はるさめ、マロニー、しらたき、葛切り、ところてんの違い

サラダ、和え物、めん料理に使うはるさめ、鍋料理に入れても煮崩れしにくいマロニー、すき焼きに欠かせないしらたき、鍋料理にもデザートにも使われる葛切り、冷やしてからし醤油で食べるところてん

白いめんという共通点がありますが、原料も作り方も栄養成分も異なります。はるさめ、マロニー、葛切りはごはんと同様、血糖値を高める作用がありますが、しらたきとところてんは血糖値の上昇を抑えます。

詳しく見ていきましょう。

はるさめは中国産?それぞれの原料の違いと主な産地

原料 産地
はるさめ 緑豆でんぷん すべて中国産
馬鈴薯でんぷん、甘藷でんぷん 国産(一部輸入品もあり)
マロニー 馬鈴薯澱粉、コーンスターチ/増粘剤(CMC、増粘多糖類) すべて国産(マロニー株式会社の製品)
しらたき こんにゃくでんぷん/水酸化カルシウム(凝固剤) しらたきはすべて国産
こんにゃく芋は88%が国産
葛切り 本葛粉
または馬鈴薯でん粉、本葛粉
または馬鈴薯でん粉
本葛粉の原料の半分は中国、韓国からの輸入
馬鈴薯でん粉はすべて国産
ところてん テングサ、オゴノリ(紅藻) 半分弱は輸入1)

はるさめ

はるさめの原料は、緑豆、じゃがいも、さつまいものでんぷんです。まず、緑豆は「みどりまめ」ではなく「りょくとう」と呼び、マメ科のヤエナリという植物の種子です。あまり聞いたことがありませんよね。それもそのはず、現在日本では栽培されておらず、全量が輸入されています2)。主な産地は中国の内モンゴル自治区です。

焼売の上に乗っているグリーンピースが緑豆と思っている人も多いと思いますが、エンドウ豆で全く別物です。緑豆はでんぷんにしたものがはるさめの原料になるほか、輸入した豆を発芽させて、もやしとして販売しています。

緑豆はるさめは全量が中国からの輸入で、コリコリとした食感があり、めんは細く透き通っています。また煮崩れしにくいのが特徴です。

国産のはるさめもあります。こちらは馬鈴薯でんぷん(じゃがいもでんぷん)と甘藷でんぷん(さつまいもでんぷん)が原料で、モチモチとした食感と味が付きやすいのが特徴です。

マロニー

正式な商品名は「マロニー」ではなく「マロニーちゃん」です。これはマロニー株式会社が開発し、1964年から製造している独自のめんで、はるさめでもくずきりでもありません。

マロニーの原料は、馬鈴薯でんぷん(北海道産馬鈴薯から作ったもの)、コーンスターチ(とうもろこしでんぷん)と増粘剤のCMC(カルボキシメチルセルロース)と増粘多糖類です。マロニーははるさめと似ていますが、煮崩れしにくく、味が染みやすいことが特徴です。

しらたき

しらたきの原料はこんにゃく精粉といわれるものです。これはこんにゃく芋の皮を取り除いて粉にしたもので、白色をしています。こんにゃくでんぷんといわれることもありますが、後で説明するように「でんぷん」ではありません。なおしらたきと糸こんにゃくは同じものです。

ところでこんにゃくがなぜ白いのか、漂白しているのではないかと気になりませんか。

昔のこんにゃくは生のこんにゃく芋をすりおろしたものから作っていたので、芋の皮やアクのために、暗灰色をしていました。でも、こんにゃく精粉から作ると白色になります。ですから、現代のこんにゃく白色なのです。板こんにゃくや糸こんにゃくとして売られているものの中には、こんにゃくらしく見せるために、ヒジキ、アラメなどの海藻を入れて黒くしたものがあります。しらたきが白色、糸こんにゃくが暗灰色というわけではありません。

こんにゃく精粉の原料となるこんにゃく芋は、現在88%が国産です。またしらたき、こんにゃくは、すべて国内で製造されています。

葛切り

もともと葛切りは、マメ科のクズという植物の根から採ったでんぷんである葛粉(現在は「本葛粉」と呼ばれます)から作っていましたが、いまでは馬鈴薯でんぷんと本葛粉、あるいは馬鈴薯でんぷんだけから作られるものが多く出回っています。

葛粉は輸入品もありますが、馬鈴薯でんぷんはすべて国産です。

ところてん

ところてんは、テングサやオゴノリなどの紅藻を熱湯の中で煮ることで溶けだしたものを冷まして、固めたものです。主成分はアガロースという多糖類です。これは消化・吸収されないため、カロリーはほとんどありません

テングサやオゴノリは養殖できないため、世界的に入手が難しくなりつつあります。現在約半分を海外からの輸入に頼っているようです。

ところてんは天突きと呼ばれる押し出し機が有名!製造方法の違い

製造方法  ※行わない場合もある
はるさめ でんぷんを練って作った生地を穴から押し出して製めん→茹でる→冷凍→水洗→天日乾燥
マロニー でんぷんを練って作った生地を蒸す→冷却→切断(製めん)→乾燥※
しらたき でんぷんを水に溶かしたものに凝固剤を加え、穴から熱湯の中に押し出して製めん
葛切り でんぷんを水に溶かし型に入れてから加熱→冷却→切断(製めん)→乾燥※
ところてん 海藻を熱湯に入れて多糖類を煮出す→冷却(固まる)→切断(製めん)

固める方法の違い

  • 加熱して固めるもの … はるさめ、マロニー、葛切り(いずれもでんぷんが主成分)
  • 冷却して固めるもの … ところてん(アガロースが主成分)
  • 凝固剤で固めるもの … しらたき(こんにゃくマンナンが主成分)

麺の作り方の違い

  • 穴から押し出すもの … はるさめ、しらたき
  • 固まった生地を切断するもの … マロニー、葛切り、ところてん

生のままか乾燥するか

  • 生の状態で販売するもの … マロニー、しらたき、葛切り、ところてん
  • 乾燥した状態で販売するもの … はるさめ、マロニー、葛切り、寒天

はるさめ

でんぷんを熱湯で練って生地を、直径が1mmほどの穴の開いた容器から熱湯中に押し出して、めんを茹でます。茹で上がっためんを水でしめ、-20℃で冷凍し、解凍後に水洗いしてぬめりを取ったのちに天日乾燥してつくります。

はるさめは原料のでんぷんの色が付いているので、本来は真っ白ではありません。とくに馬鈴薯でんぷんや甘藷でんぷんから作ると、灰色になるので、次亜塩素酸ナトリウムという漂白剤を使って白くしている場合があります。次亜塩素酸ナトリウムの使用は違法ではありませんが、漂白剤を使っていないものの方が安心です

マロニー

マロニーの親会社であるハウス食品グループ本社のウェブサイトなどを見ると、原料を練って作った生地を冷却し、麺線機でカットすることでめんを作るとのことです。そのとき表面がつるつるで、側面は少し気泡の入ったざらざらした状態にするのが、ノウハウなんだとか。

そして、そのまま出荷するのが「生マロニー」、乾燥してから出荷するのが「乾燥マロニー」と紹介されています。固まった生地をカットしてめんの形にするのは、後で説明する葛切りと同じです。

しらたき

こんにゃく精粉を水に溶かした液に水酸化カルシウムの水溶液を加えて、直径が2~3mmほどの穴の開いた容器から熱湯中に押し出すと、めんが固まり、しらたきができ上ります。しらたきは生の状態で出荷されます。

葛切り

本葛粉あるいは馬鈴薯でんぷんを水で溶かして、型に入れてから加熱すると、でんぷんが固まって板状になります。冷ましてからこれを切断し、きしめんのような形にしたものが葛切りです。冷菓として食べる葛切りは生のまま出荷される場合がありますが、ほとんどは乾燥してから出荷されます。

ところてん

ところてんは、テングサやオゴノリなどを熱湯の中で煮ることで溶けだした多糖類を、冷却して固め、それを「天突き」という器具に入れて、四角形の穴から押し出して麺状にしたものです。この状態で出荷されるのは少なく、冷却して固まったものを乾燥してから出荷されることがふつうです。乾燥したものを「寒天」といい、棒状のものや粉状のものがあります。寒天をお湯に溶かして加熱し、それを冷却すると、もとの固形物に戻ります。

寒天のカロリーは100gあたり2kcal!成分とカロリーの違い3)

主要成分 乾めん
100gのカロリー
茹でためん
100gのカロリー
はるさめ でんぷん 344kcal 78kcal
マロニー でんぷん 349kcal 70~90kcal
しらたき グルコマンナン(水溶性食物繊維)、不溶性食物繊維 7kcal
葛切り でんぷん 341kcal 133kcal
ところてん アガロース(水溶性食物繊維) 2kcal

はるさめ

はるさめの主成分はでんぷんで、少量の食物繊維が含まれています。ミネラルもひじょうに少なく、ビタミンはほとんど含まれていません。はるさめをごはんやめん類の代わりに食べるのはよいですが、はるさめをおかずにすることはお勧めできません。ごはんとはるさめは栄養成分がほぼ同じなので、はるさめを食べるのであれば、その分、ごはんの量を減らすべきです。

乾燥状態と茹でた状態のはるさめの栄養成分は次の通りです。緑豆はるさめのほうが、国産はるさめよりわずかに食物繊維が多いですが、ほとんど差はなく、緑豆はるさめが栄養成分的に優れているとはいえません。

緑豆はるさめ
普通はるさめ
緑豆はるさめ
ゆで
普通はるさめ
ゆで
エネルギー kcal 344 346 78 76
たんぱく質 g 0.2 0 0 0
脂質 g 0.4 0.2 0.1 0
炭水化物 g 87.5 86.6 20.6 19.9
食物繊維総量 g 4.1 1.2 1.5 0.8
食塩相当量 g 0 0 0 0
でんぷん g 80.4 78.2 18.0 17.9

マロニー

マロニーの主成分も、はるるさめと同じでんぷんです。栄養成分がごはんと同じなので、マロニーをおかずとして食べるのなら、その分、ごはんの量を減らすべきです。乾燥したマロニー100g中の主な栄養成分は次の通りです。

  • エネルギー    349kcal
  • たんぱく質    0.1g
  • 脂質       0.2g
  • 炭水化物     86.8g
  • 食塩相当量    0.09g

しらたき

しらたきの主成分はグルコマンナンという多糖類で、水溶性食物繊維に分類されます。

でんぷんはグルコースがα-1,4-グリコシド結合でつながったものですが、グルコマンナンはグルコースとマンノースがおよそ2:3の割合でβ-1,4-グリコシド結合しており、消化酵素で分解されないため、栄養分として吸収されません。その一方で消化管内で水を吸って何十倍にも膨れるため、満腹感が得られます。

さらに腸内細菌のエサになるため、腸内環境を改善します。またでんぷんとグルコマンナンを同時に摂ると、グルコマンナンがでんぷんが分解してできるグルコースの吸収をゆるやかにし、血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。

また不溶性食物繊維も多く含んでいることから、便秘を解消する効果があるといわれています。

しらたきは生の状態で販売されており、97%が水分です。100gあたりのカロリーはわずか7kcalです。主な栄養成分は次の通りです。なお主成分のグルコマンナンは水溶性食物繊維ですが、日本食品標準成分表では、水溶性食物繊維の量は0gと記載されています。この理由はわかりません。

  • エネルギー    7kcal
  • 水分       96.5g
  • たんぱく質    0.2g
  • 脂質       0g
  • 炭水化物     3g
  • 食塩相当量    0g
  • 水溶性食物繊維  0g
  • 不溶性食物繊維  2.9g
  • 食物繊維総量   2.9g

葛切り

葛切りの主成分も、はるるさめと同じでんぷんです。栄養成分がごはんと同じなので、葛切りを食べた分はごはんなどの主食を減らすべきです。乾燥した葛切りと茹でた葛切り100g中の主な栄養成分は次の通りです。

くずきり/乾 くずきり/ゆで
エネルギー kcal 341 133
たんぱく質 g 0.2 0.1
脂質 g 0.2 0.1
炭水化物 g 87.7 33.3
食物繊維総量 g 0.9 0.8
食塩相当量 g 0 0
でんぷん g 81.5 29.4

ところてん

ところてんの99%が水分で、残りの成分はアガロースという多糖類で、消化・吸収されず、腸内細菌のエサになります。アガロースも水溶性食物繊維に分類されます。腸内細菌のエサになるため、腸内環境を改善するほか、便秘を解消する効果も期待できます。ところてんの99%は水分で、カロリーは100gあたり2kcalしかありません。その他の栄養成分は次の通りです。

  • エネルギー    2kcal
  • 水分       99.1g
  • たんぱく質    0.2g
  • 脂質       0g
  • 炭水化物     0.6g
  • 食物繊維総量   0.6g
  • 食塩相当量    0g

葛切りはおもに夏のデザート いろいろな食べ方

料理のレシピは無限にあります。ここでは主な食べ方を整理してみました。

食事 デザート
はるさめ 煮物、炒め物、和え物料理の具材
汁の少ない鍋料理
春巻きの具材
太平燕(スープめん)
マロニー 鍋物
炒め物、和え物料理の具材
しらたき 鍋物
炒め物、和え物料理の具材
葛切り 鍋物の具材(乾燥したもの) 冷やして蜜をかけて食べる
ところてん 二杯酢または三杯酢をかけた物に和辛子を添えて食べる、醤油をかけて食べる、黒蜜をかけて食べる、など

まとめ

  1. はるさめは緑豆、馬鈴薯、甘藷のでんぷんが原料で、生地を穴から絞り出す方法で製めんする。
  2. マロニーは馬鈴薯でん粉とコーンスターチなどが原料で、生地を切断する方法で製めんする。はるさめに比べて煮崩れしにくい。
  3. しらたきはこんにゃく精粉が原料で、凝固剤を加えて穴から絞り出して製めんする。水溶性食物繊維のグルコマンナンが主成分で、カロリーが低い
  4. 葛切りは葛粉、ばれいしょでん粉が原料で、生地を切断する方法で製めんする。デザートにも用いられる。
  5. ところてんはテングサ、オゴノリが原料で、熱湯で煮出したものを冷却して固め、切断してめん状にする。水溶性食物繊維のアガロースが主成分で、カロリーが低い。デザートとして食べられる。

参考文献
1) 農林水産省、消費者の部屋
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0403/01.html
2) 岩元勝昭、海藻工業製品の危機、月刊フードケミカル2017 (12) 54-57 (2017)
3) 日本食品標準成分表2020年版(八訂)