小麦粉は小麦から、米粉はうるち米から、片栗粉はジャガイモから作られた粉です。
小麦粉はいろいろな料理の材料になりますが、片栗粉はとろみ付けに使われることが多いです。
米粉は小麦粉の代わりに使う目的で、最近登場しました。上新粉、白玉粉、もち粉もお米から作られる穀物粉ですが、米粉は別もので、用途も異なります。
このほかさまざまな穀物粉について、詳しく紹介していきます。
- 1 小麦粉、米粉、片栗粉をはじめ、主な粉の原料、用途、価格を比較した
- 2 小麦粉はさまざまな食品に使われる!薄力粉と強力粉の違いは?
- 3 上新粉と米粉の違いは?白玉粉ともち粉の違いは?結局すべてお米が原料なの!?
- 4 片栗粉はジャガイモから作られたでんぷん、加熱すると粘度が上がる
- 5 コーンスターチはトウモロコシの粉、加熱すると粘度が上がる
- 6 きな粉は大豆の粉、青大豆から作ると薄緑色、黒大豆から作ると濃茶色のものも
- 7 はったい粉は大麦を種皮がついたまま焙煎し挽いた粉、きな粉との違いは
- 8 サツマイモ粉とタピオカ粉、全く違うものだが、ネット通販では混同も!?
- 9 こんにゃく粉はでんぷんを含まないため低カロリー
- 10 本葛粉と本わらび粉、生産量が少なくほとんどは代替品
- 11 まとめ
小麦粉、米粉、片栗粉をはじめ、主な粉の原料、用途、価格を比較した
あなたのおうちの台所には、どんな粉がありますか?
小麦粉と片栗粉は、料理でよく使われるので、どこの家にもあるのではないでしょうか。
一方で、上新粉や白玉粉は、和菓子やスイーツをつくる人でないと、用意していないかもしれません。さらにサツマイモ粉やタピオカ粉となると、ふつうの食品スーパーでは売っていないし、そもそも用途が限られます。
穀物やイモ類から作られる食用の粉の一覧を、表にまとめました。
いろんな種類の粉があるんですね。
粉はパッケージの量によって値段が変わること、品質・等級によって価格差が大きいこと、特売の対象になることが多いことから、価格はあくまで参考です。
表 食用となる主な穀物の粉
粉の名称 | 粉の原料 | 特徴(違い) | 主な用途 | 価格 (円/kg) | |
---|---|---|---|---|---|
小麦粉 | 薄力粉 | 小麦 | グルテンが少ない ⇧⇩ グルテンが多い |
洋菓子、天ぷら | 220 |
中力粉 | うどん | 220 | |||
準強力粉 | 中華めん、パスタ | 220 | |||
強力粉 | パン、ピザ | 220 | |||
米粉 | 上新粉 | うるち米 | 粒が粗い | 和菓子 | 860 |
米粉 | 粒が細かい | パン、料理、めん | 860 | ||
白玉粉 | もち米 | 粒が粗い | 白玉団子、和菓子 | 1,600 | |
もち粉 | 粒が細かい | 和菓子(求肥) | 1,600 | ||
だんご粉 | うるち米/もち米 | 団子用ミックス粉 | 団子 | 1,080 | |
片栗粉 | じゃがいも | 加熱で糊化する | とろみ付け、揚げ物 | 480 | |
コーンスターチ | とうもろこし | 加熱で糊化する | 加工食品ほか | 650 | |
きな粉 | 大豆 | 焙煎して粉砕 | 和菓子 | 1,080 | |
ハッタイ粉 | 大麦 | 焙煎して粉砕 | 和菓子 | 800 | |
サツマイモ粉 | さつまいも | 乾燥して粉砕 | 製菓用 | 400 | |
タピオカ粉 | キャッサバ(イモ) | 粉砕して精製 | 製菓用 | 500 | |
こんにゃく粉 | こんにゃくいも | カロリーが低い | こんにゃく | 5,000 | |
本葛粉 | くずの根 | 生産量が少ない | 葛餅、葛湯、葛切り | 8,000 | |
本わらび粉 | ワラビの根 | 生産量が少ない | わらび餅 | 13,800 |
小麦粉はさまざまな食品に使われる!薄力粉と強力粉の違いは?
小麦を粉砕して粉状にしたものが、小麦粉です。
小麦粉はわたしたちの食生活になくてはならないものになっています。パン、うどん、ラーメン、お好み焼き、ピザ、クッキーなど、小麦粉が原料となっている食品はたくさんありますし、揚げ物の衣やしょうゆにも小麦粉が使われています。
このほか、小麦粉はとろみをつける、固めるなどの目的で、カレーやシチューのルー、インスタントスープなど、さまざまな加工食品にも入っています。
日本の小麦の消費量は年間651万トン(2018年)で1)、国民1人にすると、51kgにもなります。
ただ小麦を小麦粉に製粉すると、歩留まりが60%くらいになりますので、国民1人あたり年間31kgの小麦粉を消費している計算になります。お米の消費量(飼料用を除く)が国民1人あたり63kgなので、それには及びませんが、小麦の消費がいかに多いかがわかると思います。
小麦粉をスーパーで買おうとすると、薄力粉(はくりきこ)、強力粉(きょうりきこ)という名前で売られています。薄力粉と強力粉の違いは、小麦粉に含まれるグルテンというたんぱく質の量の違いなのです。
グルテンは小麦粉に水を加えてこねることで作られる生地の中にできる糊状の物質で、小麦の生地に弾力を与え、ふっくらとおいしいパンや、コシの強いめんをつくるのに欠かせません。一方、グルテンを多く含まないほうがよい用途もあるため、小麦粉はグルテンの量によって分類し、用途に応じて使い分けることができるようになっているのです。
スーパーでよく見かけるのは、薄力粉です。小麦粉といえば、ふつうは薄力粉を指します。薄力粉は、天ぷらやフライなどの揚げ物に使われるほか、お好み焼き、たこ焼き、ケーキ、クッキーの材料として、よく使われます。
これに対して、グルテンを多く含む強力粉は、パン生地やピザ生地を作るのに適しています。パンやピザを自宅で作る人のために、販売しているようです。
ふつうのスーパーでは、薄力粉と強力粉しか見かけませんが、大きなスーパーへ行くと、中力粉や準強力粉という小麦粉を見かけます。中力粉の用途はうどんや餃子の皮、準強力粉の用途はフランスパン、パスタ、中華めんだそうです。自宅でうどんやパスタ、中華めんを打つ人は多くないので、需要が少ないのでしょう。
表 小麦粉の分類2)⇦
薄力粉 | 中力粉 | 準強力粉 | 強力粉 | |
---|---|---|---|---|
グルテンの量(重量%) | 7.0~8.5 | 9.0~10.5 | 9.0~11.5 | 12.0~13.5 |
生地の弾力・粘着力 | 弱い ⇦ ⇦ ⇦ ⇨ ⇨ ⇨ 強い | |||
粉の粒度 | 細かい ⇦ ⇦ ⇦ ⇨ ⇨ ⇨ 粗い | |||
粉の用途 | 天ぷら、お好み焼き、たこ焼き、ケーキ、クッキー | うどん、餃子の皮 | フランスパン、パスタ、中華めん | パン、ピザ |
上新粉と米粉の違いは?白玉粉ともち粉の違いは?結局すべてお米が原料なの!?
先に結論をいいます。
まず、上新粉、米粉、白玉粉、もち粉、だんご粉。これらは全てお米が原料です。
次に、お米には、ごはんとして食べている「うるち米」と、もちをつくる「もち米」があるのをご存じでしょうか。うるち米ともち米は、でんぷんの分子構造が異なるため、粘り気に違いがあるのです。うるち米から作られるのが、上新粉と米粉、もち米から作られるのが白玉粉ともち粉、うるち米ともち米をブレンドして作られるのが、だんご粉です。
続いて、ひとつずつ解説していきます。
上新粉
上新粉は、精米されたうるち米を水洗いして乾燥し、粉砕機でお米の粒を細かく砕いて作られます。
水洗・乾燥したうるち米を粉砕して作られる粉には、上新粉以外に、並新粉(新粉ともいいます)と上用粉というのもあります。
これは粉砕方法の違いによるもので、できあがった粉の細かさが違うだけです。いずれも和菓子の原料として使われますが、粒の粗い並新粉で作ると、風味・歯応えのある和菓子ができ、粒の細かい上用粉で作ると、柔らかい和菓子ができます。
表 上新粉の分類
並新粉 | 上新粉 | 上用粉 | |
---|---|---|---|
原料 | うるち米 | うるち米 | うるち米 |
粉砕方法 | ロール粉砕 2つのローラーのすき間を通すことで粉砕 |
胴つき粉砕 臼に入れたお米を杵でつくことで粉砕 |
|
粉の細かさ | 粗い ⇦ ⇦ ⇦ ⇨ ⇨ ⇨ 細かい | ||
主な用途 | だんご、すあま | だんご、柏餅、ういろう | 上用まんじゅう |
米粉
最近スーパーで、パッケージに「米粉」と書かれた粉をよく見かけるようになりました。米粉は上新粉と同じく、うるち米を粉にしたものです。でも、上新粉ではなく、米粉と表示しています。一体何か違うのでしょうか。先に答えを言うと、粉の細かさです。実は、米粉として売られているものは、先ほど説明した「上用粉」より、さらに細かくなっています。
農林水産省では2017年3月29日に「米粉の用途別基準」を公表しました3)。
それによると、米粉の主な用途を、①菓子・料理用、②パン用、②麺用の3つに分け、それぞれ「1番」「2番」「3番」という表記をすることを推奨しています。
具体的には下表に示すように、粉の細かさ、でん粉の損傷度、アミロース含有率、水分含有率などの基準が細かく決められており、この基準にあうものだけが、例えば「米粉1番」と名乗ることができます。粉の細かさもレーザ回折・散乱法による粒度分布測定装置で調べたとき、「粒径75µm以下の比率が50%以上」と数値で決められています。
表 米粉の分類3)
1番 | 2番 | 3番 | |||
---|---|---|---|---|---|
ソフトタイプ | ミドルタイプ | ハードタイプ | |||
原料 | うるち米 | ||||
粉の細かさ | 粒径75µm以下の比率が50%以上 | ||||
でん粉の損傷度 | 10%未満 | ||||
アミロース含有率 | 15%未満 | 15%以上20%未満 | 15%以上25%未満 | 20%以上 | 25%以上 |
水分含有率 | 10%以上15%未満 | ||||
主な用途 | 柔らかいスポンジケーキ(例えばシフォンケーキなど)、クッキー | スポンジケーキ、クッキー、天ぷら粉、お好み焼き粉、唐揚げ粉、惣菜類(とろみ付け等) | パン全般 | 麺全般 | 強弾力の麺、洋酒に浸すなどの固めのケーキ |
先ほど説明した上新粉、並新粉、上用粉の主な用途は和菓子でしたが、「米粉」の主な用途には、和菓子は書かれていません。
また農林水産省が出した「米粉の用途別基準」の最後には、小さな字で、「上新粉など、既存用途向けの米穀粉は対象としない。」と書かれています。
このことからも「米粉」と表示されているものは「上新粉」とは全く別物だということです。
でも考えてみてください、うるち米を粉砕して作る上新粉も、広い意味では米粉ですよね。なのに、なんでこんな紛らわしい名前を付けたんでしょうか。
米粉なんて昔から使われていたのに、2017年になって農林水産省が「米粉の用途別基準」を公表したのには、理由があります。米の消費拡大をしたかったからです。そのために米粉の基準を作り、日本米粉協会なる組織を作り、認証制度を作りました。そのあたりの詳しい説明は、別の記事に書きたいと思います。
白玉粉、もち粉、だんご粉
いずれも和菓子を作る際に使いますが、白玉団子には白玉粉、求肥にはもち粉、団子にはだんご粉と覚えておけば、ほぼ間違いありません。ふだんの生活ではそれで十分なのですが、ここでは何がどう違うのか、説明したいと思います。
違いは、原料と製法です。原料が同じでも、製法が違うと、出来上がった粉の細かさに違いが出ます。
まず、白玉粉ともち粉はいずれも、もち米が原料です。精白・水洗いしたもち米に水を加えて臼でひくと、白い液体になります。これをふるいにかけて大きな粒を取り除き、しばらく置いておくと、粉が沈殿します。沈殿した粉を脱水・乾燥すると、白玉粉が得られます。
一方、もち粉は清白・水洗いし、乾燥させたもち米に水を加えずに粉砕し、さらに乾燥したものです。もち粉の方が白玉粉より、粉が細かいといわれています。
だんご粉の原料はうるち米ともち米です。メーカーによってその割合は異なり、米以外のでん粉を加えている場合もあります。だんご粉は、団子を作るためのミックス粉と考えたらよいと思います。だんご粉に水を加えて形を整え茹でると、団子ができます。モチモチ感と歯切れのよさを両立させるためには、もち米とうるち米のブレンドが必要なのです。
片栗粉はジャガイモから作られたでんぷん、加熱すると粘度が上がる
片栗粉のカタクリというのは、ユリ科の植物の名前です。もともと片栗粉は、カタクリの根茎から作られた粉のことでしたが、現在、片栗粉として売られているものは、ほとんどがジャガイモ(馬鈴薯)から作られています。ですから、片栗粉は英語でpotato starchといいます。
ジャガイモの固形分の73%がでんぷんなのですが、これを取り出して精製したものが片栗粉(馬鈴薯でんぷん)です。では片栗粉はどうやって作られるのでしょうか。まず生のジャガイモをすりつぶして、水を加えて液状にします。そして食物繊維、たんぱく質、灰分などを取り除き、洗浄します。そして最後に沈殿したでんぷんを取り出して洗浄することで、片栗粉が得られます。
ところで、でんぷんを漢字で書くと「澱粉」ですが、これは「沈澱」した「粉」という意味です。デンプンを含む水を静かにおいておくと、でんぷんは水に溶けず、また水より重いため、水の底に沈みます。植物の根からでんぷんを採っていた昔ながらの方法から、でんぷんという名前がついたのでした。
片栗粉は、和食や中華料理のとろみ付けや、揚げ物の調理用粉として使われます。特にとろみ付けに使われることが多いのですが、これは片栗粉に含まれるでん粉が加熱によって糊化するという特性を利用しています。糊化とは液体の粘度が上がり、のりのような粘り気のある状態になることをいいます。
料理をする方はご存じだと思いますが、片栗粉でとろみを出すときは、粉のまま料理に入れるのではなく、必ず水に溶いた片栗粉を加えます。片栗粉を粉のまま熱い料理に加えると、固まって、ダマ(塊)になってしまいます。ちなみにカタクリの根茎から取った片栗粉にも、加熱すると糊化する性質があったそうです。
コーンスターチはトウモロコシの粉、加熱すると粘度が上がる
トウモロコシに水を加えて粉砕し、乾燥したものが、コーンスターチ(corn starch)です。トウモロコシといっても、そのまま食べるスイートコーンや、ポップコーンに使われるものとは異なる品種が原料で、ほぼ全量が輸入です。
コーンスターチも、水に溶かして加熱すると、とろみをつけることができます。片栗粉のとろみは温度が下がると粘り気が少なくなりますが、コーンスターチのとろみは、冷えても持続するという特徴があります。そのため、プリンの凝固剤やカスタードクリームの原料としても使われています。
このほか、小麦粉や片栗粉と同じように、揚げ物の衣にも使うことができます。またいろいろな加工食品に、コーンスターチが使われています。
さらにコーンスターチは食品以外にも、化粧品、接着剤、工業原料などにも使われています。変わったところでは、コーンスターチに着色したカラーパウダーが、映画の撮影やイベントで使われているそうです。
きな粉は大豆の粉、青大豆から作ると薄緑色、黒大豆から作ると濃茶色のものも
きな粉は大豆を炒って皮をむき、粉砕して作ります。ふつうの大豆から作ると、黄色の粉ができますが、青大豆から作ると薄緑色の青きな粉(うぐいすきな粉ともいいます)ができ、黒大豆を原料にすると、濃茶色の黒豆きな粉になります。
きな粉は、わらび餅やお餅にかけて食べたり、和菓子の材料というイメージが強いですが、アイスクリームに混ぜたり、牛乳や豆乳に混ぜたりすることもあります。またクッキーやパンを作るときに小麦粉の一部を置き換えることで、低カロリー、高たんぱくのクッキーやパンを作ることができますよ。
大豆は高たんぱくで食物繊維が多く、食べた後の血糖値の上昇が小麦粉より緩やかになることが知られています。きな粉を使った料理レシピも増えてきました。
大豆には豆特有の味とにおいがありますが、きな粉は最初に大豆を炒っているので、豆特有の青臭いにおいはなく、香ばしいにおいがします。小麦粉、米粉、片栗粉などと比べると、味とにおいがしっかりとついているので、料理に加えるときには、しっかり味が付いたものに加えるとよいかもしれません。
はったい粉は大麦を種皮がついたまま焙煎し挽いた粉、きな粉との違いは
大麦を種皮が付いたまま、うっすらと焦げがつくように加熱し、冷めてから挽いた粉を、はったい粉といいます。焙煎しているためきな粉のような香ばしさがありますが、きな粉がきつね色をしているのに対し、はったい粉は灰褐色をしています。はったい粉の香りは麦茶に似ています。
昭和40年代まで、はったい粉はこどものおやつとして食べられていました。はったい粉に砂糖と白湯を混ぜて練り、焼いたものをはったいと呼んでいました。いまでも落雁などの和菓子の材料としても使われるほか、ホットケーキやクッキーなどに混ぜて使うこともあります。
きな粉とはったい粉はどちらも茶色の粉で、焙煎しているため香ばしいという共通点がありますが、きな粉の原料は大豆、はったい粉の原料は大麦です。色も香りも似ているため、互いに代用することは可能です。
サツマイモ粉とタピオカ粉、全く違うものだが、ネット通販では混同も!?
サツマイモ粉はサツマイモをカットし、乾燥した後に粉砕して作られます。ムラサキイモ粉というのもあり、こちらはムラサキイモが原料です。サツマイモ粉は黄色、ムラサキイモ粉は紫色をしており、製菓用や料理用に使われます。
一方、タピオカ粉はキャッサバという熱帯地方で栽培されるイモから取れるでん粉で、ジャガイモから片栗粉を作るのとほぼ同じ方法で作られます。
サツマイモ粉やムラサキイモ粉は、乾燥したイモを粉砕したものなので、もとのイモの色がついていますが、タピオカ粉はでん粉を精製しているので、色は真っ白で、水に溶かすと半透明になります。
タピオカ粉は加熱すると糊化する性質があるため、食品にとろみをつける増粘剤として用いられるほか、ポンデケージョというブラジルでよく食べられるチーズパンの材料にもなります、さらに糊化させたタピオカを回転させながら雪だるま式に球状に加工し、乾燥させたタピオカパール(スターチボール)がタピオカミルクティに使われています。
タピオカ粉もイモから取れる粉なので、Amazonなどで台湾産のタピオカ粉(中国語で地瓜粉)がサツマイモ粉として売られているようです。しかし、サツマイモ粉とタピオカ粉は、原料も製造方法も全く異なる別物です。
こんにゃく粉はでんぷんを含まないため低カロリー
乾燥したコンニャクイモ(サトイモ科)を細かく粉砕して粉にしたものが、こんにゃく粉です。こんにゃく粉にはでんぷんは含まれておらず、主成分はグルコマンナンという物質です。
グルコマンナンは、ヒトの体内では消化・吸収されません。そのため、同じ重さで比較すると、米粉の半分ほどしかカロリーがありません。
こんにゃく粉は、こんにゃく、糸こんにゃく、しらたきの原料です。また最近では、低カロリーのこんにゃく麺も作られています。こんにゃく粉で小麦粉や米粉の一部を置き換えた食品を見かけますが、そのほとんどが食品のカロリーオフを目的としています。こんにゃく粉で代替することで、消化・吸収されるでんぷんの量を減らしていることになるわけです。
ただ、こんにゃくには独特の味・においと、ぷにぷにした食感があります。こんにゃく麺には、こんにゃく独特のにおいがあり、小麦から作られる麺とは全く違ったものです。一方で、こんにゃくを使ったゼリーも多く販売されています。こちらはゼリーに果物の味と臭いを強めに付けているため、こんにゃく臭を感じることなく、食べることができます。
表 こんにゃく粉と米粉の比較4) 重量100gあたり
エネルギー (kcal) | 水分 (g) | たんぱく質 (g) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | 利用可能炭水化物計 (g) | でんぷん (g) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
こんにゃく粉 | 194 | 6.0 | 3.0 | 0.1 | 85.3 | 5.4 | 0 |
米粉 | 356 | 11.1 | 6.0 | 0.7 | 81.9 | 82.2 | 74.2 |
本葛粉と本わらび粉、生産量が少なくほとんどは代替品
葛餅、葛湯、葛切りと、葛と名前の付いた食べものはいろいろあります。これらは、マメ科のクズという植物の根から採ったでんぷんである、本葛粉から作られていました。しかし本葛粉の生産量が少ないため、値段の安い商品は、片栗粉(ジャガイモでんぷん)から作られています。
わらび餅も同様で、もともとシダの仲間であるワラビの根から採ったでんぷんである、本わらび粉を使っていましたが、こちらも生産量が極めて少ないため、多くのわらび餅は、ジャガイモやサツマイモのでん粉から作られています。
まとめ
食用に使われる粉のうち、穀物やイモ類から作られるものを集めて、比較してみました。
比較的よく使われる小麦粉、米粉でも、用途によっていろいろな種類があることに驚きました。特にお米から作られている粉だけでも、上新粉、米粉、白玉粉、もち粉、だんこ粉と、細かく分かれているんですね。
ふだんの生活でよく使うのは、小麦粉、片栗粉、米粉くらいだと思いますが、それ以外にもいろんな粉があることもわかりました。これらの粉を上手に使うことで、料理のバリエーションは無限に広がります。また小麦粉を米粉に変えることでグルテンフリーになりますし、揚げ物に使う小麦粉の一部を別の粉に置き換えることで、カロリーオフにもつながります。
さらに、葛もち、葛きり、わらび餅は、もともと使われていた粉とは別の粉で代用されていたんですね。本葛粉の葛切り、本わらび粉のわらび餅も、機会があれば、ぜひ味わってみたいものです。
データ
1) 農林水産省、令和元年度 食料・農業・農村白書(令和2年6月16日公表)
2) https://glutenfree.empacede.co.jp/flour/
3)『米粉の用途別基準』及び『米粉製品の普及のための表示に関するガイドライン』の公表について、農林水産省政策統括官、平成29年3月29日、
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/komeko/attach/pdf/index-56.pdf
4) 文部科学省、日本食品標準成分表2020年版(八訂)