 | |
ビタミンB6 | mg | 0.45 | 0.12 | 3.27 | |
葉酸 | µg | 27 | 12 | 180 | |
パントテン酸 | mg | 1.37 | 0.66 | 4.43 | |
ビオチン | µg | 6 | 1.4 | 38 | |
ミネラル | カリウム | mg | 230 | 89 | 1500 |
カルシウム | mg | 9 | 5 | 35 | |
マグネシウム | mg | 110 | 23 | 850 | |
リン | mg | 290 | 95 | 2000 | |
鉄 | mg | 2.1 | 0.8 | 7.6 | |
亜鉛 | mg | 1.8 | 1.4 | 5.9 | |
銅 | mg | 0.27 | 0.22 | 0.48 | |
マンガン | mg | 2.06 | 0.81 | 15 | |
総計 | g | 1.2 | 0.4 | 7.9 |
1) α, β, γ, δ-トコフェロールの合計値
米ぬかは玄米、白米と比べて、たんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルを多く含んでいます。
これは玄米を精米して白米にするときに、炭水化物であるでんぷん以外の成分を取り除いているからです。そして取り除いたものが米ぬかなので、もともとお米に含まれていた、たんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルの大半が、米ぬかになっているわけです。
ところで米ぬかに含まれる栄養成分として、次のようなものが注目されています。
ビタミンE
米ぬかの脂質に含まれているビタミンEには強い抗酸化作用があり、消化管で脂質とともに吸収されて、体内の脂肪酸が酸化されて過酸化脂質になるのを防ぎます。
過酸化脂質が増えるとからだを構成する細胞膜の機能が損なわれて、細胞の老化などさまざまな障害を引き起こすほか、動脈硬化などの原因になります。
ビタミンEはナッツ類やホウレン草などの緑黄色野菜に含まれており、通常の食生活では不足することはないといわれています。
米ぬかには、100gあたり玄米の8倍、白米の118倍のビタミンEが含まれています。ただビタミンEを摂りたい場合は、米ぬかを摂らなくても、白米の一部を玄米に置き換えることで十分です。
また米ぬかを原料に作られたこめ油(米ぬかオイル)にはビタミンEが100gあたり31.3mg(米ぬかの2.6倍)含まれているので、さらに効率よくビタミンEを摂ることができます。
γ-オリザノール
γ-オリザノールとは米ぬかの脂質に含まれる成分で、消化管でのコレステロール吸収抑制作用、体内でのコレステロール合成阻害作用、コレステロールの排泄促進作用によって、血液中のコレステロール濃度を下げる作用があり、医薬品としても用いられます。
また内分泌・自律神経系を調整する作用もあります。
さらに化粧品の原材料としても使われており、抗酸化作用によって肌の老化に影響を及ぼす活性酸素を除去する、肌を保護し健やかに保つ、紫外線を防ぐなどの作用があるといわれています。
医薬品として用いる場合の1日投与量は、高脂質血症の場合300mg、心身症の場合10~50mgです。多く摂ればより効果があるというわけではありません。
γ-オリザノールは天然由来の成分なので副作用はないと書いているサイトもありますが、これは明らかな間違いで、天然由来であろうが、食品由来であろうが、副作用はあります。
米ぬかにγ-オリザノールが多く含まれるのは間違いないのですが、米ぬかにどれだけ含まれているのかはわかりませんでした。
γ-オリザノールは米ぬかの脂質に含まれているので、こめ油(米ぬか油)にはさらに高い濃度で含まれているはずです。こちらは一部メーカーのサイトに記載があり、100gあたり0.2~1.8g含まれているそうです。
ただ出典が明記されていないか、当社調べとのことなので、どこまで信用してよいのか、わかりません。
植物ステロール
植物ステロールとは、コレステロールに似た化学構造をしている、植物に含まれる物質の総称です。
ちなみにコレステロールは動物性のもののみに含まれます。
植物ステロールは全粒粉、ナッツ類、豆類、未精製の植物油に多く含まれ、米ぬかの脂質や、こめ油にも多く含まれています。
コレステロールと構造が似ているため、コレステロールの吸収を阻害することがわかっており、0.8gの植物性ステロールを強化した食品を毎日摂取すると、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が低下することが、実験的に確かめられています。
LDLコレステロールが原因の動脈硬化のリスクを下げる効果があるといわれています。
米ぬかに植物ステロールがどれだけ含まれるかについてはわかりませんでしたが、こめ油に含まれる量は一部のメーカーがウェブサイトに掲載していました。それらによると100gあたり1.2~2.0gとのことです。
トコトリエノール
トコトリエノールはビタミンEの一種です。
先ほど玄米、米ぬかなどにビタミンEがどれだけ含まれているか説明した表では、ビタミンEの量をα-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールの4種類のトコフェノールの合計値で表しましたが、これ以外にビタミンEの成分として、トコトリエノールという成分があります。
トコトリエノールはトコフェロールよりも抗酸化作用が強く、血液中のコレステロール値を下げる働きもあることがわかっています。1日あたり200mgを目安に摂取すると、これらの効果があるそうです。
米ぬかにトコトリエノールがどれだけ含まれるかわかりませんでしたが、油に溶けやすい性質があるため、こめ油には濃縮されて含まれているはずです。あるメーカーのサイトに、こめ油に含まれるトコトリエノールは、100g中25.9~57.4 mg と書かれていました。
米ぬかに含まれる栄養成分の健康への効果
ネット情報を見ると、「米ぬかには玄米の9割以上の栄養素が含まれている」「お米の栄養素は米ぬかが9割以上、白米は1割未満」「米ぬかは非常に栄養価が高くなっています」など、米ぬかがいかに栄養的に優れているか書かれていますが、科学的根拠はありません。
まず栄養素ってなんでしょうか。
栄養素とは、食品に含まれる成分のうち、人間が生きていくために必要な成分のことで、具体的には糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルです。
米ぬか、白米、玄米を比較すると、糖質(炭水化物)以外の成分は、米ぬかの方が多く含まれていますが、米ぬかに含まれる栄養素が、白米の9倍であるという根拠はどこにもありません。
この文章を見ると、白米は栄養素がないスカスカの食品で、米ぬかは栄養素が詰まった素晴らしい食品、と思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。
米ぬかに多く含まれる主な栄養成分と、それが体に及ぼすよい影響についてまとめると、次のようになります。
●ビタミンE:体内の脂肪酸が酸化するのを防ぎ、細胞の老化や動脈硬化のリスクを下げる。
●γ-オリザノール:コレステロールの吸収阻害・合成阻害・排泄促進により、血液中のコレステロール濃度を下げる。
●植物ステロール:コレステロールの吸収阻害により、血液中の悪玉コレステロールを減らす。
●トコトリエノール:体内の脂肪酸が酸化するのを防ぎ、細胞の老化や動脈硬化のリスクを下げる。また血液中のコレステロール濃度を下げる。
米ぬかを紹介しているサイト(特に、きちんとしているサイト)には、
- 米ぬかには、○○という物質が含まれています。
- ○○という物質は△△という作用があります。
と書いてあるだけです。
- 米ぬかを食べると、△△という効果が得られます。
とは、書いていません。
そもそも、米ぬかに○○という物質がどれだけ含まれるのかさえ、書いていません。
米ぬか特有の成分であるγ-オリザノールを例にとって説明しましょう。ちなみにオリザノール(Oryzanol)という名前は、イネの学名、Oryza sativa から来ています。
γ-オリザノールは医薬品として使われていますので、その効果は医学的に確認されています。
血液中のコレステロールを下げるためには、1日300mgを3回に分けて服用することになっていますが、これは米ぬか何グラムに相当するのでしょうか。
米ぬかに含まれているγ-オリザノールの量は、わかりませんでしたが、ふつうのこめ油にはγ-オリザノールが100gあたり0.2g含まれるそうなので、医薬品と同じ量のγ-オリザノールを摂るとするならば、毎日こめ油を150gずつ摂らなければないことになります。
米ぬか1kgからこめ油140gが摂れるので、これは米ぬか1kgに相当します。こんな量の米ぬかを食べられるわけがありません。
米ぬかに含まれている栄養素に○○という効果があるということと、米ぬかを食べたら、その効果が期待できるということは全く違います。騙されないようにしましょう。
米ぬかに含まれる成分と化粧品としての美容効果
米ぬかにはさまざまな成分が含まれており、その中には化粧品の成分として効能が確認されているものがあります。主なものをご紹介しましょう。
コメヌカエキス
このコメヌカエキスは、米ぬかから、水、エタノール、1,3-ブチレングリコールまたはこれらを混ぜた液で抽出して得られる「水溶性抽出物」のことです。
ここで注目してほしいのは、「水溶性」であるという点と、「抽出物」であるという点です。米ぬかがそのまま化粧品に入っているのではなく、あくまでその成分の一部であるということ、もう一つは、水に溶ける性質がある「水溶性」の物質であるということです。
このコメヌカエキスの主成分は、次のようなものです。
- 炭水化物:デンプン、オリザブラン
- ビタミン:ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB3(ナイアシン)、イノシトール(ビタミンB群)
- フィチン酸
- ミネラル:カリウム、リン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、鉄、亜鉛
ここまで読んで、何か気づきませんか?
そうです。さきほど米ぬかに含まれる栄養成分として挙げた、ビタミンE、γ-オリザノール、植物ステロール、トコトリエノールは全く含まれません。理由は簡単で、これらの成分は脂溶性(油に溶ける性質がある)なので、コメヌカエキスには含まれていないのです。
コメヌカエキスを化粧品成分として使う場合には、
・グルタチオンレダクターゼ発現増強による抗酸化作用
を効能として表示できます。
まず保湿作用ですが、コメヌカエキスが入った化粧水やクリームを皮膚に塗ると、コメヌカエキスに含まれるオリザブランが天然保湿因子として皮膚に浸透します。
老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎では、角質細胞中の天然保湿因子が減ることで皮膚が乾燥しますが、オリザフランが天然保湿因子として皮膚の表面を柔らかくするとともに、角質層からの水分の蒸発を防ぐことで、保湿作用を発揮します。
もう一つの抗酸化作用ですが、一言でいうと、皮膚で活性酸素種が発生するのを防ぐ作用です。皮膚が紫外線を浴びたり、ストレスを受けたりすると、活性酸素種が発生します、活性酸素種ができると皮膚で炎症が起こり、老化(しわ)や色素沈着(しみ)の原因になります。
コメヌカエキスにはグルタチオンレダクターゼという還元酵素の作用を強める働きがあり、酸化による活性酸素種の発生を抑える作用があります。
そのためコメヌカエキスを含むクリームには、紫外線などの刺激によって活性酸素種が発生し、しわやしみができるのを防ぐ効果があります。
フィチン酸
フィチン酸は穀物などに含まれる物質で、米ぬかにも含まれています。
金属類の酸化を遅らせたり、変色を防止することから、食品や飲料の安定剤・酸化防止剤としても使われます。
化粧品に配合される場合は、化粧品成分の安定剤、酸化防止剤としての役割に加えて、皮脂腺細胞分化抑制による皮脂抑制作用という効能で、ヘアケア製品、頭皮ケア製品など使用されます。
イノシトール
イノシトールはビタミンB群の一つで、フィチン酸を加水分解して作られます。
またさきほど説明したコメヌカエキスにも含まれています。肌荒れを防ぐ、脱毛予防、皮膚病予防などの働きがあり、ヘアコンディショニング剤、保水剤、保湿剤として使われます。
ビタミンE
ビタミンEには、皮膚の角質化の防止、過酸化脂質による障害の抑制、メラニンの沈着抑制、抗炎症作用、発毛促進効果、紫外線防御効果、保湿効果など、さまざまな効果があります。
皮膚から直接は吸収されるため、さまざまな化粧品に使われています。ただ化粧品で使われるビタミンEは、米ぬかを原料にしたものではありません。
米ぬかを摂るとダイエットになるのか
なりません。
米ぬかに「毒だし効果」があり、米ぬかは「食べれば痩せる食品」と紹介しているサイトがありました。そこでいっているのは、
- 米ぬかに含まれている食物繊維が、宿便を押し出す
- 米ぬかが摂り過ぎた脂を体外に排出する
とのことです。
これは、米ぬかに含まれる成分が持つ作用を書いているだけで、米ぬかの作用ではありません。
まず、玄米、白米、米ぬかのカロリーを比較した表を見ると、この3つのカロリーはほとんど同じです。ごはんの量を減らさず、余分に米ぬかを摂れば、その分摂取カロリーは増えます。これのどこがダイエットになるのでしょうか。
つぎに米ぬかに玄米や白米に比べて食物繊維が多く含まれるのは事実ですが、宿便を押し出すためには、どれだけの米ぬかを食べればいいのでしょうか。
食物繊維には便の嵩を増して、便を出す作用はありますが、人によっては腹部膨満の原因になったり、便秘を悪化させることもあるので、たくさん摂ればよいというものではありません。米ぬかを摂ったくらいで便秘が解消するはずがないことは、多くの人がわかっていることです。
さらに脂を体外に排出するということですが、これは米ぬかに含まれるγ-オリザノールが持つコレステロールの吸収阻害・排泄促進のことを指しているものと思われます。しかしこの効果を得るためには、米ぬかを大量に食べなければならないことは、さきほど説明した通りです。
米ぬかには、体によい成分が含まれているのは事実ですが、それを摂ることで、ダイエットを含めて何らかの効果を感じることは難しいと思います。
ダイエットの基本は、カロリーの摂取制限と運動によるカロリーの消費です。何かを食べてダイエットになる、というのは、ウソだと思った方がよいでしょう。
米ぬかでタケノコのあく抜きができるのはなぜ
ところで、わたしたちが米ぬかを使うことといえば、糠漬けとタケノコのあく抜きぐらいです。なぜ米ぬかでタケノコのあく抜きができるのか、説明したいと思います。
タケノコは掘り出した直後はほとんど「えぐ味」を感じませんが、時間が経つとともにえぐ味が増すといわれています。ですから、できるだけ早くあく抜きをかる必要があります。
タケノコのえぐ味の正体は、「シュウ酸」と「ホモゲンチジン酸」という化学物質です。
「シュウ酸」はタケノコのほか、ほうれん草やヤマノイモにも含まれている化学物質で、「シュウ酸ナトリウム」または「シュウ酸カルシウム」という物質として存在します。
シュウ酸ナトリウムは水に溶けますが、シュウ酸カルシウムは水に溶けない小さな針状の結晶です。ヤマノイモをすりおろして「とろろ」にすると、手や口の回りがかゆくなります。
これはヤマノイモに含まれているシュウ酸カルシウムの目に見えない小さな結晶が、皮膚に刺さっているためです。
水で洗っても取れませんが、シュウ酸カルシウムは酸で分解される性質があるので、酢で洗えば、かゆみはすぐに収まります。
一方、ほうれん草やタケノコに含まれるのは、水に溶けるシュウ酸ナトリウムです。タケノコを米ぬかと一緒に煮ると、シュウ酸ナトリウムが茹で汁に溶け出し、米ぬかに含まれるカルシウムと反応し、シュウ酸カルシウム結晶を作って煮汁の中に沈澱します。
こうすることで、タケノコのえぐ味のもとであるシュウ酸を取り除くことができます。また米ぬかを使ってタケノコを煮ることで、米ぬかに含まれる酵素の働きで、タケノコが柔らかくなるという効果もあります。
もう一つのえぐ味の正体である「ホモゲンチジン酸」は、アルカリ性の水の中で煮ると、簡単に取り除くことができます。米ぬかを入れた水は弱アルカリ性なので、タケノコに含まれるホモゲンチジン酸を分解します。
タケノコ1本(250g)についての分量です。まず鍋に
- 水 400~600ml
- 米ぬか 200ml
- 赤唐辛子 1本
- タケノコ 1本(250g)
を入れ、落し蓋をして、加熱します。沸騰したら中~弱火で1時間程度加熱し、その後、半日くらいかけて自然に冷ました後、タケノコを水できれいに洗います。
こうすることで、タケノコに含まれるシュウ酸とホモゲンチジン酸を取り除くことができます。
米ぬかを摂ることによるメリットとデメリットは
米ぬかは、糠漬けのぬか床として使われるくらいで、食用として使われていません。
また食品スーパーですぐに手に入るわけでもありません。自宅の精米機で玄米から米ぬかをつくったり、通信販売で米ぬかパウダーや米ぬかサプリを購入することもできますが、コストをかけて米ぬかを購入してまで、使うメリットはないと思います。
米ぬかを摂ろうとする人は、米ぬかに含まれる栄養成分による健康効果を期待しているのだと思いますかが、白米を玄米で置き換える、キャノーラ油をこめ油で置き換えることで、米ぬかに含まれる栄養成分は摂取できます。
それ以前に、特定の栄養成分による効果を期待して、その成分を含む食品を摂っても、効果は実感できないことがほとんどです。
米ぬかを摂ることによるデメリットは、白米を食べていたら口にしなくて済む、お米のカビ毒、重金属、残留農薬などの有害物質を摂る可能性があるということです。
これらの有害物質についてはそれぞれ基準値が定められており、基準値以下であれば健康上問題ないとみなされています。ただ基準値はゼロではなく、そもそも白米として食べることを前提に決められた数値なので、米ぬかを食べることは、濃縮された有害物質を体の中に入れることになりかねません。
市販の米ぬかパウダーや米ぬかサプリの中には、このような懸念を見越して、無農薬で栽培したお米や、有機栽培したお米を原料にしていることをウリにしているものもあります。ただ、そこまでして米ぬかを食べる理由があるとも思えません。
まとめ
- 米ぬかは玄米を精米したときに出るカスで、食用として使われることはほとんどありません。
- 米ぬかには玄米、白米によりも多くのたんぱく質、脂質、食物繊維、ビタミン、ミネラルが含まれているほか、ビタミンE、γ-オリザノール、植物ステロール、トコトリエノールなどの栄養成分が含まれます。これらの成分は、体によい効果があることがわかっていますが、どれだけの米ぬかを摂取すればその効果が得られるのかについては、よくわかっていません。
- 米ぬかの成分には美容効果があり、化粧品の成分として用いられているものがあります。
- 米ぬかを食べてもダイエット効果はありません。
- 米ぬかを摂るメリットはありません。米ぬかにはお米のカビ毒、重金属、残留農薬が濃縮される可能性があるので、これらの有害物質まで摂りかねないというデメリットがあります。