プラスチックチョコレートは飾りや模造品を作るための材料で、チョコレートの成分に水あめを加えることで、冷めた状態で加工しやすくしたものです。つやや光沢がプラスチックに似ているため、プラスチックチョコレートという名前が付いていますが、プラスチックは入っていないので食べられます。ただ、加工性を重視しているため、ふつうのチョコレートに比べると美味しくありません。また原材料にも注意が必要です。
プラスチックチョコレートは加工性重視
今年もバレンタインデーが近づいてきました。コロナ禍で増えたおうち時間を使って、チョコを手作りする人も多いでしょう。プラスチックチョコレート(プラチョコ)は、パティシエの方がさまざまな飾りや模造品を作るときに使う材料で、加工しやすく、つやがあって見た目もよく、食べられる粘土ともいわれます。最近は製菓材料を扱うお店やネット通販で簡単に手に入ります。ブラチョコを使ったバラの花の作り方、なんて動画も出ています。
ところでプラスチックチョコレートって、何なのでしょうか。プラスチックチョコレートは、チョコレートの原材料に、水あめ、コーンスターチ、ゼラチン、植物性油脂などを加えて、細工や着色をしやすくしたものです。チョコレートは温めると液状になり、冷えると固くなりますが、プラスチックチョコレートは冷えても固くならず、粘土のように柔らかい状態のままです。そのため、いろいろな形に加工することができます。
つやと光沢があり、見た目がブラスチックと似ていることから、プラスチックチョコレートという名前が付いていますが、プラスチックは入っていません。ただ、味よりも見た目と加工性を重視しているため、ふつうのチョコレートと比べると、おいしくありません。
チョコレートは、カカオ豆の種子を発酵・焙煎したカカオマスに、カカオ豆の脂肪分であるココアバター、砂糖、粉乳、植物性油脂を混ぜて練り固めたものです。日本ではカカオマスとココアバターが含まれる量によって、チョコレートの規格が決まっています。カカオマス、ココアバターといったカカオ豆の成分が多いものほど、品質がよいとされています。
プラチョコにも、カカオマスやココアバターが多く使われた、いわゆるチョコレートもありますが、それ以外の成分が多い準チョコレートや、それ以外のもの(この場合は、チョコレートと表示できない)もあります。
プラスチックチョコレートはまずい
美味しい、まずいは個人の好みによるので一概には言えませんが、プラスチックチョコレートは飾りや模造品を作るためのもので、加工性が重視されているため、美味しくありません。食べられますが、あくまで飾りを作るための材料なのです。
プラチョコが美味しくない理由は、次の通りです。
カカオマスやココアバターが少ない
チョコレートの味、香りの元になるのは、カカオ豆から採ったカカオマスとココアバターです。カカオ豆は気候変動で生産量が減っており、ここ数年で価格が上昇しています。そのため安い価格で供給するためには、カカオマスやココアバターの量を減らさなければなりません。味よりも加工性が重視されるプラチョコでは、その傾向が強いといえます。
食べないことも想定している
プラチョコで作られる飾りや模造品は、メインのスイーツではないため、食べずに廃棄されることもあります。そのため見た目や加工性がよく、値段の安いものが好まれます。テレビ番組で、プラスチックチョコレートを大量に使って家具や日用品を作り、食べられるか食べられないかを当てる、といったことをよくやっていますが、何十キロのプラチョコはどうなったのでしょうか。
プラスチックチョコレートで使われる原材料
チョコレートは温めると軟らかくなり、冷めると固まりますが、プラスチックチョコレートでは、冷めたときにカチカチに固まるのではなく、ある程度の固さも保ちながら、容易に加工ができるような柔らかさが必要です。そのため次のような原材料が使われます。
水あめ
プラスチックチョコレートに必ず含まれているのは、水あめです。水あめは、コーンスターチを酵素で分解して作った甘味のある透明な粘液です。これをチョコレートに20%くらい加えると、冷めてもチョコレートが固くならず、粘土のような柔らかい状態になります。またチョコレートに比べて、つやと光沢が増すため、飾りや模造品の原料として最適です。水あめの量を調節することで、柔らかさを調節することができます。
水あめの主成分はグルコース(ブドウ糖)とマルトース(麦芽糖)です。どちらも甘味はありますが、砂糖(スクロース、ショ糖)ほど、甘くありません。この中途半端な甘さの水あめが20%も入っているため、プラチョコは中途半端な甘さになってしまっています。そのため、甘味を加えるため、砂糖や人工甘味料を加えているプラチョコもあります。
ゼラチン
ゼラチンは豚や牛の皮や骨から採ったたんぱく質で、ゼリーを作るときに使われるものです。温めると軟らかくなり、冷めると固まります。プラスチックチョコレートの粘り気を調節するために使われることがあります。チョコレートとゼラチンという組み合わせは、ちょっと考えにくいです。ただ加工食品は、目的とする性状を得るために、ありとあらゆる原材料が使われます。こうなると、食べものというより、科学的に作られたものという感じがするのは、わたしだけでしょうか。なおゼラチンはアレルギー反応の原因になることがあるため、注意が必要です。
大豆レシチン(乳化剤)
もともとチョコレートは、水溶性のカカオマスと砂糖が、脂溶性のココアバターの中に分散しているものです。ところがコストダウンのためにココアバターの量を減らすと、固まらなくなってしまいます。それを防ぐために、大豆から抽出したレシチンという物質が使われています。これは、ゼラチンと同様、冷めたときに固くするために添加されているものです。
大豆レシチンは、ふつうのチョコレートにも使われています。チョコレートのアレルゲン表示に大豆と書いてあって、えっ、と思った方も多いのではないでしょうか。コストダウンのために、本来使わないものを加えている典型的な例です。
まとめ
- プラスチックチョコレートは飾りや模造品を作るための材料で、チョコレートの成分に水あめを加えることで、冷めた状態で加工しやすくしたもの。つやがあって見た目もよく、食べられる粘土ともいわれる。
- プラスチックチョコレートは味よりも加工性が重視されるため、ふつうのチョコレートに比べると美味しくない。その理由は、チョコレートの味、香りの元になるカカオマスやココアバターが少ないこと、食べないことも想定してコストダウンしていること。
- プラスチックチョコレートでは、冷めたときに加工できるようにするため、水あめが使われる。水あめをチョコレートに20%くらい加えると、粘土のような柔らかい状態になりつやと光沢が増す。そのほか、固さを調節するため、ゼラチンや大豆レシチンもよく使われる。