全粒粉は食物繊維とミネラルが豊富だが、残留農薬やカビ毒の心配もある

全粒粉は小麦の表皮や胚芽を含めて丸ごと粉にしたものです。

ふつうの小麦粉より食物繊維、ミネラル、ビタミンを多く含みますが、これらの成分を摂ることを目的に、全粒粉を積極的に摂るのは得策ではありません。輸入小麦から作られる全粒粉には、残留農薬やカビ毒の心配もあります。

全粒粉はからだに悪いものではありませんが、すごくからだによいものでもありません。

無理のない範囲で、食生活に取り入れたらよいと思います。

全粒粉は小麦を丸ごと粉にしたもの

 

種である小麦には、芽になるための栄養素が詰まった胚芽、発芽するときのエネルギーをでんぷんとして蓄えている胚乳、そして種の皮である表皮の3つの部分からできています。

 

小麦粉はでんぷんの比率を高くするため、表皮と胚芽の部分を取り除いてから粉にします。小麦粉には等級がありますが、でんぷんの比率が高いほうが、高い値段で取引されます。一方、取り除いた表皮と胚芽の部分は小麦ふすまといわれ、主に家畜のエサや肥料として利用されています。

さて今回取り上げる全粒粉は、表皮、胚芽の部分も含めて、小麦を丸ごと粉にしたものです。小麦粉はでんぷんが主体なので白色ですが、全粒粉は表皮も含めて粉にしているため、薄茶色をしています。

全粒粉にはふつうの小麦粉と比べて、香ばしい匂いと、独特な味があります。また全粒粉で作ったパンやクッキーには、歯ごたえと、ずっしりとした食感があります。これは全粒粉に多く含まれる食物繊維によるものです。

さらに全粒粉の粒径は小麦粉よりも大きくなるため、口あたりは悪くなります。そのため、全粒粉100%でパンや菓子を作るのではなく、ふつうの小麦粉の一部を全粒粉で置き換えることが多いようです。

全粒粉にも強力粉、薄力粉がある

食品スーパーで全粒粉を見かけることはほとんどありませんが、大きな専門店や通販サイトで購入することができます。さまざまな種類があるので、目的に合ったものを選びたいものです。

ここではネット通販で手に入る全粒粉の種類とその違いを説明します。価格は参考価格です。

パン用全粒粉

全粒粉の強力粉】原料は輸入小麦 453円/kg

全粒薄力粉 有機JAS

全粒粉の薄力粉】原料は輸入小麦 968円/kg

グラハム粉

【全粒粉を粗く挽いたもので、強力粉原料は輸入小麦 429円/kg

農林水産省のホームページに、全粒粉は別名グラハム粉と呼ばれるとありますが、これは間違いで、粗びきした全粒粉のことを、グラハム粉と呼んでいます。

北海道産全粒粉 ゆめちから

【パン用の全粒粉原料は北海道産のパン用小麦(秋播き)ゆめちから 858円/kg

北海道産全粒粉 春よ恋

【パン用の全粒粉原料は北海道産のパン用小麦(春播き)春よ恋  858円/kg

北海道産全粒粉 キタノカオリ

【パン用の全粒粉原料は北海道産のパン用小麦(秋播き)キタノカオリ 858円/kg

全粒粉にも、強力粉と薄力粉があります

製パン用が強力粉、製菓用が薄力粉ですが、一般向けに販売されているのは強力粉がほとんどです。全粒粉を使ってパンを作ってらっしゃる方が多いということでしょうか。

強力粉と薄力粉は、原料となる小麦の種類が異なります。強力粉は硬質小麦薄力粉は軟質小麦から作られます。北海道産の製パン用の小麦は、すべて硬質小麦です。このように強力粉と薄力粉は原料そのものが違うのですが、価格は大きく変わりません。

つぎに原料が輸入小麦か、国産小麦かの違いがあります。

原材料欄に国産小麦と記載されている場合は、国産小麦が100%使用されています。

一方、小麦とだけ書かれていて原産地が書かれていない場合は、輸入小麦が主体と考えられます。小麦粉はアメリカ、カナダ、オーストラリアなどから輸入されていますが、製品や時期によって配合比が異なるうえ、国産小麦が使われている場合もあるので、原産地表示はしなくてよいことになっています。

したがって国産小麦か、それ以外かという分け方になります。価格は、国産小麦を原料にしたものは、それ以外のものに比べて約2倍高くなっています。

ところで、ふつうの小麦粉と全粒粉の値段を比べると、全粒粉の方が若干高いことに気づくと思います。小麦粉を作るときに捨てている表皮や胚芽まで粉にしているのになぜ、と思うかもしれません。これは全粒粉の流通量がふつうの小麦粉に比べて、圧倒的に少ないからです。

全粒粉の栄養成分と効果

小麦の表皮と胚芽を含めて丸ごと粉にした全粒粉には、表皮に多く含まれる食物繊維とミネラル、胚芽に多く含まれるビタミンが多く含まれます。

日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに具体的に見ていきましょう。なお全粒粉は強力粉の全粒粉、小麦粉は同じ強力粉の1等粉のデータを使っています。

全粒粉のカロリーと糖質と血糖値の変化

全粒粉と小麦粉のカロリーを比較すると、同じ100gあたりでは全粒粉の方が5%ほど低くなっています

ただこれは誤差範囲といってよいほどのもので、小麦粉を全粒粉に置き換えたから、カロリーオフになるとか、ダイエットになるというほどの違いではありません

そもそも小麦粉をすべて全粒粉で置き換えると、味や食感が変わってしまうので、小麦粉の一部を置き換えるのが一般的です。そうすると、ますますカロリーの差はなくなってしまいます。ダイエットしたいのであれば、食べる量を2割減らす方が効果的です。

全粒粉と小麦粉に含まれる糖質の量を比較してみました。人間が利用可能な炭水化物の量は、小麦粉に比べて全粒粉の方が2割ほど低くなっています。すなわち、同じ重さなら糖質の量は全粒粉の方が2割少ない、ということになります。でも先ほど、カロリーは5%しか差がないと説明しました。どういうことなのでしょうか。

全粒粉にはふつうの小麦粉に比べて脂質やたんぱく質が多く含まれています。脂質は1gで9kcal、たんぱく質1はgで4kcalありますので、炭水化物が少なかったとしても、脂質とたんぱく質が多く含まれているため、カロリーの差はなくなります

食品100g中のカロリーと糖質の重量

全粒粉 小麦粉
カロリー(kcal) 320 337
でんぷん(g) 55.3 66.5
利用可能な炭水化物の量(g) 58.6 70.1

食後血糖値の急激な上昇が、肥満、生活習慣病から糖尿病の原因になることは、みなさんご存じだと思います

全粒粉と小麦粉を比較すると、全粒粉の方が食後血糖値の上昇が穏やかになるのは事実です。

アメリカやイギリスでは、糖尿病患者を減らすために、国をあげて全粒粉を使った食品を食べるように勧めています。アメリカの食品スーパーへ行くと、全粒粉で作ったパン、マフィン、クッキーなどがたくさん売られています。このようなキャンペーンは20年以上続いていますが、糖尿病患者は減っていないどころか、逆に増えています

全粒粉を少しぐらい食べたからといって、肥満や糖尿病の予防にはなりません。食生活をすべて見直す必要があるということです。

食物繊維

全粒粉には、小麦粉の4倍の食物繊維が含まれています。ただ水溶性食物繊維の量は変わらず、不溶性食物繊維が多く含まれています。食物繊維は水溶性と不溶性をバランスよくとることが大事なので、食物繊維を摂るという目的なら、大麦(押麦、米粒麦)の方が向いています

食品100gに含まれる食物繊維の重量(g)

全粒粉 小麦粉 押麦 米粒麦
水溶性食物繊維 1.5 1.2 4.3 6.0
不溶性食物繊維 9.7 1.5 3.6 2.7
食物繊維計 11.2 2.7 12.2 8.7

ミネラル

全粒粉に含まれるミネラル(灰分)の量は、小麦粉の4倍です。ふだんの生活で不足しがちなミネラルであるカリウム、カルシウム、鉄、亜鉛が小麦粉より多く含まれています。ただミネラルを多く摂りたいのであれば、きな粉の方が安価で効果的です。

食品100gに含まれるミネラルの重量(mg)

全粒粉 小麦粉 きな粉
カリウム 330 89 2,000
カルシウム 26 17 190
マグネシウム 140 23 260
リン 310 64 660
3.1 0.9 8
亜鉛 3.0 0.8 4.1
0.42 0.15 1.12
マンガン 4.02 0.32 2.75
灰分 計 1,600 400 5,100

ビタミン

小麦にはビタミンEとビタミンB群が含まれています。きな粉と玄米についても、含まれている量を掲載しました。なおここで挙げた食品は、ビタミンEやビタミンB群を多く含む食品ではないので、ビタミンを摂るために全粒粉などを意識的に摂るのは、意味があるとは思えません

食品100gに含まれるビタミンの重量(mg)

全粒粉 小麦粉 きな粉 玄米
ビタミンE α-トコフェロール 1.9 0.3 1.7 1.2
β -トコフェロール 0.5 0.2 1.2 0.1
γ-トコフェロール 0 0 11 0.1
δ-トコフェロール 0 0 8.6 0
ビタミンB群 ビタミンB1 0.34 0.09 0.07 0.41
ビタミンB2 0.09 0.04 0.24 0.04
ナイアシン 5.7 0.8 2.2 6.3
ビタミンB6 0.33 0.06 0.52 0.45

全粒粉は小麦粉よりアレルギー物質、グルテンが多い

食に関する情報を発信している大手情報サイトに、

全粒粉は、小麦粉よりもグルテンが少ないとされます。

と記載されていますが、これは全くのウソです。

小麦粉はでんぷん以外の成分を含む種皮と胚芽を取り除いた胚乳の部分を粉にしたものなので、炭水化物の比率が高くなっています。これに対して全粒粉は種皮、胚芽を含めて丸ごと粉にしたものです。たんぱく質であるグルテンは、胚乳にも含まれますが、最も多く含まれるのは胚芽です。

日本食品標準成分表2020年版(八訂)に掲載されているデータを見ても、全粒粉の方が明らかにたんぱく質を多く含んでいます

大手の情報サイトでも、このような間違った情報を流しているので、注意が必要です。
エネルギー
kcal
たんぱく質
g
脂質
g
炭水化物
g
灰分
g
小麦粉/強力粉 337 11.8 1.5 71.7 0.4
全粒粉/強力粉 320 12.8 2.9 68.2 1.6

全粒粉は健康に害があるのか

全粒粉の害としてネット上で取り上げられているものには、

  • 残留農薬(プレハーベスト農薬とポストハーベスト農薬)
  • カビ毒(アフラトキシン)
  • アブシシン酸とフィチン酸

の3つがあります。

ブレハーベスト農薬とポストハーベスト農薬

外国産小麦の大半は、グリホサートという農薬を散布してから収穫されています。収穫前に使用される農薬をプレハーベスト農薬といいます。農林水産省は輸入小麦のグリホサートを検査して結果を公表していますが、令和2年度の検査では、298検体のうち実に83%の247検体から、定量下限値である0.01~0.02ppm以上のグリホサートが検出されています。これらの小麦はどうなったかというと、基準値である30ppmを超えていないなかったため輸入が認められ、われわれの口に入っています。

グリホサートが最も多く付着しているのは表皮です。そして表皮を含めて粉にしたのが全粒粉です。輸入基準値を超えていないとしても、農薬が付着している可能性があるものをあなたは積極的に摂りたいですか。グリホサートは世界で最も多く使われている除草剤で、日本でもラウンドアップ、ネコソギといった商品名で売られています。グリホサートは安全だといわれていますが、そうではないという意見もあります。なぜ農作物である小麦に除草剤のグリホサートが散布されるのかも含め、こちらで詳しく解説しています。

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小麦に使われる農薬はこれだけではありません。倉庫で保管中や輸送中に腐敗したりカビが発生したりしないようにするため、殺菌剤や防カビ剤が散布されます。これらは収穫後に使われるため、ポストハーベスト農薬といいます。実際は農薬ですが、収穫後に使われるため、日本では食品添加物の扱いになります。

これらの薬剤が最も多く付着しているのは表皮です。そして表皮を含めて粉にしたものが全粒粉です。食品添加物なら、製品の原材料表示欄を見れば書いてあるはずと思うかもしれませんが、全粒粉にポストハーベスト農薬が使われていたとしても、食品添加物としての表示義務はありません。そもそも、そんな表示、見たこともありません。

プレハーベスト農薬、ポストハーベスト農薬とも、最も付着している可能性が高いのが表皮で、その表皮を含めて粉にしたのが全粒粉であることは、覚えておいてください。

カビ毒(アフラトキシン)

カビ毒は穀物、ナッツ類に寄生するカビが作るもので、輸入穀物や輸入落花生でときどき検出されています。こちらも輸入された際に検査が行われ、基準値を超えたものは輸入できません。輸入小麦ではアフラトキシンとデオキシニバレノールの検査が行われており、令和2年度に農林水産省が行った検査では、アフラトキシンは検出されていませんが、デオキシニバレノールは298検体のうち162検体から検出されています。これらはデオキシニバレノールの規制値である1.1ppmを超えなかったため、国内に流通しています。

農薬と同様、カビ毒が最も多く付着しているのは表皮で、表皮を含めて粉にしたものが全粒粉です。全粒粉を食べるということは、ふつうの小麦粉を食べるよりも、カビ毒を摂るリスクが高いということになります。

アブシン酸とフィチン酸

アブシシン酸は植物ホルモンの一種で、小麦にも含まれています。一部の人がアブシシン酸は有毒だという主張をしているようですが、何の根拠もありません

もう一つのフィチン酸は、穀物や豆類に多く含まれる物質で、リンを貯蔵する役割をしています。フィチン酸は、鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウムの吸収を妨げる可能性があることがわかっているため、フィチン酸が含まれる全粒粉や玄米は、体によくないと主張している人がいます。確かにフィチン酸にそのような作用はありますが、全粒粉や玄米に含まれるフィチン酸を摂ったところで、ミネラルが不足することにはなりません。したがって、アブシン酸とフィチン酸については考慮する必要はありません

まとめ

  1. 小麦の表皮、胚芽を含めて丸ごと粉にしたもの全粒粉です。小麦粉と比べると香ばしい匂いと、独特な味があります。流通量が少ないため小麦粉より値段が高く、さらに国産小麦を使用したものは、輸入小麦を使ったものの倍の値段です。
  2. 小麦粉に比べて食物繊維、ミネラル、ビタミンB群を多く含んでいますが、これらのものを摂ることも目的に全粒粉を食べるのは、正しいやり方ではありません。食物繊維を摂るのであれば、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスがよい大麦の方がおすすめです。
  3. 小麦粉よりグルテンを多く含んでいます
  4. 輸入小麦を使った全粒粉は、残留農薬、カビ毒が小麦粉より多く含まれる可能性があります。全粒粉を使うのであれば、国産小麦から作られたものの方が安心です。