おからパウダーはスーパーフードってホント? ダイエット効果は

最近、おからを粉末にしたおからパウダーが売られています。

またおからがヘルシーフード、スーパーフードで栄養価が高く、ダイエット効果もあるという記事もよく見かけます。

しかし、おからは食物繊維が多い以外、特に優れた食品ではありません。おからパウダーを毎日摂ったくらいでは、ダイエット効果は期待できません。そもそもどうしてあんなに高いんでしょうか。

おからとおからパウダー、きな粉との違いについて、解説します。

おからはヘルシーフード、スーパーフードで栄養価が高いというのはほんと?

おからがヘルシーフード、スーパーフードだとか、栄養価が高いというという記事をよく見かけます。ヘルシーフードとは、「健康的な食べ物」という意味でしょうが、それならばほとんどの食べものがヘルシーフードなので、あえてヘルシーフードだと強調する意味はありません。

スーパーフードには、つぎのような定義があります1)

・栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い食品であること。あるいは、ある一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれる食品であること。
・一般的な食品とサプリメントの中間にくるような存在で、料理の食材としての用途と健康食品としての用途をあわせもつ。

おからの栄養成分についてはこれから説明しますが、この定義には当てはまりません。

さらにおからは栄養価が高いといわれています。本当でしょうか。

そもそも栄養価とは、何を指すのかわからない言葉なので、個人的には使いたくないのですが、まあそれはいいとして、おからの栄養成分量を調べてみました。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、可食部100gあたりの栄養成分は次の通りです。

おから(生) おから(乾燥) 木綿豆腐 豆乳 納豆 枝豆(ゆで) きな粉
カロリー(kcal) 88 333 80 46 190 118 451
水分(g) 75.5 7.1 85.9 90.8 59.5 72.1 4.0
たんぱく質(g) 6.1 23.1 7.0 3.6 16.5 11.5 36.7
脂質(g) 3.6 13.6 4.9 2.0 10.0 6.1 25.7
炭水化物(g) 13.8 52.3 1.5 3.1 12.1 8.9 28.5
食物繊維(g) 11.5 43.6 1.1 0.2 6.7 4.6 18.1
うち、水溶性食物繊維(g) 0.4 1.5 0.7 0.2 2.3 0.5 2.7
うち、不溶性食物繊維(g) 11.1 42.1 0.3 0 4.4 4.1 15.4
カルシウム(mg) 81 310 93 15 90 76 190
マグネシウム(mg) 40 150 57 25 100 72 260
ビタミンB2(mg) 0.03 0.11 0.04 0.02 1.1 1.0 2.2

きな粉は、黄大豆の全粒大豆の場合

例えば、おからと木綿豆腐を比べてみてください。

たんぱく質と脂質は、おからより木綿豆腐の方に多く含まれています。炭水化物はおからの方が多いですが、その大半は不溶性食物繊維です。

次の項で説明しますが、大豆のうち、水に溶けない食物繊維の部分が、おからになっているのですから、当然のことです。おからには、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB2が豊富に含まれるという記事があったので、これも調べましたが、いずれも木綿豆腐の方に多く含まれていました。これ以外の大豆食品についても、あわせて載せましたので、参考にしてください。

おからがヘルシーフードというのが「ウソ」とまでは言い切れませんが、取り立てていうほど、素晴らしい食品ではありません。スーパーフードは明らかに言い過ぎです。おからの栄養価が高いという表現も、何に対して栄養価が高いのか、どの成分が多く含まれているのか示さないと、全く無意味ですし、そもそも他の大豆食品より特段優れているとはいえません。

おからは大豆の搾りかす、食用にされるのはごくわずか

水でふやかした大豆をミキサーで細かくし、加熱したものを布で搾ると、白い液体と白い固形物に分かれます。

液体が豆乳で、そのまま飲むこともできますし、豆乳に凝固剤のにがりを加えると豆腐ができます。搾りかすの固形物が「おから」です。固形物といっても重量の80%は水なので、そのまま置いておくと、すぐに腐ってしまいます。そのため常温で保存することはできません

日本では、江戸時代から豆腐が作られていましたので、おからもその頃からあり、庶民の食べものとして重宝されてきました。

おからという名前は、搾りかすである「殻(がら)」に「お」をつけたものだそうです。昭和の頃は、町中に豆腐屋さんがたくさんあり、おからをタダで配っていたこともあります。

いまはスーパーの豆腐売場で売られていますが、生のおからそのものよりも、しいたけ、ごぼう、にんじん、油揚げと一緒に煮込んで味付けしたお惣菜の方が、よく見かけます。商品名に「卯の花」と書いてありますが、もともと卯の花とは、おからの別名でした。

ところで、おからはどれくらい作られているのでしょうか。

豆腐一丁(300g)作るためには大豆を77~90g使いますが、このときおからが104~122gできるそうです。つまり豆腐を作ると、その1/3の量のおからができます

おからは豆腐だけでなく、豆乳を作ったときにも発生します。スーパーに豆腐はたくさん売っていますが、おからはあまり見かけません。おからはどこへ行ったのでしょうか。2011年に日本豆腐協会が作成した資料2)によりますと、おからの65%は家畜のえさとして使われています。次に多いのが何と肥料です。3番目に多いのが産業廃棄物で、食用にされているのは1%以下です。これはある意味、驚きです。

おからパウダーはきな粉と何が違うのか

おからは水分が多く、そのままの状態では保存できません。冷蔵にしてスーパーで惣菜や食材として売られていますが、生産される量に対して需要が少ないので、日本で発生するおからの99%は食用以外の用途に回されています。

このおからを乾燥し、細かく粉砕したものが、おからパウダーです。乾燥することで、長期保存ができるようになりました。グルテンフリー食材として、最近、スーパーでも売っているのを見かけます。値段を調べてみると、メーカーや、内容量によって若干の違いがありますが、100gあたり90~230円くらいです。

  • A社 120g 220円 (183円/100g)
    豆乳製造時のおからを使用、外国産の大豆(遺伝子組み換えでない)が原料
  • B社 120g 270円 (225円/100g)
    通常のおからパウダーと比べて食物繊維が1.5倍、小麦粉並みに細かく粉砕、大豆(遺伝子組換えでない)が原料
  • C社 2kg  1,780円 (89円/100g)
    超微粒(150メッシュ)、ダマになりにくくお菓子作りにも最適、小麦や片栗粉などの粉類の代わりとして使える、外国産大豆(遺伝子組み換えでない)
  • D社 1kg(500kg×2) 1,079円 (108円/100g)
    粒子0.5mm以下、アメリカ産大豆(遺伝子組み換えでない)が原料

これに対して、大豆を炒って、皮をむいてから粉にした「きな粉」の値段は、100gあたり100円前後です。

おからパウダーときな粉を比べると、値段はほぼ同じか、おからパウダーの方が2倍ほど高いようです。

きな粉は、大豆を丸ごと粉にしたもの、おからパウダーは豆腐や豆乳を作った残りカスで、しかも使い道がないものを粉にしたものです。

確かに水分量の多いおからを乾燥するためには多くのエネルギーが必要ですが、固体の大豆を炒って粉砕するのにも、エネルギーは必要です。値段だけの比較なら、おからパウダーの方が、割高のように思います。

おからパウダーときな粉の栄養成分量を比較してみましょう。数値は上の表に掲載しています。

きな粉よりおからパウダーに含まれている量が多いのは、食物繊維とカルシウムです。とくに食物繊維は、不溶性食物繊維がおからパウダーの方が3倍ほど多く含まれています。その他の栄養成分は、きな粉の方が多く含まれていました。

食物繊維を多く摂りたいのなら、きな粉よりおからパウダーの方が効率的に摂れるかもしれませんが、ただ食物繊維を摂るだけなら、他にいくらでも方法はあります。

おからパウダーときな粉の違いをまとめると、次のようになります。

・おからパウダーは大豆のカスの部分だけを粉にしたもの。一方きな粉は、大豆をすべて粉にしたもの。
・おからパウダーは食物繊維が多いが、他の栄養素はきな粉の方が多い。
・おからパウダーの値段は、きな粉と同等か、2倍程度高い。

おからパウダーは有害ではないが、わざわさ食べるメリットもない

ここまで読んで下さった方は、それならなぜ、おからパウダーなんか食べるんだろう、と思われてるでしょう。私も全く同感です。

おからパウダーを製造・販売している人たちの言い分も聞いてみましょう。まず大手食品メーカーのウェブサイトに載っている説明です。

・パウダーなのでいろんなお料理に使えます。ふりかけたり、混ぜるだけで手軽に食物繊維が摂れます。

・食物繊維や大豆たんぱく質など、大豆の栄養を豊富に含んでいます。きめ細やかでクリーミーな食感が特徴です。そのままかけたり、料理にまぜたり、毎日色々な料理に手軽にご使用できます。

ウソは言っていません。「食物繊維を摂るために料理に加える粉末」とのことです。でも、食物繊維を摂るだけの目的で、わざわざ高い粉末を買う必要があるのでしょうか。

問題はネット記事です。

おからパウダーの不溶性食物繊維は、余分な脂肪を吸着して便と一緒に体外に排出してくれます。大豆と乳由来の良質なたんぱく質は、筋肉を増やし基礎代謝をアップ。大豆ペプチドの働きで、体脂肪燃焼にも効果的です。さらに女性は、豊富な大豆イソフラボンが若々しさを保つことにもつながりますね。健康的にきれいにやせられるんです。

不溶性植物繊維は、水を吸収して便の容積を増やしますが、脂肪は吸着しません。胆汁酸やコレステロールを吸着するのは、水溶性植物繊維です。水溶性食物繊維は、おからパウダーよりきな粉の方がたくさん含んでいます

たんぱく質に含まれる必須アミノ酸(体内で合成できず、食物として摂取する必要があるアミノ酸)の比率から、たんぱく質の栄養価を判断する方法があり、これによって算出された数値を「アミノ酸スコア」といいます。

大豆たんぱくはアミノ酸スコアが100で、必要な必須アミノ酸がすべて含まれていますので、良質なたんぱく質であることは間違いないのですが、これは大豆に限った話ではなく、肉、魚、卵、乳のたんぱく質も100なのです。しかもおからパウダーに含まれるたんぱく質の量は、同じ重さで比較すると、きな粉の6割程度しかありません。

大豆ペプチドが体脂肪の燃焼に効果があるというのも、筋肉量が増えて基礎代謝が増えた結果であり、大豆ペプチドを摂れば、体脂肪が燃焼されるわけではありません。しかも、大豆ペプチドはきな粉の方が多く含まれます。

大豆イソフラボンは、おからパウダーよりもきな粉の方が多く含まれますし、豆腐や納豆にも含まれます。女性ホルモン(エストロゲン)と分子構造が似ているので、若さを保つといっているのだと思いますが、科学的な根拠を欠いています3)

おからパウダーを、スプーンに2~3倍摂るとよい、と書いてありますが、それを摂ったところで、何のダイエット効果もありません。とにかく「おからパウダー」がいかに素晴らしいかを言いたいがために、効果を何でもかんでも書いていますが、他の食品・食材との比較という視点を欠いています。

結論としては、不溶性食物繊維を摂る以外、おからパウダーを食べるメリットはありません。同じコストをかけるのなら、きな粉の方が、いろいろな点で優れています。

産業廃棄物のおからをなぜ高い値段で買うのか不思議

おからの65%が家畜のえさ、25%が畑の肥料として使われていると説明しました。食品用はわずか1%程度です。残りは産業廃棄物として、処理費用を払って、処理しているのです。意外に思われるかもしれませんが、それほど「おから」は余っているのです。

でも、食品になっている部分もあるので、廃棄物というのはおかしい、と思われるでしょう。私もそう思います。でも、これについては1999年に最高裁判所によって「おからを引き取るとき、豆腐製造業者から処理料金を徴収しているので、おからは産業廃棄物」だという判断が下されています。豆腐製造業者から有料でおからを引き取っていた業者は、廃棄物処理法違反で有罪になりました。

これについては「おから裁判」で検索すると、たくさん情報が出てきます。

なぜこんな話を持ち出したかというと、飼料、肥料や産業廃棄物となるようなものを粉にしたおからパウダーを、なぜ高い値段で買っているのか、疑問だからです。これは飼料や小鳥のエサとして使われる雑穀をスーパーフードと言って高い値段で買っているのと同じ構図なのですが、原料がいかに安かろうと、高い値段で買う人がおれば、高い値段の製品になるということなのです。

おからは江戸時代から庶民の食料として、親しまれてきました。栄養価も低くはありません。捨ててしまうのにはもったいない資源です。これをいろいろな用途に使うのは大賛成です。しかし大豆を丸ごと粉にしたきな粉より、高い値段で取引される理由は、全くわかりません。

まとめ

  1. おからはヘルシーフードでもスーパーフードでもない。他の大豆食品より栄養価が優れているとも言えない
  2. おからは水分が多いので、そのままでは長期保存できないが、おからを乾燥して細かく粉砕したのが、おからパウダーで、大豆を丸ごと使ったきな粉と同じ値段から2倍程度の値段で売られている。
  3. おからパウダーは不溶性食物繊維を摂るという目的以外、摂取するメリットはない。同じ量なら、きな粉の方が栄養価は高い。
  4. おからパウダーを食べても、ダイエット効果はない

参考文献
1) 一般社団法人日本スーパーフード協会ホームページ
2) 食品リサイクル法に係る発生抑制、農林水産省公開資料、日本豆腐協会(2011)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokusan/recycle/haiki_h23_04/pdf/111202_data2-6.pdf
3) 食品中の植物エストロゲンに関する調査研究、厚生科学研究(生活安全総合研究事業)(1998)