そうめん、冷や麦、干しうどんの原料は小麦粉と食塩と水で、違いは作り方と麺の太さです。
中華めんは食塩の代わりにかんすいを使ってめんを作っているため、グルテンの網目構造がより強くなり、強いコシが生じます。また小麦粉に含まれるフラボノイド色素が発色するため、薄黄色になります。
そうめん、冷や麦、干うどんの違いはめんの太さ
うどんは冷凍やチルドの商品もありますが、そうめんと冷や麦は、ほとんどが干しめんとして売られています。そこでまずは、そうめん、冷や麦と干うどんについて、違いを説明していきます。
この3種類のめん、太さが違うというのは、誰でも気づくと思いますが、干しめんをどのような名前で売ってよいかは、日本農林規格(JAS規格)で決まっています。
・めんの太さが1.3mm以上1.7mm未満 … ひやむぎ(冷や麦、冷麦)または細うどん
・めんの太さが1.7mm以上 … うどん
と表示しなければならないそうです。
そうめん、冷や麦、干うどんは製造方法が若干異なるため、違いはめんの太さだけではないのです。
小麦粉に食塩水を加えてこねることで生地を作り、その生地を直径2cmくらいのひも状にし、表面に綿実油やごま油を塗りながら巻き取っていきます。
さらにひも状の生地を細くして、生地の表面に食用油を塗りながら巻き取るという作業を何度か繰り返し、直径が6~7mmくらいになるようにします。さらにこれを延ばして、水分が12~14%になるまで乾燥させたのち、切りそろえることで、そうめんが完成します。
この最後にめんを延ばす作業を手作業で行うのが「手延べ」製めん、機械で行うのが機械製めんです。
そうめんは「手延べ」と表示されたものが多く出回っていますが、手延べでそうめんを作っているメーカーは西日本に多いそうです。「手延べ」と表示するためには、いくつかルールがあるので、のちほど紹介します。
ところで、そうめんは生地を細くしてめんを作っていく過程で、食用油を使っている点が、冷や麦やうどんとの大きな違いです。
また生地を作る際に、比較的高濃度の食塩水を使っているため、製品100g(1食分に相当)あたり5.8gの食塩が含まれています。ただ茹でると食塩が茹で汁に溶けだすため、茹で上げたのちにしっかりと揉み洗いすることで、食べる際には食塩の量は0.6gくらいになるといわれています。
なおここで紹介したそうめんの製法と原材料はあくまで一例です。食品添加物の加工でんぷんを使った商品もあるようです。
冷や麦は、小麦粉に食塩水を加えてこねることで生地を作るところまではそうめんと同じですが、平らな板と麺棒を使って生地を薄く延ばして、刃物で細く切ったものを水分量が14%くらいまで乾燥して作ります。
そのため、冷や麦には「食用油」は使われていません。生地はそうめんと同じなので、製品100gあたり5.8gの食塩が含まれていますが、茹でて水洗いすることで、食塩量は下がります。
ひやむぎはほとんど機械製めんで作られますが、一部、手延べ製めんによる商品もあります。また冷や麦は「細うどん」と表示することも可能です。
最後に干うどんですが、こちらも小麦粉に食塩水を混ぜてこねることで生地を作り、機械で延ばしながら生地を熟成させていていきます。
最後に生地を薄くしたのち、カッターでめんをカットしますが、どちらかというと穴から押し出されるようにめんが出てきます。干しうどんはほとんど機械製めんです。このめんを水分量が14%くらいになるように乾燥し、切りそろえたものが製品になります。
干しうどんの原料は、小麦粉と食塩です。食塩量はそうめんや冷や麦よりも少なく、製品100gあたり4.3g(日本食品標準成分表2020年版による)です。干しうどんもメーカーによって原材料、製法が異なるようなので、これはあくまで一例です。
整理すると、次のようになります。
そうめん | 冷や麦 | 干うどん | |
---|---|---|---|
原材料 | 小麦粉、食塩、植物油 | 小麦粉、食塩 | 小麦粉、食塩 |
製造方法 | 手延べ製めん 機械製麺 |
ほとんど機械製麺 | ほとんど機械製麺 |
めんの太さ | 1.3mm未満 | 1.3mm以上1.7mm未満 | 1.7mm以上 |
食塩量1) | 5.8g/100g | 5.8g/100g | 4.3g/100g |
1) 日本食品標準成分表2020年版(八訂)による
中華めんとうどんの違いはかんすいの有無
うどんやそうめんは、小麦粉に食塩水を加えて練り合わせて製めんしますが、中華めんは小麦粉に水と「かんすい」を加えて練り合わせて製めんします。
かんすいとは炭酸ナトリウム(Na2CO3)と炭酸カリウム(K2CO3)を主成分とするアルカリ性の食品添加物で、このほかの成分が含まれているものもあります。
かんすいは小麦粉に含まれるグルテンに作用し、グルテンの伸びと弾力を増強する効果があります。グルテンは小麦に含まれるグリアジンというたんぱく質とグルテニンという2種類のたんぱく質が、水を加えてこねることにより、網目状になったものです。
かん水は、この網目構造をより強固にする働きがあります。そのため、かん水を加えた中華めんは、うどんなどと比べるとコシが強く、切れにくく、なめらかになります。
またアルカリ性のかん水を加えると、小麦粉に含まれるフラボノイド色素が発色するため、麺がうっすらと黄色になります。
かんすいは主に業務用として販売されており、粉末のもの、液体のものの両方があります。また成分は商品によって異なります。かんすいは、
と定義されており、食品衛生法に基づく製品検査に合格したかんすいには、日本食品添加物協会が「かんすい確認証」を発行しています。
手延べは干しめん、手打ちは生めんが対象
そうめんには「手延べ」と表示している商品があります。まためん類には「手打ち」と名前の付くものがあります。どちらも機械ではなく手作業で作っているイメージです。
まず「手延べ」は干しめんに対する表示です。「手延べ」と表示するためには、「手延べ干しめんの日本農林規格(JAS規格)」に合致していなければなりません。それによると「手延べ干しめん」とは、
- 小麦粉に食塩水を加えて練り合せた後、食用植物油又はでん粉を塗付してよりをかけながら順次引き延ばしてめんとし、乾燥したもの。
- 小麦粉に対する食塩水の配合割合が45%以上。
- 製めんの工程のうち、
①かけば工程:よりをかけ、交ささせつつめん線を平行にかける。
②小引き工程:かけば工程を経ためん線を引き延ばすこと。
③門干し工程:乾燥用ハタを使用してめん線を引き延ばしてめんとし、乾燥すること。
の各工程において、めん線を引き延ばす行為のすべてを手作業により行っていること。 - 熟成が次の期間以上行われていること。
①小麦粉に食塩水を加えて練り合わせる混合工程とかけば工程の間の工程における熟成については、6時間(長径を1.7mm以上に成形するものにあっては、3時間)
②かけば工程と小引き工程の間の工程における熟成については、1時間
③小引き工程と門干し工程の間の工程及び門干し工程における熟成については、合計12時間
なお熟成とは、めんの生地またはめん線を常温で一定期間放置することにより、めんの生地については、水分の均一化、めん線については、それを引き延ばすことにより生じるグルテンの構造のゆがみの復元を行うことをいいます。
少々わかりにくかったかもしれませんが、上記の条件に当てはまった干しめんだけが、「手延べ」の表示をすることができます。
一方の「手打ち」ですが、こちらはうどん、そば、中華めんの生めんを作る際、生地を延ばしたり、切ったりする作業を、機械を使わず手作業で行うことをいいます。
手打ちは、「手打ち風」や「手打ち式」とも異なります。
景品表示法の規定に基づいて、業界が自主的に定めている「生めん類の表示に関する公正競争規約」の内容をご紹介しましょう。
まず対象となるのは生めん類で、具体的には
「うどん」、「そば」、「中華めん」、「生マカロニ類」、「生スパゲッティ類」、「ソフトスパゲッティ式めん」、「大麦めん」、「大麦そば」、「冷めん」、「米粉めん」及び「ぎょうざの皮等」」
となっています。ここでいう「うどん」には、ひやむぎ、そうめんも含まれます。
そして「手打ち」「手打ち風」「手打ち式」については、次のように決められています。
ただし、混練工程のみ機械で行うことができる。つまり、混ぜる作業以外はすべて手作業で行う場合、「手打ち」と表示することができます。
つまり、生地を延ばす作業とうす刃の切刃で生地を裁断する作業の全部または一部を機械作業で行う場合、手打ち風または手打ち式と表示できます。非常にわかりにくい文章ですが、めんを作る際、穴から押し出すのではなく、切るという作業が求められています。
このように、手打ち、手打ち風、手打ち式は、製造する際に一定の条件を満たした場合に限り、表示することができるのです。
まとめ
- そうめん、冷や麦、干しうどんは小麦粉と食塩が原料で似ていますが、最もわかりやすい違いはめんの太さです。そうめんは手延べ製めんで作られるものと機械製めんで作られるものがありますが、冷や麦と干しうどんはほとんどが機械製めんで作られます。またそうめんはめんを延ばすときに植物油を使うため、原材料に植物油が含まれます。
- そうめん、冷や麦、うどんは小麦粉に食塩と水を加えて生地を作りますが、中華めんは食塩の代わりにアルカリ性のかんすいを使います。かんすいを加えることでグルテンによる網目構造が強化され、めんに強いコシが生じます。
- 手延べは干しめんを作る際、めんに植物油などを塗布しながら延ばす作業を手作業でおなったもので、日本農林規格で手延べと表示するための条件が定められています、手打ちは生めんなどを作る際、混ぜる作業以外をすべて手作業で行った場合に表示が可能で、業界が自主的に定めている公正競争規約で条件が定められています。