ココナッツオイル、ココナッツミルク、ココナッツウォーターのメリット、デメリット

ココナッツウォーター、ココナッツジュース、ココナッツミルク、ココナッツオイルなど、ココナッツを使った食材が日本でも簡単に手に入るようになりました。

でもココナッツのどの部分を原料にしてどのような方法で作っているのでしょうか。また使うにあたって、メリットやデメリットはあるのでしょうか。また巷でいわれているダイエット効果や健康増進効果は本当なのでしょうか。

栄養成分をもとに、解説していきます。

ココナッツはココヤシの実で食べ方は?

ココナッツヤシ科のココヤシという植物の果実です。

ココヤシは熱帯地方でよく見られる植物で、成長すると高さが30mくらいになります。果実は食用になるほか、果実の皮から取り出した繊維はロープの材料になります。また木の幹は木材として使われます。日本では沖縄県と小笠原諸島でのみ育つといわれています。

ココナッツのうち、食用になるのは胚乳の部分です。生のまま食べるほか、ココナッツミルクやココナッツオイルに加工されます。また未成熟の果実の胚乳の部分が、ココナッツウォーターになります

ココナッツは生産量が多いのはインドネシア、フィリピン、インド、スリランカです。日本で売られているココナッツ製品のほとんどは海外からの輸入です。

ココナッツウォーター・ココナッツジュースの味はまずいって本当?

ココナッツウォーターとココナッツジュースは同じものです。ここではココナッツウォーターという名前で説明していきます。

ココナッツウォーター成熟する前の緑色の果実の内部に溜まっている液体で、果実1個あたり約1L含まれるそうです。色は透明ですが、すこし黄色味かかっています。東南アジアやハワイ、カリブ海などの暑い地域で人気の飲み物で、ココヤシを上部をカットして、ストローを突き刺したものが屋台などで売られているほか、紙パックや缶に入ったものがスーパーで売られています。

もともとこれらの地域では生水を飲むことができないため、水分補給の手段としてココナッツウォーターは需要がありました。新鮮で衛生的であることを示すため、生の果実をその場でカットして提供するスタイルを取っているそうです。

ココナッツウォーターの栄養成分

ココナッツウォーターは、低カロリーでミネラルを多く含んでいることから、日本でも健康飲料として注目されています。ココナッツウォーターの栄養成分を見てみましょう1)。いずれも100gあたりの数値です。

ココナッツウォーター ポカリスエット2)
エネルギー 22kcal 25kcal
たんぱく質 0.2g 0g
脂質 0.1g 0g
炭水化物 5g 6.2g
食物繊維 0g
グルコース 3.2g
フルクトース 2.9g
スクロース 1.8g
灰分 0.4g
ナトリウム 11mg 47mg
カリウム 230mg 20mg
カルシウム 11mg 2mg
マグネシウム 6mg 0.6mg
リン 11mg
0.1mg
亜鉛 0.1mg
マンガン 0.16mg

ココナッツウォーターのカロリーは100gあたり22kcalとスポーツドリンクとほぼ同じですが、カリウム、カルシウム、マグネシウムが多く含まれます。逆にナトリウムは少なくなっています

またグルコース、スクロースなど小腸ですばやく吸収されてエネルギー源となる糖類を含んでいます

ココナッツウォーターを飲むメリットとデメリット

ココナッツウォーターは100%天然物由来です。保存料も甘味料も一切含まれていません。また水分も、植物が地中から吸収したもので、塩素消毒などが行われていません。化学合成されたものを摂りたくない人には、お勧めです。

スポーツドリンクは化学薬品を調合して作られていますし、原料の水は水道水なり地下水を殺菌して使っている可能性があります。

運動して汗をかくと、エネルギー、水分、ミネラルが失われますが、ココナッツウォーターはこれらをすべて含んでいます。

海外では基本的に生水や水道水は飲むことはできないので、水はミネラルウォーターを購入する必要があります。発汗後の水分補給に用いるのであれば、ミネラルウォーターよりココナッツウォーターの方がよいと思います。

さらにナトリウムが少ないという点もメリットです。

ナトリウムというとわかりにくいかもしれませんが、要は「塩分」です。ココナッツウォーター100gの食塩相当量はわずか0.03gであるのに対し、スポーツドリンクでは0.12g含まれています。日本人はもともと塩分を摂り過ぎているので、ナトリウムが少ないココナッツウォーターはよいと思います。

一方、ココナッツウォーターには独特の青臭さがあります。また糖類は入っていますが、それほど甘くありません。トロピカルフルーツを連想していた人は、おいしくないと感じるかもしれません。またココナッツウォーターだけで発汗時の水分補給をする場合、ナトリウムが不足します。化学物質を調合して作るスポーツドリンクは、失われたミネラルがきちんと補給されるようになっているのです。

最後に日本でココナッツウォーターを飲む場合は、ほとんどが輸入品になります。沖縄県などでも栽培されていますが、日本で出回っているものは、ほとんどが東南アジアからの輸入です。海外から輸送するにあたって温室効果ガスが排出されることや、日本の食糧自給率が下がることを考えると、どんどん飲みましょうとはいえません。

なお、ココナッツウォーターを紹介している記事に、必ずといってよいほど載っているのが、美容効果と健康効果です。○○の成分が多いから○○の効果がある、というのは、ほとんどウソです。ココナッツウォーターを飲んだからといって、痩せたり、肌がきれいになったり、生活習慣病が予防できたりすることはありません

・100%天然物由来。化学合成されたものは一切含んでいない。塩素消毒された水も使っていない。
・カリウムなどのミネラル、グルコースなどの糖類を多く含む一方、塩分が少ない。
・独特の青臭さがある。甘くない。
・ほとんどが輸入品。

ココナッツミルクはカレーやお菓子のレシピが人気!

ココナッツミルクは、成熟したココヤシの内部に溜まった固形胚乳をすりおろし、これを水またはココナッツウォーターと一緒に弱火で煮込んでから裏ごしして、目の粗い布でしぼって作ったものです。ココヤシの内部にココナッツミルクが溜まっているわけではありません。缶詰にして売られていることが多いです。

原料の胚乳という部分は、お米と同様、でんぷんや糖質が主成分です。そのため、ココナッツミルクはココナッツウォーターよりも濃厚で、乳白色をしており、甘い味がします

ココナッツミルクの栄養成分

ココナッツミルクは料理やお菓子の原材料として使われる機会が増えてきました、どんな成分が含まれているのでしょうか。牛乳、豆乳と比較してみましょう1)。なおいずれも100gあたりの数値です。

ココナッツミルク 牛乳 豆乳
エネルギー 157kcal 61kcal 44kcal
たんぱく質 1.9g 3.3g 3.6g
脂質 16g 3.8g 2.0g
炭水化物 2.8g 4.8g 3.1g
水溶性食物繊維 0.2g 0.2g
不溶性食物繊維 0g 0g
でんぷん 3.8g 0g 0.1g
グルコース 2.0g 0g 0g
フルクトース 1.9g 0g 0g
スクロース 1.1g 0g 0.8g
ラクトース 0g 4.4g 0g
灰分 0.5g 0.7g 0.5g
ナトリウム 12mg 41mg 2.0mg
カリウム 230mg 150mg 190mg
カルシウム 5mg 110mg 15mg
マグネシウム 28mg 10mg 25mg
リン 49mg 93mg 49mg
0.8mg 0mg 1.2mg
亜鉛 0.3mg 0.4mg 0.3mg
0.22mg 0.01mg 0.12mg

ココナツミルクのカロリーは牛乳の2.5倍、豆乳の3.5倍と高いです。これは脂質が多く含まれているからです。

ココナッツミルクの脂質は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの中鎖飽和脂肪酸が多いため、一般的な油よりもすばやく消化・吸収され、すぐにエネルギーに変わります。またでんぷん、グルコース、スクロース、フルクトースを含んでいるため、甘い味がします。灰分は同じ植物が原料の豆乳と似た組成になっています。脂質を多く含んでいるため、そのまま飲むのには適していません。

ココナッツミルクを使うメリットとデメリット

ココナッツミルクは、カレー、スープのような煮込み料理、クッキーやケーキなどの焼き菓子、プリンやムースなどのデザートの原料として幅広く使われます。

ココナッツミルクは、牛乳、豆乳の代わりに使うことができます。そのため乳成分や大豆の食物アレルギーを持っている人にとっては、アレルゲンフリーの代替食材になります。またココナッツミルクに含まれる脂質は、中鎖脂肪酸が中心なので、消化・吸収されやすく、胃もたれしません。

 

ところで中鎖脂肪酸については、ネット上でさまざまな害が指摘されていますが、いまのところが害があるという証拠はないようです。この点については、詳しく調べて、別の記事でお知らせしたいと思います。

ココナッツミルクには、独特の甘い香りがあり、料理や菓子に使う場合は、香りづけの目的としても使われます。そのためどんな料理にでも合うというわけではありません。またほとんどが輸入品であるため、温室効果ガスの排出や、日本の食料自給率低下に対する懸念があります。

・牛乳、豆乳の代わりに使える。
・脂質が多いが中鎖脂肪酸は消化・吸収されやすく、胃もたれしない。
・独特の甘い香りがあるため、用途が限られる。
・ほとんどが輸入品。

ココナッツオイルの効果は おすすめできる?

ココナッツオイルとは、ココナッツの胚乳から抽出された油で、ヤシ油とも呼ばれます。胚乳には脂肪分が多く含まれるため、これを濃縮したものがココナッツオイルです。ココナッツミルクもココナッツの胚乳から作られ、中性飽和脂肪酸が多く含まれると紹介しました。この油脂だけを取り出したのが、ココナッツオイルです。

なおアブラヤシという別のヤシ科の植物から作られる油にパーム油とパーム核油(カーネル油)がありますが、これらはヤシ油とは呼ばれません。

ココナッツオイルの製造方法

最初にココナッツの胚乳を天日や熱で乾燥させます。こうして作られたものをコプラといい、脂質を多く含んでいます。これを搾って油脂分を取り出し、さらに精製することでココナッツオイルができ上ります。コプラから油脂分を取り出すとき、有機溶媒という化学物質を使う場合もあります。有機溶媒を使うと回収率が上がりますが、最終製品に有機溶媒が残留する危険性があります。

これ以外にココナッツミルクから水分を分離して作る方法もありますが、効率が悪いので、一般的ではないようです。

ココナッツオイルの特徴

ココナッツオイルの脂肪酸組成(重量%)は、

  • ラウリン酸 43%
  • ミリスチン酸 16%
  • パルミチン酸 8.5%
  • オクタン酸 7.6%

となっています1)。これらの脂肪酸はいずれも中鎖飽和脂肪酸といわれるもので、比較的高い温度で固まる性質があります。そのためココナッツオイルは25℃以上では透明な液体ですが、20℃以下では白い固体になります。また飽和脂肪酸が多いため、油の酸化(劣化)が起こりにくいといわれています。

さらに脂肪酸の分子が小さい(中鎖というのは鎖の長さが中くらいということ)ため、長鎖脂肪酸の多いほかの植物油と比べて消化・吸収されやすいという特徴もあります。

ココナッツオイルを使うメリットとデメリット

ココナッツオイルを勧めたい人は、美容効果や健康増進効果があるといっていますが、科学的根拠はありません。一方、ココナッツオイルに批判的な立場の人は、発がん性がある、動脈硬化を引き起こすといっていますが、こちらは摂取量にもよるので、必ずしも危険ともいえません。

ココナッツオイルの香りが好きだとか、たまには違った材料を使って料理を作ってみる、という場合はよいかもしれませんが、何らかの効果を期待してココナッツオイルを使うのは、止めた方がよいでしょう。

・あまりない
・値段が高い

まとめ

  1. ココナッツは熱帯地方でよく見られるココヤシという植物の果実。果実の胚乳の部分が食用になるほか、果実の皮の繊維はロープの材料に、木の幹は木材になる。
  2. ココナッツウォーターとココナッツジュースは同じもので、未成熟の果実の内部に溜まった液体のこと。果実1個あたり約1L含まれる。低カロリーでカリウムとグルコースが含まれる
  3. ココナッツウォーターは100%天然物由来で、化学合成されたものは一切含んでいない。
  4. ココナッツミルクは、成熟したココヤシの胚乳を水またはココナッツウォーターと一緒に弱火で煮込んで、裏ごししてから搾ったもの。脂質を多く含むほか、糖類も含む。牛乳や豆乳の代わりに使えるが、独特の甘い香りがあるので、用途が限られる。
  5. ココナッツオイルはココナッツの胚乳から抽出された油で、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オクタン酸といった中鎖飽和脂肪酸を多く含む、そのため20℃以下では固体になる。美容効果や健康増進効果があるといわれているが、科学的な根拠はない。

参考文献
1) 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
2) 大塚製薬、ポカリスエット2Lペットボトル、栄養成分表示