薬剤師が解説!人工甘味料の種類と用途、危険性やデメリット

加工食品にはさまざまな種類の人工甘味料が使われています。

特に糖質ゼロやゼロカロリーの商品には必ず使われています。

どれも国が安全性を認めたものなので、直ちに危険というわけではありませんが、現在もその有害危険性について研究が続いており、新しい知見が得られているものもあります

たとえ植物原料から作られていたとしても、もともと地球上に存在しなかった物質をあなたは自分のからだに入れますか。そしてこどもに飲ませますか。
注 2021年12月9日に新しい情報を追加して、内容を一部修正しました。
目次

人工甘味料をなぜ使うのか?

ほとんどの加工食品には「人工甘味料」が入っていて、知らない間に結構な量を摂っています。人工甘味料とはもともと自然界にない甘み成分を化学的に合成したもので、「合成甘味料」ともいいます。

人工甘味料を使う目的は次の5つです。

  1. 製造コストを下げる
  2. カロリーを下げる
  3. 虫歯になりにくくする
  4. 血糖値をコントロールする
  5. 腸内環境を改善する

それぞれもっともらしい目的ですが、それってあなたにとって本当に必要ですか。

もし必要でないなら、人工甘味料はできるだけ使わないことをお勧めします。どのような甘味料があり、何の目的で使われているのか、これから詳しく説明していきます。

甘味料の分類

人工甘味料と天然甘味料に分かれる

甘味料はその製造方法から、人工甘味料(合成甘味料)天然甘味料に、またその成分から、糖質系甘味料と非糖質系甘味料に分けられます。

・人工甘味料(合成甘味料) … 自然界にない甘み成分で化学的に合成されたもの
・天然甘味料 … 自然界にある甘み成分
・糖質系甘味料 … 炭水化物に分類されるもので、食品として扱われるものもある
・非糖質系甘味料 … 炭水化物に分類されない甘味料で、食品添加物

主な甘味料を整理するとこんな感じです。

人工甘味料(合成甘味料) 天然甘味料
化学的に合成されたもの 抽出・濃縮したもの
糖質系
甘味料
果糖・ブドウ糖液糖
ブドウ糖果糖液糖
高果糖液糖、マルチトール
キシリトール、ソルビトール
エリスリトール
トレハロース、パラチノース
砂糖(ショ糖)
はちみつ
メープルシロップ
非糖質系
甘味料
アセスルファムK
アスパルテーム
サッカリン
ステビア、甘草

お気づきかと思いますが、天然甘味料といわれるものの中に、化学的に合成されたものがあるのです。

天然甘味料って自然界にある甘み成分じゃなかったの?と思われるかもしれませんが、自然界にある成分と同じものを、化学的に合成し、安い値段で供給しているのです。

天然甘味料は安全?危険?イメージに惑わされないで

天然甘味料は「自然界にある甘み成分」です。自然界にあるものなんだから、安全だと思うかもしれませんが、これはごまかしです。

毒キノコの成分は自然界にあるものですが、安全ですか?

あくまで個人的な感想ですが、メーカーは、「天然由来成分」=「安全・安心」という印象操作をしているように思います。

最近でいうと、ボタニカル成分(植物成分)ということばが流行っていますが、植物から抽出したものがすべて安全かというと、決してそんなことはありません。

人工甘味料は危険なものが多い

人工甘味料の一部は、もともと地球上に存在していなかった化学物質を、化学反応で作り出したものです。

化学物質が危険で無意味というつもりはありません。
お薬はほとんどが人工的に作られた化学物質です。いろいろなお薬のおかげで、多くの人が恩恵を受けています。

でも甘味料となるとわけが違います。砂糖が手に入るにもかかわらず、値段が安いから、カロリーが低いからという理由で、からだに害があるかもしれない化学物質をあなたは摂りますか。

絶対に摂るべきでない 人工甘味料危険度ランキング

まず絶対に摂るべきでない人工甘味料を3つ紹介します。

・アセスルファムK
・サッカリン
・アスパルテーム

さきほどの分類の図で、人工甘味料で非糖質系甘味料に分類されているものです。非糖質系というのは、糖質ではないので、カロリーはゼロです(アスパルテームを除く)。

カロリーゼロは素晴らしいことであるかのように、食品メーカーは宣伝していますが、本当にそうなのか、これから説明する内容を読んで、もう一度考えてください。

これらの甘味料は、お薬と同じです。糖尿病などで厳密な糖質制限をしなければならない人にとっては必要不可欠ですが、それ以外の人は安易に手を出すべきものではありません。

ワースト1位 アセスルファムK

アセスルファムKはよく使われる

アセスルファムK(アセスルファムカリウム)は、砂糖の200倍の甘さがありますが、カロリーはゼロです。

使用目的は「カロリーを下げる」ことと「製造コストを下げる」の2つです。

アセスルファムKは分子が小さいため、小腸で吸収されて血液中に入ります。そして肝臓でも分解されず、腎臓から尿中にそのまま排泄されます。アセスルファムKの分子量は201で、グルコースとほとんど同じです。

アセスルファムKは、

  • 熱、酸、酵素に対して安定
  • 水、エタノールなどによく溶ける
  • ほかの物質と反応しにくい

と、食品メーカーにとってはよいことづくめなので、パンやクッキーなど加熱して作る食品、漬物などの酸性の食品、飲料などの賞味期限が長い食品に重宝されています。

アセスルファムKは環境中で分解されない

アセスルファムKの一番の問題点はこれかもしれません。

河川水や地下水が下水で汚染されているかどうかを調べるためのマーカー(標識)として、アセスルファムKが使われることをご存じでしょうか1)。下水には、人間が甘味料として摂取したアセルファムKが分解されないまま入っています。

一方、きれいな河川水や地下水からは、アセスルファムKは検出されません。そのため、アセスルファムKが検出された水は、下水で汚染されている可能性があるということです。

アセスルファムKは、からだのに入っても、分解されずにそのままそのまま排出されるから安全だという意見もありますが、環境中には未分解のアセスルファムKが蓄積し続けています。アセスルファムKによる環境汚染を指摘する研究論文も出ています2)

アセスルファムKは母乳から赤ちゃんに移行する

授乳中の女性がアセルファムKを摂取すると、母乳からアセルファムKが検出されることがわかっています3)

ただその量が一日摂取許容量を超える可能性は低いということで、授乳中や妊娠中の女性に対する摂取制限は行われていません。

アセスルファムKには使用基準がある

アセスルファムKは食品添加物として使用するにあたって、使用基準があります4)

厚生労働省のウェブサイトに掲載されている内容は次の通りです。ただ使用基準が定められているから、即、危険というわけではありませんが、摂り過ぎるとよくないということです。

アセスルファムカリウムの使用量は、

  • あん類,菓子及び生菓子にあってはその1kgにつき2.5g以下(チューインガムにあってはその1kgにつき5.0g以下)
  • アイスクリーム類、ジャム類、たれ、漬け物、氷菓及びフラワーペーストにあってはその1kgにつき1.0g以下
  • 栄養機能食品(錠剤に限る。)にあってはその1kgにつき6.0g以下
  • 果実酒、雑酒、清涼飲料水、乳飲料、乳酸菌飲料及びはっ酵乳(希釈して飲用に供する飲料水にあっては、希釈後の飲料水)にあってはその1kgにつき0.50g以下
  • 砂糖代替食品(コーヒー、紅茶等に直接加え、砂糖に代替する食品として用いられるものをいう。)にあってはその1kgにつき15g以下
  • その他の食品にあってはその1kgにつき0.35g以下

でなければならない。ただし,健康増進法(平成14年法律第103号)第26条の規定による特別用途表示の許可又は同法第29条の規定による特別用途表示の承認を受けた場合は,この限りでない。

アセスルファムKを摂り過ぎると害がある

アセスルファムKの危険性を指摘する複数のウェブサイトに、「過剰摂取による副作用」なるものが掲載されています。

根拠になる実験データを医学論文などで探しましたが、私が調べた範囲では、確実にその可能性があるといえるものは見つかりませんでした。また過剰摂取というのが、どの程度の量を指すのかもわかりません。どんな物質でも大量に摂取をすると、からだに異変が起きるのは、当たり前です。この副作用といわれるものを参考までに載せておきます。

  • 血糖値の乱高下
  • 味覚障害
  • 肥満
  • 下痢
  • 頭痛の誘発
  • 体の臓器への負担
  • うつ症状

ただ、このような症状が起こる可能性があるものを、わざわざ摂る理由はありません。
一方で、アセスルファムKには、変異原性、発がん性は確認されていません

アセスルファムKを使用すべきでない理由

アセスルファムKは現時点では有害とはいえませんが、いろいろな懸念があるのは事実です。そんな甘味料を積極的に使う理由はありますか。

①分解されず地球環境を汚染する

もともと地球上にアセルファムKは存在しませんでした。ところが1967年に発見されて以降、化学反応で合成され続けています。

あとでで説明するアスパルテームは人間の消化管で分解されますが、アセルファムKは環境中においても、ほとんど分解されません

最近、アセスルファムKを分解する特殊な微生物が発見されましたが1)、それでも地球上にアセスルファムKは溜まり続けており、生態系への影響も心配されています。アセスルファムKは、海洋汚染で問題になっているマイクロプラスチックと似ています。このような化学物質を製造すること自体、止めるべきでしょう。

②母乳に移行する

アセスルファムKは母乳を通じて新生児の体内に入ることがわかっています。

授乳している女性に対する摂取制限を設けていないのは、新生児に移行したとしても摂取許容量をはるかに下回っているからというのが理由だそうです。しかし仮に毒性がなかったとしても、もともと地球上に存在しなかった化学物質を、新生児に摂らせる必要があるのでしょうか。

③生体影響がよくわかっていない

発がん性や変異原性がないことはほぼわかっていますが、腸内細菌叢に影響を与えるという研究報告が出ています5)。一方で影響がないという研究報告もあり6)、まだ結論が出ていません。あとで説明するアスパルテームは、腸内細菌叢に影響を与えることで肥満になり、血糖値の調節機能がおかしくなり、糖尿病や心疾患になるとの研究結果が出ています7)。生体影響がよくわかっていない化学物質は、摂るべきではありません。

ワースト2位 サッカリン

サッカリンは異性化糖と一緒に使われる

砂糖の200~700倍の甘さを持つ人工甘味料で、カロリーはゼロです。

使用目的はアセスルファムKと同様、「カロリーを下げる」ことと「製造コストを下げる」の2つです。単独では苦みがあるため、果糖ぶどう糖液糖などの異性化糖と一緒に使われることが多いです。

サッカリンは水には溶けませんが、サッカリンナトリウムとサッカリンカルシウムは水にも溶けるため、加工食品に使われています。サッカリンは胃と小腸で吸収されて血液中に入ります、そして肝臓でも分解されず、腎臓から尿中にそのまま排泄されます。

発がん性があるとはいえない

サッカリンが膀胱がんを起こすのではないかとの懸念があり、実際、食品添加物として使われていたサッカリンが一時使用禁止になったこともあります。

サッカリンが膀胱がんを起こしたという研究はいくつかありますが、これに対しては現在は、次のような説明がされています。

  • 膀胱寄生虫に感染しやすいラットを使ったため、寄生虫に感染したことで膀胱がんになった。
  • サッカリンではなく高濃度のナトリウム塩でラットに膀胱がんが発生した。
    (サッカリンと同濃度のアスコルビン酸ナトリウム(ビタミンC)でも膀胱がんが起きる)

ということで、膀胱がんの原因はサッカリンではないとされています8)

ほかにもさまざまな研究が行われていますが、サッカリンの発がん性を否定するものが大半です9)

長期摂取による肥満や糖尿病のリスクは不明

人間とマウスを対象に、短期間、最大許容レベルのサッカリンを与えた場合は、腸内細菌叢を変化させたり、耐糖能異常を誘発することはありませんでした8)

一方ラットに長期間にわたってサッカリンを与えた実験では、サッカリンの長期摂取が肥満や糖尿病、さらには肝臓や腎臓の機能障害のリスクを高めるという結果が出ています6)

サッカリンを使用すべきでない理由

サッカリンに発がん性がないことは、ほぼわかりましたが、サッカリンを長期間摂取したとき何が起こるのかについて、いまも研究が続いています。

安全性が明確になっていないというリスクを取ってまで、サッカリンを使用するメリットはありません。糖質制限があるなどの理由で、低糖質の甘味料が必要な場合は、次に説明するアスパルテームの方が、まだマシです。

ワースト3位 アスパルテーム

砂糖の200倍の甘味がある食品添加物で、日本を含め世界各国で使われています。

使用目的は、「カロリーを下げる」ことと「製造コストを下げる」の2つです。製造特許は味の素が持っています。

ところで、アスパルテームはゼロカロリーではありません。意外かもしれませんが、アスパルテームと砂糖は、どちらも1gあたり4kcalで同じです。甘みが強いため使用量が砂糖の200分の1以下で済むため、結果的にカロリーオフになります

アスパルテームの危険性を指摘する人が根拠にしているのが、発がん性、腸内細菌叢の破壊、メタノールの生成の3つです。

アスパルテームには一部のがんに発がん性がある

アスパルテームには発がん性はないというのが、規制当局の一致した見解です。アスパルテームの研究が始まった当初に騒がれた脳腫瘍については、因果関係はないとされていますし、2004年に過去の研究論文を調査してまとめた医学論文は「アスパルテームに発がん性があるという証拠はない」と結論付けています。しかしその後も発がん性に関する研究は続いており、白血病リンパ腫など、造血組織のがんの発生には関係している可能性があるという論文が複数出ています(もちろん、反論する論文も出ています)。2021年に出た最新の論文では「アスパルテームは発がん性があるかもしないので、さらなる研究が必要」とされています7)

腸内細菌叢を破壊して肥満や耐糖能障害を起こす

アスパルテームを日常的に摂ることで、腸内細菌叢が破壊されて肥満になり、その結果、血糖値のコントロールができなくなる耐糖能障害を起こすという研究結果があります。耐糖能障害というのは、空腹時の血糖値が正常値と異常値(糖尿病と判断される値)の間にある状態をいいます。この状態はいわゆる糖尿病予備軍の状態で、放置するとⅡ型糖尿病になります。そして結果的には心疾患のリスクが高くなります。

アスパルテームは消化されるとメタノールが生成する

アスパルテームは消化管で分解され、L-アスパラギン酸、L-フェニルアラニン、メタノールになります。前の2つはアミノ酸なので、小腸で吸収されて栄養源となりますが、メタノールは毒物で、失明や腎不全になり、死に至ることもあります。

インドで密造酒を飲んだ人が死亡する事件が起きていますが、これは密造酒に含まれるメタノールが原因です。アメリカ合衆国食品医薬品局 (FDA)などは、アスパルテームの摂取量が少なく、日常的に食品から摂っているメタノールの量を下回っているので、安全性には問題ないとしています。ただ、メタノールの影響が完全に払拭されたわけではありません。

アスパルテームを使用すべきでない理由

アスパルテームを使用すべきでない一番の理由は、体重を減らすどころか、増やす可能性があることが、この10年くらいのあいだにわかってきたからです。肥満度を表すBMIを調べたところ、アスパルテームを摂っている人のBMIは下がっていないだけでなく、多くの場合上昇しているそうです。つまり摂取カロリーは減っても、肥満になっていたということです。これは腸内細菌叢の破壊が関係しているようですが、まだ完全に解明されたわけではありません。ダイエット効果がなければ、わさわざアスパルテームを摂る必要はありません。
詳しい内容はこちらの記事にまとめています。

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ネオテームとアドバンテームもおなじこと

アスパルテームの化学構造を少し変えて作られた甘味料として、ネオテームアドバンテームがあります。

ネオテームは砂糖の1万倍の甘さ、アドバンテームは砂糖の2万倍の甘さがあるそうです。こちらもどうしても必要な人以外は、避けるべきです。

機能性がある糖質系甘味料・6種類

砂糖以外の甘味料には、製造コストやカロリーを下げる以外に、

・虫歯になりにくくする
・血糖値をコントロールする
・腸内環境を改善する

といった、新たな機能を付加価値としているものがあります。これから機能性がある糖質系甘味料について説明しますが、最初に、原料、製造方法、甘味、カロリー、主な機能をまとめました。

キシリトール

  • カバノキ(カバノキ科の樹木)の樹液から発見された
  • トウモロコシの芯から化学合成で製造
  • 甘味は砂糖とほぼ同じ、カロリーは3kcal/g(砂糖の75%)
  • むし歯菌の増殖や歯垢の形成を部分的に抑える。

ソルビトール(ソルビット)

  • ナナカマド(バラ科の樹木)の実から発見された
  • でんぷんを酵素で分解し化学合成で製造
  • 甘味は砂糖の60~70%、カロリーはカロリーは3kcal/g(砂糖の75%)
  • 血糖値に影響しにくい
  • 甘味料として使われるほか、保存料、安定剤としても使われる

エリスリトール

  • 一部の果物や発酵食品に含まれる
  • でんぷんを分解して作ったグルコースを酵母で発酵させて製造
  • 甘味は砂糖の75%、カロリーは0.24kcal/g
  • むし歯菌に分解されないため虫歯になりにくい

マルチトール

  • 自然界に存在しない
  • でんぷんから酵素糖化と化学反応で製造
  • 甘味は砂糖の90%、カロリーは2.4kcal/g
  • 血糖値の上昇や、インスリンの分泌にほとんど影響しない

トレハロース

  • きのこ、エビ、海藻などに含まれる
  • でんぷんから酵素を使って分解と転移反応で製造
  • 甘味は砂糖の38%、カロリーは4kcal(砂糖と同じ)
  • 甘味料ではなく保存料、安定剤として使われる

パラチノース

  • はちみつにわずかに含まれる
  • てん菜糖を発酵処理して製造
  • 甘味は砂糖の50%カロリーは4kcal/g(砂糖と同じ)
  • 血糖値をコントロールする
  • むし歯菌に分解されないため虫歯になりにくい

キシリトールの効果

キシリトール主な原料はトウモロコシの芯です。ここからキシランという成分を抽出し、酸または酵素を加えて加水分解することでキシロースという糖を作ります。さらに触媒を加えて高温・高圧で水素添加し、精製することでキシリトールを作ります。

キシリトールの甘味は砂糖とほぼ同じですが、水に溶けるときに熱を奪うため、口の中で清涼感や爽快感を感じます。キシリトールは次のような特徴があります。

  • むし歯菌に分解されないため虫歯になりにくい。
  • むし歯菌の増殖や歯垢の形成を部分的に抑える。
  • 一部が小腸で吸収されてエネルギー源となるが、インスリンに影響を与えない。
  • カロリーは3kcal/gと砂糖の75%。
  • 小腸での吸収が悪く、体重1kg当たり0.4g程度で下痢を起こす6)
  • 発がん性はなく、逆に一部のがんの進行を抑える作用がある10)

このことから、虫歯予防の目的で、ガムなどに配合されています。加工食品などにキシリトールが入っていたとしても、特に避ける必要はありません。一方で、何らかの効果を期待して積極的に摂るべき成分ではないと考えます。

ソルビトール(ソルビット)は薬にも入っている

ソルビトールはでんぷんを酵素で分解して作ったグルコースに触媒を加え、高温・高圧で水素添加し、精製したものです。

甘味は砂糖の60~70%しかありません。ソルビトールには保湿性や保香性(香りを逃さない性質)があるため、甘味料としてよりも、食品の品質改良のために保存料、安定剤としてよく使われています。

さらに医薬品、医薬部外品などにもよく使われます。なお、似た名前のソルビン酸(保存料として使われる)は、全く別の物質です。

ソルビトールには次のような特徴があります。

  • むし歯菌に分解されないため虫歯になりにくい。
  • 一部がフルクトースに変換されてから小腸で吸収されエネルギー源となるが、血糖値に影響しない。
  • カロリーは3kcal/gとグルコースの75%。
  • 小腸で吸収されにくいため、下剤としても使われる。
  • ソルビトールには発がん性は報告されていない。

ソルビトールは加工食品によく入っている成分です。特に危険なものではありませんが、できれば使われていないものを選んだほうがよいでしょう。もちろん積極的に摂る理由はありません。

エリスリトールは糖質制限向け

エリスリトールはでんぷんを分解して作ったグルコースを特殊な酵母で発酵させて、さらに精製したもので、甘味は砂糖の75%です。キシリトールと同様、水に溶けるときに熱を奪うため、口の中で清涼感や爽快感を感じます。

エリスリトールには次のような特徴があります。

  • むし歯菌に分解されないため虫歯になりにくい。
  • ほとんどが小腸で吸収されるがほとんどエネルギーとして使われず、尿から排泄される。そのため血糖値にもインスリンにも影響しない。
  • カロリーは0.24kcal/gしかなく、ゼロと表示することができる。
  • エリスリトールは、体重1kg当たり0.5~0.7gで下痢を起こす11)
  • エリスリトールに発がん性があるという報告はない

エリスリトールはカロリーが低い一方で、下痢も起こりにくいことから、清涼飲料水や糖質制限をしている人向けの甘味料としてよく使われるようになっています。特に避ける必要はありませんが、積極的に摂るべき成分ではありません。

マルチトールは採りすぎるとお腹が張る

でんぷんを酵素糖化してマルトース(麦芽糖)を作り、これに触媒を加えて高温高圧化で水素添加して作られます。マルチトールはグルコースとソルビトールが結合した構造をしています。甘味は砂糖の90%です12)

マルチトールには次のような特徴があります。

  • 耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性があり、褐色に変色しにくい。
  • むし歯菌に分解されにくいが、一部は分解されて虫歯の原因となる酸を生成する。
  • 小腸で一部が吸収されるが、大部分は大腸へ送られ、腸内細菌によって分解がされる。そのため大量に摂取すると、腹部膨満の原因になる。
  • カロリーは2.4kcal/gで、エネルギー換算係数は2kcal/g である。
  • 血糖値の上昇や、インスリンの分泌にほとんど影響しない。
  • 発がん性はない。

マルチトールが使われていたとしても、特に避ける必要はありませんが、積極的に摂るべき成分ではありません。

トレハロースは食品添加物によく使われる

トレハロースはもともときのこ、エビ、海藻などに含まれる糖類で、昆虫ではエネルギー源として利用されています。

グルコースが2個結合してできていますが、同じくグルコース2個からできているマルトースと結合の仕方が違います。

もともとマッシュルームから抽出していたので、製造コストがかかっていましたが、日本の企業がでんぷんから酵素を使って分解と転移反応で製造する技術を開発し、価格が100分の1になったことで、世の中に広まりました。

甘味は砂糖の38%しかないため、甘味料というより、おにぎりや餅、団子などが固くなるのを防ぐための食品添加物(保存料)によく使われています。コンビニのおにぎりが固くならないのは、トレハロースが使われているおかげです。

トレハロースには次のような特徴があります。

  • グルコースに分解されて小腸で吸収されるが、グルコース単独にに比べると血糖値の上昇・降下が緩やか。
  • カロリーは4kcal/gで、砂糖と同じ。
  • たんばく質や脂質の変性や、冷凍食品を解凍したときの食物の変性を抑える働きがある。
  • 発がん性、急性毒性、変異原性はない。

トレハロースは甘味料として使われることはほとんどなく、保存料、安定剤として広く使われています。特に避ける必要はありませんが、積極的に摂る理由もありません。

パラチノースの危険性は特にない

パラチノースははちみつにわずかに含まれる糖類で、グルコースとフルクトースが結合したものです。

砂糖の主成分であるスクロース(ショ糖)もグルコースとフルクトースが結合したものですが、スクロースとパラチノースでは、結合の仕方が異なります。てん菜糖を発酵処理して製造します。

消化管内でグルコースとフルクトースに分解され、ほぼ全量が小腸から吸収されるため、カロリーは砂糖と同じ4kcal/gですが、分解に時間がかかるため、血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの放出も抑制されます。

そのため、日本ではパラチノースを関与成分として「血糖値の上昇を抑える」という機能性表示食品が消費者庁に届出されています。甘味は砂糖の50%です。

このほかパラチノースにはつぎのような特徴があります。

  • むし歯菌に分解されないため虫歯になりにくい。
  • グルコースの供給が持続するため、運動時の血糖値の低下を防ぐ。また血糖値の低下による眠気を防ぐ。
  • パラチノースの有害危険性は特に報告されていません。

パラチノースは、血糖値のコントロールを目的として、機能性食品やサプリメントに用いられる成分です。

パラチノースの作用に関する研究と用途開発が続いている状態なので、今後、新しい用途が生まれるかもしれません。ただ健康な人が積極的に摂る成分ではなく、また食品に入っていたとしても避ける必要はないと考えます。

果糖ぶどう糖液糖とはコストダウンが目的の甘味料

清涼飲料水をはじめとしてさまざまな加工食品に使われている果糖ぶどう糖液糖ぶどう糖果糖液糖

これらは、トウモロコシ、じゃがいも、さつまいものでんぷんを酵素で分解して作ったもので、異性化糖といいます。これを使う理由はただ一つ、砂糖より値段が安いことです。カロリーは砂糖と変わりません。

異性化糖の種類と製造方法

でんぷんを特殊な酵素で分解すると、ぶどう糖(グルコース)と果糖(フルクトース)ができます。このぶどう糖と果糖の比率によって、つぎのように分類されています。

・ぶどう糖果糖液糖 … 果糖の含有率が50%未満(42%のものがよく使われる)
・果糖ぶどう糖液糖 … 果糖の含有率が50%以上90%未満(55%のものがよく使われている)
・高果糖液糖    … 果糖の含有率が90%以上(95%のものがよく使われる)

砂糖(ショ糖、スクロース)の甘みを100とすると、ぶどう糖の甘みは70、果糖の甘みは120~170なので、果糖の含有率が高いものほど、甘みが強くなります。

果糖の含有率が55%の果糖ぶどう糖液糖がよく使われていますが、これの甘みは砂糖とほぼ同じです。

甘さとカロリーは同じで値段が安い

砂糖も異性化糖もカロリーは全く同じです。砂糖の原料はサトウキビやサトウダイコンですが、異性化糖は値段の安いでんぷんが原料です。食品メーカーにとっては、異性化糖を使うことで、コストダウンができます。

ところで温度によって甘みの感じ方が異なるのですが、低温では果糖は砂糖より甘みが強くなるといわれています。そのため清涼飲料水やアイスコーヒーに使われるガムシロップには、果糖ぶどう糖液糖がよく使われます。

ただ温度が低くなると、砂糖は甘くなくなるというわけではないので、異性化糖を使う理由は、「安いから」というのは変わりません。

異性化糖は安全性に問題ない

異性化糖の成分であるぶどう糖も果糖も、自然界に存在するものです。

また異性化糖の原料も植物なので、異性化糖は安全といってよいでしょう。異性化糖は体によくないといっている人もいますが、よく聞くと、異性化糖より砂糖の方が安全といっているわけではなく、単に果糖の危険性を指摘しているようです。果糖は果物にたくさん含まれていますが、果物を食べるなということでしょうか。

どんなものでも、食べ過ぎるとよくないのはあたりまえです。砂糖も、異性化糖も、果糖も、過剰摂取すれば必ず何らかの害が生じます。

ここで言いたいことは、異性化糖が砂糖と比べて危険なのかどうかということなので、異性化糖は危険ではないし、特に避ける必要もないというのが結論です。

植物から抽出した甘味料(その1)・ステビア

ステビアは南アメリカ原産のキク科の植物から葉から水で抽出・精製された物質で、砂糖の50~350倍の甘さがあります

ステビアは数百年間にわたってパラグアイやブラジルで薬草として使われてきました13)。ステビアは腸内細菌によってステビオールという物質に変化したのち、小腸で血液中に吸収されます。吸収されたステビアは肝臓で分解されることもなく、腎臓から尿としてそのまま排泄されます。ステビアのエネルギー換算係数は4kcal/gです。

発がん性はなく、妊娠に影響する根拠はない、アレルゲンでもない

ステビアに発がん性があるとするネット記事がありますが、最新の医学論文を調べた限りでは、そのような事実はありません

また妊娠を希望する人は使わないほうがよいとか、妊娠中や授乳中の女性は避けるべきという話もありますが、これも根拠がありません

通常の使用の範囲では生殖発生毒性はありません。さらにアレルギー反応を起こす可能性があるという情報もありますが、これはきわめてまれな話で、ステビアの危険性として取り上げるようなことではありません。

ステビアの甘味成分は配糖体という物質で、配糖体はアレルゲンにはなりません。アレルギーの原因になるのは、植物に含まれるたんぱく質です。

ステビアの甘味成分を抽出する際に他の成分が混じる可能性があり、それが原因でしょう。なおキク科植物でアレルギーを起こす人はまれにいますが、ひじょうに珍しいケースです。

ステビアの効果はまだよくわかっていない

ステビアという植物には、甘味料として使われるステビア以外に、さまざまな成分が含まれており、血糖降下作用、降圧作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用、止瀉作用、利尿作用、免疫調節作用があることがわかっています14), 15)

またメタボリックシンドロームへの効果も指摘されています。植物に含まれる成分は、成長時期や部位によって変化します。甘味成分を抽出する方法にはいろいろあり、抽出や精製の条件によって、成分量が異なります。

もともと薬草として使われていたので、いろいろな作用がある可能性が高いのですが、現時点ではステビア(甘味料)をどれだけ摂れば、どのような効果があるのか、研究が行われている状態です。ですから、例えば血糖値を下げる効果があるからといって、ステビアを積極的に摂るといったことは、やるべきではありません。

ステビアを積極的に摂るのはおススメできません

ステビアは数百年間使われてきた実績があること、天然成分であることから、アスパルテームなどの人工甘味料と比べたら、まだマシです。

しかし植物から抽出される天然成分は完全な単一物質ではなく、不純物が混ざる可能性があります。この不純物がどのような作用をあらわすかについては、まだよくわかっていません。

また先ほど説明したように、ステビアにはさまざまな効果があることがわかっており、今後研究が進めば、ステビアの生理学的機能か認められてトクホ(特定保健用食品)になるかもしれませんが、現時点でそれを期待して、ステビアを積極的に摂るのは、止めたほうがよいと思います。

植物から抽出した甘味料(その2)・カンゾウ

マメ科の植物であるカンゾウの根を乾燥したもので、エキス(抽出物)や粉末が甘味料として使われるほか、生薬として300年以上使われています。

カンゾウの甘み成分は一つではなく、グリチルリチン酸、グルコース、スクロース(砂糖の成分)も含まれています。グリチルリチン酸には砂糖の150倍の甘味があります。甘味のほかに塩味を和らげる効果がありますが、独特の臭いがあるため、用途が限られています。

生薬として使われているカンゾウには、さまざまな作用があります。

  • 抗炎症作用 … のどの腫れや痛み、胃粘膜の炎症、目の炎症に効果がある
  • 鎮咳作用 … せきをしずめる
  • 免疫調節作用
  • ウイルス増殖抑制作用

なお、薬として使われる成分なので、大量に使用した場合、低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加の副作用が現れることがありますが、甘味料として使用される場合、薬としての1日の最大配合量の200mgを超えることは考えにくいので、特に心配する必要はありません16)

カンゾウを甘味料として使っていたとしても、量は少ないため、気にする必要はありません

人工甘味料がよく使われている食品を見分ける方法

ダイエットブームのいま、糖質ゼロやカロリーオフが大人気です。でも糖質ゼロやカロリーオフにするためには、必ず人工甘味料が使われています。糖質ゼロとカロリーオフは人工甘味料が入っている目印なので、これらの表示がある商品に注意しましょう。

原材料欄を見てください。

・アセスルファムK … 砂糖の200倍の甘さ
・サッカリン … 砂糖の200~700倍の甘さ
・アスパルテーム … 砂糖の100~200倍の甘さ
・ネオテーム … 砂糖の1万倍の甘さ
・アドバンテーム … 砂糖の2万倍の甘さ
・ステビア … 砂糖の50~350倍の甘さ

のどれかが、かならず使われています。

この中なら、ステビアとアスパルテームが幾分マシであることも、付け足しておきます。


参考文献
1) Kleinsteuber S et. al, Sated by a Zero-Calorie Sweetener: Wastewater Bacteria Can Feed on Acesulfame. Front Microbiol,  20 (10) 2606 (2019)
2) Belton K, et. al.,  A Review of the Environmental Fate and Effects of Acesulfame-Potassium,  Integr Environ Assess Manag, 16 (4) 421-437 (2020)
3) Drugs and Lactation Database (LactMed) [Internet]. Bethesda (MD): National Library of Medicine (US); 2006–. Acesulfame. 2021 Feb 15. PMID: 30000583.
4) 食品添加物の指定、使用基準の改正等について、厚生労働省、平成16年1月20日(2004)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/01/h0120-4.html
5) Bian X, et. al., The artificial sweetener acesulfame potassium affects the gut microbiome and body weight gain in CD-1 mice,  PLoS One, 2 (6) e0178426 (2017)
6) Azeez OH, et. al., Long-Term Saccharin Consumption and Increased Risk of Obesity, Diabetes, Hepatic Dysfunction, and Renal Impairment in Rats. Medicina (Kaunas), 55 (10) 681 (2019)
7) Czarnecka K, Pilarz A, Rogut A, et al. Aspartame-True or False? Narrative Review of Safety Analysis of General Use in Products. Nutrients. 2021;13(6):1957. Published 2021 Jun 7. doi:10.3390/nu13061957
8) Weihrauch MR, et. al., Artificial sweeteners–do they bear a carcinogenic risk? Ann Oncol, 15 (10) 1460-65 (2004)
9) Plaza-Diaz J, et. al., Plausible Biological Interactions of Low- and Non-Calorie Sweeteners with the Intestinal Microbiota: An Update of Recent Studies, Nutrients, 12 (4) 1153 (2020)
10) Ahuja V,et. al., Biological and Pharmacological Potential of Xylitol: A Molecular Insight of Unique Metabolism. Foods, 9 (11) 1592 (2020)
11) Oku T, et. al., Threshold for transitory diarrhea induced by ingestion of xylitol and lactitol in young male and female adults. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo),  53 (1) 13-20 (2007)
12) Saraiva A, et. al., Maltitol: Analytical Determination Methods, Applications in the Food Industry, Metabolism and Health Impacts, Int J Environ Res Public Health, 17 (14) 5227 (2020)
13) Samuel P, et. al., Stevia Leaf to Stevia Sweetener: Exploring Its Science, Benefits, and Future Potential, J Nutr, 48 (7) 1186S-1205S (2018)
14) Ferrazzano GF et. al., Is Stevia rebaudiana Bertoni a Non Cariogenic Sweetener? A Review. Molecules. 21 (1) E38 (2015)
15) Carrera-Lanestosa A,et. al., Stevia rebaudiana Bertoni: A Natural Alternative for Treating Diseases Associated with Metabolic Syndrome, J Med Food, 20 (10) 933-943 (2017)
16) グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて、厚生労働省、昭和53年2月13日(1978)