豆乳やオーツミルクだけじゃない、植物性ミルク10種類の違いと効果

最近、牛乳に代わる植物性原料から作られたミルクがブームです。豆乳、オーツミルク、アーモンドミルクのほかに、カシューミルク、マカダミアミルク、ヘーゼルナッツミルク、ココナッツミルク、ライスミルク、ヘンプミルク、スペルトミルクといった新しい植物性ミルクが次々と登場しています。原料や作り方、成分の違いと、栄養学的観点から飲むメリットがあるのかどうかを、解説します。

植物性ミルクが注目される理由

国内でも海外でも、牛乳に代わる植物性ミルクが人気です。なぜ植物性ミルクが注目されるようになったのでしょうか。

牛乳が飲めない食物アレルギーと乳糖不耐症

牛乳にアレルギー反応を示す人の数は増加傾向にあります。牛乳や乳製品を摂ることができないため、その代替品として豆乳などの植物性ミルクや、ソイチーズといった乳製品の代替品を必要としています。
また世界の人口の75%は、牛乳に含まれる乳糖を分解することができない、乳糖不耐症です。牛乳を飲むと下痢や腹痛が起きる人たちにとって、植物性ミルクは牛乳の代替品として重宝されています。

畜産における温室効果ガスの排出と動物倫理

最近、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)について、耳にする機会が増えました。肉や乳製品を生産するためには、同じ栄養価の穀物を生産するために必要な量を上回る土地と水資源が必要で、しかも大量の温室効果ガスを排出していることがクローズアップされています。地球環境への負荷を減らすために、肉や乳製品の消費を減らし、植物由来の食品で代替する動きが広がっています。
また畜産業では、人間が消費するための肉、乳製品や毛皮を効率よく生産するために、多くの動物が身動きが取れない劣悪な環境で飼育されています。このような動物の飼育環境について、倫理的な観点から疑問を持つ人が増えており、このような環境で生産された製品を避け、植物由来の製品を選ぶ動きがあります。例えば1998 ~2018 年の間にベジタリアン(菜食主義者)の数は、北米・中南米では年平均3.9%、ヨーロッパでは2.6%増加しました1)

食習慣や食に対する考え方の違い

何を食べて、何を食べないかは、人によって考え方が違います。世界の人口の半分以上の40億人がベジタリアン(菜食主義者)といわれており2)、その中でも、ビーガン、オボベジタリアン、マクロビオティックの人たちは、肉も乳製品も食べません。また世界の人口の3%が、植物性食品と魚介類は食べるが、肉、乳製品、卵などの動物性食品は食べないペスカタリアンです3)。これらの人にとって、牛乳に代わる植物性ミルクは、安心して食べることができる食材の一つとなっています。

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植物性ミルク10種類の原料・成分・用途

豆乳(ソイミルク)

  • 原料:大豆
  • 作り方:一晩水に浸した大豆をすりつぶし、さらに水を加えて煮つめた汁を、布で漉して作ります。
  • 味:豆腐と似た味です。昔の豆乳には、大豆特有の青臭さがありましたが、青臭い成分を発生させるもとになる酵素を熱処理で失活させることで、青臭くない豆乳を作ることができるようになりました。
  • 成分:高たんぱく(牛乳と同等かそれ以上)で脂質も多いが、カルシウムは少ない。また豆乳に含まれるたんぱく質は栄養価が高く(アミノ酸スコア=100)、牛乳のたんぱく質よりも消化がよい
  • 用途:そのまま飲んだり、牛乳の代わりに料理や製菓用に使われます。なお豆乳ににがりを加えて固めると、豆腐になります。
  • コメント:たんぱく質、脂質をバランスよく含んでおり、牛乳に代わるたんぱく源として優れた飲み物です。いろいろな種類の製品がありますが、糖類や食品添加物を含まない無調整豆乳がお勧めです。牛乳に比べてカルシウムが少ないので、牛乳の代わりに飲む人は、ヨーグルト、チーズ、小魚や他の大豆製品からカルシウムを意識的に摂るようにしましょう。

オーツミルク

  • 原料:オーツ麦
  • 作り方:オーツ麦を皮ごとローラーでつぶし、水を加えて煮て、粥状にします。これをさらにすりつぶし、アミラーゼという酵素を加えてでんぷんを分解したのち、固形分を取り除き、最後に90℃で加熱することで酵素を失活させ、完成させます。
  • 味:やや甘く、低脂肪ミルクに似た食感があります。
  • 成分:炭水化物が多く、たんぱく質は牛乳の1/3程度しかありません。また脂質、カルシウムは少ししか含まれません
  • 用途:飲用、料理、製菓用。
  • コメント:オーツミルクには栄養的に摂る価値はありません。市販のオーツミルク(飲料)は、オーツミルクに食物繊維やオーツ麦粉、食塩、ビタミン、食用油脂、増粘剤、安定剤などを添加して栄養分と味を調整しています。

アーモンドミルク

 

  • 原料:アーモンド
  • 作り方:素焼きのアーモンドを1~2日間水につけて吸水させたのち、すりつぶすとアーモンドに含まれるさまざまな成分が水に溶け出してきて、水が乳白色になります。これをろ過して液体部分だけを集めたものが、アーモンドミルクです
  • 味:ナッツのような香ばしい味
  • 成分:低カロリー、低たんぱくです。カルシウムは多いですが、他の栄養素は少ししか含まれません。
  • 用途:飲用、製菓用。
  • コメント:飲料水として販売されているものは、上記の方法で作ったアーモンドミルクに、糖類、食物繊維、植物油脂、ビタミンE、カルシウムなどを添加して、栄養分と味を調整しています。これらはアーモンドミルクを作る過程でろ過した際に、取り除かれたものです。わざわざ後で添加するくらいなら、アーモンドをそのまま食べたほうが、食品添加物を摂らなくて済みます。

カシューミルク

  • 原料:カシューナッツ
  • 作り方:アーモンドミルクと同じ
  • 味:ナッツのような香ばしい味
  • 成分:低カロリー、低たんぱくで、栄養素少ない。
  • コメント:料理用や製菓用に用いられる。またコーヒーに加えてラテにすることで、味に厚みを加えることができます(脂肪分が多いため)。飲むメリットはなく、カシューナッツをそのまま食べるほうがよいと思います。

マカダミアミルク

  • 原料:マカダミアナッツ
  • 作り方:アーモンドミルクと同じ
  • 味:ナッツのような香ばしい味
  • 成分:低カロリー、低たんぱく、栄養素少ない
  • 用途:デザートやコーヒーへの添加
  • コメント:最近登場したばかりです。

ヘーゼルナッツミルク

  • 原料:ヘーゼルナッツ
  • 製造方法:アーモンドミルクと同じ
  • 味:ッツのような香ばしい味
  • 成分:低カロリー、低たんぱく、栄養素少ない
  • 用途:製菓用またはコーヒーへの添加用
  • コメント:最近登場したばかりです。

ココナッツミルク

  • 原料:ココナッツの種子の胚乳
  • 作り方:ココナッツの種子の胚乳(固体)をすりおろし、水またはココナッツジュースと一緒に弱火で煮込んでから裏ごしし、目の粗い布で搾ることで作ります。
  • 味:クリーミーで、ほのかな甘さと独特の香りがあります。
  • 成分:高カロリー(牛乳の2.5倍)、高脂質、低カルシウム
  • 用途:料理やお菓子に使われます。特に東南アジアやインド、南アメリカの料理ではよく使われるようです。そのまま飲むこともあります。
  • コメント:ココナッツミルクはたんぱく質もカルシウムも少ない一方で、脂質が多くカロリーが高いので、牛乳の代わりにはなりません

ライスミルク

  • 原料:
  • 作り方:炊いたお米を裏ごししてさらに煮たのち、布で漉したものです。
  • 味:お粥のような味
  • 成分:ほとんどが炭水化物で、たんぱく質、カルシウムは少量しか含まれていません。またカロリーは牛乳より少し低い程度で、低カロリーではありません。
  • 用途:飲用。
  • コメント:わざわざ買ったり作ったりする価値はゼロです。ご飯を食べたほうがよいでしょう。見た目が牛乳に似ているだけで、たんぱく質もカルシウムも含まれていません。麹を加えて甘酒風にしたものもありますが、甘酒を飲むことをお勧めします。

ヘンプミルク

  • 原料:ヘンプ(麻)の種子(ヘンプシード)
  • 作り方:皮をむいたヘンプシードに水を加え、ミキサーで粉砕した後、布で漉したものです。
  • 味:ナッツのような香ばしい味
  • 成分:炭水化物とたんぱく質は少なく脂肪が多い。特にαリノレン酸(ω3脂肪酸の一種)を多く含みます。
  • 用途:料理、製菓用のほか、シリアルにかけることもある。
  • コメント:市販のヘンプミルクは、植物油脂やでんぷんを加えて、栄養分や味を調整しています。ω3脂肪酸が多く含まれることがウリですが、ω3脂肪酸を摂るのが目的なら、くるみの方が効果的です。

スペルトミルク

  • 原料:スペルト小麦
  • 作り方:スペルト小麦の全粒粉に水を加え、加熱した後、布で漉したものです。
  • 味:ほとんど味はありません。
  • 成分:炭水化物がほとんどで、たんぱく質とミネラル、食物繊維が含まれます。
  • 用途:飲用。
  • コメント:小麦粉を水に溶いたようなもので、わざわざ飲む価値はありませんスペルト小麦というのは現在栽培されている普通小麦の直接の祖先にあたる品種で、品種改良されていないので健康によいというイメージが定着していますが、栄養的には普通小麦とほとんど変わりません。また市販のスペルトミルクは、植物油脂を添加して、栄養分や味を調整しているものがほとんどです。

飲むメリットのある植物性ミルクはどれ

飲むべき植物性ミルクは豆乳

ズバリ、飲むべき植物性ミルクは、豆乳だけです。豆乳には牛乳とほぼ同じ量のたんぱく質が含まれています。また豆乳のたんぱく質には、人間が食物から摂らなければならないすべてのアミノ酸をバランスよく含んでいます。さらに豆乳に含まれるたんぱく質は、牛乳に含まれるたんぱく質よりも、消化・吸収がよいので、わざわざプロテインを飲まなくても、手軽に良質なたんぱく質を摂ることができます。

大豆にはカルシウムも含まれていますが、豆乳を作る際に、食物繊維と一緒に搾りかす(おから)に残ってしまいます。牛乳の代わりに豆乳を飲む場合は、カルシウムを別の食品から摂るようにしましょう。
豆乳は簡単に手に入り、値段も安いので、お勧めです

ナッツが原料の植物性ミルクは飲むメリットなし

アーモンドミルクがブームになっていますが、飲む前に栄養成分表示や原材料表示を見てください。アーモンドミルクは低カロリーです。しかし言い換えれば、大したものが入っておらず、水に近いということです。また、さまざまな成分を後から添加して、味、香り、栄養分を調整しており、食品添加物も使われています。これなら、アーモンドをそのまま食べたほうが食物繊維が摂れるうえ、余分な食品添加物を摂らなくて済みます

他のナッツが原料のミルクも同様です。コーヒーに加えてラテにする場合は、液体でなければならないので、アーモンドミルクやカシュミルクは重宝しますが、そのまま飲むのであれば、ナッツをそのまま食べるほうが、間違いなく効果的です。

穀物が原料の植物性ミルクはデメリットしかない

オーツミルク、ライスミルク、スペルトミルクは、それぞれオーツ麦、米、スペルト小麦を煮てから水に溶かしたもので、炭水化物が主成分です。例えていうならば、小麦粉を水に溶かしたようなもので、栄養価は低く、飲むメリットは全くありません。これはアレルギーなどで牛乳も豆乳が飲めない人が、牛乳のような感覚で飲むための飲料水と考えてください。

牛乳を飲むメリットは、たんぱく質とカルシウムが摂れることですが、穀物が原料のミルクには、たんぱく質もカルシウムもほとんど含まれていません。飲料水として販売されているものには、カルシウムや植物油脂が添加されている場合もありますが、別の食品から摂ったほうが効率的です。水にはカルシウムや植物油脂は均一に混ざらないので、安定剤や増粘剤などの食品添加物まで必要になります。

オーツミルクなどは牛乳よりカロリーが低いため、ダイエットに最適などと書いているサイトもありますが、カロリーが低い、イコール、ダイエットになる、ではなく、ダイエットのためには飲まないというのが、正しい選択です。

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参考文献

1) 市川拓也、なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか ~重要な示唆は価値観の変化による行動変化~、大和総研 (2021)
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20210203_022067.pdf
2) Devrim-Lanpir A, Hill L, Knechtle B. Efficacy of Popular Diets Applied by Endurance Athletes on Sports Performance: Beneficial or Detrimental? A Narrative Review. Nutrients. 2021;13(2):491. Published 2021 Feb 2. doi:10.3390/nu13020491
3) An exploration into diets around the world, Ipsos MORI (2018)
https://www.ipsos.com/sites/default/files/ct/news/documents/2018-09/an_exploration_into_diets_around_the_world.pdf