大豆から作られるこの3種類の粉、うまく使い分けていますか。
カロリーを控えるために小麦粉の代わりに使うという人も増えているんだそうです。でも、大豆粉ときな粉は、小麦粉よりカロリーが高いって知ってましたか。
栄養バランスの点では、おからパウダーがお勧めです。昔からあるきな粉はどこでも手に入りますが、大豆粉は売っているところが限られます。用途によっては、大豆粉の代わりにきな粉を使うことも可能です。
大豆粉、きな粉、おからパウダーの違い
大豆粉は最近、スーパーでよく見かけるようになりました。
マルコメさんの「ダイズラボ」という商品です。これは大豆を低温で焙煎してから粉砕したものなんだそうです。
大豆には特有の青臭さがあるため、乾燥した大豆をそのまま粉砕すると、この臭いが残ってしまい、料理に使いづらくなります。そこで臭いを少なくし、小麦粉や米粉の置き換えに使えるようにしたのが、この商品というわけです。
ところで、大豆粉は昔から業務用に生産されていました。
大豆油を搾ったあとの大豆を乾燥し、粉砕した「脱脂大豆粉」、脱脂大豆粉に大豆粉を添加した「油脂添加大豆粉」、さらに生大豆を丸ごと粉砕した「全脂大豆粉」などです。
いずれもパン、菓子、めんの材料として使われています。ただこれらは一般に手に入らないものなので、この記事でいう大豆粉は、これらの業務用ではなく、最近登場した、一般消費者向けの大豆粉のことを指すことにします。
一方きな粉は、大豆を炒ってから皮をむき、粉砕したものです。
炒っているため青臭いにおいが抜けて、香ばしい香りになっています。きな粉は奈良時代にはすでにあったようで、江戸時代になると広く作られるようになりました。主にお菓子や餅にまぶしていたそうです。
大豆をそのまま粉にするのではなく、炒ってから粉にしていたのは、当時、乾燥する技術がなかったからだと思われます。生の豆を粉にするためには、豆の水分を蒸発させなければなりません。そのため炒っていただけで、青臭さを抜くために炒っていたわけではないと思います。
おからパウダーは、大豆から豆乳を作るときに出る固形分のおからを乾燥し、粉砕したものです。
おからは江戸時代には庶民の食べものとして重宝されていたようですが、水分が多いため保存性が悪く、現在は食用になるのはわずか1%だそうです。
そのおからを乾燥・粉砕して、使いやすくしたのが、おからパウダーです。
おからパウダーが登場したのも、つい最近のことです。おからパウダーは常温保存でき、また小麦粉や米粉と同じように使うことができるため、非常に便利です。これを機に、おからの消費がますます増えるといいと思います。
大豆粉、きな粉、おからパウダーの成り立ち、製造方法について説明しましたが、値段はどうでしょうか。
きな粉はどこでも手に入るのに対し、大豆粉とおからパウダーはまだ流通量が少ないようです。また大豆粉もおからパウダーも、製造メーカー、原料(外国産大豆か国産大豆か)、内容量が違うと、価格も変わってくるので、あくまでも目安と考えてください。
- 大豆粉 70~200円/100g
- きな粉 100円/100g
- おからパウダー 90~230円/100g
大豆粉やおからパウダーの値段が高めではありますが、大きな違いはなさそうです。ただ、おからパウダーは豆乳や豆腐を作ったときに発生する「搾りかす」が原料で、現時点で80%が飼料・肥料として使われていることを考えると、ちょっと高いような気がします。
大豆粉、きな粉、おからパウダーはお互いに代用することができるのか
結論からいうと、用途によって代用できる場合と、しないほうがよい場合とがあります。
またこの3種類の粉は、味、香り、食感が異なるので、代用して作った食品の、味、香り、食感も違ったものになります。これをどこまで許容できるかにもよります。見ていきましょう。
①小麦粉や米粉の一部を置き換える目的なら、代用可能
小麦粉や米粉を使ったレシピで、その一部を置き換えるのなら、どれを使っても大きな問題はありません。
パンを作る際に小麦粉を置き換えると、小麦粉が減った分だけ生地に含まれるグルテンの量が少なくなり、発酵のとき膨らみにくくなります。発酵時間を少し長めにするか、どうしても気になる場合は、グルテンを置き換えた粉の量に対して2割ほど添加してもよいかもしれません。
パンの場合は、出来上がったあと、香りが変化します。香りの変化は、おからパウダー<きな粉<大豆粉の順で、少なくなります。大豆粉は、製造過程で青臭いにおいを減らしているとはいえ、やはり豆特有の臭いが残っています。
クッキーなどの焼き菓子の場合は、味、香り、食感だけでなく、生地の固さにも影響するので、加える水、牛乳、豆乳の分量を調節してください。ただ、発酵はしないので、グルテンは加える必要はありません。比較的影響が少ないのはおからパウダーで、大豆粉は独特のにおいが残ってしまいます。
②つなぎや衣として使う場合も代用が可能
料理のつなぎや揚げ物の際の衣にする場合も代用が可能ですが、衣に使うと、食感も見た目も、大きく変わってしまいます。別の食べものだと思えばよいのですが、もとの食べものにできるだけ似せたい場合は、おからパウダーがよいかもしれません。
③濃い味付けの料理の場合は代用してもほとんど問題ない
ハンバーグ、シチュー、カレーなど、比較的味が濃い料理の場合は、代用してもわからないことが多いです。
とろみなどを出す必要がある場合は粉の粒径が細かい大豆粉が、嵩増しに使う場合は、味が薄く、膨らみやすいおからパウダーが適しています。
大豆粉、きな粉、おからパウダーはそれぞれ次のような特徴がありますが、工夫すれば、ほとんどのケースで代用は可能です。ネット上で探すと、いろいろなレシピが出てきますので、いろいろ試してみてください。
・大豆特有の味と香りがある。食感には大きく影響しない。
・加えると、やや薄い黄色になる。
・粉が細かいため、水分を吸うと粘り気が出やすい。
・きな粉特有の香ばしい味と香りがある。食感には大きく影響しない。
・加えると、濃い黄色になる。
・水分を吸うとダマになるので、水に溶かす用途には向かない。
・大豆粉、きな粉に比べると、味、香りは少ない。たくさん加えると、歯ごたえがあり、サクサクとした食感になる。
・色はほとんど変化しない。
・水分を吸うとダマになるので、水に溶かす用途には向かない。
大豆粉、きな粉、おからパウダーの栄養成分とダイエット効果
ダイエット目的で大豆粉、きな粉やおからパウダーを使っているという方も多いと思います。
小麦粉と比べると、低カロリーで健康によいというイメージがありますよね。特にSOYJOYのCMなんか見ると、大豆だから食べても大丈夫なんだ・・・という気にさせられてしまいます。
小麦粉と比べると大豆粉はグリセミック・インデックス(GI値)が低いといわれています。GI値とは、食べたあとの血糖値の上がり具合を示す数値で、この値が高いほど、食べた後に急激に血糖値が上がるため、太りやすい体質になるといわれています。
確かにSOYJOYはそれだけで食べることが多いのですが、食事のとき、小麦粉や大豆粉だけを食べるわけではありません。おかずや汁物、飲み物を一緒に食べます。また、食べたとき、空腹かどうかによっても、吸収のされ方は違ってきます。
イメージで判断するのではなく、大豆粉、きな粉、おからパウダーと、小麦粉、米粉のエネルギー量や栄養成分を比較してみましょう。いずれも100gあたりの分量です。
大豆粉 | きな粉 | おからパウダー | 小麦粉(薄力粉) | 米粉 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
カロリー | kcal | 440 | 451 | 378 | 367 | 374 |
たんぱく質 | g | 41.6 | 36.7 | 30.8 | 8.3 | 6.0 |
脂質 | g | 16.5 | 25.7 | 17.3 | 1.5 | 0.7 |
炭水化物 | g | 33.0 | 28.5 | 44.9 | 75.8 | 81.9 |
食物繊維 | g | 13.7 | 18.1 | 38.1 | 2.5 | 0.6 |
なお大豆粉はマルコメさんの「ダイズラボ 大豆粉」、おからパウダーはキッコーマンさんの「豆乳おからパウダー」の値を、それ以外は日本食品標準成分表2020年版(八訂)に掲載されている数値です。
まず、大豆粉、きな粉はカロリーが高いことに驚きます。またおからパウダーでさえ、小麦粉や米粉よりわずかですがカロリーが高いです。
「大豆製品は低カロリー」というのは、全くの誤解です。カロリーは高いわけです。
ただ栄養成分の中身を見ると、大豆粉、きな粉、おからパウダーはたんぱく質と脂質を多く含むのに対し、小麦粉や米粉はほとんどが炭水化物です。
同じカロリーを摂るのであれば、大豆製品の方がバランスがよいと思います。厚生労働省は栄養摂取の目安として「日本人の食事摂取基準」というものを作成・公表しており、最新の2020年版によると、18歳から49歳の成人の場合、男女とも、カロリーを
- たんぱく質から13~20%
- 脂質から20~30%
- 炭水化物から50~65%
摂ること推奨しています。しかし現実は、炭水化物を摂りすぎている一方で、たんぱく質や脂質が不足している人が多いといわれています。
小麦粉や米粉を、大豆製品に置き換えることで、炭水化物を減らし、たんぱく質や脂質を摂る量を増やすことができます。この点から、大豆粉、きな粉、おからパウダーは優れた食材と言えるでしょう。
また大豆製品には食物繊維が多く含まれています。
さきほど紹介した「日本人の食事摂取基準」では、18~49歳の男性で1日21g以上、女性で18g以上の食物繊維の摂取を推奨しています。こちらも多くの人がこの値より少ない量しか摂取できていないといわれていますので、食物繊維を多く摂るためにも、大豆製品は優れていると思います。
長くなりましたが、整理すると、
- 大豆粉、きな粉、おからパウダーは、小麦粉、米粉と比べてカロリーが低いわけではない。
- 大豆粉、きな粉、おからパウダーは、たんぱく質、脂質、食物繊維を多く含むため、小麦粉、米粉を置き換えることで、栄養摂取の内容を改善することができる。
ということです。
健康にはよいと思いますが、たくさん食べればダイエット効果はありません。
目的別、大豆粉、きな粉、おからパウダーの使い分け
最後に、目的によって、大豆粉、きな粉、おからパウダーをどう使いわけたらよいか、ご紹介しましょう。
まず、カロリーの摂取量を減らしたいのなら、おからパウダーがお勧めです。
おからパウダーは小麦粉、米粉とカロリーはほとんど同じですが、たんぱく質と脂質が多く、栄養成分のバランスも優れています。
食物繊維を摂りたい場合も、おからパウダーが断然お勧めです。
さきほど、厚生労働省が成人男性の場合1日21g、成人女性の場合1日18gの食物繊維を摂ることを推奨していることを紹介しました。
実は食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、おからパウダーの食物繊維は、ほとんどが不溶性です。ただ単に食物繊維を摂るのではなく、体調にあわせて、適切な種類の食物繊維を摂ったほうかよいでしょう。
また食後に腹部膨満感を感じることが多い人や、おならが頻繁に出る人、慢性的な下痢や便秘を繰り返す人は、食物繊維を摂りすぎると、症状が悪化することがあります。
ダイエットが目的の場合も、3つの粉の中では、おからパウダーが適しています。
ただし、ダイエット目的でおからパウダーを摂ることは、おすすめできません。
理由は3つあります。一つ目は食べる量が同じなら、大したダイエットにはならないこと。二つ目は、他の2つの粉に比べて油を吸いやすいため、せっかく置き換えても、出来上がった料理のカロリーが下がらない場合もあること。そして最後は値段が高いことです。
ダイエット目的で値段の高いおからパウダーを買うよりも、そのお金を別のことに使った方が、効率的です。それより、ダイエット目的の場合は、まず食べる量を減らし、炭水化物、たんぱく質、脂質のバランスを変え、適度な運動をすることが大切です。
たんぱく質と食物繊維を多く摂ることで、食事の内容を見直し、体質を改善したいという場合は、大豆粉がお勧めです。
栄養成分にはきな粉も大豆粉も大きく変わりませんが、使い勝手の点では、大豆粉の方が断然上です。ただ、大豆粉はカロリーが高いことを忘れないでください。いくらGI値が低いといっても、たくさん食べれば太ります。
きな粉は入手しやすいのですが、料理に混ぜる、小麦粉や米粉を代替するという目的では、最近登場したおからパウダーや大豆粉には劣ります。ただ、食べやすく、栄養価の高いきな粉をふだんの食生活にうまく取り入れることは、有益だと思います。
まとめ
- 大豆粉は大豆を低温焙煎してから粉にしたもの、きな粉は炒った大豆の皮をむいて粉にしたもの、おからパウダーは豆乳を作った大豆の搾りかすを乾燥し粉にしたものです。値段はほぼ同じですが、おからパウダーはやや割高です。
- 大豆粉、きな粉、おからパウダーとも、小麦粉、米粉を代替することができますし、お互いに代替することも可能です。ただ使用量によっては、味、香り、食感、色が変わってしまいます。味、香り、色を変えたくない場合は、おからパウダーがお勧めです。
- 大豆粉ときな粉は、小麦粉、米粉よりもカロリーが高いが、たんぱく質、脂質、食物繊維が多く、栄養成分のバランスがよいです。おからパウダーは小麦粉、米粉とほぼ同じカロリーで、たんぱく質と脂質を多く含みます。食物繊維が非常に多いのが特徴です。
- カロリー摂取量を減らし、栄養バランスを改善したいのなら、おからパウダーがお勧めです。食物繊維を多く摂りたい場合もおからパウダーが向いていますが、食物繊維の種類や、食物繊維の摂りすぎにも注意してください。ダイエット目的だけで、おからパウダーを使うことはお勧めできません。