粉ものの種類はこんなに多い!お好み焼きの歴史とは

さまざまなお好み焼きがありますが、もともとは水で溶いた小麦粉にいろいろな具材を入れて焼いた大正時代のもんじゃ焼きが、いろいろな形で発展していったようです。

代表的なお好み焼きというと「関西風」と「広島風」ですが、前者が「混ぜ焼き」、後者が「重ね焼き」と作り方が全く違います。

ご当地グルメとして注目のお好み焼きも含め、さまざまなお好み焼きの違いについてご紹介します。

お好み焼きは作り方で区別される

お好み焼きは、水で溶いた小麦粉に、卵、キャベツ、肉、イカ・エビなどの魚介類、めん類を入れて、鉄板の上で焼いた料理です。

特に決まったレシピがあるわけではなく、自分が好きなものを入れて「お好み」で楽しむことができます。また地域によって具材や作り方に特色があるのも、お好み焼きの特徴です。

お好み焼きは、作り方によって、「混ぜ焼き」と「重ね焼き」に分けられます。

混ぜ焼き水で溶いた小麦粉に具材を入れて混ぜ合わせ、それを鉄板の上で焼くスタイルのお好み焼きで、関西風お好み焼きはこちらの部類に入ります。

重ね焼き水で溶いた小麦粉を鉄板の上に丸く引いて生地を作り、その上に具材を載せて焼くスタイルのお好み焼きで、広島風お好み焼きが代表例です。

重ね焼きは大正時代の一銭洋食(洋食焼き)がルーツといわれており、戦前はほとんどがこのスタイルでしたが、戦後に混ぜ焼きが登場してからは、混ぜ焼きの方が主流となりました。ただ、ローカルフード、ソウルフードとして残っているお好み焼きの中には、重ね焼きのものもたくさんあります。

もんじゃ焼き(もんじゃ、文字焼き)の発祥は?

もんじゃ焼きという名前は文字焼きから由来しているといわれています。

後で説明するように、もんじゃ焼きは粘り気の低い生地を鉄板の上で焼いて、どろどろのまま食べていましたが、こどもがこの生地で文字を書いていたので文字焼きといわれるようになり、それがもんじゃ焼きになったとのことです。いまは「もんじゃ」と呼ぶことも多いそうです。

もんじゃ焼きは水で溶いた小麦粉に具材、出汁やしょうゆ、ソースなどの調味料を混ぜて、鉄板の上に流して焼きます。

生地の水分が高いため、熱しても一部は糊状のままで、完全に固まらないのが特徴です。現在のもんじゃ焼きは具材としてキャベツ、中華めん、イカ、桜えび、肉のほか、もち、チーズ、辛子明太子などが使われていますが、もともとは価格の安いものしか使わず、昭和20年代には小麦粉とソース、しょうゆだけで作られていたこともあるようです。

もんじゃ焼きの作り方と食べ方は、独特です。

  1. 水で溶いた小麦粉に具材、出汁、調味料をすべて入れて混ぜあわせる。
  2. その中から具材(固形分)だけを取り出して、鉄板の上で焼きます。
  3. 具材にある程度火が通ったら、具材で円形の土手を作り、その中に残りの液体(小麦粉、出汁、調味料のが混ざったもの)を流し込みます。
  4. この液体に火が通ったところで具材を液体の中で鉄板に押さえつけて焦がしながら食べます。

現在は東京都中央区、江東区、台東区などの下町で、ローカルフードとして食べられているほか、北関東にももんじゃ焼きを出す店があるようです。

どんどん焼きは人気屋台から駄菓子にもなった

どんどん焼きという名前は、商品を売る屋台が太鼓を「どんどん」鳴らしていた、あるいは商品が「どんどん」売れたことに由来するといわれています。

小麦粉を水で溶いて鉄板の上で丸く焼いて、その上に具材を載せたもので、屋台で提供されていたといわれています。

いまのお好み焼きに近いものもあれば、具材に餡や豆餅を使ったもの、三角形に切った食パンに小麦粉と卵を溶いた生地をかけて焼いたものなど、さまざまな種類のものがあり、大正時代から昭和10年代にかけて、東京を中心に東日本で流行したそうです。

現在もいろいろな形で各地で残っており、仙台市のどんどん焼きは、小麦粉を水で溶いた生地を丸く延ばして焼き、そこへねぎ、天かす、干しエビ、紅生姜がなどを乗せ、しょうゆを塗って半分に折りたたんで提供されています。

また山形市のどんどん焼きは、小麦粉を水で溶いた生地を楕円形に薄く伸ばして焼き、その上に海苔、青のり、魚肉ソーセージなどを載せ、焼きあがる直前に割り箸に巻き付けます。最後にソースをつけて完成となります。

一銭洋食(洋食焼き)とは京都で食べられる

水で溶いた小麦粉に刻みネギ、肉などをのせて焼き、ウスターソースを塗ったものを、1枚1銭で売っていたところから、一銭洋食という名前がついたようです。

もともとは大正時代に近畿地方の駄菓子屋でおやつとして売られていたもので、ちゃんとした料理ではなかったようです。小麦粉やソースが珍しかった当時、洋食という名前を付けて売り出したもので、洋食焼きとも呼ばれていたそうです。

具材は値段の安いものを適当に入れていたようで、キャベツの千切り、もやし、ひき肉、すじ肉、こんにゃく、かまぼこ、魚粉、天かすなどが使われていました。

現在でも京都市に壹銭洋食という名前のお好み焼きレストランがあり、当時の一銭洋食に近いものを食べることができます。

ねぎ焼き・キャベツ焼き

ねぎ焼きキャベツ焼きも、水で溶いた小麦粉を鉄板の上で丸く広げて焼き、その上に具材を載せて焼く重ね焼きタイプのお好み焼きで、主に近畿地方で食べられていたものです。

ねぎ焼きの具材は、大量の青ねぎとすじ肉とこんにゃくを甘辛く煮込んだすじこん、卵などで、醤油やウスターソースで味付けをして、安い値段で提供されていました。ねぎの代わりにキャベツを使ったものがキャベツ焼きです。

にくてんは高砂のソウルフード

にくてんはと「すじ肉」「天かす」から付いた名前といわれていますが、定かではありません。

もともとは戦前に神戸市の下町である長田区でよく食べられていた重ね焼きで、小麦粉を水で溶いた生地の上に、ねぎとすじこんを入れて焼いていたといわれています。すじこんとは、すじ肉と糸こんにゃくを甘辛く煮込んだもので、現在でもこの地域のソウルフードとして残っています。

にくてんという名称は、発祥地である神戸ではほとんど見られなくなりましたが、同じ兵庫県西部の高砂市がにくてんをご当地グルメとして売り出しており、B-1グランプリにも出場しています。

高砂市のにくてんは、ネギ、キャベツ、すじこんに以外に、味の付いたジャガイモが入っています。これはおでんの具材を刻んでいれたことに由来するそうです。

かしみん焼きは岸和田のソウルフード

かしみんは、具材の「かしわ」(鶏肉)と「ミンチ」に由来します。大阪府南部の岸和田市のソウルフードで、水で溶いた小麦粉を鉄板の上に薄く延ばして焼き、その上に親鶏の肉、牛脂がたくさん入ったミンチ肉、刻んだキャベツを載せて焼いた重ね焼きの一種です。

関西では鶏肉のことを「かしわ」と呼びますが、かしみん焼きでは値段の安い親鶏の肉が使われます。この肉は脂分が少なくなってパサパサするので、ここへ牛脂の多いミンチを入れることで。パサつきを押さえているそうです。ウスターソースやしょうゆで味付けをします。値段が安い材料を使った庶民の料理です。

関西地方のお飲み焼きは、水で溶いた小麦粉に具材を入れ、かき混ぜてから焼くというスタイルが一般的ですが、かしみん焼きは小麦粉の生地を先に焼いて、その上に具材を載せるという、一銭洋食(洋食焼き)の作り方を継承しています。またお好み焼きの具材として鶏肉を使うというのも、珍しいです。

関西風お好み焼きはふわふわ食感が人気

水で溶いた小麦粉に、出汁、キャベツのみじん切り、卵、干しエビなどを混ぜ込んでから焼く、いわゆる混ぜ焼きのお好み焼きです。

食感を軽くするため、生地にすりおろしたヤマイモを入れることもあります。

具材は豚肉、イカなどが一般的です。具材は生地と混ぜず、鉄板で先にある程度火を通して、その上から生地をかけて焼くか、生地の上に載せて、ひっくり返して焼くかのいずれかです。

豚肉と卵が入ったものを「豚玉」、イカと卵が入ったものを「イカ玉」、中華めんが入ったものは「モダン焼き」といいます。

ソースは地域によって異なるものが使われていますが、広島風お好み焼きで使われているものよりは、粘度が低く、甘みが少ないものが使われます。

広島風お好み焼きはパリパリな生地が特徴

広島以外の地域では、広島焼と呼ばれることもありますが、広島県民はこれを極端に嫌い、これが原因でけんかになることもあります。広島では単にお好み焼きと呼ばれています

重ね焼きの一種で、水で溶いた小麦粉を延ばして作ったクレープのような薄い生地の上に、野菜、肉などの具材を載せ、全体をひっくり返して生地で蓋をすることで、具材を蒸し焼きにします。

また中華めんを鉄板上で別に炒め、具材の中に入れること、具材としてもやしを使うこと、最後に鉄板上で別に薄く焼いた卵の上に、焼きあがった本体を載せることも、広島風お好み焼の特徴です。

広島風お好み焼きでは、甘みが強く粘度の高いソースが使われ、広島市にあるオタフクソースが作るお好みソースが有名です。このソースは30年前には広島土産として新幹線の駅などで売られていましたが、いまでは全国どこでも手に入るようになりました。

チヂミ(韓国風お好み焼き)はタレがポイント

溶いた小麦粉、卵と一緒にさまざまな食材をフライパンの上で焼いた韓国料理です。日本のお好み焼き(関西風お好み焼き)との違いは、

  • 生地を作るとき、小麦粉に対して水の量が多く、生地が軟らかいこと。
  • フライパンに多めの油をひいて、強火で揚げるように焼くこと。
  • たれにつけて食べること。

の3つです。

水で溶いた小麦粉に、卵、ニラ、たまねぎ、にんじん、ねぎ、キムチ、イカ、エビなどの具材を入れた生地を、油を多めに引いたフライパンで強火で揚げるように焼き、焦げ目がついたら弱火で火を通します。

最後にごま油を垂らして、香りづけをします。焼いたチヂミは、しょうゆ、酢、ゴマ油、コチュジャン、ゴマなどが入ったたれにつけて食べるのが一般的です。

韓国では家庭で作るほか、さまざまな種類のチヂミが屋台で売られています。

まとめ

お好み焼きの歴史と特徴

さまざまなお好み焼きを紹介しました。最後にそれぞれの関係と特徴をまとめます。お好み焼きの歴史については諸説あり、ここでご紹介するのは一つの説と考えてください。

分類 特徴 主に食べられる地域
もんじゃ焼き 具材を糊状の生地とともに食べる 東京・下町
どんどん焼き 重ね焼き 屋台料理として各地に残っている 宮城、山形など
一銭洋食(洋食焼き) 重ね焼き 小麦粉の生地に安い具材とソース
ねぎ焼き・キャベツ焼き 重ね焼き 小麦粉の生地に安い具材とソース
にくてん 重ね焼き 小麦粉の生地に安い具材とソース 兵庫・高砂市
かしみん焼き 重ね焼き 小麦粉の生地に安い具材とソース 大阪・岸和田市
関西風お好み焼き 混ぜ焼き 具材と生地を混ぜて焼く 全国
広島風お好み焼き 重ね焼き 具材に生地をかぶせて蒸す 広島、(全国)
チヂミ 混ぜ焼き 具材と生地を混ぜて焼く 韓国、(全国)