キムチは発酵食品で腸活に効果ありって本当?

キムチは発酵食品で、乳酸菌が入っているからからだによいと思っていませんか?

すべてのキムチが乳酸発酵で作られているわけではありません。またキムチには塩分や唐辛子が大量に入っているため、食べ過ぎるとからだによくありません。唐辛子の成分が代謝を促進しますが、そもそも食べる量を減らさないとダイエットにはならないのです。

キムチが好きで食べるのはよいですが、健康目的でキムチを食べるのはお勧めできません

キムチは韓国の歴史ある漬物

いまや日本でもふつうに食べられるようになったキムチ(kimchi)。もともとは朝鮮半島で野菜が手に入りにくい冬に備えた保存食で、野菜に塩、唐辛子、にんにく、魚介類の塩辛、出汁を加え、乳酸発酵することで作ります。

キムチは地域や季節、調味料の種類や配合、熟成方法がさまざまあり、種類は200を越えるそうです。さらに各家庭伝来の漬け方があるため、家庭ごとに味が異なるのも特徴です1)。代表的なものしては、白菜キムチ、カクテキ、ナバッキムチなどがあり、日本の食品スーパーでも売られています。

この白菜キムチの作り方をごく簡単に紹介すると、

  1. 白菜を1日塩漬けにする
  2. 白菜を水洗いする
  3. 白菜の葉にだいこんの千切り、唐辛子粉、にんにく、魚介類の塩辛、出汁などを加える
  4. 容器に入れて室温で4~5日置いておく

そうすると、容器の中で乳酸発酵が進み、キムチができ上ります。

日本で売られているものは冷蔵されており、それ以上乳酸発酵が進まないようにしてあるので、賞味期限は2週間から1か月くらいです。賞味期限内でも乳酸発酵がゆっくりと進む場合があり、発酵が進むとより酸味が強くなります。また乳酸発酵が起きると、乳酸とガスが生成するので、密閉容器に入れていると、容器が破裂する場合があります。

キムチの乳酸菌はいつどこからくるのか

乳酸発酵をするためには乳酸菌が必要です。

乳酸菌は酸素がない状態で糖類から乳酸を作る性質のある菌で、ヨーグルトやチーズを作るのにも使われています。腸内環境を整える働きがあるので、乳酸菌の入った食品やサプリメントがたくさん出回っています。

キムチを作るための乳酸菌は、どのタイミングで入れているのでしょうか

さきほど説明した白菜キムチの作り方をもう一度見てください。乳酸菌を入れるという工程がありません。実は自然界に存在している乳酸菌をそのまま使っているのです。
乳酸菌はどこにでもいます。たとえば白菜、唐辛子、にんにくの表面にも付着していますし、キムチを作る工場の壁や、キムチを熟成させる容器にも付着しています。キムチを作っているところなら、ほかの場所より多くの乳酸菌がいても不思議ではありません。

日本酒や焼酎も、蔵や桶に棲みついている酵母が、その蔵元特有の味を出すといわれています。伝統的な発酵食品であるキムチもこれと同じで、キムチを作る環境にいる乳酸菌が、キムチ独特の味を作っているのです。

国産キムチは乳酸発酵していないものが多い

キムチは乳酸発酵で作られる、という説明をしてきましたが、実は乳酸発酵していないキムチもあり、日本ではそちらの方が主流です。

こちらはどのようにして作るかというと、野菜をキムチ味の調味料に漬け込んで作ります。酸味は乳酸発酵で作られた酸味ではなく、もともと含まれていた調味料のよるものです。

乳酸発酵していないキムチにも、メリットはあります。製造後に発酵が進まないことです。乳酸発酵で作ったキムチは、製品の中に乳酸菌が残っているので、冷蔵していても発酵が進みます。そのため、時間が経つにつれて酸味が増し、好みにもよりますが、酸っぱくって食べられなくなってしまいます。これに対して乳酸発酵していないキムチは、味が変わることはあまりありません。

この浅漬け型のキムチを家庭で手軽に作れるようにしたのが、桃屋の「キムチの素」です。塩もみした白菜か、白菜の浅漬けにこれと砂糖、ごま油を加えることで、キムチ(同社は「キムチ」ではなく「キムチ漬」といっています)を簡単に作ることができます。

乳酸発酵で作られたキムチと、浅漬け型のキムチ(韓国ではキムチとはいいません)を比較しました。

乳酸発酵で作られるキムチ

  • 購入後も乳酸発酵が進み、酸味が増す。
  • 生きた乳酸菌がいる(購入後6日目くらいが一番量が多いという情報も)
  • 韓国からの輸入品が多い
  • 韓国政府が発酵キムチを証明するマーク「キムチくんマーク」が付いている
  • 韓国農協のキムチキャラクター「アルンちゃんマーク」が付いている

浅漬け型のキムチ

  • 賞味期限内は、味はあまり変わらない
  • 乳酸菌は含まれていない(発酵食品ではない)
  • 国産品が多い

キムチは危険!?塩分はどれくらい

乳酸発酵で作られるキムチは、生きた乳酸菌がそのまま摂れるすばらしい発酵食品です。最近の腸活ブームに乗って、

・キムチには植物性乳酸菌がたっぷり含まれるので、腸内環境を整える
・腸内環境が改善されると免疫力がアップする
・キムチには食物繊維が多いので便秘が解消される

などの情報が出回っています。これらは間違いではありませんが、キムチという食品にはデメリットもあることも知ったうえで、食べるかどうか判断してもらいたいと思います。

塩分の摂り過ぎ

キムチを食べ過ぎることで起きる一番の問題は、塩分の摂り過ぎです。キムチに含まれる塩分は製品によって異なりますが、製品100gあたり食塩相当量として2~3gではないでしょうか。

健康によいからといって毎食食べていると、間違いなく塩分の摂り過ぎになります。塩分を摂り過ぎると、むくみや高血圧の原因になります。なおこれはキムチだけではなく、漬物全般にいえることです。

唐辛子の摂り過ぎは胃がんリスクを高める

唐辛子にふくまれるカプサイシンという成分は、肺がん、乳がん、結腸がん、直腸がんを抑える効果がある一方で、胃がんのリスクを高めるといわれています。これについてはまだ結論が出ていませんが、中国の研究者4,761件の研究データの解析を行った結果、中程度から高濃度の唐辛子の摂取は、胃がんのリスクが1.96倍増加させることをつい最近、明らかにしています2)

なお胃がんの主なリスク要因はピロリ菌なので、胃がんにならないためには、唐辛子を食べないことよりも、ピロリ菌の検査を行い、見つかった場合は除去するほうが有効であることも付け足しておきます。

さらにカプサイシンは刺激性があるので、多量に摂取すると口、食道、胃などの粘膜を傷つけることがあります。ひどい場合は腹痛や吐き気を催すこともありますが、そのような状態になるまでキムチを食べ続ける人はいないので、これは考慮しなくてもよいでしょう。

輸入食品に対する不信感と嫌悪感

国産キムチは浅漬け型のものがほとんどなので、乳酸発酵したものを入手しようとすると、本場韓国産になります。ただ韓国からのキムチの輸入量は2005年に減少しました。そのきっかけになったのは、中国産キムチから寄生虫が発見されたことです。これは韓国産ではありませんが、輸入キムチに対する不信感を根付かせる結果となりました。

最近でも2020年に中国で不衛生な方法でキムチを漬けている「裸キムチ」映像がSNS上に拡散したり、中国産のキムチが韓国産と偽って販売されていたことなど、いまもキムチにまつわるさまざまな報道があります。これらは日本発ではなくすべて韓国発の情報です。このような食の安全・安心を根底から覆すようなことが起きている一方で、日本製品の不買運動や、福島県産食品に対する輸入禁止措置など、いわれのない批判が続いています。このような状況で、韓国の食品を積極的に購入したいと思わない人もいるのではないでしょうか。

キムチダイエットに効果はあるのか

ネット上にキムチダイエットなるものが紹介されていますが、よく読むとあまり意味がありません。

キムチダイエットのポイントは、

  • 1日の食事の中にキムチを無理なく取り入れる
  • キムチは低カロリー
  • キムチに含まれるカプサイシンが代謝をよくする
  • 発酵食品なので腸内環境を整える
  • 食物繊維が豊富なので便秘を解消する

ということだそうです。

これまでこの記事を読んで下さった方は、このダイエット法は効果がないとわかっていただけると思います。

塩辛いキムチを食べると、白ごはんが進みます。実際「ごはんがススム」という名前のキムチもあるくらいです。キムチが低カロリーでも食べすぎる可能性があります。カプサイシンが代謝をよくするのは事実ですが、カプサイシンをたくさん摂ったところで、摂取するカロリーを減らすか、消費するカロリーを増やすかしないと、ダイエットにはなりません。

発酵食品~については、すでに説明した通りで、私たちが慣れ親しんでいる国産キムチでは、この効果は期待できません。食物繊維が多いのは事実ですが、キムチを食べるより生野菜を食べたほうが、塩分もカプサイシンも少なく、よほど効果的です。

しかもキムチは1日に50~150gくらいにするとよいでしょうと書いてありますが、これでは塩分の摂り過ぎになり、むくみの原因になります。

まとめ

  1. 本場韓国のキムチは、自然界に存在する乳酸菌による乳酸発酵で作られる。一方、国産のキムチの中には、野菜を調味液につけて作られる浅漬け型のキムチが多い。浅漬け型キムチは賞味期限内に味が変わることが少ない。
  2. キムチを食べ過ぎると、塩分の摂り過ぎになり、むくみや高血圧の原因になる。また唐辛子に含まれるカプサイシンは胃がんのリスクを高めるという報告もある。
  3. キムチを健康目的で食べるのはやめたほうがよい。キムチダイエットは特に効果は期待できない。

出典
1) 韓国農水産食品流通公社ウェブサイト
https://www.atcenter.or.jp/item/list/kimuchi.php
2) Yanbin Du et. al., Chili Consumption and Risk of Gastric Cancer: A Meta-Analysis, Nutr Cancer 73 (1) 45-54 (2021)