とろみ付けに使う粉はどれがよい? 片栗粉、小麦粉、コーンスターチ

お料理のとろみ付けに使う粉といえば、片栗粉ですね。片栗粉は水に溶いて60℃以上に加熱すると、とろみがつきます。片栗粉以外にもコーンスターチ、小麦粉、米粉もとろみ付けができますが、とろみの付きやすさは、コーンスターチは片栗粉の1/5、小麦粉と米粉は1/10になります。とろみ付けに使える粉について、詳しく見ていきましょう。

とろみ付けに使われる粉

お料理にとろみをつけると、材料にスープなどの液体がしっかりとつくだけでなく、液体の対流が減るため、料理が冷めにくくなります。また、食感がよくなるという効果もありますね。お料理のとろみ付けに使われる粉とその特徴をまとめてみました。意外とたくさんありますね。

片栗粉

  • 原料・製法:ジャガイモに含まれるでん粉を精製したもの
  • 特徴:水を加えて加熱すると60℃以上で糊化する。冷めるともとに戻る。
  • 値段:60 円/100 g
  • 味・香り・色:無味・無臭・透明
  • 粘り気(相対比):10
  • おすすめ度:★★★★★

コーンスターチ

  • 原料・製法:トウモロコシの胚乳の部分を粉状にしたもの
  • 特徴:水を加えて加熱すると糊化する。冷めても粘り気は残る。
  • 値段:40 円/100 g
  • 味・香り・色:独特な味と臭い、黄白色
  • 粘り気(相対比):2
  • おすすめ度:★★

小麦粉

  • 小麦の胚乳の部分を粉状にしたもの
  • 特徴:とろみはあまりない。たんぱく質が多い。
  • 値段:22 円/100 g
  • 味・香り・色:独特な味と香り、乳白色
  • 粘り気(相対比):1
  • おすすめ度:★

米粉

  • うるち米を粉状にしたもの
  • 特徴:とろみはあまりない。
  • 値段:86 円/100 g
  • 味・香り・色:ほとんど無味無臭、白色
  • 粘り気(相対比):1
  • おススメ度:★★★

 

potato starch

とろみ付けに使われる粉の特徴と使う際のコツ

片栗粉:とろみ付けに最適、ただし水で溶いてから使う!

料理のとろみ付けに最も適しているのは片栗粉です。理由は、

  • 粘り気が強い
  • 無味・無臭・透明であるため、料理の味や見た目に影響しない

からです。

使う際は、同量から倍量の水に片栗粉をよく溶かしてから料理に加え、とろみがつくまで加熱し、とろみがついた後も、さらに1分くらい加熱すると、しっかりとしたとろみをけることができます。

片栗粉をお湯に溶かしたり、片栗粉を粉のまま料理に加えたりすると、粉がダマになって、均一に混ざりません。これは片栗粉のでんぷんが、約60℃で変性して粘り気が出るためです。必ず水に溶かして均一な液にしてから、料理に加えることが重要です。

片栗粉のとろみは、温度が下がれば減少していきます。ただとろみがついた後、さらにしっかり加熱することで、ところみの減少はある程度は防ぐことができます。

片栗粉の原料は、ジャガイモです。ではどうしてカタクリという名前なんでしょうか。じゃがいも粉の方が正しいのでは、と思いませんか。もともと片栗粉は、カタクリというユリ科の植物の根茎から作っていました。水洗いしたカタクリの根を水の中ですりつぶすと、水の中に白い粉が沈殿します。これを集めて乾燥したものが、もともとの片栗粉でした。自然に生えているカタクリからでは増産が難しかったのでが、ジャガイモから作ったでんぷんが、カタクリから取ったでんぷんと性状が似ていたため、ジャガイモでんぷんが片栗粉という名前でそのまま売られるようになりました。明治時代のことです。なお、片栗粉は英語で potato starch といいます。

コーンスターチ:とろみは強いが、味、香り、色がある

水で溶いたコーンスターチも粘り気はあるので、とろみ付けや固める目的で、加工食品によく使われます。

ただコーンスターチのとろみは、片栗粉の1/4~1/5しかありません。それなら、たくさん加えたらよいのか、ということになりますが、それは絶対にやるべきではありません。なぜなら、トウモロコシから作ったコーンスターチには独特の味と香りがあります。そして何より透明ではなく、黄白色をしています。入れすぎると、料理の味も見た目も変わってしまいます。片栗粉の代用品として使うのであれば、後で説明する米粉の方がおすすめです。

コーンスターチも片栗粉と同様、60℃くらいで変性し、粘り気が生じます。ただ異なる点は、温度が下がっても粘り気が残ることです、そのためコーンスターチは、プリンやカスタードクリームの凝固剤としても利用されています。

小麦粉:とろみが少なく、味・香り・見た目が変わってしまう

小麦粉はどこのご家庭にもだいたいあるのではないでしようか。片栗粉がないときに小麦粉もとろみ付けに使えますが、とろみは片栗粉の1/10ほどしかありません。ホワイトソースやカレーでは、小麦粉が使われていますが、これは他の目的も兼ねています。

ですから、とろみ付けだけの目的で小麦粉を使うことは、あまりおすすめできません。一番の問題点は、小麦粉を加えることで、味・香り・見た目が変わってしまうことです。小麦粉には特有の味と香りがあります。また小麦粉を水で溶くと、乳白色になります。さらに小麦粉はでんぷん以外に、7~12 %(重量比)のたんぱく質が含まれています。もし米粉があるのなら、米粉の方かおすすめです。

米粉:とろみは少ないが、味と見た目を損ないにくい

米粉もとろみ付けに使えますが、とろみは片栗粉の1/10程度で、小麦粉と同程度です。ただコーンスターチや小麦粉と比べると、味と香りが強くないので、料理の風味を損なうことは少ないと思われます。ただ米粉は透明ではなく白色なので、汁物の場合、料理の見た目が変わってしまいます。

米粉をそのまま加えると、ダマになりやすいので、あらかじめ水でよく溶いてから加える必要があります。さらにいろいろな種類の米粉が出ていますが、できるだけ粉の粒が小さいもの、すなわち上新粉ではなく、米粉と表示されているものの方が、適しています。

片栗粉でとろみがつく原理

片栗粉を入れるととろみがつくのは、なぜなんでしょうか。これはお米を炊くと軟らかくなるのと同じ原理です。

片栗粉の成分はでんぷんです。でんぷんは乾燥した状態では固いですが、水を加えて加熱すると吸水して軟らかくなり、粘り気が出てきます。この現象を糊化(こか)あるいはアルファ化といいます。片栗粉の粉を押さえると、キュッキュッときしむ音がしますが、これは硬いでんぷんの粒どうしがぶつかり合うことによって出ています。

片栗粉に水に溶いただけでは、ほとんど粘り気はありません。これは水中にでんぷんの粒が分散している状態です。これを加熱し 60℃ 以上にすると、でんぷんの粒が水分を吸って軟らかくなるのと同時に膨らんで急激に粘り気が出てきます。ですから、水に溶いた片栗粉を料理に加えてから、1~2分間、加熱する必要があります。

では片栗粉の濃度がどれくらいのとき、どのようなとろみや固さになるのでしょうか。

とろみの付いた汁物の場合、片栗粉の濃度は0.5~1 %です(1 %とは、1 g を 水 100 g に溶かした状態)。

片栗粉が入っていないと、大きな具材は沈んでいきますが、片栗粉を入れると沈まず、汁の中に分散します。八宝菜やあんかけ料理では、あんの中に含まれる片栗粉は 3~5 %です。あんが具材に絡むので、具材と煮汁を同時にとることができ、煮汁に溶出した成分を無駄なく食べることができます。またあんがあるおかげで、料理につやが出て見た目がよくなるほか、口当たりがよく、ボリューム感も増します。

さらに片栗粉の濃度が高くなると、葛餅や水まんじゅうの衣ができます。葛餅の原料は葛粉ですが、葛の根から採った葛粉(本葛粉といいます)は流通量が少なく、ほとんどが片栗粉と同じ、ジャガイモでん粉です。粉の濃度が 20 % くらいになると、葛餅のような透明感のある塊になります。

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とろみ上手は水溶き不要のでんぷん粉末

日清フーズから出ているとろみ上手という商品をご存じですか。

片栗粉でとろみをつけようと思うと、片栗粉を水で溶かなければなりまんが、この商品は水で溶かずに、料理にそのまま加えることができます。とろみの加減を見ながら、入れる粉末の量を調節することができるので、無駄がありません。またから揚げなどの衣として使うこともできます。何が入っているのでしょうか。

原材料欄には、でん粉/加工粉(一部に小麦を含む)としか書いていないので、何が原料なのかわかりませんが、小麦粉が含まれているようてです。メーカーのホームページには、でん粉と加工でんぷんを顆粒化して溶けやすくしていると書かれていました。細かい粉のままだと、水に加えると固まってしまいますが、顆粒にすると粉末の粒子の間に多くの空気を含んでいるため、水に入れたときに顆粒が崩壊して、固まりにくくなるのではないかと思います。

ところで加工でんぷんは食品添加物の中でも、規制が厳しい指定添加物なので、水溶きの手間を惜しんで、この商品を使うかどうかは、悩むところです。また、価格は片栗粉の 4~5 倍と少々高くなっています。

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まとめ

料理にとろみをつけるためには、片栗粉がおすすめです。ただし必ず水で溶いてから料理に加え、60℃以上に加熱する必要があります。片栗粉以外では、米粉、小麦粉、コーンスターチも使うことができますが、味や色が変わってしまうこともあります。でんぷんを顆粒にすることで、水溶きなしでとろみ付けに使える「とろみ上手」という商品もあります。

片栗粉でとろみがつく原理は、お米を炊くとネバネバするのと同じ原理で、これを糊化、またはアルファ化といいます。片栗粉のでんぷんは乾燥状態では固いのですが、水を加えて 60 ℃ 以上に加熱すると、でんぷんが吸水して膨らみ、粘り気が生じます。これかとろみがつく理由です。

片栗粉の濃度が 0.5~1 %で汁物のとろみ、3~5 %であんかけや八宝菜などのあん、20 % で葛餅の皮の固さになります。