タピオカ粉は、キャッサバという熱帯地方で栽培されるイモから採ったでんぷんです。
タピオカミルクティのブームで一躍有名になりましたが、現地では料理やお菓子の材料として日常的に使われています。
タピオカ粉のカロリーや栄養成分は片栗粉やコーンスターチとほとんど変わらず、太る食材でもダイエット食材でもない、ただのでんぷんです。
タピオカはキャッサバというイモが原料で作り方は?
キャッサバは東南アジア、アフリカ、中南米でよく栽培されているイモです。
雨が少ない地域や栄養分が少ない土壌でも育ち、茎を土に指しておくだけで自然に成長します。このイモから採ったでんぷんがタピオカ粉で、タピオカでんぷん、キャッサバ粉とも呼ばれます。
タピオカ粉は海外では料理やお菓子の材料として使われていましたが、日本ではあまり使われることはありませんでした。2018年ごろからタピオカミルクティが人気を集め、いわゆるタピオカブームが始まりました。
これはミルクティに入っているタピオカでんぷんで作った粒「タピオカパール」がインスタ映えするというのが理由で、タピオカパールが特別においしいというわけではありませんでした。そのためブームが過ぎたいまでは、タピオカミルクティを売っていた店は、紅茶販売店として生き残りを図っているようです。
ところでタピオカパール(スターチボールともいいます)は、タピオカ粉に水を加えてドロドロにしたものを、特殊な鍋にいれて回転させながら球状に加工したものです。
乾燥したものも売られており、その場合は1~2時間かけて煮戻す必要があります。とにかく純粋なでんぷんからできているので、無味無臭です。そのため紅茶の味や香りを邪魔することがなかったわけです。
ちなみにミルクティに使われている黒いタピオカパールは、カラメル色素やイカ墨で着色されたもので、着色していないものは白色です。
日本でタピオカといえばタピオカパールのイメージがありますが、東南アジアや南米などでは、料理やお菓子の材料として日常的に使われています。
イモを粉状にして他の食材と一緒に煮たり、タピオカ粉で作ったパンもあります。ブラジルの伝統的なチーズパンであるポン・デ・ケージョは、タピオカ粉、チーズ、牛乳、卵が原料です。
タピオカ粉はでんぷんでカロリーもふつう
タピオカ粉のカロリーと栄養成分は次のとおりです。見ていただければわかるように、じゃがいもから作られたでんぷんである「片栗粉」や、トウモロコシから作られたでんぷんである「コーンスターチ」とほとんど変わりません。
タピオカ粉の紹介記事に、カリウムやカルシウムが豊富と書いてあるのを見ましたが、全く無意味な表現です。確かに片栗粉やコーンスターチよりは多いですが、カリウムやカルシウムを多く含む食べものは他にいくらでもあります。
カリウムはむくみ対策になるとまで書いていますが、それはカリウムの話で、タピオカとは何の関係もありません。タピオカ粉を摂ったところで、むくみ対策にはなりません。
またタピオカ粉はまた小麦粉、米粉などと比べても、カロリーはほとんど同じなので、ダイエット食材ではありません。要するに、何らかの栄養成分が多く含まれているわけでもない、でんぷんの粉です。
タピオカでん粉 | 片栗粉(じゃがいもでん粉) | コーンスターチ(とうもろこしでん粉) | 米粉 | 小麦粉(薄力粉/1等) | こんにゃく粉 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
エネルギー | kcal | 354 | 338 | 363 | 374 | 367 | 194 |
たんぱく質 | g | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 6 | 8.3 | 3.0 |
脂質 | g | 0.2 | 0.1 | 0.7 | 0.7 | 1.5 | 0.1 |
炭水化物 | g | 85.3 | 81.6 | 86.3 | 81.9 | 75.8 | 85.3 |
灰分 | g | 0.2 | 0.2 | 0.1 | 0.3 | 0.4 | 5.6 |
カリウム | mg | 48 | 34 | 5 | 45 | 110 | 3000 |
カルシウム | mg | 28 | 10 | 3 | 6 | 20 | 57 |
マグネシウム | mg | 5 | 6 | 4 | 11 | 12 | 70 |
食物繊維総量 | g | 0 | 0 | 0 | 0.6 | 2.5 | 79.9 |
タピオカパールを食べたら太るという情報もありますが、これも無意味な情報です。タピオカミルクティに入っているタピオカパールは店によって異なり、30gから120gまでさまざまです。例えば60g入っていて、それを全部食べたとしても、
タピオカ(タピオカパール) 60g → 37 kcal (ごはん一口分)
と、大したカロリーにはなりません。
なんでもたくさん食べたら太るので、タピオカパールが太りやすい食べ物、ということではありません。
こんにゃく粉から作られたタピオカパールもある
タピオカミルクティに入っているタピオカパールは、茹でてあるタピオカパールを注文を受けたその場でドリンクに入れます。
タピオカパールはでんぷんの塊なので、時間が経つとふやけて、最後は溶けてしまいます。例えばぜんざいやお汁粉の中に入れるお餅は、食べる直前に入れます。もし小豆と一緒にお餅を煮こむと、お餅は溶けてなくなってしまいます。
タピオカパールも同様で、時間が経つと柔らかくなり、プチプチとした食感も得られなくなります。
ではコンビニで売っているタピオカミルクティは、なぜ溶けないのでしょうか。それは、こんにゃく粉が使われているからです。
おでんのこんにゃくは長時間煮込んでも溶けません。これではタピオカミルクティではなく、こんにゃくミルクティなのですが、こんにゃく粉をつかったタピオカパールも、タピオカとして売ってよいことになっています。
こんにゃく粉をつかったタピオカパールには、メリットとデメリットがあります。
・カロリーが低い(タピオカの半分)
・こんにゃく特有の匂いと味がする
・タピオカとは食感が異なる(若干固く歯ごたえがある)
タピオカ粉の用途、食品添加物としても使われている
日本でも輸入食材を扱っているお店で、タピオカ粉を見かけるようになりました。値段は片栗粉とあまり変わりません。片栗粉はとろみ付けに使われることが多いのですが、タピオカ粉は何に使えるのでしょうか。
結論からいうと、何にでも使えます。
例えば小麦粉の代わり、米粉の代わり、片栗粉やコーンスターチの代わりにも使えます。
タピオカ粉には味やにおいはありませんが、もちもちした弾力感があります。小麦粉の一部をタピオカ粉で置き換えてお好み焼きを作ると、小麦粉だけのお好み焼きより固くて、もちもちしたお好み焼きができます。片栗粉の代わりにとろみ付けにも使えますが、片栗粉ほど強いとろみがは得られません。
このように使おうと思えば何にでも使えますが、他の粉と比べて、カロリーも栄養成分もほとんど変わらないので、積極的に使う理由も見当たりません。
強いて言えば、小麦アレルギーの人が小麦の代わりに使うくらいかもしれません。この場合でも、小麦粉をそっくりタピオカ粉で置き換えると、別物になりますので、米粉と混ぜるなど、工夫が必要です。
価格の安いタピオカ粉は、そのままあるいは化学薬品で処理したものが、食品添加物として使われています。
化学薬品で処理したものは、加工でん粉と表示されますので、タピオカ粉が使われているとはわかりません。
増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料として、食感改良や保存性の改善(要するに賞味期限を延ばすこと)を目的に、さまざまな加工食品に使われています。
タピオカ粉は危険?原料には毒があるがタピオカ粉は安全
タピオカでんぷんは、キャッサバというイモから採ったでんぷんであることを説明しました。
このキャッサバには、シアン化合物という毒が含まれています。
シアン化合物といってもピンときませんが、青酸カリは聞いたことがあるでしょう。シアン化合物の一つである青酸カリはシアン化カリウム(化学式で書くとKCN)のことで、致死量はわずか0.2gです。生のキャッサバのイモにはシアン化合物が含まれており、毒抜きが必要です。
毒抜きは割と簡単で、
- 皮をむく:シアン化合物の90%は皮に存在します
- 水に漬ける:シアン化合物は水に溶けるため、イモから水に染み出します。茹でることで、水につけておく時間を短縮できます。
の2ステップで、シアン化合物は除去できます。このほかにも、天日干しや酵素による分解など、地域やイモの用途によってさまざまな方法があるようです。
東南アジアやアフリカなどでは、毒を抜いたイモを粉にし、調理して食べます。
またタピオカ粉はこのイモから取り出したでん粉です。日本へ輸入されているタピオカ粉に、青酸化合物が含まれている可能性はありません。安心して食べられます。ちなみに生のキャッサバは、輸入が禁止されています。
まとめ
- タピオカ粉は、キャッサバという熱帯地方で栽培されるイモから採ったでんぷんです。片栗粉、コーンスターチとカロリー、栄養成分も大きく変わりません。
- 味・においがないため、どのような料理にも使えます。小麦粉や米粉の一部を置き換えることもできますが、積極的に使うメリットもありません。
- タピオカ粉に水を加えてどろどろにして、球状にしたものをタピオカパール(スターチボール)といい、一時期流行したタピオカミルクティで使われていました。液体の中に長時間入れておくとふやけるため、コンビニで売っているタピオカミルクティでは、タピオカ粉の代わりにこんにゃく粉で作ったタピオカパールが使われています。