還元水あめとは 虫歯にならない?危険性やデメリットはあるのか

還元水あめは、でんぷんを酵素で分解して作った水あめを水素と反応させることで、安定化したものです。

砂糖や水あめの代わりに甘味料として使われるほか、水分を保持する性質があるので、加工食品の保存性向上などにも使われます。

人工的に作られるものですが、長年使われた経験から安全であることが確認されており、食品添加物ではなく、食品として扱われます

砂糖や水あめよりカロリーが低いため、ダイエット甘味料にもなります。

還元水あめと水あめの違い

水あめは、でんぷんを酸や糖化酵素で分解して作った粘液状の甘味料です。

でんぷんはグルコースが数百から数十万個つながってできていますが、水あめの成分は、グルコースが数十から数百個つながっているデキストリン、グルコースが2つつながったマルトース(麦芽糖)と最小単位であるグルコースです。

分子量の小さなマルトースやグルコースが多いほど、水あめは甘みが強くなります。水あめは砂糖が伝わる以前から、甘味料として使われてきました。

還元水あめは、水あめと水素を反応させて、水あめに含まれるデキストリン、マルトース、グルコースの末端のアルデヒド基(-CHO)を還元してヒドロキシ基(-OH)を含む-CH2OHに変えることで作られる糖アルコールの混合物です。

水あめと還元水あめの違いは次の通りです。

水あめ 還元水あめ
原料 でんぷん でんぷんから作られた水あめ
主成分 グルコース、マルトース、デキストリン 糖アルコール
甘み ある ある
粘度 ある ある
カロリー でんぷん、グルコースと同じ
3.4 kcal / g
やや低い
2.4 kcal / g

水あめも還元水あめも、成分の違い(分解の程度)によってさまざまな種類があるので、上記のデータはあくまでも一例です。

還元水あめの作り方、危険性はあるのか

還元水あめの直接の原料は水あめです。水あめはでんぷんを分解して作るため、還元水あめも、でんぷんが原料といってよいでしょう。まず水あめは、でんぷんを酸または酵素で分解して作ります。

でんぷんはグルコースが数百から数十万個つながってできていますので、この結合を切ることで、

  • 最小単位であるグルコース
  • グルコースが2個結合したマルトース
  • グルコースが数十から数百個つながったデキストリン

を作ります。

これらの成分は、いずれもグルコースがつながってできています

少し専門的になりますが、グルコースの鎖の片方はCH2OH、もう片方はCHOという分子構造をしています。水あめを高温にして、数十~数百気圧の高圧水素ガス(H2)と反応させて、片方のCHOを

CHO + H2 → CH2OH

という反応によってCH2OHにします。

この際に金属触媒というものを使用します。いろいろな記事で「還元」と書いてあるのは上記の反応のことです。

この反応は高温高圧で爆発性のある水素ガスと反応させるため、危険を伴いますが、出来上がった還元水あめは、特に危険なものではありません

金属触媒というのは、反応を早く進ませるためのもので、ラネーニッケルという金属を使いますが、触媒の成分のニッケルが還元水あめに混ざることもありません。

還元水あめは虫歯になりにくく、低カロリーで糖尿病にもいい?

還元水あめは砂糖と比べると甘味がアッサリしており、カロリーも低く、日持ちがよいという特徴があります。

砂糖は加熱すると褐色化やキャラメル化が起こるため、食品に色がついてしまいますが、還元水あめはこれが起こりにくいといわれています。また酸にも強いという性質があります。そのため調理や加工に向いており、さまざまな加工食品に使われています

砂糖や水あめは小腸でほぼ100%吸収され、エネルギー源として使われますが、還元水あめは消化・吸収が悪いため、低カロリー甘味料として用いられることもあります。

また口内細菌による酸への代謝がされにくいため、虫歯になりにくい甘味料として使われる場合もあります。また、油性の成分を水性の成分と均一に混ぜるための乳化剤として使われる場合もあります。

還元水あめは、「高糖化還元水あめ」と「低糖化還元水あめ」の2種類に分けられます。

高糖化還元水あめは甘味が強く、浸透性、保湿性が高い一方、粘度、皮膜性や食品に対するボディ感付与の効果は低いという特徴があります。低糖化還元水あめは甘み、浸透性、保湿性は弱く、粘度、皮膜性、各種食品のボディ感付与効果が高いという特徴があります。

この2つの中間の性質をもった還元水あめや、それぞれの還元水あめの中でも、目的に応じてさまざまな製品が発売されています。

和菓子では消費者の嗜好の変化により、甘みが弱いものが求められる傾向にあります。ところが糖度を下げると保存性が悪くなることから、あんやようかんに入れる砂糖の一部を還元水あめに置き換えることで、糖度を下げずに甘さを下げるということが行われています。

またタレやドレッシングなどの調味料では、香辛料などの味をなじませて、適度な粘度を与えるという目的で、還元水あめが使われています。

そのほか、つくだ煮、水産加工品など、さまざまな加工食品で、保水性の維持による賞味期限の延長、加熱時の着色防止や調味液の浸透性向上などの目的でも使用されています。

還元水あめはソルビトールになる?下痢とおならの関係

還元水あめは、水あめと水素ガスを高温高圧で反応させて作りますが、出来上がった還元水あめには危険性はありません。理由は次の通りです。

①人工的な化学反応で作られるが、有害なものが還元水あめに混入したり残留したりする可能性がない

昔から甘味料として使われてきた水あめに、水素原子(H)が2個加わっただけです。金属触媒を使いますが、その成分が混入・残留する可能性もありません。

②自然界にも還元水あめと同じ成分のものが存在する

グルコースを還元するとソルビトールという糖アルコールになりますが、ソルビトールはナナカマドという植物の果汁や紅藻(海藻の一種)にも含まれる物質で、まったくの人工物ではありません。

③50年以上使われている

還元水あめは1960年代から生産され、さまざまな加工食品に使われてきました。この間、重篤な健康影響の報告はありません。

食べ過ぎるとお腹が緩くなることも

しかし、還元水あめも、大量に食べるとお腹が緩くなったり、下痢をしたりすることがあります。それは還元水あめの成分である糖アルコールは、消化・吸収が悪いためです。

お腹が緩くならないまでも、おなかが張る(鼓腸、腹部膨満)、おならが出る、といった影響が出る場合があります。これは人間が消化・吸収できなかった糖アルコールを、腸内細菌が分解し、ガスを発生させるからです。なお還元水あめの消化・吸収のされやすさは、個人差があり、また同時に何を食べたかによっても変わります。

ダイエット効果はあるがノンシュガーではない

還元水あめを甘味料として使う場合、砂糖や水あめと比べるとカロリーが低いというメリットがあります。

しかし、砂糖は1gあたり3.9 kcal、水あめが3.4 kcal であるのに対し、2.4 kcal とやや低いだけで、ゼロではありません。

繰り返しになりますが、水あめ、還元水あめともいろいろな種類があり、甘みもカロリーも異なるので、一概には言えませんが、ダイエット目的で還元水あめを摂っても、大きな効果は得られないと思います。それよりも、炭水化物や糖質の摂取量を減らすことが重要です。

まとめ

  1. 還元水あめは、でんぷんを酸や酵素で分解して作った水あめと水素を反応させて作った糖アルコールの混合物です。
  2. 還元水あめは甘味料ですが、低カロリー甘味料として、虫歯になりにくい甘味料として使われることがあります。また種類によっては甘みが弱いものもあり、砂糖の置き換えに使われることもあります。
    加熱による色調の変化がなく安定しているため、加工食品によく使われます、また粘度が高いものは、保水性の付与による賞味期限の延長や、食品に対するボディ感付与にも使われます。
  3. 還元水あめは安全です。ただ一度に多く摂ると、お腹が緩くなることがあります。ダイエット甘味料といわれますが、カロリーはゼロではないので、ダイエット効果は期待すべきではありません。