米粉、上新粉、白玉粉、もち粉の違い、原料、粉の大きさ、用途

米粉、上新粉の原料はうるち米、白玉粉、もち粉の原料はもち米です。

米粉と白玉粉の違いは、粉の粒の大きさと、でんぷんの損傷度です。粉を細かく挽くと、お米に含まれるでんぷんの粒がつぶれてしまうのですが、米粉はでんぷんが壊れにくい特殊な製法で作られています。もち米から作られる白玉粉ともち粉は、白玉粉の方が粒が細かくなっています。

お米から作られる粉は、ほかにもたくさんあります。詳しく見ていきましょう。

お米から作られる粉の原料と用途一覧

お米から作られる粉を集めました。いろいろな種類があることに驚きます。

まず、ごはんとして食べているうるち米を原料としている粉と、もち米を原料としている粉に分けられます。次にお米をそのまま粉砕して作る粉と、炊く、あるいは蒸してから粉砕する粉があります。さらに粉砕の方法も、乾燥した状態で粉砕して作るものと、水を加えながら粉砕するものがあります。

米粉

  • 原料:うるち米
  • 製造方法:精白し洗ったうるち米を乾燥させ、新しい技術で上新粉よりもさらに細かく粉砕したもの。乾燥した状態で粉砕している場合と、水を加えて粉砕している場合とがある。
  • 主な用途:パン、めん、ケーキなど、従来小麦粉から作られていたもの
  • 備考:分類、用途、製造方法などは、あとで詳しく説明しています。

上新粉、上用粉、並新粉

  • 原料:うるち米
  • 製造方法:精白し洗ったうるち米を乾燥させ、乾燥した状態で機械的に粉砕する
  • 主な用途:団子、ういろう、かしわ餅、草餅、すあま
  • 備考:上新粉、上用粉、並新粉の違いは、あとで説明しています。

白玉粉

  • 原料:もち米
  • 製造方法:精白し洗ったもち米に水を加えながら、臼などで細かく粉砕し、水中に沈んだ粉を乾燥させる
  • 主な用途:白玉団子、大福餅

もち粉

  • 原料:もち米
  • 製造方法:精白し洗ったもち米を乾燥させ、乾燥した状態で機械的に粉砕する
  • 主な用途:求肥、大福餅

みじん粉

漢字で表記する「微塵粉」「味甚粉」は別のものであるので注意

  • 原料:うるち米
  • 製造方法:うるち米を炊飯し、乾燥させたものを粉砕する
  • 主な用途:和菓子

微塵粉(=味甚粉)

  • 原料:もち米
  • 製造方法:もち米を蒸して餅を作り、煎餅状に平たく延ばし、乾燥したものを細かく粉砕する
  • 主な用途:和菓子つなぎ、落雁

上南粉(=極微塵粉)

  • 原料:もち米
  • 製造方法:もち米を蒸して乾燥させ、細かく砕いて粉にしてから煎る
  • 主な用途:和菓子

落雁粉

  • 原料:もち米
  • 製造方法:もち米を蒸して乾燥させ、細かく砕いてから焦げないように白煎りする
  • 主な用途:和菓子、落雁

寒梅粉(=焼微塵粉)

  • 原料:もち米
  • 製造方法:もち米を蒸して餅を作り、煎餅状に平たく延ばし、焼き色が付かない程度に軽く焼いて、乾燥したものを細かく粉砕する
  • 主な用途:押菓子、豆菓子、製菓用、重湯、糊

うるち米ともち米の違いはでんぷんの成分

米粉と上新粉はうるち米を粉にしたもの、白玉粉ともち粉はもち米を粉にしたものです。ては、うるち米ともち米は、何が違うのでしょうか。

うるち米は、ふだんごはんとして食べているお米です。もち米はお餅、赤飯などに使われるおこめで、ごはんよりもモチモチしています。炊いたときの色も違いますね。うるち米のごはんは、透き通るような白色なのに対し、もち米は真っ白です。この違いは、お米に含まれているでんぷんの違いなのです。

でんぷんは、グルコースが数千から数万個、つながってできています。そのつながり方によって、でんぷんはアミロースとアミロペクチンに分けることができます。アミロースはグルコースがほとんど一直線につながってできてるのに対し、アミロペクチンは一直線のグルコースの鎖の途中から、また別のグルコースの鎖がつながった、複雑な枝分かれ構造をしています。この枝分かれは、グルコース約25個に1回、枝分かれしているといわれています。

アミロースとアミロペクチンを比べると、水を加えたとき、アミロースには粘り気がなく、アミロペクチンには強い粘り気があります。またアミロースは熱水に溶けますが、アミロペクチンは溶けません。ごはんを煮るとご飯がふやけて柔らかくなりますが、お餅を煮ても溶けませんよね。

うるち米では、アミロース:アミロペクチンの比が2 : 8であるのに対し、もち米では、でんぷんほぼ100%がアミロペクチンです。そのため、もち米の方がうるち米よりも、粘り気が強くなります。ちなみにタイ米のでんぷんはほとんどがアミロースなので、日本のお米と比べると、粘り気がほとんどなく、パサパサです。

上新粉、もち粉、白玉粉の違いと使い分け

上新粉も白玉粉ももち粉も昔から使われていました。上新粉はうるち米から、もち粉と白玉粉はもち米から作られます。この3つは何が違って、どのように使い分けされていたのでしょうか。

上新粉は、精白したうるち米を洗って乾燥させ、乾燥状態でロール粉砕し、細かくした粉です。

ロール粉砕というのは、二つのロールの間に原料を通すことで、機械的に米粒を壊す方法です。この方法で得られた上新粉の粒径は、13~24 µmです1)。このように乾燥した状態で粉にする方法を、乾式製粉法といいます。もち粉は、精白したもち米を洗って乾燥させ、上新粉と同じ方法で粉砕したものです。これに対し、白玉粉は、精白したもち米を洗って水に浸し、水を加えながら細かく粉砕し、水中に沈殿したものを乾燥して作ります。このため白玉粉の方が粒が細かく、5~9 µmです1)。このように水を加えて粉をつくる方法を、湿式製粉法といいます。

整理すると、

  • 上新粉 … うるち米を乾式製粉したもの
  • もち粉 … もち米を乾式製粉したもの
  • 白玉粉 … もち米を湿式製粉したもの

となります。

それぞれの特徴と用途とですが、上新粉ともち粉は同じくらいの粒径で、白玉粉はそれより細かくなっています。またもち粉と白玉粉はもち米が原料なので、上新粉よりもモチモチ感が強いということになります。これを踏まえて、それぞれの粉が主に何に使われるのか、まとめました。

  • 上新粉 … 団子、ういろう、かしわ餅、草餅、すあま
  • もち粉 … 求肥、大福餅
  • 白玉粉 … 白玉団子、大福餅

米粉と上新粉の違いは粒度とでんぷん損傷度

米粉はうるち米を粉にしたものですから、上新粉と同じはずです。ところが上新粉ではなく「米粉」という名前で売られています。米粉と上新粉は何が違うのでしょうか。

まず、米粉という名前で売られている粉について調べてみると、米粉の米粉の用途別基準・用途表記というのが、平成29年3月に農林水産省から公表されていることがわかました。まずはそれを紹介します。

米粉の用途別基準・用途表記と用途詳細2)

用途表記 1番 2番 3番 測定法
菓子・料理用 パン用 麺用(一部、菓子・料理用を含む)
粒度 粒径75µm以下の比率が50%以上 レーザー回折散乱式
でんぷん損傷度 10%未満 酵素法(AACC法76-31)
アミロース含有率 20%未満 15%以上25%未満 20%以上 ヨウ素呈色比色法または近赤外分光法
水分含有率 10%以上15%未満 105℃乾燥法または電気抵抗法(電気水分計)
グルテン添加率 18~20%程度
グルテンを添加している旨を明記する必要
アミロース含有率 ソフトタイプ ミドルタイプ ハードタイプ
15%未満 15%以上20%未満 25%以上
用途の例 柔らかいスポンジケーキ(例えばシフォンケーキなど)、クッキー スポンジケーキ、クッキー、てんぷら粉、お好み焼き粉、唐揚げ粉、惣菜類(とろみ付け等) パン全般 麺全般 強弾力の麺、洋酒に浸すなどの硬めのケーキ

米粉と表示するためのいろいろな基準が書いてありますが、上新粉と何か違うのかは書いてありません。実はこの文書は農林水産省政策統括官名で出された公文書なのですが、その一番したに、小さな字で次のような書かれています。「上新粉など、既存用途向けの米穀粉は対象としない。」つまり、上で紹介したお米から作られたさまざまな粉とは、別物であるということです。よくわからない表現だと思いませんか。

結局いろいろと調べた結果、米粉と上新粉の違いは、

  • 粒度(粉の粒の大きさ)
  • でんぷんの損傷度(でんぷん粒子の傷付きの程度)

であることがわかりました。

実は農林水産省が基準を出す5年前に、「新規用途米粉の用途別推奨指標」というものを公表しています3)。ここでいう新規用途米粉とは、ここで説明している米粉のことです。それによると、新規用途米粉とは、

  • 粒度:粒径75μm以下の比率が概ね80%以上
  • でんぷん損傷度:米粉製品の品質に大きく影響するため総じて低いほど望ましく、おおむね12%以下(米粉の配合割合の高い製品を製造するためには、おおむね6%以下が望ましい)
  • 水分含有率:15%以下(米の農産物検査規格に準ずる)

のことだそうです。

でんぷん損傷度とはいったい何でしょうか。米粒の中ででんぷんは顆粒の状態で存在しますが、粉砕方法によってはこのでんぷん顆粒を傷つけ、破壊してしまう場合があります。損傷したでんぷんの割合を、酵素を使った方法で測定したのが、でんぷん損傷度です。損傷したでんぷんは、損傷していないでんぷんよりも速やかに吸水するため、アミラーゼという酵素によって分解され、グルコースを生じます。

国の基準によると、でんぷん損傷度は10%未満ですが、新潟県の基準では、米粉の配合割合が高い場合は6%以下であることが望ましいとされています。つまり、米粉を小麦粉の代わりに使うためには、でんぷんの損傷度が低い方がよい、ということのようです。米粉はでんぷん顆粒を壊さず、細かくしなければならないので、従来とは異なる新しい技術で作られています。次は米粉の製粉技術について説明していきましょう。

米粉の製造、製粉方法と製粉技術

米粉はでん粉の顆粒を壊さずに細かい粉にするために、新しい技術で作られています。白玉粉やもち粉は洗ったお米を乾燥させて、ローラーで粉砕していました。でもこの方法では、粒径が小さくならず、でんぷん顆粒が壊れてしまいます。米粉を作るための新しい技術をいくつか紹介します。

  1. 二段階製粉4)
    米は外周部が固いため、ローラーなどで粉にすると粗くなります。二段階製粉ではお米を洗った後に圧偏ロール粉砕機を通し、固いお米の回りに小さなヒビを入れます。そのあと、お米の粒を高速の気流に乗せて鋼板に当てることで粉砕する(気流粉砕といいます)方法です。この方法で粉砕された米粉は、でんぷんの損傷が少なく、細かくなっているとのことです。なおこの技術は新潟県が開発したものです。(図の出典は4))
  2. 酵素製粉技術4)
    お米は細胞組織で形成される構造体であるため、お米を酵素液に漬けることで、酵素を用いて細胞組織を分解し、お米の内部を粉質化します。脱水したのち、お米の粒を高速の気流に乗せて鋼板に当てることで粉砕しますが、内部が粉質化しているため、でんぷんの損傷を低く抑えつつ、微細にすることが可能です。この技術も新潟県が開発したものです。(図の出典は4))
  3. 湿式気流粉砕お米を15~45分間水につけて柔らかくしたのち、水分量を一定にし、お米の粒を高速の気流に乗せて鋼板に衝突させて粉砕する方法です。西村機械製作所の気流粉砕機「スーパーパウダーミル」を使ってお米をこの方法で粉砕すると、粒径の平均が30µm、分布が10~100µmであったという結果が、ウェブサイトに掲載されてます5)。また米粉の電子顕微鏡写真も掲載されていますが、米粉の形が尖っておらず、でんぷんも損傷を受けずに丸みを帯びています。この方法は、次に説明する湿式胴搗き(しっしきどうつき)粉砕法より、粒径が揃った米粉が得られるそうです。またでんぷんの損傷度は5%程度にとどまっています。
  4. 湿式胴搗き(しっしきどうつき)粉砕
    お米と水を石うすに入れ、杵ですり潰して得られたものを乾燥して粉にします。西村機械製作所の胴搗き粉砕機「スタンプミル」を使ってお米を粉砕した結果が、ウェブサイトに掲載されています5)。それによると、粒径の平均が30µm、分布が5~150µmとなっています。湿式気流粉砕法よりも粒径のばらつきは大きいですが、でんぷんの損傷は少なく、丸みを帯びたでんぷんの顆粒が米粉の表面に露出した電子顕微鏡写真が掲載されています。

まとめ

お米から作られる粉はいろいろありますが、原料と製造方法が異なります。

うるち米から作られるのが、米粉、上新粉、上用粉、並新粉、みじん粉(微塵粉は違います)、もち米から作られるのが、白玉粉、もち粉、微塵粉(=味甚粉)、上南粉(=極微塵粉)、落雁粉、寒梅粉(=焼微塵粉)です。またこのうち、お米を炊飯あるいは蒸してから粉にしているのは、みじん粉、微塵粉(=味甚粉)、上南粉(=極微塵粉)、落雁粉、寒梅粉(=焼微塵粉)になります。

米粉と上新粉はいずれもうるち米を粉にしたものですが、違いは粉の細かさとでんぷんの損傷度です。最近よく売られるようになった米粉は、パン、めん、ケーキなど、従来小麦粉から作られていた用途に使えることをウリにしています。そのため、上新粉よりも粉の粒が小さく、でんぷんが傷つかない方法で製粉されています。


1) 斎藤寛子ら、ボン・デ・ケージョの性状に及ぼす各種粉の影響、山形県立米沢女子短期大学紀要、(43) 83-90 (2007)
2) 『米粉の用途別基準』及び『米粉製品の普及のための表示に関するガイドライン』の公表について、農林水産省政策統括官、平成29年3月29日
3) 米粉の用途別基準と新規用途米粉の用途別推奨指標について、新潟県、平成24年2月
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/syokuhin/1330290118847.html
4) 新潟県が誇る!米粉製粉技術の御紹介、新潟県
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/syokuhin/1356835483235.html
5) 米粉.jp(株式会社西村機械製作所)ホームページ
http://www.rice-flour.jp/flow/wet.html