ケト、パレオ、糖質制限、グルテンフリー、ダイエット効果と結局何がいい?

ケトダイエット、パレオダイエット、糖質制限、グルテンフリーダイエット、いずれも欧米で人気のダイエット法です。

実はこの4つには共通点があります。炭水化物の制限です。

炭水化物はエネルギー源として必要ですが、摂り過ぎると内臓脂肪の増加につながります。また安くておいしい食べものには炭水化物が多く含まれているため、ついつい摂り過ぎてしまいます。

これらのダイエット法を行う上での注意点について見ていきましょう。

ケトダイエットとは、食材はどれ

人間は生きていくために、食べものを摂る必要があります。特にたんぱく質、脂質、炭水化物は三大栄養素といわれ、これらをバランスよく食べることが重要です。

この3つのうち炭水化物は、糖質と食物繊維を合わせたものです。糖質は人間が生きていくためのエネルギー源となるもの、食物繊維は腸内細菌のエサとなり、からだの調子を整えてくれます。

このようにふだん人間は糖質をエネルギー源として使いますが、体内の糖質が足らなくなると脂肪をエネルギー源として使うようになります。糖質が足らなくなるということは、飢餓状態なので、現代の日本人の生活ではほとんどないのですが、脂肪が分解されてエネルギー源として使われるようになると、中間代謝産物である「ケトン体」という物質が血液中に増えます

ここで紹介する「ケトダイエット」というのは、英語で「ケトジェニックダイエット(ketogenic diet)」というものです。意味は、ケトン体を産生する食事(keto+genic+diet)という意味で、糖質の摂取量を抑えて、脂肪をエネルギー源として利用する食事法です。欧米では実践している人も多く、ケトダイエットをしている人向けのサプリメントもあります。英語では”keto”で通じます。

ケトダイエットでは、炭水化物の摂取量を1日50g以下にするとともに、全エネルギーの60%を脂肪から摂ることを基本方針としています。そのため、積極的に摂るべき食材と控えるべき食材を次のように分けています。ただどこまで厳密に行うかは、人によってまちまちです。

・たんぱく質、脂質が多く含まれるもの … 肉、魚、卵、乳製品、大豆
・食物繊維、ビタミンが多く含まれるもの … 野菜(根菜類は除く)、きのこ、海藻
・脂質が多く含まれるもの … ナッツ、オリーブオイル、ココナッツオイル

・糖質が多いもの … 穀物(米、小麦)と穀物から作られたもの(パン、めん類、菓子類)、甘いもの、ジュース、果物、根菜類(いも類、大根、ゴボウなど)

パレオダイエットとは、食材はどれ

パレオダイエットは、農耕が始まる前の旧石器時代の食生活を取り入れることで、減量につなげようとするものです。正式にはパレオリシックダイエットPaleolithic diet(旧石器時代の食事)といいますが、”paleo”で通じます。

肉、魚、卵、野菜などは食べてもOKで、農耕や牧畜がおこなわれるようになってから食べられるようになった穀物、豆類、乳製品は食べてはいけません。パレオダイエットにすると、エネルギー摂取量のうち、炭水化物から摂る割合は20~30%まで下がります。

パレオダイエットを推奨する人は、つぎのようにいっています。

肥満もがんもうつ病もなかった旧石器時代の狩猟採集型の食生活にヒントを得て、体を限りなく自然体の状態に近づけていく、無理な食事制限や運動をしたりせず、「食べる・寝る・動く」を改善するだけで、痩せるだけでなく体質も改善し、一生健康な状態が続いていく画期的な手法であり、新たなライフスタイルです。

これに対する反論は、のちほどしたいと思います。

糖質制限ダイエットとは、やり方は?

低糖質ダイエット、低炭水化物ダイエットなどいろいろな呼び方がありますが、炭水化物の摂取量や全エネルギーに占める炭水化物の摂取割合を制限するという点で、ケトダイエット、バレエダイエットと同じです。

ただどの程度糖質制限をするかについては、いろいろなやり方があり、ダイエットの対象者の置かれた状況、すなわち肥満なのか、肥満気味なのか、普通体型なのか、また健康なのか、糖尿病でそもそも糖質制限を求められているのかによって、内容が大きく異なります。ある記事に、糖質制限ダイエットでは1日の糖質摂取量を120g以下にすると書いてありましたが、これはあくまで一例にすぎません。

もともと糖質制限は、糖尿病患者さんのための食事療法として検討されてきました。かつてアメリカの糖尿病学会は炭水化物の摂取比率を全エネルギーの40%にすることを推奨していましたが、現在は「炭水化物、たんぱく質、脂肪からのエネルギー摂取の理想的な比率はなく、個人によって最適なバランスで摂取すればよい」という見解に変更しています1)

ここまでの説明では、いったいどれだけカロリーを制限すればよいのか、炭水化物を摂る比率や量をどうすればよいのか、まったくわかりません。

そこでまず、厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」2)という文書に書かれている数値を紹介しましょう。これは日本人が食事から摂るべき栄養の目安を示したものです。

まずエネルギーの摂取量ですが、体格や身体活動レベル(運動しているかしていないか)によって差が大きいため、推定エネルギー必要量を「参考値」として掲載しています。ここでは一部を抜粋して示します。なお身体活動レベルⅠ~Ⅲとは、次のような状態をいいます。

身体活動レベルⅠ:生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合。
身体活動レベルⅡ:座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合。
身体活動レベルⅢ:移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合。
性別 年齢(歳) 推定エネルギー必要量の参考値(kcal/日)
身体活動レベルⅠ 身体活動レベルⅡ 身体活動レベルⅢ
女性 18~29 1,700 2,000 2,300
30~49 1,750 2,050 2,350
50~64 1,650 1,950 2,250
男性 18~29 2,300 2,650 3,050
30~49 2,300 2,700 3,050
50~64 2,200 2,600 2,950

 

つぎに各栄養素のバランスですが、全エネルギーに占める割合の目標値が示されています。これによると、炭水化物については下の表に示した年齢を含めたすべての年齢において、全エネルギーの50~65%に相当する量を摂ることを目標にしています。

性別 年齢(歳) エネルギー産生栄養素バランス(%エネルギー)
たんぱく質 脂質 炭水化物
女性 18~29 13~20 20~30 50~65
30~49 13~20 20~30 50~65
50~64 14~20 20~30 50~65
男性 18~29 13~20 20~30 50~65
30~49 13~20 20~30 50~65
50~64 14~20 20~30 50~65

 

これをもとに、1日あたりの炭水化物の摂取目安量を計算すると、次のようになります。

性別 年齢(歳) 炭水化物の摂取目安量(g/日)
身体活動レベルⅠ 身体活動レベルⅡ 身体活動レベルⅢ
女性 18~29 213~276 250~325 288~374
30~49 219~284 256~333 294~382
50~64 206~268 244~317 281~366
男性 18~29 288~374 331~431 381~496
30~49 288~374 338~439 381~496
50~64 275~358 325~423 369~479

ごはん1膳(150g)には炭水化物が65g含まれています。朝、昼、夜とごはんを1膳ずつ食べると、それだけで200g近い炭水化物を摂ることになります(ごはんが悪いという意味ではなく、あくまでも目安として示しました)。

つぎに糖質制限ダイエットで何をすればよいのか、整理して説明しましょう。
まず糖尿病あるいは糖尿病予備軍で、医師から食事指導を受けている人は、その指示に従ってください、また高血圧、腎臓病などの方は、安易に糖質ダイエットをするべきではありません。必ず医師に相談してください。さらにこれから説明する内容は、すべての人に当てはまるものではありません。人によって体格、身体活動レベル、食生活や好みが違います。あくまで一般論と考えてください。

まず、あなたが1日に取っているエネルギー量を計算してみてください。

肥満気味の方は、さきほど表で示した「推定エネルギー必要量の参考値」を上回って、栄養分を取っているはずです。まずはこの数値まで摂取エネルギーを減らしてください。

そして減らす際に、たんぱく質、脂質、食物繊維を減らすのではなく、必ず「糖質」を減らしてください。一番手っ取り早いのは、間食を止めることです。これでエネルギー必要量の数値まで下がらない場合は、主食(ごはん、パン、めん類)などを減らしてください。これは立派な糖質ダイエットです。

すでにエネルギー必要量まで減らしている人で、さらに減量が必要な場合は、たんぱく質、脂質、炭水化物のバランスを変えてください。

たんぱく質と脂質を多めに摂り、炭水化物を減らすことで、減量効果が期待できます。このとき、炭水化物や糖類を一切食べないということは、絶対にやるべきではありません。本当は後ほど説明する血液中のケトン体濃度を測定しながら、糖質をたんぱく質や脂質に置き換えていくのが一番よいのですが、まずは主食(ごはん、パン、めん類)の量を半分にして、減ったカロリーをたんぱく質と脂質で補うことをお勧めします。

グルテンフリーダイエットとは、効果は?

グルテンフリーダイエットは、小麦などに含まれるグルテンというたんぱく質を含む食品を摂らない食事法です。

もともと「グルテンフリー食」は、グルテンが原因で起こる自己免疫疾患の一つ、セリアック病の患者さんのための食事療法でした。自己免疫疾患とは、本来無害であるものをからだにとって有害なものと錯覚して、それが存在するからだの部位を自分で攻撃することによって起こる病気です。セリアック病の場合は、自分の小腸上皮細胞を攻撃し破壊することで、消化器の異常や栄養吸収障害が起きます。

欧米にはセリアック病の患者さんが100人に1人程度いることから、食品スーパーにグルテンフリー食品のコーナーがあります。また街のレストランには、グルテンフリーメニューがあります。このグルテンフリーという食生活をすることによって、ダイエット効果があるといわれるようになり、セリアック病でない人にも広がりました。

グルテンフリー食にダイエット効果がある主な理由は次の通りです。

  • 小麦、大麦、ライ麦が入った食品を避けることにより、結果的に炭水化物の摂取量が減る
  • 習慣性のある小麦を食べなくなることで、過食を防ぐことができる
  • 食品・食事に対して配慮をするようになり、エネルギー摂取量や栄養素のバランスが適正化される。
  • 消化・吸収の悪いグルテンを摂らないことで、腹部膨満、腹痛、下痢の症状がなくなる。

小麦を使った食品には、パン、パスタ、クッキー、ケーキなどカロリーが高く、しかも炭水化物の比率が高い食品がたくさんあります。これらを食べないようにすると、結果として炭水化物の摂取量が減るわけです。

流行のダイエット法、食べてよいものは

ケトダイエット、パレオダイエット、糖質制限、グルテンフリーダイエットについて、それぞれ食べてもよいものと避けるべきものを整理してみました。なおここに示したものはあくまでも一例です。

○:食べてもよいもの
△:食べる量を減らす、または種類を選ぶべきもの
×:食べてはいけないもの
主な成分 ケトダイエット パレオダイエット 糖質制限 グルテンフリーダイエット
肉、魚、卵 たんぱく質
乳製品 たんぱく質 ×
大豆 たんぱく質 ×
小麦、大麦、ライ麦 炭水化物 × × ×
米、トウモロコシ 炭水化物 ×
いも、根菜類 炭水化物、ビタミン ×
上記以外の野菜 食物繊維、ビタミン
きのこ、海藻 食物繊維、ミネラル
ナッツ類 脂質、ビタミン
果物 糖質、ビタミン
清涼飲料 糖質 × ×
アルコール飲料 炭水化物

この4つのダイエット法に共通しているのは、炭水化物の摂取量が減るという点です。

グルテンフリーダイエットは、小麦、大麦、ライ麦を含む食品を米やトウモロコシで代替することができますが、100%代替することは難しいので、結果として炭水化物の摂取量は少なくなります。

またケトダイエット、パレオダイエット、糖質制限(やり方にもよります)は、炭水化物の摂取量を半分以上減らすことになります。そしてその減少分を、脂質とたんぱく質で補います。

脂肪をエネルギーに変える仕組みとは

人間は主に糖質をエネルギー源としていますが、体内の糖質が枯渇すると脂肪をエネルギー源として使うようになります。脂肪が分解されてエネルギー源として使われるようになると、中間代謝産物である「ケトン体」が血液中に増えます。

ケトン体とは脂肪が分解することで肝臓で作られるもので、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの3つですが、体内から検出されるのは、アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸だけです。アセトンも体内で作られますが、肺を通って呼気から出ていきます。現代人は糖質が主なエネルギー源なので、血液中のケトン体濃度(総ケトン体という、アセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸の和)は28~120µmol/Lと低くなっています。

ところが細胞でエネルギー源として使われるグルコースが足らなくなると、まずは肝臓に蓄えられているグリコーゲンがグルコースに分解され、利用されます。しかし肝臓のグリコーゲンは18~24時間で枯渇するため、さらに不足する場合は、筋肉のたんぱく質や脂肪細胞の脂肪をエネルギー源として使うようになります。

脂肪をエネルギー源として使うためは、いったんケトン体にまでする必要があります。そして肝臓で作られたケトン体が全身へ運ばれることで、エネルギー不足が解消します。このように現代の生活ではケトン体はあまり使われることがありません。健康診断では血液中のケトン体濃度を測定しますが、その値が上記の基準値を超えていると、何らかの「異常」があると判断されます。

具体的には、

糖尿病の重症化

糖尿病ではインスリンが働かなくなるため、血液中のグルコース濃度(血糖値)は高いのに、細胞にグルコースが供給できなくなり、細胞がエネルギー不足に陥ります。その結果、ケトン体をエネルギー源として利用するために、血液中のケトン体濃度が高くなります。

絶食や激しい運動

体内の糖質が枯渇すると、ケトン体をエネルギー源として利用するため、血液中のケトン体濃度が高くなります。

 

ケトン体が少し増えたくらいでは特に問題ありませんが、血液中の総ケトン体が7,000µmol/L以上になると、脱水症状や意識障害から死に至る危険があります。この状態を「ケトアシドーシス」といいます。

ケトン体は酸性物質なので、ケトン体が増えると血液のpHが酸性になります。血液が酸性になると呼吸を調節する脳の部分が刺激を受けて、二酸化炭素(酸性)を排出しようと、呼吸はより速く、深くなります。また腎臓も尿に多くの酸を排出することで、血液の酸性度を下げようとして働きます。しかしこの機能がうまく働かなくなり、心臓の異常や昏睡から死に至ることになります。

血液中のケトン体濃度と起きる可能性がある症状を整理しました。

血液中のケトン体濃度 症状
28~120µmol/L 基準値 正常
200µmol/L以上 ケトーシス ケトン体が増加している状態 絶食や糖質制限などで起こるが問題にはならない
7000µmol/L以上 ケトアシドーシス ケトン体が増加し血液が酸性になっている状態 病的な状態で、死に至る危険性もある

ケトダイエットはケトン体をエネルギー源として利用するための食事法なので、血液中のケトン体濃度は間違いなく上昇します

またパレオダイエット、糖質制限、断食・絶食なども、血液中のケトン体濃度が上昇する可能性が高いです。このような食事法や断食・絶食をする場合は、脱水状態にならないように注意し、できれば体内のケトン体濃度を定期的にモニタリングしたほうがよいと思います。

流行のダイエット法のメリット・デメリット

ケトダイエット、パレオダイエット、糖質制限、グルテンフリーダイエット。それぞれを紹介しているサイトには、メリットばかりが強調されていることが多いのですが、ここではデメリットも含めて紹介していきます。

ケトダイエットのメリットとデメリット

ケトダイエットのメリットとしては、減量効果以外にアンチエイジング効果があるといわれていますが、科学的に証明されていません。

一方デメリットとしては、手間とコストがかかるうえ、血液中のケトン体が増えすぎると、からだに悪影響を及ぼす可能性があります。吐き気、無気力、尿結石や、さきほど説明したケトアシドーシスの症状が出ることがあります。

パレオダイエットのメリットとデメリット

パレオダイエットとケトダイエットは、農耕が始まる前の栄養バランスにするという点で似ています。違いはパレオダイエットが果物はOK、乳製品、大豆はNGなのに対し、ケトダイエットは果物はNG、乳製品、大豆はOKとなっている点です。

パレオダイエットは旧石器時代の「食生活を再現する」という点に重きを置いているのに対し、ケトダイエットはその時代の「栄養バランスを再現する」という点に重きを置いているように見受けられます。さて、どちらが正しい選択でしょうか。いうまでもなく「栄養バランスの再現」でしょう。現代社会において旧石器時代の「食生活を再現」することに意味があるとは思えません。

パレオダイエットを推奨する人は、次のようなことを言います。

旧石器時代には肥満も、糖尿病も、がんも、うつ病もなかった!

でもよく考えてみてください。旧石器時代は地球上の全人口はいまの1/2500の300万人程度でしたが、食料は常に不足していました。肥満になるはずがありません。寿命は30年もなかったと考えられます。常に危険と隣り合わせで、がんやうつ病になる余裕すらなかったでしょう。

ということで、パレオダイエットには何らメリットがありません。パレオダイエットにすれば、食品添加物、農薬、環境ホルモン、遺伝子組み換え作物を口にしなくてよいということをいう人もいますが、それは、パレオダイエットの副次的効果で、パレオダイエットにしなくても、実現可能です。

デメリットはたくさんあります。まずは手間とコストがかかること、食事が偏る可能性があることなどです。もしパレオダイエットをするならば、ケトダイエットの方がましでしょう。

糖質制限ダイエットのメリットとデメリット

糖質制限をどの程度行うかにもよりますが、手間と費用をかけずに体重を減らすことが可能です。もともとエネルギーの摂り過ぎであった場合は、摂り過ぎている分の糖質(炭水化物)を減らすだけでOKなので、費用はかかりません。すでにエネルギー摂取量が適正値になっている場合は、糖質で摂っていたエネルギーを、たんぱく質や脂質で摂らなければならないため、若干、手間と費用がかかります。

糖質制限を行うことによるデメリットとしては、ケトダイエットと同様に、血液中のケトン体が増える可能性があることです。ケトン体が増えすぎると、吐き気、無気力、尿結石や、ケトアシドーシスの症状が出ることがあります。

グルテンフリーダイエットのメリットとデメリット

炭水化物の摂取量が減ることによる減量効果に加え、消化・吸収の悪いグルテンを避けることで、腹部膨満、腹痛、下痢といった不快な症状から解放されるというメリットもあります。そのほかグルテンはさまざまな病気と関係しているといわれているので、これらの病気の発症を防ぐことにつながかもしれません。

小麦などが入った食品をグルテンフリー食品で置き換えようとすると、手間とコストがかかることがデメリットとなります。

ラーメンは小麦粉でできているので、グルテンフリーの食生活を始めると、食べられなくなります。グルテンフリーラーメンもありますが、ふつうのラーメンの2倍程度高くなります。そのときラーメンではなく米粉のフォーにするとか、ビーフンにすれば、コスト増はある程度抑えられます。

また小麦成分は多くの加工食品や調味料で使わているため、厳密にグルテンを抜こうとすると、食べるものがなくなってしまいます。そのため、グルテンを完全に抜くのではなく、摂取量を減らす「ゆるグルテンフリー」という考え方に基づいてはどうでしょうか。例えば調味料に含まれる小麦成分はわずかで、からだに影響を与える量ではありません。

アレルゲン表示の「小麦」に注目するのではなく、その食品に小麦がどれくらい含まれているのかを考えて判断すれば、手間とコストはかなり少なくなります。

まとめ

  1. ケトダイエットはケトジェニックダイエットketogenic diet(ケトン体を産生する食事)のことで、炭水化物の摂取量を抑えて、脂肪が分解してできるケトン体をエネルギー源として利用する食事法です。たんぱく質、脂質の摂取量が増え、炭水化物の摂取量が減ります。
  2. パレオダイエットはパレオリシックダイエットpaleolithic diet(旧石器時代の食事)のことで、農耕が始まる前の人類が食べていたものを中心に食べる食事法です。これもケトダイエットと同様、たんぱく質、脂質の摂取量が増え、炭水化物の摂取量が減りますが、食事の栄養成分に着目したというより、旧石器時代の生活様式を模倣することに重点を置いています。
  3. 糖質制限ダイエット糖質、炭水化物の摂取量を少なくする食事法で、目的や対象者のおかれた状況よってその内容に違いがあります。
  4. グルテンフリーダイエットは、小麦、大麦、ライ麦を摂取しない食事法です。もともとは小麦などに含まれるグルテンというたんぱく質が原因の自己免疫疾患であるセリアック病の患者さんのための治療食でしたが、結果的に炭水化物の摂取量が減り、減量効果が認められることから、ダイエット法として定着しました。

参考文献
1) Alison B.et. al., Nutrition Therapy for Adults With Diabetes or Prediabetes: A Consensus Report, Diabetes Care, 2019 Apr; dci190014 (2019)
https://doi.org/10.2337/dci19-0014
2) 日本人の食事摂取基準(2020 年版)、厚生労働省(2019)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf