有機栽培、オーガニック、無農薬、減農薬の違いやメリット、デメリット

誰もが安全でおいしい食品を求めています。有機栽培、オーガニック、無農薬、減農薬などをうたった農産物が出回っていますが、なにがどう違うのか、よくわかりません。

有機栽培とオーガニックは同じ意味で、国の認証制度である有機JAS認証を受けた場合のみ、認証マークとセットで表示することができます。

また意外かもしれませんが、無農薬、減農薬ということばを使って農産物を販売することは禁止されています。

有機栽培とオーガニックは同じ意味で認証を受ける必要がある

店頭に並ぶ農産物の中には、有機栽培トマト、オーガニックトマト、有機トマトなどと表示されているものがあります。

これらはすべて同じ意味で、国の有機食品の認証制度である有機JAS認証を受けた「有機農産物」であるという目印です。

このような農産物には必ず、下記の「有機JASマーク」がついています。表示とマークはセットで表示しなければならないことになっています。もしこのマークがないにもかかわらず、有機栽培○○、オーガニック○○などと表示している農産物があれば、それは法律違反で、ウソである可能性が高いということです。

 

 

ポイントを整理しますと、

  • 国が指定した認証機関で認証を受けた有機農産物だけが、有機とかオーガニックと名乗ることができる。
  • 有機農産物には必ず有機JASマークを貼ることになっている。
  • たとえ有機農産物と同じ方法で栽培していたも、認証機関で認証を受けていない場合は、有機とかオーガニックと名乗ることはできない。

この表示方法には、さまざまなタイプのものが認められており、以下の表示はすべて同じ意味になります。

【表示ルール】○○は農産物の一般的な名称(例えば、トマト)

・有機農産物
・有機栽培農産物
・有機農産物○○
・○○(有機農産物)
・有機栽培農産物○○
・○○(有機栽培農産物)
・有機栽培○○
・○○(有機栽培)
・有機○○
・○○(有機)
・オーガニック○○
・○○(オーガニック)

有機野菜は無農薬や減農薬ではない

有機農産物の定義

有機栽培、有機○○、オーガニック○○は、すべて同じ意味で、有機農産物のことです。有機農産物は、

  • 化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避ける。
  • 土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させる。
  • 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産する。
  • 採取場の生態系の維持に支障を生じない方法により採取する。

と「有機農産物の日本農林規格」で決められています。

肥料と農薬については、化学肥料、化学農薬を使わないということで、無農薬でも、減農薬でもありません

有機農産物に使える肥料と農薬

化学肥料以外の肥料というと、鶏糞、牛糞、油粕、魚粉、草木灰やこれらを含んだたい肥のことで、有機肥料と呼ばれるものです。有機肥料は化学肥料と比べて価格も高く、配合や施肥に手間がかかるため、農産物のコストアップにつながります。

一方の農薬ですが、次のようなものが使用可能です1)

殺菌剤:イオウフロアブル(無機硫黄剤)、Zボルドー(無機銅)、ハーモメイト水溶剤(炭酸水素ナトリウム)、バイオキーパー(微生物)
殺虫剤:ハッパ乳剤(なたね油)、コガナコン(フェロモン)、エンストリップ(天敵)、バストリア水和剤(微生物)、グリーンエージ(クロレラ抽出物)

有機野菜のメリットは地球環境を守ること

野菜がおいしいとか、安心して食べられるという意見もありますが、これは感覚的なものです。ふつうの野菜と有機農産物を比較して、有機農産物の方が食味がよいとか、ふつうの野菜を食べ続けて、何らかの健康被害があったというデータはありません。

化学的に合成された肥料や農薬を使った野菜を食べるということに、よくないイメージを持つ方も多いと思います。そのような方は、有機農産物を選べはよいでしょう。国産の農産物は、肥料や農薬の使用にあたって厳しい基準があり、それをクリアしたものだけが出荷されていますので、おいしく、安全であると考えてよいでしょう。

有機農産物を購入することの最大のメリットは、農業を行っている環境、すなわち圃場を中心とする生態系への負荷を減らすことです。

化学的に合成される肥料や農薬は、製造にあたって化石資源やエネルギーを使っていますし、環境中で分解されにくく、長期間にわたって生態系に影響を及ぼし続ける可能性があります。

農産物を効率よく生産するために、土壌の成分を自然界ではありえないような状態に変えてしまい、本来殺す必要のない植物、動物、微生物まで殺しているのが、現在の農業です。食料の生産性を上げるためには必要なことかもしれませんが、有機農産物を選択することで、地球環境を守ることにつながります

有機野菜のデメリットは手間がかかり値段が高い

消費者にとっての一番のデメリットは、価格が高いことです。すでに説明したように、有機農産物を生産するためには、高価な肥料や農薬を使う必要があり、栽培に手間がかかります。有機農産物を生産されている農家さんは、儲かるから生産しているのではなく、安全・安心の農産物を消費者に届けるとともに、農業を営んでいる自然環境を守りたいという想いから、コストと手間のかかる有機農産物を栽培されています。消費者もその努力に対し、応分の負担をするのが当然ではないでしょうか。

もう一つは、ふつうの農産物と比べて、傷がついていたり、曲がっていたりする場合があります。しかし傷が全くなく、形のそろっち農産物が大量生産できていること自体、不思議だと思うべきです。消費者の側が認識を改める必要もあります。

生産者にとってのデメリットは、認証のための手間とコストです。認証を受けるためには、さまざまな書類を用意し、少なくない費用を負担する必要があります。有機農産物と同じ条件で農産物を栽培している場合でも、有機農産物認証を取得していないケースもたくさんあります。しかしこの場合は、有機とか、オーガニックという名称をつけて農産物を販売することができません。

無農薬、減農薬とうたって農産物を売ることは法律違反

無農薬、減農薬ということばは、ふつうに聞きます。筆者は「無農薬栽培トマト」が道の駅で売られているのを見たことがあります。

しかし、農産物に対して無農薬や減農薬と表示することが禁止されています

無農薬栽培は、生産期間中に全く農薬を使用せずに農産物を生産することです。しかし生産期間前に土壌に散布された農薬や、近隣から飛散したり、水に混ざって流れ込んできた農薬が全くないと証明できません。無農薬栽培の定義、基準や、無農薬であることを第三者が認証する方法が存在しないので、農林水産省は農産物に対して「無農薬」と表示することを禁止しています。

減農薬栽培は、使用する農薬の分量や回数を削減して栽培する方法ですが、無農薬栽培と同様、定義、基準や、その事実を確認する方法がありません。そのため農産物に対する「減農薬」という表示も禁止されています

では、折角農薬の量を減らして栽培しても、何も表示することはできないのでしようか。

特別栽培農産物とはつまり減農薬野菜

特別栽培農産物ってご存じでしょうか。わたしは聞いたことがありませんでした。2001年に農林水産省が定めた「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」で、

その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、かつ、化学肥料の窒素成分量が50%以下、で栽培された農産物

を、「特別栽培農産物」と呼ぶようにしたのだそうです。

「減農薬」のほうが、わかりやすかったのでは、と思うのは、筆者だけでしょうか。

現在の表示ルールは次の通りです2)

・農薬:栽培期間中不使用
・節減対象農薬:栽培期間中不使用
・化学肥料(窒素成分):栽培期間中不使用
・節減対象農薬:当地比 ○割減
・節減対象農薬:○○地域比 ○割減
・化学肥料(窒素成分):当地比 〇割減
・化学肥料(窒素成分):〇〇地域比 〇割減

無農薬や減農薬と表現するより、具体的でわかりやすいと思います。ただこれは有機JAS認証とは異なり、生産者や販売者による自主的な表示です。

それにしても、特別栽培農産物ではピンときません。

 

この実は問題はこれだけではないのです。都道府県等の自治体やJAが、このガイドラインと同レベルのもの、上乗せ基準を設けたもの、緩和したものまで、さまざまな表現を行っています。目的は農産物の地域ブランド化と収益性向上なのですが、実施主体によって基準や表現が異なるなど、いっそうわかりにくくなっています。

有機食品、有機畜産物、有機加工食品というのもある

有機やオーガニックは農産物だけではなく、畜産物、加工食品、飼料(家畜のエサ)にも有機と名の付くものがあります。有機農産物、有機畜産物、有機加工食品、有機飼料をまとめて、有機食品といいます。なお有機飼料は有機畜産物を生産するために使われるものなので、有機食品に含まないこともあります。

有機食品であることを表示するためには、国が指定した認証機関で認証を受ける必要があり、また有機JASマークとセットで表示する必要があります

有機畜産物

有機畜産物は、薬剤に頼らず、有機栽培された飼料を与え、密飼いなどのストレスを与えずに、家畜の行動要求に沿い十分留意した飼育方法で行われる畜産業で生産される畜産物で、家畜に不必要な苦痛を与えず、よい生活を保障しようとする家畜福祉の考え方に基づいています3)

対象となる家畜および家きんは

牛、豚、馬 、めん羊、山羊、鶏、うずら、あひる、かも(アイガモを含む)

です。

有機畜産物と認証されるための主な要件は、

  • 草地や野外の飼育場へのアクセスの確保
  • 有機飼料(無農薬、無化学肥料での栽培)の給与
  • 動物医薬品の使用条件の限定(予防目的での抗生物質の使用禁止等)
  • 排せつ物管理の適正化
  • 飼養管理記録の保存

です。

認証された畜産物は次のような表示がされます。 ○○は畜産部一般的な名称(例えば、牛肉)

・有機畜産物
・有機畜産物○○
・○○(有機畜産物 )
・有機畜産○○
・○○(有機畜産 )
・有機○○
・○○(有機 )¥・オーガニック○○
・○○(オーガニック )

また、上記の表示をする際には、必ず有機JASマークをつけなければなりません。

有機加工食品

有機加工食品は、原材料の95%が有機農産物または有機畜産物によって製造・加工された食品で、原材料である有機農産物や有機畜産物が持つ特性を、製造・加工の過程において保持することを旨とし、物理的または生物の機能を利用した加工方法を用い、化学的に合成された添加物及び薬剤の使用を避けることを基本として、生産したものです4)

下記に示すように、さまざまな加工食品が対象となります。

・漬物、梅干し、ジャム
・果汁、茶、コーヒー、豆乳、製茶(仕上げ茶)
・豆腐、納豆、味噌、醤油
・小麦粉
・うどん、中華麺、そば、パスタ
・こんにゃく
・パン、菓子類
・牛乳、バター、チーズ
・ハム、ソーセージ類

有機食品の表示に関するルール

有機食品(有機農産物、有機畜産物、有機加工食品)は、国が指定する認証機関にお金を支払って認証を受けてはじめて、有機食品であることを表示することができます。また表示する場合には、有機JASマークとセットで表示しなければなりません。

もし認証を受けないで、「オーガニックビーフ」と表示して販売したら、どうなるのでしょうか。

消費者庁長官から表示の除去、販売の禁止などの行政命令が下されます。命令に従わなかった場合は、50万円以下の罰金が科せられます。

一方、有機JASマークを勝手に使用した場合は、もっと重い処分が下されます、例えば認証を受けずに「有機トマト」と表示し、有機JASマークを貼り付けて販売した場合は、1年以上の懲役または100万円以下の罰金となります。

 

この制度は有機食品に対して適用されるものなので、レストランで提供されるメニューに、例えば「有機野菜のサラダ」と表示しても、何ら問題ありません。ただこのサラダを消費者が購入して持ち帰ることができる場合は、この制度の対象となります。認証機関による認証を受けずに、テイクアウト可能なメニューに「有機野菜のサラダ」と表示すると、ガイドライン違反となります。

また、消費者への情報提供となるチラシ、メニュー、のぼりについては規制の対象外ですが、認証を得ないで有機やオーガニックの文字を使うと、不当景品類及び不当表示防止法の規制の対象となる場合があるようです。

まとめ

  1. 産物、畜産物、加工食品等における有機○○、オーガニック○○という表示は、国が指定した認証機関による認証を受けた場合のみ表示が可能で、表示する場合は、有機JASマークとセットで表示しなければならない。
  2. 有機農産物とは、化学的に合成された肥料や農薬の使用せずに生産されたものであり、無農薬でも、減農薬でもない
  3. 農産物に対して無農薬や減農薬と表示することが禁止されている。節減対象農薬の使用頻度と化学肥料の使用量がともに通常の50%以下の農産物は、特別栽培農産物として、その旨を表示することができる。

参考文献
1) 有機農産物の日本農林規格、平成29年3月27日農林水産省告示第 443号(2017)
2) 特別栽培農産物に係る表示ガイドライン、平成19年 3月23日18消安第11413号(2007)
3) 株式会社オーガニック認証機構ホームページ
http://oco45.net/publics/index/34/
4) 有機加工食品検査認証制度ハンドブック(改訂第3版)(2012)
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kako_handbook_3.pdf