無洗米は精米したお米の表面に残っている肌ぬかを取り除いたもので、洗わずにそのまま炊くことができる便利なお米です。
無洗米には洗米の手間が省ける、節水ができる、廃水が出ないというメリットがありますが、それ以外にも同じ5kg入りだと無洗米の方が1合分多く入っており、お得です。
また無洗米の方が酸化しにくく、保存性にも優れています。
無洗米はぬかが取り除かれていて、洗わなくてよい
玄米の表皮と胚乳の部分(ぬか)を取り除いたのがふつうの白米、すなわち精白米です。
ただ精白米の表面には粘着性の高いぬかが残っており、これを「肌ぬか」といいます。肌ぬかを取り除くため、精白米は炊飯する前に研ぎ洗いが必要です。
この肌ぬかを特殊な方法で取り除いたのが「無洗米」で、袋から出して、水を加えるだけで炊くことができます。
玄米を100とすると、精白米は90です。つまり精米の過程でぬかが10取れたことになります。精白米90を無洗米加工すると、87.3になります。肌ぬかとして2.7(精白米の3%)取れたということになります。
無洗米は日持ちするほか、メリットがたくさんある
洗米の手間が省け、節水でき、廃水が出ない
お米を3合(450g)研ぎ洗いするためには、4.5リットルの水が必要なので、無洗米を使えば、この分が節水になります。また4.5リットルの排水の中には、肌ぬかが14g含まれることになるので、無洗米を使うことで、廃水を出さなくて済みます。そして何よりも、お米を洗う手間が省けます。
同じ重さだと無洗米の方が1合150グラムお得になる
精白米5kgと無洗米5kgは同じではありません。精白米は肌ぬかが3%(150g)含まれているので、実際に食べられるのは4.85kgです。これに対して無洗米は5kgすべて食べられます。つまり5kg入りのお米を買ったとき、無洗米の方が1合(150g)多く入っているということになります。
お米が長期保存できる
無洗米は肌ぬかが取れているため酸化しにくく、精白米よりは日持ちします。精白米では肌ぬかが空気に触れることで酸化・分解され、味が劣化したり、古米臭が生じることもあります。ちなみに玄米は全体が果皮で覆われていて空気に触れないため、酸化しにくくなっています。
肌ぬかを有効利用できる
無洗米工場で発生する肌ぬかは、肥料や飼料として有効利用されています。
栄養価は精白米と同じ
ある無洗米メーカーのホームページに、精白米を研ぎ洗いした場合と、無洗米の栄養成分の比較表があったので、紹介します。玄米の数値は、筆者が追記しました。数値は100gあたりの重量です。
精白米を手洗い | 無洗米 | 玄米 | ||
---|---|---|---|---|
たんぱく質 | g | 4.9 | 5.1 | 6.8 |
脂質 | g | 1.0 | 1.0 | 2.7 |
炭水化物 | g | 77.8 | 79.6 | 74.3 |
灰分 | g | 0.2 | 0.2 | 1.2 |
ビタミンB1 | mg | 0.03 | 0.05 | 0.41 |
ナイアシン | mg | 0.24 | 0.44 | 6.3 |
出典:東洋ライスホームページ、玄米は日本食品標準成分表2020年版(八訂)
その会社は「無洗米は精白米と栄養は変わらず、水溶性ビタミンは2倍」といっています。水溶性ビタミンとは、ビタミンB1とナイアシン(ニコチン酸、ビタミンB3)のことを指しているのだと思いますが、もともと含まれている量が少ないので、2倍であっても優れた数字ではないと思います。これらの水溶性ビタミンを多く摂りたいのなら、玄米をお勧めします。
また農林水産省のホームページには、「(無洗米は)洗米による栄養価(水溶性ビタミンやミネラルなど)の流失が低減できる」と書いてありますが、上のデータを見る限りでは、そこまではいえないということがわかります。
無洗米はパサパサ?デメリットはほとんどない
無洗米にデメリットがあるとすれば、
- 値段が高い
- 食べたい銘柄米に無洗米が用意されていない
- 吸水の時間がかかる
の3点です。
一方、ネット上には「まずい」「高い」「栄養価が低い」などという意見もありますが、あくまで少数意見です。美味しいかどうかは個人が判断することなので、食べた人がまずいと言えばそうなんでしょうが、無洗米をふつうのお米と同じ方法で炊いて、「まずい」と言っている場合もあるようです。
無洗米と精白米は、水加減と吸水時間が異なりますので、炊き方が異なります。
つぎに「高い」というのは事実です。だいたい5kg入りの袋で100円の差があるようです。精白米と比べると、工程が一つ増えていますので、仕方がないでしょう。
ただ、正味の量が多い(5kg入りの袋の場合、無洗米の方が1合分多く入っている)、水道代を節約できる、洗米の手間を省くことができる、廃水を減らせる、お米が酸化しにくくなる、というメリットを考えれば、決して高いとはいえないでしょう。
最後に「栄養価が低い」というのも、全く根拠がありません。一部のメーカーが「無洗米の方が栄養価が失われない」というのも、同様に根拠がありません。
無洗米はどうやって製造される?
無洗米の製造方法は、大きく分けて3つあります。どの方法で作った場合も、安全性にまったく問題ありません。
肌ぬかの粘着性を利用して剥がし取る(BG精米製法)
1.2~2%の水を加えて表面を濡らした精白米を装置に入れ、装置内の小さな突起物で精白米をはじきとばすと、粘着性のある肌ぬかは装置内の金属壁に付着します。
付着した肌ぬかに、他の精白米の肌ぬかも付着していき、最後に金属壁に付着した肌ぬかを取り除きます。
肌ぬかが取り除かれた米粒と肌ぬかの塊を仕分け機で分離して、無洗米を作ります。
BGとはBran(ぬか)、Grind(削る)という意味です。この方法は精白米と少量の水以外、何も使用しないため、廃水が発生することもありません。
国内で生産されている無洗米の73%はこの製法で作られています。このプロセスは東洋ライスが特許を持っています。
タピオカでんぷんを吸着材として使い肌ぬかを取る(NTWP方式)
NTWPとはNeo Tasty White Process(ネオ・ティスティ・ホワイト・プロセス)の略です。
精白米の表面に5%の水を添加して肌ぬかを柔らかくし、続いて80~100℃に加熱したタピオカでんぷんを入れて精白米と一緒に撹拌することで、柔らかくなった肌ぬかがタピオカでんぶんに吸着されます。
そして精白米とタピオカでんぷんを分離し、精白米を乾燥させることで、無洗米ができ上ります。この方法で加工された無洗米はTWR(Tasty White Rice)と精米機メーカーは名付けています。
なお吸着剤として使われるタピオカでんぷんはリサイクルされ、再び吸着剤として使われます。このプロセスは株式会社サタケが特許を持っています。
水洗いして乾燥させる(水洗式)
精白米に対して12~100%の水を加えて、精白米に付いている肌ぬかを水で洗い落として、お米を短時間で乾燥させる方法です。お米を洗う作業を工場で行っていることになります。
無洗米と表示する規格は見当たらない
無洗米には規格や基準はあるのでしょうか。
特定非営利活動法人全国無洗米協会のウェブサイト(https://www.musenmai.com/quality.html)には、認定無洗米の基準として、次の2点が書かれています。
①ぬかが取れていること
- 加工日当日に、水400mlに無洗米3gを入れ、50秒間浸透させた水の濁度が28ppm以下の場合、合格。濁度計は日本電色製を使用。
- 特殊顕微鏡で観察した結果、肌ヌカの残存がほぼ見られないものも合格とする。
②うまみ成分が損なわれていないこと
- 当協会の検査員が、無洗米と無洗米になる前のお米を食べて比較し、元のお米に比べて食味が、同等以上である場合、認定する。
この基準については、かなり疑問があります。まず浸透水400mlに対し無洗米3g、時間50秒、濁度28ppmという規準は、何を根拠にしているのでしょうか。
水を加えるだけなのか、混ぜるのか、研ぐのかによって、水の濁り方はだいぶ違います。無洗米も水を加えて研ぐと、研ぎ汁は白濁しまが、これはほとんどがでんぶんで、ぬかではありません。
また濁度は光を全く通さないときが0、100%通すときが1で、ppmなどという濃度の単位が付くことは通常ありません。濁度計メーカーの日本電色工業株式会社のウェブサイトも確認しましたが、この濁度の基準自体、疑問に思います。
また食味試験をするとのことですが、食べてわかるのでしょうか。肌ぬかを取り除く方法が違ったくらいで、食味が変わるとも思えません。
全国無洗米協会は日本で唯一の無洗米の審査機関だそうです、そして上記に認定(認証と書いてある場所もある)を受けると、「認証マーク」を表示できるとのことでした。
ただこの基準は国の基準ではないので、認定(認証?)を受ける義務はないようでした。余談ですが「認定」か「認証」か表示にゆらぎがあっては、マークをもらっても無意味な気がします……。
ちなみに全国無洗米協会の専務理事は、BG精米製法の特許を持つ東洋ライスの副社長で、全国無洗米協会の事務所は東洋ライスの建物の中にあります。東洋ライスは無洗米の製造特許を巡りサタケを訴えており(サタケが全面勝訴)、中立公平な組織がどうか、疑問が残るところです。
結局、売り手が「無洗米」だといえば、無洗米と表示することができるということになります。
無洗米と普通米の炊き方の違いは水の量
ポイントは「水の量」と「吸水」の2点です。
無洗米は肌ぬかをあらかじめ取り除いているため、同じ分量を量っても、正味の量は無洗米の方が多くなります。そのため、無洗米の方が3%程度多く水を加える必要があります。
最近の炊飯器には、無洗米コースがあるものも多く、精白米と無洗米で異なる目盛がつけられているので、それに従えば問題ないと思います。また吸水をしっかり行うようにとのことで、夏季は30分以上、冬季は60分以上が目安と書かれていますが、理由はわかりませんでした。
精白米 | 無洗米 | |
---|---|---|
袋に入っている状態 | 3合(=450g) | 3合(=450g) |
洗米 | する 肌ぬか(重量の3%)が取り除かれる |
しない 肌ぬかは除去済み |
炊飯前の状態 | 3合(=450×0.97=437g) | 3合(=450g) |
加える水の量 | 600ml | 618ml |
まとめ
- 無洗米は精米したお米の表面に残っている肌ぬかを取り除いたもので、洗わずにそのまま炊くことができます。
- 無洗米には、洗米の手間が省ける、節水ができる、廃水が出ないうえ、同じ5kg入りだと無洗米の方が1合分多く入っています。また肌ぬかが除去された無洗米は酸化しにくく、保存性に優れています。栄養価は精白米と変わりません。
- 逆に無洗米は精白米より若干値段が高く、食べたい銘柄米に無洗米が用意されていないというデメリットもあります。
- 肌ぬかを取る方法としては、米ぬかの粘着性を利用して剥がし取る方法、タピオカでんぷんに吸着させて取る方法、水洗いする方法の3つがありますが、いずれも安全上、全く問題ありません。
- 無洗米を炊くときには、水を多めにして、吸水時間を長くとることがポイントです。