カルボキシメチルセルロース(CMC)は危険?炎症や大腸がんを起こす

カルボキシメチルセルロース(CMC)は増粘剤、乳化剤、安定剤として多くの加工食品で使われています。木材パルプの成分であるセルロースをクロロ酢酸と反応させて作られた化学物質で、消化・吸収されません。腸内フローラを悪化させたり、腸のバリア機能を破壊することで、炎症性腸疾患、大腸がんや肥満を起こす可能性が指摘されています。

カルボキシメチルセルロースの特性と使用例

製法と種類

カルボキシメチルセルロース(CMC)は、木材パルプの成分であるセルロースをクロロ酢酸と反応させて作られた化学物質です。

具体的に、

・カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)

・カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC-Ca)

の2種類がありますが、どちらも性質はほぼ同じです。

特性と用途

カルボキシメチルセルロースには、

・粘り気を与える性質がある(増粘作用)

・水と油の両方と混じりあう性質がある(乳化作用)

・水分を保持する力が強い(保水作用)

・人間の体内で消化・吸収されない(ゼロカロリー)

といった特性があることから、食品添加物として重宝され、さまざまな食品に使われています。

 

例えば、こんな食品に、こんな目的で使われています。

・グミキャンディー … 適度な固さを与える(増粘剤)

・ドレッシング … 成分の沈澱を防ぎ、適度な粘度を与える(増粘安定剤)

・アイスクリーム、ヨーグルト … 乳脂肪分を安定して分散させる(乳化剤)

・乳酸菌飲料 … 液体の中で成分が沈殿しないようにする(安定剤)

・和菓子 … 水分を保持することで乾燥を防ぎ、賞味期限を延ばす(保水剤)

・加工食品の、食品添加物の欄を見てください。結構いろいろなものに使われています。

日本人がカルボキシメチルセルロースをどのくらい摂っているのかについてはデータがありませんが、英国の場合、体重 1 kg あたり 1日 46 mg 摂取しているというデータがあります 1)体重 50 kg の人なら 1日 2.3 g 摂っていることになります。食品添加物の量としては、多いと思います。

 

森永マミー

カルボキシメチルセルロースは安全なのか

一日摂取量の制限はない

国内でカルボキシメチルセルロースを製造・販売するメーカの任意団体であるCMC工業会のウェブサイトには、「CMCは安全ですか?」という質問に対して、次のような説明が載っています 2)

CMCは、古くから食品添加物として国内外で認可されており、医薬品にも使用されている水溶性高分子です。例えばCMCは食品添加物として一日摂取量の制限はないとJECFA※から認められています。また、主原料がセルロースであるため生分解性もあり、環境負荷の少ない物質です。

※FAO/WHO食品添加物合同専門委員会

食品へ使用量は制限がある

ところが、厚生労働省のウェブサイトを見ると、カルボキシメチルセルロース(CMC-Na、CMC-Ca)には次のような使用基準が定められています 3)

カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルシウム)の使用量は、食品の 2.0 % 以下でなければならない

ただし、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルシウム)をカルボキシメチルセルロースカルシウム(ナトリウム)、デンプングリコール酸ナトリウム及びメチルセルロースの1種以上と併用する場合にあっては、それぞれの使用量の和が食品の 2.0 % 以下でなければならない

 

CMC工業会は一日摂取量の制限はないと言っていますが、国は、食品にたくさん入れてはいけませんといっています。CMC工業会が添加量の制限について意図的に隠したのかどうかわかりませんが、自分たちに都合の悪い情報の開示に消極的な姿勢は、不信感を招きます。

カルボキシメチルセルロースは海外でも日本と同じように使われており、例えばアメリカの食品医薬品局(FDA)は、カルボキシメチルセルロースをGRAS(Generally Recognized As Safe:一般的に安全と認められる)リストに掲載しています4)

腸で炎症反応や肥満を引き起こす

カルボキシメチルセルロースは、比較的安全な食品添加物と考えられてきました。体内に吸収されませんし、腸内細菌が分解してくれるからです。ところが最近になって、カルボキシメチルセルロースが、腸内細菌叢、腸の粘膜バリア、炎症メカニズムに影響することで、炎症性腸疾患(IBD)、大腸がんや、メタボリックシンドロームや肥満を引き起こしている可能性が高いという研究報告が多数出ています。文章中の 数字) は、参考文献の番号です。参考文献のページへのリンクが、記事の最後にあります。詳しい内容を知りたい方は、読んでみてください。

腸内フローラを悪化させる

人間の腸には約 1,000種類、100兆個の腸内細菌が生息しており、ビタミン類(ビタミンB群、ビタミンKなど)や神経伝達物質のセロトニンを合成して、人間に供給しているほか、腸内で使われるエネルギー源となる物質を生産しています。また病原体や異物を排除することで、わたしたちのからだを守る役目も果たしています。腸内に多種類の腸内細菌が分布している様子は、顕微鏡で見るとお花畑のように見えることから、腸内フローラと呼ばれます。

腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分けられますが、健康な人の場合、その比率はおよそ2:1:7といわれています。ところが、カルボキシメチルセルロースが腸に入ることで、腸内細菌の種のバランスが変化するとともに、種の数が減るディスバイオシス(Dysbiosis)という状態になることが報告されています 5-8)

ディスバイオシスは、腸内フローラが悪化した状態で、炎症性腸疾患(IRD)メタボリックシンドロームのほか、うつ病 9-11)食物アレルギー 12,13)の発症に関わっているといわれています。

いま腸活がブームです。腸内フローラを保つ(=腸内細菌のバランスをよくする)ために、ヨーグルトを食べたり、オリゴ糖が添加されたサプリメントを飲んでいる人も多いと思います。ところが、カルボキシメチルセルロースはこれと正反対の作用をするのです。カルボキシメチルセルロースが入ったヨーグルトもあるようですが、メーカーはこういった研究結果があることを知らないのでしょうか。

腸内フローラ

腸のバリア機能を破壊する

人間は腸から栄養の90%を吸収していますが、口や肛門を通じて外界とつながっている腸には、病原性微生物や異物が体内に入らないようにするため、バリア機能が備わっています。具体的には、粘液層、糖衣、細胞間接着装置の3つです。

ラットを使って行われた実験では、カルボキシメチルセルロースによって粘液層の粘液の孔径が小さくなり、大腸菌や粒子が粘液層を通り抜ける速度が大幅に下がった(=粘液層を通り抜けにくくなった)一方で、粘液の量が減り、粘液層が薄くなったことが報告されています 14)。その結果、炎症性腸疾患代謝性疾患の発症に関係している可能性があるといっています。

病原性大腸菌の活動を活発にする

付着性侵襲性大腸菌という病原性大腸菌が、腸内での炎症反応に関わっているといわれていますが、カルボキシメチルセルロースはこの大腸菌の活動を活発にすることが報告されています 5, 7, 15, 16)。具体的にはカルボキシメチルセルロースが病原性大腸菌の数を増やし運動性と付着性を高めることで、腸のバリア機能を突破して体内に侵入しやすくなり、炎症反応が起きると考えられています。

カルボキシメチルセルロースやポリソルソルベート-80(乳化剤の一種)といった食品添加物の大量消費が、20世紀後半以降に増加している潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IRD)、メタボリックシンドロームや大腸がんの発症に関わっていると指摘されています 5, 17, 18)

ナノ化したカルボキシメチルセルロースはさらに問題

ところでここ数年、新素材としてセルロースナノファイバー(CNF)が注目されています。セルロースナノファイバーは、植物から得られたセルロース繊維を径が 100 nm(= 0.1 µm)以下になるまでさらに細かくしたもので、増粘性や保水性があることから、食品添加物として使えないかとの検討がされました。ただナノ物質であることと、新たに食品添加物としての認可を得るのは難しいことから、セルロースナノファイバーという名前では、食品添加物としては使われていません

一方、カルボキシメチルセルロースもセルロースから作られているので、同じ原理で細かくすることが可能です。日本製紙CM化CNF(カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)という名称でこれを販売しており、ウェブサイトで次のように説明しています 19)

 

・数 nm ~数百 nmのブロードな繊維幅を持つナノファイバーです。

・水中では特徴的なレオロジー挙動を示します。

・食品添加物、医薬部外品原料、化粧品原料として使用することができます。

・表示例(食品の場合): カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)

・想定される用途 冷凍クリームコロッケのパンク防止、食パンの保水性向上、餅の食感維持

・実際の使用例 どら焼き、和菓子

 

これはかなり問題があります。

カルボキシメチルセルロースを超微細化したことで、その特性が変化している(=特徴的なレオロジー挙動)にもかかわらず、カルボキシメチルセルロースとして販売されています。細かくなると、腸管での吸収、腸内細菌による分解特性などは変わると思われますが、これについては何も触れられていません。

カルボキシメチルセルロース(CMC)が食品添加物として認可されているから、それをさらに細かくしたものもそのまま使ってOKという理屈は通るのでしょうか。もしこの理屈が通るのであれば、セルロース繊維(食品添加物)から作られたセルロースナノファイバーも「セルロース繊維」という名前で、食品添加物として使ってよい、ということになります。

食品添加物

まとめ

  • カルボキシメチルセルロースは、粘り気を与える性質がある、水と油の両方と混じりあう性質がある、水分を保持する力が強い、体内で消化・吸収されないことから、増粘剤、乳化剤、安定剤、保水材としてさまざまな加工食品に入っている。
  • カルボキシメチルセルロースは安全といわれているが、食品添加物としての使用基準があり、類似の食品添加物と合わせて食品に2%を超えて添加してはいけないことになっている。
  • カルボキシメチルセルロースは、腸内細菌叢の組成を変化させる、腸のバリア機能を破壊する、病原性大腸菌の活動を活発にすることで、炎症性腸疾患(IBD)、大腸がんや、メタボリックシンドロームや肥満を引き起こしている可能性が高いという研究結果が出ている。
  • 一部の国内メーカーが、カルボキシメチルセルロースを超微細化したセルロースナノファイバーを販売しており、特性が異なるにもかかわらず、カルボキシメチルセルロースとして使用できると広告している。

参考文献は分量が多いため、別のページにまとめました。

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