薬剤師が解説! コンブチャの作り方と効果、効能はあるのか

コンブチャという飲みものが健康によいということで話題になっています。

コンブチャは紅茶や緑茶に砂糖を加え、複数の微生物を加えて発酵させたもので、納豆やキムチと同様、発酵食品の一つです。砂糖が発酵することで、酢酸、グルコン酸、エタノール、炭酸ガスができるため、酸味があり微炭酸の飲料です。

健康増進効果があるといわれていますが、科学的に証明されていませんし、直接的なダイエット効果はありません

コンブチャは発酵で作られ、味は酸っぱい

コンブチャ(kombucha)は紅茶や緑茶に砂糖と決まった種類の酵母とバクテリアを加えて、1週間以上発酵させた少し酸味のある発酵飲料です。モンゴルが起源で1)、海外で健康によいと話題になり、日本でも数年前からブームになりつつあります。

コンブチャの特徴は、発酵しているという点です。発酵とは微生物が糖類を分解して有機酸、炭酸ガス、アルコールなどを作ることで、しょうゆ、みそ、ヨーグルト、お酒などは、発酵で作られています。微生物は発酵原料を分解することで、自分が生きるために必要なエネルギーを獲得しているんですよ。

コンブチャを作る際に使われる微生物は、酢酸菌(Komagataeibacter、Gluconobacter、Acetobacterなど)、乳酸菌(Lactobacillus、Lactococcus)と酵母(Saccharomycodesなど) です1)

酢酸菌はお酢やナタデココを作る際に使われる菌、乳酸菌はヨーグルトを作る際に使われたり、腸内細菌として人の体内に棲みついている菌、酵母はビール、ワインの醸造やパンの発酵に関わるものです。

コンブチャを作る環境では、複数の微生物がお互いに助け合いながら生きています。このようにバクテリアと酵母を同時に培養することを、SCOBY(Symbiotic Culture of Bacteria and Yeast、スコビー)といいます。

一方、コンブチャを作るにあたって、発酵原料になっているのは糖類は砂糖で、分解されてできたのは、主に酢酸(お酢)、炭酸ガス、アルコールです。つまりコンブチャには、原料の紅茶や緑茶の成分に加えて、酢酸、炭酸ガス、アルコールが含まれています。コンブチャに酸味があるのは、酢酸(お酢)が含まれているため、また微炭酸であるのは炭酸ガスが含まれているためです。

コンブチャの原料と成分

コンブチャの原料は、紅茶(または緑茶)、砂糖、酵母、バクテリアです。そしてコンブチャに含まれている成分としては、次のようなものが報告されています。なお * 印のものは、原料にもともと含まれていたものです。

含まれている量が多いもの

  • 酢酸
  • グルコン酸
  • エタノール
  • 乳酸
  • 砂糖*

含まれている量が少ないもの

  • グルクロン酸
  • 酒石酸
  • コハク酸
  • リンゴ酸
  • クエン酸
  • ビタミン類
    • ビタミンB1
    • ビタミンB2
    • ビタミンB6
    • ビタミンB12
    • ビタミンC(アスコルビン酸)*
  • 酵素
  • ポリフェノール
    • カテキン*
    • イソラムネチン
  • カフェイン*
  • ミネラル*
    • マンガン
    • ニッケル
    • 亜鉛

コンブチャの意味、名前の由来

コンブチャ(kombucha)というのは英語です。海外でもkombuchaで通じます。

でもこの言葉の響き、昆布茶(こんぶちゃ)に似ていませんか。実は日本語のこんぶちゃが名前の由来です。コンブチャを作ると、液体の表面に寒天のような膜ができます。これが海藻のように見えたことから、こんぶちゃというようになったそうです。ちなみに海藻の昆布を粉末にしてお湯に溶かして飲む日本の昆布茶(こんぶちゃ、こぶちゃ)とは、全く別物です。

人気になった紅茶キノコとコンブチャは同じもの

1970年代に日本で大ブームになった「紅茶キノコ」をご存じでしょうか。

健康飲料として雑誌などで紹介され、またたく間に日本中に広がりました。梅干しや梅酒を作るときに使う広口びんに、紅茶または緑茶と砂糖を入れ、そこへ寒天のような塊を入れて室温で2週間ほど置いておくと発酵が進み、飲むことができるようになります。

当時はこの寒天のような塊が、人から人へ手渡しで広まり、どこの家庭でも作っていました。この塊がキノコのような見えたことから、「紅茶キノコ」という名前がつきました。この塊は、酵母とバクテリアの種菌です。

できた液体は酸味があり、少しアルコールの香りがして、微炭酸でした。いまのKombuchaと全く同じです。ただ家庭で作ると発酵が進み過ぎて、酸っぱくなりすぎることもあったようです。このブームは5年ほどで終わってしまい、紅茶キノコは忘れ去られてしまいました。もし本当に健康によいものであれば、ブームは終わらなかったと思いますが・・・。

紅茶キノコはナタデココで、カロリーゼロ?

もうひとつ過去に流行した食品の話をしましょう。

「ナタデココ」は1990年代にデザートとして大流行し、いまも缶詰やドリンクの形で売られています。コンブチャや紅茶キノコで作られる寒天のような塊は、実はナタデココと同じものです。

ナタデココ(nata de coco)はココナッツの果汁(ココナッツウォーターまたはココナッツジュース)を酢酸菌で発酵させて作ります

酢酸菌は名前のとおりお酢を作る菌ですが、お酢と一緒にセルロースという炭水化物も作ります。このセルロースの部分がナタデココなのです。発酵でできた直後のナタデココは、コンブチャの塊と同じように薄茶色です。これを煮沸することで不純物を取り除いて、純粋なセルロースだけにすると、色が白くなります。わたしたちが食べているのは、この状態のものです。

セルロースは食物繊維の一種で、人間が消化することができませんので、カロリーはゼロです。そのため、健康効果やダイエット効果があるといわれ、一時的にもてはやされました。ブームが去った今では、健康食品として定期的に食べる人も少なくなりましたが、コンブチャでできる塊は、ナタデココと同じものなのです。

コンブチャには健康増進効果は証明されていない

コンブチャには次のような作用があるといわれています2)

  • 抗ガン作用(前立腺がん、肝がん)
  • 抗酸化活性
  • 抗炎症作用(関節炎の軽減)
  • 抗菌性・防かび性
  • 肝保護効果
  • 血糖値低下効果(Ⅱ型糖尿病の症状改善)
  • 血圧低下効果
  • プレバイオティクス効果(腸内細菌叢の改善)

ただしこれらの実験は試験管内で行われたものがほとんどで、人間に対して行われたものではありません。またコンブチャの成分のうち、何が影響しているのかもよくわかっていないうえ、原料にもともと含まれていた成分が影響している可能性もあります。一方で、特定の病気の症状の改善に効果があったという論文もあり、結論が出ていません。

結論としては、コンブチャを飲むことによる人間への健康増進効果は、科学的に証明されていないということになります。

コンブチャでは痩せず、ダイエット効果はない

ハリウッドセレブも飲んでいるコンブチャにはダイエット効果がある、などと書いているのをよく見かけますが、ダイエット効果はないと断言できます。

ダイエット効果の根拠とされているのは、血糖値の低下効果やプレバイオティックス効果です。どういう意味かというと、血糖値が低下すると、中性脂肪の生産が減り、内臓脂肪の増加が抑えられるため、ダイエット効果があるということです。

またプレバイオティックス効果で腸内細菌叢が改善され、善玉菌が増えることで、便秘が解消され、ダイエット効果があるという意味です。このような「風が吹けば桶屋が儲かる」式の理屈を立てれば、ほとんどのものにダイエット効果がある、ということができます。ダイエットの基本は、摂取するエネルギーを減らし、消費するエネルギーを増やすことにつきます。

まとめ

  1. コンブチャ紅茶や緑茶に砂糖を加え、酢酸菌、乳酸菌、酵母で発酵させた少し酸味のある微炭酸の発酵飲料
  2. コンブチャには酢酸、グルコン酸、エタノール、乳酸、砂糖のほか、ビタミン、ミネラル、ポリフェノールが含まれる。
  3. コンブチャは1970年代に日本でブームになった紅茶キノコと全く同じもの
  4. コンブチャを作ったとき表面にできる寒天のような塊は、1990年代にブームになったナタデココと同じもので、成分はセルロース。
  5. コンブチャにはさまざまな健康増進効果があるといわれているが、いずれも科学的に証明されていない。ダイエット効果があるともいわれているが、コンブチャを飲むことによる直接的なダイエット効果はない

参考文献
1) Villarreal-Soto SA, et. al., Understanding Kombucha Tea Fermentation: A Review. J Food Sci., 83 (3) 580-588 (2018)
2) Mousavi SM, et. al., Recent Progress in Chemical Composition, Production, and Pharmaceutical Effects of Kombucha Beverage: A Complementary and Alternative Medicine. Evid Based Complement Alternat Med, 18, 2020:4397543 (2020)