いま話題のエシカルフードってなに、環境に優しい?からだによい?

エシカルフード、エシカル食品が今年のトレンドになりそうです。エシカル(ethical)とは英語で、倫理的なとか、道徳的に正しいといった意味で、食べること地球環境や地域環境を守ることにつながったり、地域活性化や貧困の解消に結び付く食品のことです。かなりあいまいな定義なので、何がエシカルで、何がエシカルでないかは、人によって意見が異なると思います。ニセ・エシカルフードも含め、紹介します。

エシカルフードの条件

海外ではエシカルフードということばより、エシカルイーティング(倫理的な食事)の方が一般的です。アメリカのWikipediaによれば、エシカルイーティングの要件として、次の4つが挙げられています。

  • 環境への影響が少ない
  • 生産・加工に従事する人が守られている
  • 富の分配、食料の入手可能性が公平である
  • 動物福祉(アニマルウェルフェア)が守られている

これに加え、地域の活性化や伝統的な食文化の継承などを含めて考えることもあります。
順番に見ていきましょう。

環境への影響が少ない

食料の生産と消費は、多かれ少なかれ、環境に影響を与えています。例えば、

  • 農地を拡張するための自然破壊
  • 灌漑のための大量の水資源の利用
  • 農薬の使用による環境汚染
  • 農産物・食品の輸送のためのエネルギー消費

など。
同じ食品、似た成分の食品が複数ある場合は、その中から環境への影響が少ないものを選ぶのが、エシカルイーティングです。

生産・加工に従事する人が守られている

海外の一部の国では、低賃金で農産物の生産や食品加工に従事させられている人がいます。食料ではありませんが、最近、欧米各国では、新彊ウイグル自治区で生産されたコットンの取り扱いをやめる動きがあります。

また消費者は価格の安い食品を選ぶ傾向があるため、外国産の安い農産物や畜産物の消費が増え、その結果、国内で農業・畜産業に従事する人の利益が減っています。国内の生産者も、大規模化や省力化によって生産コストを下げる努力をする必要がありますが、価格だけで食品を選ぶと、国内で食料生産に従事する人がいなくなってしまうかもしれません。

富の分配、食料の入手可能性が公平である

自由貿易が世界の流れですが、一部の食料輸出国は、自国の国民のための食料が不足する事態になっています。例えば、スーパーフードとして人気のキヌアは価格が高騰し、生産国のボリビアやペルーで自国民が入手できなくなる事態が起きています。一方で、貿易を制限すると、農産物の輸出国は収入が無くなります。公平性を保つのは、極めて難しいと思います。

動物福祉(アニマルウェルフェア)が守られている

食用肉となる牛、豚、鶏や乳牛、採卵鶏の多くは、生まれてから死ぬまで、ほとんど身動きの取れない狭い環境で飼育され、自由に動き回ることができません。もともと動物は自由に行動できるようにするべきであるという考えから、欧米を中心に閉じ込め飼育(ケージ飼育)をやめる動きが広がっており、EU域内ではゲージ飼育が禁止され、EU域外国で生産された畜産製品については、EUが定めた動物福祉の基準を満たした製品しか、流通ができなくなる予定です。

残念ながら日本にはこのような考えはほとんど浸透しておらず、欧米で禁止されつつある母豚の妊娠ストールや鶏のケージ飼育、乳牛のつなぎ飼いなどの拘束飼育がふつうに行われているのが現状です。

地域の活性化や伝統的な食文化の継承

特定の地域だけで生産されている農産物や食品を消費者が購入することで、その地域の産業振興が図られるとともに、伝統的な食文化を次の世代に継承することができます。このような消費行動も、広い意味でのエシカルイーティングだと考えられています。

何がエシカルフードなのか

インターネット上には、エシカルフードとしてさまざまな農産物や加工食品が紹介されています。しかし残念ながら、その中には高値で販売することを目的にして、無理やりこじつけたエシカルフードもあるようです。
ある農産物や食品が、エシカルフードかどうか判断することはできません。なぜなら、環境に負荷をかけずに生産できる食品など、ほとんどないからです。ただ同じ食品で生産方法が異なる場合、どちらがエシカルフードかを判断することは可能です。また異なる食品でも、成分が似ている場合、どちらを選択すればエシカルイーティングになるかは、わかります。

ここでは、実例を挙げて、何がエシカルフードなのか、説明をしたいと思います。

国産と外国産なら国産の方がエシカル

同じ食品で、国産のものと外国産のものがある場合。国産の方がエシカルです。理由は、
・農産物・食品の輸送距離が短く、エネルギー消費量が少ないこと。
国内の生産者の暮らしを守ることができること。
の2点です。

動物性と植物性なら植物性の方がエシカル

例えばたんぱく質を摂るために、大豆を食べる場合と肉を食べる場合を考えてみましょう。大豆1kgを生産するためには、水が2.5トン必要ですが、大豆は光合成反応で生育するため、温室効果ガスは出しません。これに対して、牛肉1kgを生産するためには水が20.6トン飼料が20kgが必要で、CO2換算で15kgの温室効果ガス発生します。豚肉の場合は、1kg生産するためには水5.9トン飼料7.3kgが必要で、CO2換算で3.2kgの温室効果ガスが発生します。さらに鶏肉1kg生産するためには水が4.5トン飼料が4.5kgが必要で、CO2換算で3.2kgの温室効果ガスを出します。

このように、大豆と肉を比べると大豆の方がエシカルで、肉の比較では、鶏肉、豚肉、牛肉の順にエシカルです。

近年、ヨーロッパを中心に牛肉を食べるのを控えようという動きが広がっています。牛肉を生産するためには、鶏肉の5倍の水と飼料が必要で、温室効果ガスの排出量も5倍になり、環境負荷が大きいことが問題視されています。大豆などの植物性たんぱく質との比較では、この差はさらに大きくなります。ヨーロッパのマクドナルドでは、植物性の代替肉を使ったべジバーガーが売られています。

地方の産直野菜と地元の地場野菜なら地場野菜の方がエシカル

エシカルフードの紹介サイトに、地方で生産された農産物の産直販売がよく紹介されています。生産されている地域の振興には役立ちますが、これがエシカルフードといえるのかどうか、かなり疑問を感じます。

地方で生産された野菜を宅配便で購入するのと、地元で生産された野菜を地元の直売所やスーパーで購入するのとを比較すれば、後者の方が間違いなくエシカルです。遠方から野菜を輸送するためには、余分なエネルギーが必要です。地場野菜を購入すれば、無駄なエネルギーがかからないうえ、自分が住んでいる地域の振興にも役立ちます。

ニセ・エシカルフードに注意してください

エシカルフードというのは、あくまで倫理的に正しいと思われる方法で生産された食品です。次のような食品が、エシカルフードとして紹介されていることがありますが、全てがエシカルなわけではありません。イメージに惑わされないようにしてください。

農薬や食品添加物を使わずに生産された食品

農薬のなかには環境や人体に影響を及ぼす可能性があるものもありますが、農薬を使わないことがエシカルではありません。また食品添加物もできれば体の中に入れたくありませんが、食品添加物を使わないこととエシカルとは、直接関係ありません
エシカルフードという名前をつけると、プラスのイメージがあるため、有機栽培や食品添加物無添加の食品をエシカルフードといって販売している例があるので、注意してください。

海外で少量生産された食品

海外で小ロットで生産された食品を、エシカルフードといって販売しているケースがあります。小ロット生産で、販売利益が生産者に直接還元されるとうたっていますが、そもそも利益還元はロットの大きさに関係ありませんし、利益が還元される保証もありません。小ロット生産で希少性を高めて、高い価格で販売する戦略に引っかからないようにしてください。

ふだん口にしない食品

ふだんの食生活で口にしないような珍しい食品を、エシカルフードとして紹介している場合があります。でもよく考えてください。ふだんから食べないということは、わざわざ買って食べる必要がないということなのです。
食品を選ぶ前に、食べないという選択肢があることも忘れないでください。そもそも生産しなければ、環境に負荷を与えることはありません。また自分自身が食べなかったら、余分なカロリーをとることも、余分な出費をすることもありません。特定の地域を応援したいのであれば、何らかの方法で寄付をするほうが効率的です。

まとめ

  • エシカルフードは、生産にあたって環境への影響が少なく、生産・加工に従事する人が守られており、富の分配、食料の入手可能性が公平であり、動物福祉(アニマルウェルフェア)が守られているもの。さらに地域の活性化や伝統的な食文化の継承などに貢献できるものも含む。
  • ある農産物や食品が、エシカルフードかどうか判断することはできないが、同じ食品で生産方法が異なる場合や、異なる食品で成分が似ている場合、どちらがエシカルフードかを判断することはできる。
  • 国産と外国産なら国産の方がエシカル、動物性と植物性なら植物性の方がエシカル、地方の産直野菜と地元の地場野菜なら地場野菜の方がエシカルである。
  • インターネットなどでエシカルフードとして紹介されているものが全てがエシカルなわけではありません。