デュラムセモリナってなに?ふつうの小麦粉とは種類と製粉方法が違う

パスタの原料であるデュラムセモリナとは、デュラム小麦という種類の小麦を粗びきした粉です。通常の小麦粉より粒が大きい粗びき粉をセモリナといいます。デュラム小麦はパンやうどんの原料である普通小麦とは全く異なる種類の小麦で、パスタのコシを生むグルテンというたんぱく質を多く含んでいます

デュラム小麦は国内でほとんど栽培されていないので、国産パスタも輸入パスタも、外国産の小麦を使用しています。

デュラムセモリナとは その歴史

パスタは小麦粉を主な原料とするスパゲッティ、マカロニ、ペンネ、ラザニアをまとめた呼び名で、イタリア人の主食です。

イタリア人は1年間に23.5kgのパスタを食べるといわれており1)、パスタ100gを1人分とするならば、年間235日はパスタを食べている計算になります。

ところでパスタの原材料欄を見ると、「デュラム小麦のセモリナ」と書いてありますが、これってどういう意味なのでしょうか。

なぜ「小麦粉」と書いていないのでしょうか。

デュラム小麦は、パン、うどん、ケーキなどに使われている普通小麦とは、全く違う種類の小麦です。

小麦がどのように進化ししてきたかは、小麦の遺伝子(ゲノム)を調べるとわかります。普通小麦のゲノムはAABBDDという型で、これは今から7500年前に、フタツブ小麦とタルホ小麦が交配してできたスペルト小麦が祖先にあたります。

これに対してデュラム小麦のゲノムはAABBで、フタツブ小麦が直接の祖先です。このように普通小麦とデュラム小麦は、別々に進化してきた小麦の品種です。

このデュラム小麦がパスタに用いられるのは、柔軟で弾力性の強いグルテンという小麦たんぱく質を豊富に含むためです。

デュラム小麦にはパンに使われる強力粉を上回る濃度のグルテンが含まれていることから、パスタに加工すると、コシの強いパスタを作ることができます。

一方のセモリナとは、小麦、トウモロコシ、米などの穀物を製粉して得られる粗い粉のことです。トウモロコシから作った場合はコーンセモリナ、米から作った場合はライスセモリナと呼ばれます。

デュラム小麦を粗びきした粉がデュラムセモリナで、色は黄色です。一方、普通小麦を製粉した小麦粉の色は白色です。

パスタの原料

乾燥パスタは、デュラム小麦粉を水とこねて作った生地を高圧で押し出し、乾燥して作ったもので、いまから500年前にイタリアで誕生しました。

パスタはスパゲティなどのロングパスタと、マカロニ、ラザニアのようなショートパスタに分かれますが、ショートパスタには板状のものや団子状のもあります。

原料として主に使われるのはデュラム小麦のセモリナ粉ですが、イタリアでは軟質小麦粉(薄力粉)、卵、ほうれん草、ビート、トマト、ニンジンなどの野菜汁、ハーブやスパイスが使われる場合もあります。

日本では、日本農林規格(JAS)で、パスタ(マカロニ類)の原料として使用ができるのは、

・デユラム小麦のセモリナ及びデユラム小麦の普通小麦粉
・卵
・野菜としてトマト及びほうれんそう

と決められており、これ以外の着色料、麺質改良剤、保存料は使うことができません。

デュラム小麦はほとんどが輸入

バスタには国産品と輸入品があります。どちらも主原料はデュラム小麦のセモリナですが、デュラム小麦は国内でほとんど栽培されておらず、年間30トン近くがカナダなどから輸入されています。

デュラム小麦は普通小麦と比べると成長に時間がかかるため、収穫時期が梅雨になってしまい、赤カビ病が発生するために、うまく栽培できないといわれてきました。

一方で国産のデュラム小麦に対するニーズも高く、2016年に農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が日本製粉(現・ニップン)と共同で、「セトデュール」というデュラム小麦の品新種を開発しました2)

この品種は現在、兵庫県で栽培されており、2018年には日本製粉から「瀬戸内生まれのスパゲッティ」という名前で、限定発売されました。2019年産の「セトデュール」農産物検査数量は117トンです3)

国産パスタと輸入パスタ、どちらがよい

一般社団法人日本パスタ協会のウェブサイトによれば、「国産パスタは安心安全、高品質」とあります。主要なロングパスタについて、国産パスタと輸入パスタの原材料を調べた範囲では、

国産パスタ

  • スパゲッティ(太さ1.3~2.1mm)              原材料名:デュラム小麦のセモリナ
  • 太麺スパゲッティ(太さ1.7~2.2mm)      原材料名:強力小麦粉、デュラム小麦のセモリナ
  • 全粒粉スパゲッティ(太さ1.6mm)           原材料名:デュラム小麦の全粒粉

輸入パスタ

  • スパゲッティ(太さ1.4~1.8mm)              原材料名:デュラム小麦のセモリナ

で、差はありません。

原料の小麦はほとんどが外国からの輸入なので、国産品が安全で高品質というのは、具体性に欠けます。

ただ輸入品の場合、イタリアの大手メーカーの商品はイタリア産ですが、安価な輸入品の中にはトルコなどからの輸入品もあります。品質についてはわかりませんが、価格の安いものについては、原材料欄を確認する必要がありそうです。

まとめ

  1. パスタはパスタは小麦粉を主な原料とするスパゲッティ、マカロニ、ペンネ、ラザニアなどの総称。パスタの原料となる小麦粉は、パンやうどん、ケーキに使われる小麦とは全く異なるデュラム小麦という種類の小麦を粗びきしたもの。粗びきした穀物粉をセモリナ粉という。
  2. デュラム小麦には、パンに使われる強力粉を上回る濃度のグルテンが含まれている
  3. デュラム小麦はほぼ全量がカナダなどからの輸入。国産パスタも輸入されたデュラム小麦を使っている。
  4. 国内でも2016年からデュラム小麦の栽培が始まっているが、収穫量はごくわずかにすぎない。
  5. 国産パスタの方が輸入パスタに比べて品質が高いとは言えない。

参考文献
1) Italy: frequency of eating pasta in 2017
https://www.statista.com/statistics/730668/frequency-of-eating-pasta-in-italy/
2) 日本初のデュラム小麦新品種「セトデュール」、農研機構プレスリリース、2016年4月25日
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/warc/062694.html
3) 生物系特定産業技術研究支援センター(27024C) 国産のデュラム小麦品種の栽培と純国産パスタ製品の開発 https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/follow_up/pickup/135238.html