そうめんとひやむぎの違い、原料、製法、規格から産地まで

そうめんは小麦粉を食塩水でこねて作った生地を細く延ばした干しめんで、手作業で生地を引っ張って細長くしたものが、手延そうめんです。

めんがくっつかないようにするため、植物油が使われています

そうめんと冷や麦の違いはめんの太さで、1.3mm未満のものがそうめん、1.3mm以上のものが冷や麦と呼ばれます

揖保乃糸(兵庫県)、三輪素麺(奈良県)、小豆島手延そうめん(香川県)が日本三大そうめんです。

そうめんの原料は小麦粉、食塩、植物油

そうめんは食塩水を加えた小麦粉をこねて生地を作り、それを細くしたものです。そうめんには他の干しめんであまり使われていない「食塩」と「植物油」が使われています。

特に食塩は製品100gあたり5.8gとかなり大量です1)。ただ先に言っておきますが、食べるときには0.6gまで減りますので、塩分の摂り過ぎにはなりません

まず、食塩と植物油が使われている理由から説明していきます。

そうめんにはしっかりとした弾力があり、茹でてもほとんど切れません。それは中力粉、準中力粉、強力粉といった、比較的グルテンを多く含む小麦粉が使われているからです。

ちなみに、お好み焼き、ホットケーキ、クッキーなどを作るときに使う小麦粉は薄力粉といって、グルテンの量が少ないタイプの小麦粉です。グルテンは小麦粉に水を加えてこねることで作られます。少し専門的になりますが、小麦粉にはグリアジンというたんぱく質とグルテリンというたんぱく質が含まれていて、もともとは粘り気はありません。

小麦粉に水を加えてこねると、グリアジンとグルテリンが絡み合って網目状になり、粘り気や弾力を生みます。この状態をグルテンといっています。このグルテンは食塩を加えてこねることで、より強くなることがわかっています。もし食塩が入っていなかったら、生地を伸ばして細くすることは難しいのではないかと思います。

続いて植物油について説明しましょう。

うどんはそうめんと同じ、小麦粉でできています。うどんを作るときには生地どおしがくっつくのを防ぐために、「打ち粉」という粉を使いながらめんを細くしていきます。中華めんやそばも同じです。機械製めんで作られる一部のそうめんを除き、打ち粉は使われません。

その代わりに、引き伸ばしためんの表面に植物油を塗ることで、めんとめんがくっつくのを防いでいるのです。植物油を使っていますが、量はごくわずかなので、カロリーにも影響しませんし、茹でたときに油が浮くということもありません

なお機械素麺で作った値段の安いそうめんでは、馬鈴薯やタピオカのでんぷんを化学処理した加工でん粉を使っているものもあります。

そうめんは引っ張って細くしていく

そうめん作りは、小麦粉に食塩水を加えてこねるところから始まります。

よくこねると弾力性の強い生地ができるので、まずはその生地を直径2cmくらいのひも状にして巻き取っていきます。このとき、ひも状の生地どおしがくっつかないようにするため、表面に植物油が塗られます。このひも状の生地をまた引っ張って、植物油を塗りながら細いひもにして巻き取るという作業を何度か繰り返し、直径が6~7mmくらいのめんにします。

これをさらに伸ばして、水分が12~14%になるまで乾燥し、切りそろえると、そうめんができ上ります。うどん、冷や麦、そばは、生地を薄いシート状にし、それを包丁で切ってめんを作りますが、そうめんはひも状にした生地を引っ張って、細いめんにしているところが、大きな違いです。

ひも状にしながら細くしていくと、グルテンが一方向に並んで、コシがあり歯切れがよい食感があり、茹でたときに伸びにくい性質が生まれます。シート状にして切断した場合は、グルテンの方向はバラバラになるので、このような特性は生まれません。

 

ところでそうめんには「手延べ」と書いてある製品がありますが、これはどういう意味なのでしょうか。小麦を練って作った生地を延ばしてめんにする工程を、手作業で行うのが「手延べ」です

機械製めんのそうめんは、冷や麦と同じように、シート状にして切っている場合もあります。そのため、手延べで作ったそうめんは断面が円形、機械製めんで作ったそうめんは断面が四角形という見分け方もできます(例外もあります)。

ところで、そうめんと冷や麦は、何が違うかご存じでしょうか。

そうめんも冷や麦も、原料はほぼ同じで、機械製めんの場合は、作り方もほぼ同じです。実は日本農林規格(JAS)では

めんの太さが1.3mm未満のものがそうめん(素麺)
めんの太さが1.3mm以上1.7mm未満のものを冷や麦

と表示することになっています。

そうめんの種類 高級品は贈り物に

そうめんは50gずつ束にして売られていることが多く、束には帯が付いています。帯の色はたいてい「赤」か「黒」ですが、だいたい黒の方が値段が高いようです。また黒帯に「ひね」と書いてあるものもありますがどういう意味なのでしょうか。

実はそうめんの種類や帯の色には特にルールはなく、各産地で決めているようです。手延べそうめんの生産量が一番多い2)揖保乃糸の帯の表示は次のようになっています。

赤:上級

いちばんよく見かけるもので、全生産量の80%を占める主力商品です。製造時期は10月〜翌4月です。

黒:特級

上質の原料小麦粉を使用して、厳寒期(12月〜翌年2月)に作られる高級品で、組合が選抜指定した熟練製造者しか作れません。

このほかにも、色の違う帯の製品もありますが、あまり見かけないので割愛します。ちなみに揖保乃糸の帯には、すべて生産者番号が刻印してあるそうです。

ひね

そうめんは10月から4月に作られますが、1年間熟成させてから出荷されるのが「ひね」です。高温・多湿の梅雨時期に、小麦に含まれていた酵素が働いてそうめんの脂質が変化し、その結果、そうめんのでんぷんやたんぱく質に影響することで、そうめんのコシや舌触りがさらによくなるのだそうです。また三輪素麺では、2年間熟成したものを「大古(おおひね)」と呼んでいます。これに対して、作られた年に出荷されるものを「新(しん)」と呼びます。

当然のことですが、「ひね」や「大古」の方が値段は高くなります。ふつうの食品スーパーで「ひね」や「大古」を売っていることはほとんどなく、主に贈答用に使われます。

正しいそうめんの茹で方 ゆで時間は1~2分

せっかくの高いそうめんも、茹で方を誤るとおいしくなくなってしまいます。

まず大きめの鍋にお湯を沸騰させ、そこへそうめんをバラバラと入れます。茹で時間は1分~2分で、噴きこぼれないように火加減を調節しながら茹でます。

そうめんは50gずつ束になっており、1人分は2束なのですが、この帯を外しながら鍋に入れていると、茹で時間に差が出てしまうので、あらかじめ帯は外しておいた方がよいです。

また茹でた後に冷水を入れる、いわゆるビックリ水は、そうめんの味を損ねてしまうそうです。

茹で上がったらめんをザルに移し、水で粗熱を取った後、清水を流しながらよくもみ洗いします。このとき、めんについていたぬめりや、めんを作る際に添加した食塩が、洗い流され、美味しいめんに仕上がります。

めんを氷水につけると、めんが水分を吸ってしまうので、よくありません

そうめんの産地とブランド

日本三大そうめんといわれるのが、

揖保乃糸(兵庫県・播州地方)
三輪素麺(奈良県)
小豆島手延素麺(香川県・小豆島)

です。

これ以外にも、島原素麺(長崎県)、半田めん(徳島県)、かもがためん(岡山県)などもあります。小麦と塩が主原料のそうめんは、これらの材料が手に入りやすい地域で発達しました。

揖保乃糸(いぼのいと)

兵庫県西部の播州地方で生産される手延べそうめんで、手延べそうめんとしては日本一の生産量です。500社以上の業者が生産していますが、兵庫県手延素麺協同組合の検査指導員が検査を行い、基準をクリアしたものだけが、揖保乃糸の商標で出荷できる仕組みとなっています。

揖保乃糸という名前は、この地方を流れる清流「揖保川」に由来します。もともと播州地方では小麦が生産されており、製塩業が盛んな赤穂に近かったこともあり、江戸時代からそうめんの生産が行われていました。現在は外国産小麦も使っているようですが、粘りが強い「ふくほのか」と、弾力性のある「ゆめちから」という、地元産小麦を使った製品も発売しています。

三輪素麺(みわそうめん)

日本で初めてそうめんが作られたのは、奈良県桜井市三輪といわれており、製めん技術も三輪から全国に広がったといわれています。そうめん発祥の地「三輪」のそうめんはブランド力が高く、奈良県三輪素麺工業協同組合の三輪素麺は天皇家への献上品となっています。

ところで、現在三輪素麺は、約70名の製造者が加入する奈良県三輪素麺工業協同組合(以下、組合)が管理しているものと、奈良県桜井市に本社を置く企業が製造・販売しているものがあるようで、消費者に混乱を与えています。

組合は「三輪素麺」の商標登録行い、組合の検査基準に合格にしたものには「鳥居マーク」が付けられています。一方、組合とは別に企業が販売しているそうめんには、過去には県外から仕入れた産地偽装まがいの製品もあったようです。現在も「三輪」という社名で九州産のそうめんを販売している企業もあります。

小豆島手延素麺

瀬戸内海に浮かぶ小豆島(香川県)で生産される手延べそうめんで、中力粉を使用すること、ごま油を使用すること、天日乾燥することが特徴です。

小豆島手延素麺協同組合が管理するものは「島の光」という登録商標で売られています。ごま油は小豆島にあるかどや製油のものを使っているそうで、他の産地で使用している綿実油に比べ酸化しにくく製品が劣化しにくいことが特徴です。また小豆島特産のオリーブをペースト状にしてめんに練り込み、表面をオリーブオイルで仕上げた手延オリーブ素麺や、あったかそうめんという名前のカップ麺も、発売されています。

島原手延そうめん

長崎県南島原市で生産される島原手延そうめんは、全国の手延そうめんの約30%を占めており、製造事業者もおよそ300あるとのことです3)。以前はここで生産されたそうめんが三輪へ供給され、三輪素麺として売られていたこともありました。

現在島原手延そうめんには、長崎県島原手延そうめん振興会と島原手延素麺組合連絡協議会の2つのブランドがある(南島原市)とのことですが、ハッキリ言って知名度も低く、他の産地の手延そうめんとの差別化も行われていないように思います。なお島原のそうめんの製造技術は、小豆島から伝わったという説と、中国から伝わったという説があります。

まとめ

  1. そうめんは食塩水を加えた小麦粉をこねて生地を作り、それを細くしたものです。生地を細くする際、手作業で生地を引っ張って細くしたものが手延べそうめんです。
  2. 生地を引っ張って細くしていくとき、生地がくっつかないようにするため、めんの表面に植物油を塗ります
  3. 手延そうめんは10月~4月に生産されます。生産後、すぐに出荷されるのが「新」、1年熟成させて翌年出荷されるのが「ひね(古)」、2年熟成したものを「おおひね(大古)」といいます。
  4. 日本三大そうめんといわれるのは、揖保乃糸(兵庫県)、三輪素麺(奈良県)、小豆島手延そうめん(香川県)です。また全国で2番目に生産量の多い手延そうめんは島原素麺です。

参考文献
1) 日本食品標準成分表2020年版(八訂)(2020)
2) 兵庫県物産協会ホームページ
https://www.hyogo-bussan.or.jp/node/2810
3) 南島原市ホームページ
http://minamishimabara-somen.jp/