ゼラチン、寒天、アガー、ペクチンの違いは? ゲル化剤・凝固剤の特徴

食品をゼリー状に固めるために使うものを、ゲル化剤や凝固剤といいます。ゼラチン、寒天、アガー、ペクチンなどがよく知られていますが、これ以外にも聞きなれないゲル化剤が開発され、加工食品で使われています。ゲル化剤の原料や主成分と、固まる条件や用途について解説します。

ゲル化剤の種類、原料、用途

ゲル化剤って、聞きなれない言葉ですよね。
液体で流動性がないものを「ゲル」といいます。これに対して、液体で流動性があるものを「ゾル」といいます。
「ゾル」に加えることで「ゲル」を作るための物質が、「ゲル化剤」です。

つまり、
ゾル + ゲル化剤 → ゲル

具体例でいうと、ゼリーが固まる前の状態がゾル、固まってできたゼリーがゲル、固めるために加えるゼラチンがゲル化剤になります。

ゲル化剤のことを凝固剤と呼ぶこともありますが、基本的に同じものです。ただ、食品衛生法ではゲル化剤と呼んでいます。ゲル化剤には、いろんな種類があります。

ゼラチン

牛の骨、皮などの成分であるコラーゲンを加熱して抽出したもので、たんぱく質が主成分です。

ゼリー、ババロア、ムース、マシュマロなどの菓子類や、ハム、ソーセージ、テリーヌなどの総菜にも使われます。

50~60℃のお湯に溶け、20℃以下で固まります。60℃以上にすると、固まりにくくなります。また固めたものを冷凍すると、離水(=水分が抜けること)します。

寒天

海藻の仲間である紅藻類のテングサから不純物を取り除いて乾燥させたもので、アガロースアガロペクチンなどの多糖類が主成分です。

水ようかん、杏仁豆腐、ところてんの原料になります。

90℃以上のお湯に溶け、35~40℃で固まります。固めたものを冷凍すると離水します。

アガー(カラギナン)

海藻の仲間である紅藻類のヤハズツノマタ、コトジツノマタに含まれる成分を取り出したもので、ガラクトースアンヒドロガラクトースなどからなる多糖類が主成分です。

ゼリー、プリン、水ようかんなどを作るときにゼラチンや寒天の代わりに使うことができます。

90℃以上のお湯に溶け、30~45℃で固まります。冷凍することができます。

ペクチン

サトウダイコン柑橘類りんごの果皮から酸で抽出したもので、メチル化ポリガラクチュロン酸という多糖類が主成分です。

ジャムやムースなどに使われます。

90℃以上のお湯に溶け、HMペクチンは強酸性(pH2.5以下)かつ高糖度(55~80%)のとき60〜80℃で固まり、LMペクチンはカルシウムやカリウムがあり、かつ酸性から中性(pH3.2〜6.8)のとき、30〜40℃で固まります。

アルギン酸ナトリウム

海藻のうち、コンブ、ワカメ、ひじき、モズクなどの褐藻類から抽出した多糖類で、無味無臭の白色の粉末です。

アルギン酸ナトリウムの水溶液を、カルシウム塩を含む水溶液の中に垂らすと、室温で球形や紡錘形のゲル(ゼリー状の物質)を作ることができます。ゲル化は、カルシウム塩と接触する球の表面だけで起こり、内部は液体のままです。またこのゲルは加熱しても溶けません。この技術を使って、人工いくら、人工ふかひれ、ポッピングボバ(コーティングジュース)などが作られています。

ガードラン

アグロバクテリウムという名前の微生物による発酵で、タンクの中でグルコースから作られる増粘多糖類で、無味無臭の粉末です。水には溶けず、アルカリに溶けます。加熱すると固まる性質や、耐熱性や冷凍解凍耐性があり、加熱や中和などによりさまざまなタイプのゲルを作ることができるので、食品の品質改良や卵などアレルギー素材の代替に用いられます。

水への分散液を80℃以上に加熱すると、溶けないゲルができ、60℃以上に加熱した後冷やすと溶けるゲルができます。ゼリーや豆腐などのゲル化剤として使われます。

ゲル化剤の特徴と使用のコツ

ゲル化剤は液状のもの固めるために使いますが、ゲル化剤によって、固まる温度や溶ける温度が異なります。さらに、液体が酸性か、中性か、アルカリ性かによって、固まったり固まらなかったりするものや、液体に含まれる成分の影響を受けることもあります。ゲル化剤の特徴を理解したうえで、うまく使うことが重要です。

ゼラチンの特徴と使い方

ゼラチンを使ったゼリーは、プルンとした弾力があり、透明なのが特徴です。ゼラチンそのものは少し黄色味かがった粉末ですが、純度の高いものは無味無臭の粉末です。

溶かすときは、ゼラチンの4~5倍量のお湯に少しずつ溶かします。ゼラチンの粉末を一度に入れると、ダマになって溶けなくなります。また冷たい水には溶けません。また必ず、50~60 ℃のお湯に溶かす必要があります。ゼラチンの主成分はたんぱく質なので、60 ℃よりも高い温度にしてしまうと、たんぱく質が変性して固まりにくくなります。

溶かしたゼラチンを液体に加え、最終的にゼラチンの量が液体の重さの 2~3 %になるようにします。ゼラチンの量が多くなると固くなり、少ないと軟らかくなります。

ゼラチンを加えた液体を冷やすと、20 ℃以下で固まります。冷やすときは冷蔵庫に入れたほうがよいでしょう。また、いったん固まっても、25 ℃以上で溶けます。また冷凍には不向きです。いったん凍らせると水分が外に出てしまい、もとの食感には戻りません。

さきほど述べたように、ゼラチンはたんぱく質なので、たんぱく質分解酵素を含む果物や果汁を加えると、固まりません。具体的には、パイナップル、キウイ、パパイヤなどです。これらを使う場合は、果物や果汁をあらかじめ加熱しておくと、酵素が失活するので固まります。また缶詰は製造段階で加熱しているため、酵素が失活しており、問題なく使うことができます。

tokoroten

寒天の特徴と使い方

寒天はゼラチンのゼリーよりも少し軟らかく、口当たりがなめらかです。また固まった寒天は半透明から白濁しています。ちなみに寒天だけを固めたのが、ところてんです。

寒天には、粉末寒天、糸寒天、角寒天があります。糸寒天と角寒天はあらかじめ水につけて戻す必要があります。

粉末寒天の場合は 1 g に対し 100~150 ml のお湯を、糸寒天と角寒天は 2 gに対して 100~150 ml のお湯をそれぞれ用意し、寒天を入れて煮沸します。沸騰してきたら火を弱め、そのまま 2分程度沸騰させ続けると、寒天がきれいに溶けます。

寒天は 90 ℃以上にしなければ溶けません。溶かした寒天を液体に加え、最終的に寒天の量が液体の重さの 1 % 程度になるようにします。

寒天を加えた液体は、35~40 ℃で固まります。いったん固まった寒天は、70 ℃以上になるとまた溶けますが、常温では溶けないので、冷蔵庫に入れる必要はありません。冷凍すると、ゼラチンと同じように、水分が外に出てしまうので、元の食感には戻りません。

寒天の主成分は、アガロースやアガロペクチンなどの多糖類です。酸性の果汁や牛乳と寒天を一緒に煮ると固まらなくなる場合がありますが、寒天液を作ってから果汁やジュースを加えると、問題なく固まります。

アガー(カラギナン)の特徴と使い方

日本でアガーとして売られているのは植物性のゼリーの素で、多くの場合、海藻から抽出したカラギナンが主成分です。まれにマメ科の種子から採ったローストビーンガムを使っている場合もあります。ここではカラギナンについて説明します。

ちなみに英語でagarは「寒天」のことです。なぜこんなややこしい名前を付けたのでしょうか。

カラギナンはゼラチンのゼリーよりも軟らかく、口当たりもなめらかです。しかもカラギナンは完全な無色透明です。

カラギナンはあらかじめ水に溶かす必要がなく、ベースの液体に加えることができます。ベースの液体を火にかけて90 ℃ 以上になったところへ、粉末のカラギナンを少しずつ溶かします。最終的にカラギナンの量が液体の重さの 1.5~3 %になるようにします。

カラギナンを加えた液体は、30~45℃で固まります。いったん固まったカラギナンは、60℃以上になるとまた溶けますが、常温では溶けないので、冷蔵庫に入れる必要はありません。カラギナンは、ゼラチンや寒天とは異なり、冷凍保存が可能です。

販売されているときは、ゼリー用やムース用というように、用途に応じて調合されていますので、使用の際は、パッケージの記載に従うのがよいと思います。

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ペクチンの特徴と使い方

ペクチンはジャムが固まるもとになっている物質で、果物の皮に含まれています。オレンジ、いちごなどの皮に砂糖を加えて加熱すると、皮からペクチンが溶け出して、ジャムが固まります。またフルーチェというデザート食品は、牛乳をまぜると固まりますが、これにもペクチンが含まれています。ペクチンの粉末も売っていますが、ふだんの生活で使うことは少ないかもしれません。

ペクチンはサトウダイコン、かんきつ類やりんごの果皮から酸で抽出します。ほかのゲル化剤と比べると軟らかく、口どけがなめらかです。ゼラチン、寒天、アガーとは異なり、酸味の強い果汁など強酸性の液体や牛乳などの乳製品も固めることができます。ペクチンの粉末は 90〜100 ℃のお湯に加えて煮立たせてから使いますが、あらかじめ砂糖と混ぜてからお湯に溶かすことで、ダマになるのを防ぐことができます。

ペクチンの主成分は、メチル化ポリガラクチュロン酸という多糖類ですが、メチルエステル化されている割合の違いによって、高メトキシル(HM)ペクチン低メトキシル(LM)ペクチンに分けられます。

HMペクチン強酸性(pH 2.5 以下)かつ高糖度(55~80 %)で固まる性質があり、pHが低く、糖度が高いほど、早く固まります。ゲル化が始まる温度は60〜80 ℃とかなり高く、固める液体をあらかじめ加熱しておく必要があります。高糖度のジャムに使われているのは、HMペクチンです。

LMペクチンカルシウムやカリウムなどのミネラルによって固まるペクチンで、酸性から中性(pH 3.2〜6.8)で固まります。またゲル化が始まる温度は30〜40℃は低いので、ペクチンを加えたのちに固める液体を冷蔵庫で冷やします。フルーチェに使われているペクチンはこれで、牛乳に含まれるカルシウムで固まります。また低糖度のジャムはHMペクチンでは固まらないので、LMペクチンを使用します。

まとめ

  1. 食品をゼリー状に固めるためのゲル化剤(凝固剤)としてよく使われるものに、ゼラチン、寒天、アガー、ペクチンがあります。
  2. ゼラチンは牛の骨、皮などの成分であるコラーゲンを加熱して抽出したもので、ゼリー、ババロア、ハム、ソーセージ、テリーヌなどに使われます。50~60 ℃のお湯に溶け、20 ℃以下で固まります。
  3. 寒天は海藻のテングサから不純物を取り除いて乾燥させた多糖類で、水ようかん、杏仁豆腐、ところてんに使われます。90 ℃以上のお湯に溶け、35~40 ℃で固まります。
  4. アガー(カラギナン)は海藻のヤハズツノマタ、コトジツノマタなどに含まれる多糖類です。ゼリー、プリン、水ようかんなどを作るときにゼラチンや寒天の代わりに使うことができます。90 ℃以上のお湯に溶け、30~45 ℃で固まります。
  5. ペクチンはサトウダイコン、かんきつ類やりんごの果皮から抽出した多糖類で、ジャムやムースなどに使われます。90℃以上のお湯に溶け、HMペクチンは強酸性(pH 2.5 以下)かつ高糖度(55~80 %)のとき60〜80 ℃で固まり、LMペクチンはカルシウムやカリウムがあり、かつ酸性から中性(pH 3.2〜6.8)のとき、30〜40 ℃で固まります。
  6. アルギン酸ナトリウムはコンブ、ワカメなどの褐藻類から抽出した多糖類、ガードランはアグロバクテリウムという微生物による発酵で作られる多糖類で、ともに無味無臭です。加工食品に使われます。