加工でんぷんの種類・用途・製造方法・分子式と特徴

加工でんぶんは、でんぷんを化学薬品で処理して作られたもので、食品の劣化を防ぎ、賞味期限を長くしたり、食感をよくしたりする目的で使われる食品添加物(指定添加物)です。食品添加物は通常、化学物質名で表示されますが、加工でんぷんは化学物質名ではなく、加工でんぷんと表示することが認められています。
ここでは、12種類ある加工でんぷんについて、用途、製造方法、化学構造と特徴について説明します。化学物質名の後の(数字)は、指定添加物リストの番号です。

加工でんぷん全般については、こちらの記事をご覧ください。

関連記事

加工でんぷんは、でんぷんを化学薬品で処理して作られたもので、食品の劣化を防ぎ、賞味期限を長くしたり、食感をよくしたりするために使われる、食品添加物です。12 種類あり、でんぷんとは明らかに異なる化学構造と性質を持つにもかかわらず、化学物質名[…]

酸化デンプン(172)

  • 用途:スナック菓子の食味改善や、せんべいなどの艶出し、フライの衣、天ぷら粉、麺の打ち粉など。
  • 製造方法:でんぷんを次亜塩素酸ナトリウムで酸化処理して作ります。グルコースの水酸基(OH)がカルボキシ基(COOH)に置換されるほか、でんぷんの鎖の一部が切断されて低分子化します。ちなみに次亜塩素酸ナトリウムというのは、漂白剤の成分です。
  • 分子式:(C6H10O5)n(COOH)x
  • 特徴:糊化開始温度が低い、糊液の粘性が低い、糊液の粘度安定性が高い、老化が遅い、透明性が高い、色が白いなどの特徴があります。またでんぷんが低分子化されているため、油で揚げたときに水抜けがよくなるため、カラッとした仕上がり、サクサクした食感が得られるようになります。

酢酸デンプン(159)

  • 用途:たれ類に加えて増粘性を高めたり、冷凍めんの食感改良に使われています。でんぷんを含む食品の調理後の老化を起こりにくくし、透明性の低下も防ぎます。
  • 製造方法:でんぷんに無水酢酸または酢酸ビニルを反応させることで、でんぷん分子の水酸基(OH)の一部をアセチル基(CH3CO)に置換します。
  • 分子式:(C6H10O5)n(CH3CO)x
  • 特徴:グルコース 1 残基あたりのアセチル基の数(以下「置換度」という。)が多いほど糊化温度が低下し、弾力が減少し、粘着性が強くなりますので、でんぷんを含む食品の調理後の老化を防ぎます。またでんぷんの透明性も向上します。

リン酸化デンプン(449)

  • 用途:冷凍食品、チルド食品の老化抑制、ソース類やフィリング類の離水防止。
  • 製造方法:でんぷんにオルトリン酸、オルトリン酸カリウム、オルトリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムのいずれかと反応させてエステル化させ、でんぷんの水酸基の一部をリン酸基に置換します。
  • 分子式:(C6H10O5)n(H2PO3)x
  • 特徴:置換度が高いほど、糊化しやすくなる。置換度 0.05 程度から冷水でも膨潤する。糊液は高粘性で透明である。保水性が強く老化しにくいので、耐冷凍性が高いという特徴があります。

アセチル化酸化デンプン(18)

  • 用途:たれ類の安定性向上や、グミキャンディーのボディー剤など。
  • 製造方法:でんぷんを次亜塩素酸ナトリウムで酸化処理したのち、無水酢酸を加えエステル化します。その結果、でんぷん分子の水酸基の一部がアセチル基(CH3CO)、カルボキシ基(COOH)で置換されています。
  • 分子式:(C6H10O5)n(COOH)x(CH3CO)y
  • 特徴:酢酸デンプンと酸化デンプンの性質をあわせ持っており、糊化開始温度が低い、粘度が低い、透明性が高い、老化が遅い、色が白いという特徴があります。

アセチル化アジピン酸架橋デンプン(17)

  • 用途:かまぼこや魚肉ソーセージなどの水産練製品やソーセージ、ハンバーグなど畜肉製品の弾力性向上などに使われます。食品添加物規格により、アジピン酸基が0.135%以下と、架橋程度に上限が定められています。
  • 製造方法:でんぷんに無水酢酸と無水アジピン酸を加えて、でんぷん分子間のいくつかの水酸基をアジピン酸基(COOH-(CH2)4-COOH)で架橋するとともに、でんぷん分子のいくつかの水酸基をアセチル基(CH3CO)に置換します。
  • 分子式:(C6H10O5)n(C6H8O)x(CH3CO)y
  • 特徴:酢酸デンプンと架橋デンプンの性質をあわせ持っており、糊化開始温度が低く、加熱時に膨潤しにくく、また離水等のデンプン老化が遅いという特徴があります。さらに耐せん断、耐酸性もあります。

アセチル化リン酸架橋デンプン(19)

  • 用途:みたらし団子のたれの離水防止や粘度安定性の向上、レトルト食品 (ソース部分) の調理耐性や粘度安定性の向上、たれ・ソース類やフィリング類の機械耐性向上など。
  • 製造方法:でんぷんにオキシ塩化リンまたはトリメタリン酸、および無水酢酸または酢酸ビニルでエステル化して製造します。でんぷん分子間のいくつかの水酸基をリン酸で架橋するとともに、でんぷん分子のいくつかの水酸基をアセチル化します。
  • 分子式:(C6H10O5)n(PHO2)x(C2H3O)y
  • 特徴:酢酸デンプンと架橋デンプンの性質をあわせ持っています。糊化開始温度が低く、加熱時に膨潤しにくいほか、離水等のデンプン老化が遅いという特徴があります。さらに耐せん断性、耐酸性を有しています。

オクテニルコハク酸デンプンナトリウム(94)

  • 用途:ドレッシング類に含まれる油分と水分が分離するのを防いで安定化する目的や、油分と水分が混合された乳化香料の基材として使われます。
  • 製造方法:でんぷんに無水オクテニルコハク酸を加えてエステル化することで、水酸基の一部をオクテニルコハク酸基で置き換えます。
  • 分子式:(C6H10O5)n [C(O)CH (CH2COONa) CH2CH:CH(CH2)4 CH3]x
  • 特徴:水と油のように、本来混ざり合わないものを均一に混ぜ合わせることができる性質があり、乳化剤として使われます。糊化温度はでんぷんよりやや低く、粘性、保存安定性はでんぷんより高いという特徴があります。

リン酸架橋デンプン(448)

  • 用途:スナック菓子、てんぷら粉、パンの食感改良、かまぼこや魚肉ソーセージなどの水産練製品やソーセージ、ハンバーグなど畜肉製品の弾力性向上に使われています。
    食品添加物規格により、リン酸架橋デンプンではリン含量として0.5%以下と、架橋程度に上限が定められています。
    リン酸架橋デンプンは、非常に少量のリン含量でデンプンの特性を変化させることができるので、通常使用されるリン酸架橋デンプンのリン含量は0.1%以下です。
  • 製造方法:でんぷんに少量のトリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンを加えて、エステル化させることで作ります。
  • 分子式:(C6H10O5)n (HPO2)x
  • 特徴:分子内または分子間の水酸基がリン酸(HPO2)で架橋されて水酸基の数が減ります。そのためでんぷん粒の膨潤や糊化(=粘り気の発生)や、かく拌や酸による粘度の低下が起こりにくくなります。なお架橋の多さによって性質が異なり、低架橋度のものはでんぷん粒の膨潤が適度に抑制されて粘度は上昇する一方、高架橋度ものはでんぷん粒の膨潤が強く抑制され、粘度は低下します。

リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン(463)

  • 用途:冷凍食品の離水防止やチルド食品の老化抑制、たれ、ソース類やフィリング類の外観向上などに使われます。
  • 製造方法:リン酸化デンプンとリン酸架橋デンプンの製造法を組み合わせて製造します。その結果、でんぷん分子間の一部の水酸基がリン酸で架橋されるとともに、でんぷん分子の一部の水酸基が、リン酸基で置換されます。
  • 分子式:(C6H10O5)n (PHO2)x (H2PO3)y
  • 特徴:透明で安定性が高く、凍結に対する安定性も高い。電解性があるので耐塩性、耐酸性が低い。

ヒドロキシプロピルデンプン(319)

  • 用途:冷凍食品やパンに加えることで、でんぷんの老化を防ぐことで賞味期限が長くなります。ほかにも、食感をよくしたり、形が崩れるのを防ぐといった効果もあります。
  • 製造方法:でん粉と酸化プロピレンを反応させ、結合させることで作ります。これをエーテル化といいます。グルコースの水酸基のうち、いくつかに親水性のヒドロキシプロピル基が付加されています。
  • 分子式:(C6H10O5)n [CH2CH(OH)CH2]x
  • 特徴:ヒドロキシプロピル基の導入により親水性が増大し、水に溶けやすく、また水分を保ちやすくなり、老化が起こりにくくなります。水分を多く保つため、冷蔵や冷凍の前後の変化を少なくできます。
    さらに水酸基からヒドロキシプロピル基への置換度 0.1 で糊化温度が10℃程度低下します。水と加熱すると均一な糊液となる。糊液は冷却しても透明であり、冷蔵や、凍結融解に対して優れた安定性を持っています。

 

ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン(317)

  • 用途:冷凍食品の離水防止やチルド食品の老化抑制、たれ、ソース類やフィリング類の安定性向上などに利用されます。
  • 製造方法:でんぷんにトリメタリン酸ナトリウムまたはオキシ塩化リンを加えて、でんぷん分子間のいくつかの水酸基をリン酸基で架橋します。さらにプロピレンオキシドを加えることで水酸基の一部をエーテル化し、ヒドロキシプロピル基(CH3CH(OH)CH2O)で置換します。
  • 分子式:(C6H10O5)n (C3H7O)x (PHO2)y
  • 特徴:ヒドロキシプロピル基の導入により親水性が増大し、糊化温度が低下するとともに、加熱時に糊液が膨潤しにくくなります。また粘性の調節が可能で、冷却時、凍結・融解時、および加熱時の透明性・安定性が高いという特徴があります。これは、ヒドロキシプロピルデンプンとリン酸架橋デンプンの性質をあわせ持っています。

デンプングルコール酸ナトリウム(266)

  • 用途:食品添加物としては、増粘安定剤として使用されているようですが、具体的な使用例はわかりませんでした。一方、医薬品用途では、錠剤を固める際の賦形剤として用いられており、デンプングルコール酸ナトリウムを使用すると、錠剤を服用した後、すばやく崩壊します。化粧品用途では、結合剤、皮膜形成剤、親水性増粘剤、乳化安定剤として使われます。
  • 製造方法と分子式:でんぷんのカルボキシメチルエーテルまたはその架橋物のナトリウム塩ということで、製造方法と分子式はわかっていません。