ふだん食べているお米が「うるち米」、お餅やお赤飯に使うお米が「もち米」ですが、これ以外に「タイ米」といわれる細長い粒のお米もあります。
この3つは含まれているでんぷんの比率が違います。
アミロースという成分が多いのがタイ米、少ないのが日本のうるち米で、日本のもち米にはアミロースは含まれません。
うるち米ともち米は含まれているでんぷんの種類が違う
乾燥した状態のお米は、水分を除いた90%がでんぷんです。
でんぷんはグルコースという糖が鎖状につながったものですが、枝分かれのある「アミロペクチン」と、枝分かれのない「アミロース」の2種類があります。水を加えて加熱すると、アミロペクチンは糊状になり、粘り気を生じるのに対して、アミロースは粘り気を生じません。
ふだん私たちがごはんとして食べる「うるち米」は、でんぷんのうちアミロペクチンが73~83%、アミロースが17~27%の比率ですが、「もち米」はアミロペクチンが100%です。
うるち米ともち米の違いは、含まれているでんぷんの種類の違いによるものだったのです。
ところでうるち米は「粳米」、もち米は「糯米」と書きます。「餅米」だと思っていたら、違うんですね。「粳(うるち)」とはアミロースを含む品種のことで、「糯(もち)」はアミロースを全くあるいはほとんど含まない品種のことを言います。「粳」「糯」の違いはお米(イネ)だけでなく、トウモロコシ、オオムギ、アワ、キビ、モロコシ、アマランサスなどにもあります。
タイ米は日本のお米とは違う品種で、性質も違う
わたしたちがふだん食べているいるお米は、比較的小さく丸みを帯びていますが、細長い「タイ米」というのもあります。あまりお目にかかる機会はありませんが、エスニック料理などでときどき出てきます。これは日本のお米とは違う品種です。正確に言うと、「亜種」といって、同じ品種の中で分けられている別の品種ということになります。
タイ米の特徴は次の3つです。
・アミロースが多く、パサパサして粘りがないこと
・独特の匂いがあること
種類が違うのだから当然といえば当然です。さきほどアミロペクチンとアミロースについて説明しましたが、タイ米は日本のうるち米よりアミロースがさらに多く27~31%といわれています。
日本のうるち米と同じように炊飯器で炊くと、パサパサな上に独特な匂いがするため、美味しくありません。タイ米にはタイ米に合った調理方法と食べ方があります。
タイ米をお米だけで食べるときは、煮るのではなく茹でて、茹で汁は捨てます。また日本の白米のように、ごはんとおかずをあわせて食べるのではなく、カレーなどの濃い味のスープなどをかけて、スープと一緒に食べることが多いです。またお米を味の付いたスープと一緒に煮こむこともあります。このようにして食べると、タイ米独特の匂いはまったく気になりません。
タイ米は日本にも輸出されています。
タイ料理店などで食材として使われるのはごく一部で、大半は加工食品の原料となっています。せんべいの原材料欄に米(外国産)とあるのは、ほとんどがタイ米です。またみりんや米味噌の原料としても使われています。
沖縄で作られる「泡盛」という蒸留酒は、タイ米が原料です。タイ米を使うのは、糖化しやすい、アルコール発酵したときの温度管理がしやすい、アルコールの収穫量が多いなどの理由によるもので、すでに明治時代には中国や東南アジアからタイ米を輸入して使っていたそうです。
お米の品種は大きく分けると3つ、タイ米にはもち米もある
お米の品種はどれくらいあるのでしょうか。ふだん私たちが食べているお米だけでも「こしひかり」「あきたこまち」「ひとめぼれ」・・・と数えきれないくらいありますよね。日本で品種登録されているお米は900種類あり、そのうち300種類が栽培されているそうです。日本だけでそんなにあるのなら、世界中でいくらあるのか、わかりませんね。
お米の品種は大きく3つに分けられます。
- ジャポニカ米(japonica)
- インディカ米(indica)
- ジャバニカ米(javanica)
ジャポニカ米
種名:Oryza sativa subsp. japonica
ジャポニカ米は、ふだんわたしたちが食べているお米です。もともと日本、中国東北部と台湾、朝鮮半島などで栽培されていましたが、現在はアメリカ西海岸やオーストラリアでも栽培されるようになりました。それでも世界で生産されるお米の15%程度です。
米粒は丸く、他の品種と比べると小さいのが特徴です。長さが5.5mm以下のものを短粒種、5.51~6.6mmのものを中粒種といいます。すでに説明したように、でんぷんに含まれるアミロペクチンの比率が高いことが特徴で、炊くと水分を多く含むので、軟らかく、粘り気が出ます。
うるち米ともち米があり、うるち米は半透明であるのに対し、もち米は白色をしているので、見た目から見分けがつきます。またうるち米はアミロペクチンが80~85%、アミロースが17~27%の比率ですが、もち米はアミロペクチンが100%で、アミロースを含んでいません。アミロースを含まないお米は、ジャポニカ米のもち米だけです。
インディカ米
種名:Oryza sativa subsp. indica
インディカ米は日本でタイ米と呼ばれているお米です。実は世界で生産されるお米の80%はインディカ米なのです。
インディカ米の産地は、インド、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ベトナムから中国中南部、アメリカ南部、ラテンアメリカなど、世界各地に広がっています。日本、中国東北部と朝鮮半島では栽培されていません。
インディカ米は超粒種(長さが6.61~7.5mm)に分類され、細長いのが特徴です。またジャポニカ米に比べてアミロースを多く含むため、パラパラしていて粘り気がありません。また独特の匂いがあります。後で説明しますが、インディカ米にも、うるち米ともち米があります。
インディカ米は世界各地で食べられているため、国によって調理方法が異なるのですが、代表的な調理方法は次の2つです。
- 茹でる
鍋に沸かした大量のお湯の中に、お米を洗わずそのまま直接入れます。ある程度軟らかくなったら、湯切りをし、そのまま弱火で加熱し、水分を蒸発させます。さらに蓋をしたまま10分ほど蒸らすと、食べられる状態になります。 - スープと一緒に煮る
吸水させたお米を具材の入ったスープの中に入れて煮込み、最後に蒸らして水分を蒸発させます。ピラフ、パエリア、ジャンバラヤ、チキンライスはこの方法で作られます。
インディカ米は味付けの濃い料理とごはんを混ぜたり、また濃い味のスープ(カレーなど)をかけて食べることが多く、日本のようにごはんだけを食べることはほとんどありません。またピラフやパエリアのように、他の材料と一緒に調理され、味が付いた状態で出されることも多いです。
栽培されている大半は、うるち米のインディカ米です。アミロースは27~31%、アミロペクチンが69~73%とアミロースがかなり多いため、粘り気が少なく、食感はパラパラとしています。
インディカ米にももち米があり、タイ東北部とラオスで栽培されています。茹でた状態で出され、おかずと一緒に食べるほか、冷めても固くならないので、日本のおにぎりのような携帯食として、ビニル袋に入った状態で売られています。
ジャバニカ米
種名:Oryza sativa subsp. javanica
ジャポニカと似ていますが、ジャバニカです。javanicaという名前は、インドネシアの首都、ジャカルタがある島、ジャワ島(Java)からきています。
この記事ではジャポニカ米やインディカ米と同じ、亜種(subspecies) として紹介しますが、遺伝子を調べた結果、われわれが食べているジャポニカ米の1グループであることがわかり、「熱帯ジャポニカ」と呼ばれることもあります。インドネシアのジャワ島、アジアの熱帯地域、中南米で栽培されますが、生産量は多くありません。
米粒は大きいですが、日本のお米に近い品種のため、炊くと軟らかくなり、インドネシアでは日本のごはんと同じように食べられています。ただジャポニカ米よりアミロースを多く含むため、パエリアやリゾットのように、具材と一緒に煮こむ料理にも使われます。
タイ米はダイエットになる?
日本の白米(ジャポニカ米のうるち米)とタイ米(インディカ米のうるち米)では、タイ米の方がダイエット効果があるって知っていましたか。これは2つの理由によります。
日本の白米とタイ米では、でんぷんの成分が違うことを説明しました、すなわち、
日本の白米は、アミロペクチン:アミロペクチン:73~83%、アミロース:17~27%
タイ米は、アミロペクチン:69~73%、アミロース:27~31%
です。
アミロペクチンもアミロースも、消化酵素で分解されてグルコースになり、小腸で吸収され、血管に入ります。血液中のグルコース濃度が血糖値です。
アミロースは同じ重量のアミロペクチンに比べて、グルコースに分解されるまでに長い時間がかかります。そのため、アミロペクチンが多いタイ米の方が、消化・吸収に時間がかかり、血糖値の上昇が緩やかになります。
肥満やⅡ型糖尿病の原因の一つが、食後血糖値の急激な上昇です。グルコースは体内でエネルギー源として使われますが、必要とされる量を上回る量のグルコースは、中性脂肪として蓄積されます。
また、血糖値が上昇すると、血糖値を下げるためのインスリンが分泌されますが、血糖値の急上昇が頻繁に起こると、インスリンがうまく分泌されなくなり、Ⅱ型糖尿病になることがあります。
日本の白米もタイ米も、同じように炊飯すると、カロリーはほぼ同じです。
でもタイ米は消化・吸収に、日本の白米の1.4倍の時間がかかるといわれています。その結果、食後血糖値の上昇が緩やかになり、肥満になりにくくなります。
もうひとつは調理方法の違いです。
タイ米は炊くのではなく、パスタと同じように茹でて調理します。茹でる際、茹で汁の中にでんぷんや糖質の一部が溶け出しますが、茹で汁は捨てるので、結果的に食べるお米のカロリーは下がっていることになります。
ピラフやパエリアのように、スープと一緒に煮る場合は、この効果はありませんが、茹でて調理すると、お米のカロリーを下げることが可能です。ただ、東南アジアではお米の茹で汁が、環境汚染になるとのことで、日本のような炊飯器で調理する動きもあるそうです。
一方、日本の炊飯器の中にも、糖質カット機能が付いたものがあります。
まずお米を多めのお湯で炊き、そのお湯を排出し、新しいお湯を加えて、ごはんを蒸らすというものです。排出するお湯に、ごはんに含まれる糖質(でんぷん)の1/3が出るといわれており、この炊飯器を使うと、ごはんのカロリーが2/3になります。これはタイ米の調理方法と全く同じです。日本の白米も、このような方法で炊飯することで、カロリーをカットすることが可能です。
ジャスミンライスとは
最後にジャスミンライス(ジャスミン米)について、説明します。
ジャスミン米はタイ、カンボジアなどで栽培されるタイ米の一種で、香ばしい香りがする超高級米です。
ジャスミンティーというお茶がありますが、これは緑茶やウーロン茶にジャスミン(モクセイ科マツリカ)の花の香を着けたものですが、ジャスミンライスの香りは、もともとこの品種のイネが持つ香りです。
ジャスミンの甘い香りではなく、香ばしい香りです。またふつうのタイ米に比べて柔らかくしっとりとしており、甘い風味があるそうです。この香りは収穫後数か月で失われるため、新米が高値で取引されています。日本でも入手できますが、国産米より高い値段で売られています。
まとめ
- うるち米ともち米の違いは、含まれるでんぷんの種類の違いです。うるち米はアミロペクチンが73~83%、アミロースが17~27%ですが、もち米はアミロペクチンが100%です。アミロペクチンが多いほど、炊いたときに粘り気が出ます。
- タイ米はアミロペクチンが69~73%、アミロースが27~31%と、日本のお米よりアミロースが多いため、粘り気が少なく、パサパサしています。さらに形が細長く、独特の匂いがあります。
- タイ米は茹でるか、スープと一緒に煮て食べます。茹でた場合も、味付けの濃い料理と混ぜたり、また濃い味のスープをかけて食べてりするので、匂いは気になりません。
- アミロースは消化・吸収に時間がかかるため、タイ米は日本のお米に比べて、食後血糖値の上昇が緩やかになります。また茹でるとでんぷんや糖質が溶け出すため、食べるときのカロリーが低くなり、ダイエット効果があります。