ヴァンショー、グリューの違いとレシピ、作り置きはできるの?

夏ドラマの影響で、ヴァンショーワインが人気ですね。クリスマスマーケットで飲むグリューワインと何か違うのでしょうか。

ヴァンショー、グリューワイン、マルドワイン赤ワインにスパイスと糖分を加えた温かいワインです。

使われるスパイスはいずれも漢方薬の成分として使われるもので、体を温める効果、血流をよくする効果、胃腸を正常な状態に戻す効果が期待できます。温かいワインであると同時に、薬用ワインといってもよいでしょう。

寒い時期を中心に、ヨーロッパの北部から中部で飲まれます。

寝る前に飲むと、ぐっすり眠れるかもしれません。

ホットワインのフランス語がヴァンショー

赤ワインなら12~20℃、白ワインなら6~10℃が飲み頃といわれますが、温めて飲むワインがあるのをご存じでしょうか。

ヴァンショー、グリューワイン、マルドワインなどと呼ばれるもので、簡単にいうとホットワインのことです。ホットワインというのは和製英語なので、海外では通じません。

  • ヴァンショー(Vin chaud) … フランス語
  • グリューワイン(Glühwein) … ドイツ語
  • マルドワイン(mulled wine) … 英語

国によって呼び方が異なり、またレシピも少しずつ違うようです。

単に赤ワインを温めるだけでなく、シナモン、クローブ、スターアニスなどの香辛料、オレンジ、レモンなどの柑橘類、砂糖やはちみつなどの糖分を加えます。

香辛料といっても、コショウや唐辛子のようなものではなく、漢方薬として使われるものなので、体にうれしい効果も期待できます。ネット上でいろいろなレシピが紹介されていますが、オーソドックスなものを紹介しましょう。

ヴァンショーのレシピ、材料と効能

材料

(2人分)

  • シナモンステック             1本(12g)
  • クローブ                             2本(24g)
  • オレンジ                             1/4個
  • レモン                                  スライス1枚
  • 上白糖                                  18g(大さじ2)
  • 水                                          100ml
  • 赤ワイン                             180ml

作り方

  1. シナモンスティックとクローブを砕く。
  2. 鍋に赤ワイン以外の材料を入れ、煮立ったら弱火にして2分間煮る。
  3. 赤ワインを加えて30秒程度加熱する(絶対に沸騰させない)。
  4. 茶こしで固形分を取り除いて、カップに注ぐ。

成分と効能

シナモン

クスノキ科の樹木の皮で、漢方で使われる「ケイヒ」のことです。

シナモンは手足の冷えを取り除いて血行をよくするほか、腹痛、下痢、のぼせなどに効果があります。慢性的な肩こり、関節痛や生理痛で悩んでいる人は、毎日少しずつ摂取することで、症状が改善するかもしれません。

また血行がよくなることで、酸素や栄養分が体の隅々まで行き渡るようになり、肌のしわやくすみ、目の下のクマを予防する効果も期待できます。

クローブ

フトモモ科の植物のつぼみを乾燥したもので、漢方で使われる「チョウジ」のことです。

クローブには体を温める作用があり、冷え性や冷え性からくる関節痛や生理痛に効果があります。

また健胃薬の成分としても使われ、消化不良、嘔吐、下痢などにも効果があるので、弱った胃腸を正常な状態に戻す効果が期待できます。

アルコール

アルコールはデメリットが強調されがちですが、少量の場合はメリットがあります。

大脳には合理的・分析的な思考や言語機能を司る新皮質と、睡眠欲、食欲、性欲などの本能的な機能を司る旧皮質や辺縁系がありますが、アルコールを摂取すると大脳新皮質の働きが一時的に鈍くなります。そのため、嫌なことを考えなくなり、元気が出て、気持ちよく過ごすことができます。

お酒でストレスの発散ができるのは、このためです。夜寝る前に、いろいろなことを考えて眠れなくなる傾向のある人は、少量のお酒を飲んでリラックスするというのも、よいかもしれません。

ここで紹介したレシピでヴァンショーを作ると、アルコール度数は9%程度と、ビールより高くなりますが、飲む量が140mlと少ないので、アルコールの摂り過ぎになることはありません。ただしもともとアルコールに弱い体質の方は、少ない量から試してみてください。

グリューワインのレシピ、材料と効能

材料

(2人分)

  • スターアニス                     1/2本
  • シナモンステック             1/2本(6g)
  • クローブ                             1本(12g)
  • オレンジ                             1/4個
  • 上白糖                                  18g(大さじ2)
  • 水                                          30ml
  • 赤ワイン                             400ml

作り方

  1. スターアニス、シナモンスティック、クローブを細かくしておく。
  2. 鍋に水と上白糖を入れて加熱しながら溶かす。
  3. 残りの材料を入れて弱火で数分間煮込む(絶対に沸騰させない)
  4. 茶こしで固形分を取り除いて、カップに注ぐ。

成分と効能

スターアニス

マツブサ科のダイウイキョウという植物の果実で、独特の強くて甘い香りがあります。漢方では「ダイウイキョウ」または「ハッカク」という名前で、芳香性健胃薬、駆風薬、鎮痛薬として用いられるものです。

スターアニスには、身体を温める、胃腸を整える、食欲を増進させるなどの効果があるので、慢性的な冷え性や胃腸虚弱、食欲不振におすすめです。

シナモン

シナモンは手足の冷えを取り除いて血行をよくするほか、腹痛、下痢、のぼせなどに効果があるので、慢性的な肩こり、関節痛や生理痛で悩んでいる人におすすめです。

また血行がよくなることで、酸素や栄養分が体の隅々まで行き渡るようになり、肌のしわやくすみ、目の下のクマを予防する効果も期待できます。

クローブ

クローブには体を温める作用があり、冷え性や冷え性からくる関節痛や生理痛に効果があるほか、消化不良、嘔吐、下痢などにも効果があるので、弱った胃腸を正常な状態に戻す効果が期待できます。

アルコール

アルコールは大脳新皮質の働きを一時的に鈍くするため、嫌なことを考えなくなり、元気が出て、気持ちが楽になります。

ここで紹介したレシピのグリューワインは、アルコール度数は13%程度と材料の赤ワインとほとんど変わりません。分量も260mlとワイングラス2杯分ですので、ふだんからお酒を飲んでいる方にお勧めです。

ヴァンショーは飲み過ぎに注意しよう

ヴァンショーとグリューワインの代表的なレシピをご紹介しましたが、残念ながら作るのが面倒です。

まずシナモンステック、クローブ、スターアニスを常備しているご家庭はほとんどないと思いますので、購入するところから始めなければなりません。これがそこそこ高いです。また赤ワイン自体も安くはありません。ヴァンショーやグリューワインにするのは、安いワインで十分です。

つぎに作るのが面倒です。鍋に材料を入れて加熱し、最後は茶こしでこさなければならないので、作るのに10~15分くらいかかりますし、洗い物も増えます。作り置きすることもできませんので、毎日飲む分量だけ作らなければならない点も、手間です。

日本でヴァンショーやグリューワインが定着してこなかったのは、それなりの理由があるのです。

また飲むときも注意が必要です。ここで紹介したレシピでは、1人分としてワイングラス1~2杯分の赤ワインを使っていますが、これ以上は飲まないほうがよいと思います。

毎日寝る前に飲む量としては、ここで紹介した量が適切です。大脳新皮質の働きが鈍くなるのはよい面もありますが、気分がよくなって、飲み過ぎにつながる可能性もあります。くれぐれも飲み過ぎないように注意しましょう。

そして最後に、そのまま寝てしまわないことです。赤ワインのポリフェノールと糖分が口の中に残ったままになると、歯にステインが付着して変色したり、虫歯になる可能性があります。寝る前に必ず、歯を磨くことを忘れないでください。

まとめ

  1. ヴァンショー、グリューワイン、マルドワインは、赤ワインに香辛料、柑橘類、砂糖などを加えて加熱した温かいワインのこと。国によって呼び名や原料が異なる。
  2. ヴァンショーはフランス語で温かいワインのこと。シナモン、クローブ、柑橘類、砂糖を水で煮出したものに赤ワインをまぜて作る。
  3. グリューワインはドイツ語で温かいワインのこと。スターアニス、シナモン、クローブ、柑橘類、砂糖を赤ワインに加えて加熱したもの。
  4. 香辛料として使われるシナモン、クローブ、スターアニスは漢方薬としても使われるもので、冷え性、胃腸虚弱、食欲不振に効果がある。またアルコールには大脳新皮質の働きを一時的に鈍くする作用があるため、嫌なことを考えず、元気が出て、気持ちが楽になるという効果がある。
  5. ヴァンショーもグリューワインも、作るのに手間がかかる。また飲み過ぎないように注意する必要がある